第6話 「金色の朝と桜色の夜」

 翌朝、陽も昇りきらぬ内に起きたヴィヴィオはなのはと一緒に登山道付近の広場に来ていた。その場所はヴィヴィオも覚えがあった。
 前にヴィヴィオが来たジュエルシード事件時に魔法の練習を一緒にしていた場所で、フェイトと戦った場所。
 なのははあの時からずっと練習を続けている。

「なのは、今はどんな練習をしてるの?」
「朝は操作系、砲撃とか模擬戦すると疲れちゃうから。ヴィヴィオに言われた事ちゃんと守ってるよ」

 ユーノが管理局に行ってからもその辺は心がけているらしい。ヴィヴィオも同じ様な練習をしていたから一緒に練習できると思い
「じゃあはじめよっか。」
「待って、そろそろ来ると思うから」

 そう言うとなのはが空を見上げた。
 同じ様に見上げると遠くから近づいてくる人影を見つける。

「ゴメン、なのは遅れた。」
「ううん、おはようフェイトちゃん、アリシアさん」

 舞い降りたのはフェイトだった。彼女はアリシアを抱きかかえて来たのだ。

「アリシアでいいよ、なのは。ヴィヴィオもおはよう」

 フェイトも一緒に練習しているんだと思いつつ、それより驚いたのは

「アリシア…こんな朝早くよく起きたね。いつもはあんなに…」
「ワァーワァーワァアアアアッ!!」

 アリシアが慌てて口を塞ごうとする。

「お願いっ内緒にして。今フェイトと一緒なんだから」

 アリシアは朝が弱い。それも凄く…
 流石にフェイトの前では姉の威厳もあるのか知られるのは恥ずかしいらしい。

「うん、わかった。でも…」

 なのはとフェイトが微笑んでる。2人の様子を見れば普段どうなのかすぐわかる。

「あ…ヴィヴィオのバカッ」

 頬を膨らませたアリシアが可愛く見えた。


「なのは、今日はどんな練習するの?」
「いつもと同じ。操作系の練習をしようと思ってるんだけど。」

 くずかごから手頃な空き缶を取り出して椅子の上に並べていく。

「そうなんだ…なのはお願いがあるんだ。」

 フェイトが一瞬こっちを向いた後、なのはを見る。

(まさか…)
「ヴィヴィオ、頑張って♪ フェイトここに来る前にエイミィさんにも頼んでたから。」
「あ…う…」
「ヴィヴィオと模擬戦させて欲しいんだ、1度だけ。ヴィヴィオもお願い」

 フェイトがなのはに話したのを聞いてやっぱりかとガクッと肩を落とした。シグナムとヴィータにフェイト…本当に戦闘マニアだ。

「ヴィヴィオ、バリアジャケットでするの?」

 周りに結界が張られたのを見て、諦めてバリアジャケットを纏うとその姿を見てアリシアが聞く。

「うん、あっちだと私の練習にならないから。」

 ヴィヴィオが戦技魔法の練習を始めた時、障害になるものがあった。
【聖王の鎧】魔法・物理等の攻撃から主を守る壁、ベルカ聖王が持つ絶対防壁。
 ヴィヴィオ自身が危険を察知しなくとも強く働いてしまい練習にならない。聖王の鎧を信じない訳ではないが、チェント=聖王縁の者と戦った時の様に使えない時もある。
 絶対防壁故に抜かれたら無防備になる最大の欠点。
 そこでヴィヴィオが最初に練習を始めたのは意識的に聖王の鎧を出さずに戦技魔法を使う事だった。でもまだ練習中でバリアジャケットまでしか意識的に使えない。

「破られない壁も逆に不便だね。」

 アリシアの洩らした言葉に苦笑する。

(それに…アレはこの結界じゃ弱いしね…)

 作られた結界は見る限り簡易型、本気になれば結界を壊してしまいかねない。


『おはよ~みんな。』
「おはようございます。エイミイさん」

 少し経ってなのはとフェイトの端末が開いた。起きて間も無いせいか髪に寝癖があったり顔が眠そうだ。

「ゴメンねエイミイ、朝早くに起こして」
『気にしないで、是非見たいってリンディ提督とクロノ君も起きてきて見てるよ』
「エイミィさん、記録してるんですか?」
『ああ、ヴィヴィオちゃんその辺判ってるから気にしないで。フェイトちゃんも簡易型の結界だから壊さないでね』

 慌てたが、彼女も知ってるのを思い出し胸をなでる。

『じゃあ、模擬戦スタート!!』


「2人とも朝早いのに良く動くわね~。」
「フェイトもそうだがヴィヴィオもあれからずいぶん上達しているな。動きがいい。」
「ヴィヴィオちゃんのバリアジャケット前とちょっと変わってますね。」 

リンディ・クロノ・エイミィは結界と一緒にしかけたサーチャーを使い2人の動きを見ていた。
 フェイトもそうだがヴィヴィオもノーマルのバリアジャケットで戦っている。

「ヴィヴィオさん、あの防御魔法使っていないわね。前は無意識に出ていたのに」
「近接戦では無敵でも、破られると無防備になるから練習ではわざと消してるんでしょう」

 クロノが答え納得する。2人とも戦いではなく戦技魔法訓練として模擬戦をしているのが見て取れる。

「フェイトのスピード、ヴィヴィオは追えるんだな。フェイトもかなり速くなった筈なのに。戦い方はなのはとフェイトを組み合わせた感じか」

 クロノの洩らした一言に頷いていた。


(フェイト前より速いし、動きが鋭いっ)

 これが彼女本来の力だと思い知る。ジュエルシード事件で戦った時とは雲泥の差。
 6発のシューターを出してフォローしながらその中に身を入れ近接戦に持ち込もうとするが、目で追えてもこっちの方が遅いから彼女を追いきれない。
 拳に作ったシールドでハーケンセイバーを叩き割り勢いを生かしてそのまま回し蹴りを入れようとする。しかし見越したようにスッと彼女の体が消えた。

「ファイアっ!!」
「!?」

 直後背後から聞こえた声に体を捻って防御に回る。しかしそれより先に矢の様なシューターがヴィヴィオを直撃した。

「直撃!?」

モニタに顔を近づけるエイミィ。

「いや…先にあの壁が現れて打ち消した」
「そうね。でも…」

 なのはとアリシアの所へ降りるヴィヴィオ。後を追ってフェイトも降りてくる。

「アリシア、負けちゃった。」
「でも当たって…」
「フェイト、ヴィヴィオはわざとシールドを張らない様にしていたの。でもフェイトの魔法が当たると思って出来ちゃったからあれは当たったんだよ。」

 アリシアのフォローに頷く。

「そういうこと。フェイト前より凄く強くなってた。ビックリしちゃった」
「ううん、またしようね」
「うん♪」

 競い合える楽しさ、フェイトが模擬戦を好きな理由が少しだけわかった気がした。

「じゃあ次は私とだね♪」
「えっ!?」
【ジャキッ】
 バリアジャケットを着てレイジングハートを構えたなのはがニコリと微笑む。が、

『なのはちゃん、今の結界ディバインバスターで簡単に壊れるからダメだよ♪』
「ええーっ! じ、じゃあ砲撃魔法ナシでしますから」
『なのは、君は熱くなると無茶するからな。許可できない』
『そうね~思い当たる節、あるでしょう?』
「……」

 クロノとリンディに言われて言葉が出ない。どうやら幾つもあるらしい。

『今夜出来るようにしておくから今は我慢して。ヴィヴィオちゃん今の模擬戦見たくなったらいつでも言ってね。じゃあ練習頑張って』

そう言ってエイミィ達からの通信は切れてしまった。

「ねぇヴィヴィオ、なのはさんとの練習怖かったんじゃない? 足、震えてたよ。」

 アリシアに小声で聞かれ頷く。
 強力無比な砲撃魔法と集束砲は鎧なしでは打ち消せるかどうかわからないのだから。


~~コメント~~
AgainStory2を初めて読んだ方に優しくない話になってしまいました。すみません。
AnotherSide13話(http://silentseason.sakura.ne.jp/log/eid86.html)でフェイトがヴィヴィオと交わした約束を
ヴィヴィオが守ったのが今話です。
 朝からディバインバスターの応酬受けたらゾッとしますね

 

Comments

光希
imaさん、こんばんは。
あれ?大人フェイトの方は戦ってませんでしたっけ?
……あっ、そういえばそうでした。
確か逃げ回ってて、そのまま終わってましたね。
第7話を読ませて頂きました。
クロノとエイミィ…いつ恋人になって、夫婦になったのか、
気になりますよね。
Asから6年後あたりはさすがにもう恋人同士だったのではないかと私は思っています。
それか、恋人を吹っ飛ばして結婚しちゃったのかもしれませんね。(笑)
それでは失礼致します。
2010/10/27 06:45 PM
ima
>光希様
いつもありがとうございます。朝からなのはのディバインバスターを受けたらその後が大変そうです。
大人フェイトとの約束は隊舎に逃げ込んで戦っていません。(当時バリアジャケットまでで騎士甲冑は作っていません)それもあって今度は受けようと少しだけ積極的になっています。
それでもなのはとは…トラウマ効果はすさまじいですね。
2010/10/26 03:06 PM
光希
imaさん、こんにちは。
確かに朝からディバインバスターの応酬なんか
受けたらゾッとしますよね。
それがなのはともなれば。
子供フェイトとの模擬戦、実現しちゃいましたね。
ヴィヴィオにとってはその交わした約束を2回も守った事になりますが。
子供フェイトと大人フェイト。
次の話はなのはとの模擬戦かな?
いや、その前に昼間の出来事の話になるのかな?
今から楽しみです♪(特になのはと絡む話が。)
それでは次の話も楽しみに待ってますね。
2010/10/22 03:00 PM

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