第02話「私がですかっ!?」

「ヴィヴィオまたね~♪」
「アリシアもバイバ~イ♪」
「また明日」
「ごきげんよ~」

 冷たかった風や日差しに温かさが含まれてきた季節、ヴィヴィオはアリシアと共に初等科3年生から4年生へ進級した。
 神様への祈りが通じたのかクラス替えでは2人一緒のクラスになった。手を取り合ってヴィヴィオ達は喜んだ。
 でもそんな2人を1番驚かせたのはリオ・ウェズリーとコロナ・ティミルが新たなクラスメイトになったことだった。
 リオとコロナ、ヴィヴィオ達は彼女達と会っている。しかしこの世界の彼女達ではなく、もう1人のヴィヴィオが居る異世界の彼女達なのだが…
 こっちにも居るかもとは思っていたがまさかクラスメイトになるなんて考えてもいなかった。
 並行世界の2人を知るヴィヴィオ達としては色々悩んだが折角クラスメイトになったのだから友達になろうと早速話かけて、友達になった。
 今日は無限書庫の依頼もないから4人でどこかへ遊びに行くつもりだったのに、ついさっき先生からアリシアと一緒に職員室へ来るようにと連絡があったからだ。

「私達…何かしたかな?」
「う~ん…去年いっぱい休んじゃったからとか?」
「…あるかも…」

 時空転移に目覚めて行ったジュエルシード事件で1週間、なのは達と一緒に闇の書事件へ行った時の2週間はまだ良かったけれど、チェントが起こした事件の時はアリシア共々2週間無断欠席して家族とも連絡がつかなかったし、闇の欠片事件へ行った時も1週間近く休んでいた。
 唯一砕け得ぬ闇事件だけは1度戻ってきた時のお休み2日間だけで、アースラと一緒に向かった時は数分後に戻ってこられたから何もなかったけれど…
 欠席と無断欠席を繰り返す子だと思われていないかと少し不安になる。欠席した後先生からはしっかり課題を渡されたし、無断欠席の時は2人して凄く怒られた。
 休みたくて休んでいる訳じゃないけれど、理由を話せる訳がない…

「考えても仕方ないよね、行こう」

頷きあって職員室へと向かった。



 職員室へ向かったヴィヴィオ達は先生と共に学院長室へと連れて来られた。
 2人とも想像がつかず、先生の後ろで顔を見合わせている。

「「失礼します。」」

 学院長室へ入った所で、中には学院長と見知らぬ男性がソファーに座っていた。2人を通した後先生は頭を下げ部屋から出て行った。

「…あ…前のビデオの時の局員さん」
「アリシア知ってるの?」

 呟いた彼女に小声で聞き返す。

「高町さん、テスタロッサさん、こちらは管理局広報部の方です。」
「ごきげんよう、アリシア・テスタロッサです。」
「ご、ごきげんよう。無限書庫司書、高町ヴィヴィオです。」

 学院長に紹介されて礼をするアリシアに続いて頭を下げた。



「今日はテスタロッサさん、高町さんにお話があって来ました。テスタロッサさん、昨年の記録映像に参加して貰いありがとうございます。今公開中ですが見に行きましたか?」
「はい、先週見に行きました。あんな風に映ってるなんて思わず驚きました。」

 1週間前、ヴィヴィオとアリシアはなのはやプレシア達と一緒に見に行った。ヴィヴィオも撮影の様子は何度か見ていたけれど思っていた以上に凄くて感動した。
 それを思い出しながらヴィヴィオも頷く。

「テスタロッサさんにはお詫びをしていませんでした。私達の不手際でジュエルシードを見逃してしまい申し訳ありませんでした。テスタロッサさんがあの場に居なければ大惨事になるところでした。」
「いえあの時は…」

 アリシアは照れながらこっちを見る。
 管理外世界の海鳴市で撮影していた時本物のジュエルシード憑依体が現れた。運悪く憑依体になったジュエルシードをなのはとフェイトが取り合うシーンだった為に発見が遅れてしまう。そんな時アリシアはフェイトから借りたバルディッシュを使いなのは役の少女を守りながら1人で封印した。
 そこにもう1人の少女が携わっていたのは本人達と本人の家族しか知らない。
 そして映像が公開される前にアリシアがジュエルシードを封印した時の映像も公開されアリシアは学院内でも一躍有名人になってしまった。記録映像が公開されてからは更に有名になりファンクラブが出来そうになって慌てて本人が止めに回ったのは記憶に新しい。

「おかげ様でミッドだけでなく他の管理世界でも好評でして、続けて次回作を作ろうという計画があるのです。テスタロッサさんには前回と同じフェイト役として、ご家族も一緒に撮影に協力して貰えないでしょうか?」
「わかりました。帰って家族と相談します。」

 落ち着いて答えるアリシア。
 しかしヴィヴィオはその話に引っかかりを覚え首を傾げた。

「ジュエルシード事件の後…の事件を映像化するんですか? もしかして…」
「そうです闇の書事件です。まだ内部情報で口外してはいけないのですが近々制限が解除されます。」

 闇の書事件に秘匿制限がかかっているのはヴィヴィオも知っている。しかし制限が外れるのを初めて聞いて驚いた。その話でアリシアが呼ばれたのはわかるけれど、どうしてヴィヴィオまで呼ばれたのかわからない。

「私は…司書として当時の情報を探すという依頼でしょうか? それなら受付か司書長を通して貰った方が…」

 いくら司書とは言え直接依頼を受けるわけにはいかない。同じ管理局員ならそのまま受付担当者に言って貰った方がスムーズに進むし、闇の書事件はまだ秘匿情報扱いだから検索権限のある司書長ユーノ・スクライアに直接頼んで貰った方がいい。
 だが彼はその答えに苦笑しつつ

「いえいえ、高町さんを呼んで貰ったのは闇の書事件の主要人物、『八神はやて』役を受けて欲しいからです。お願いできませんか?」
「八神はやて…はやてさん? …ええーっ!?」

 室内に驚きの声が響き渡った。

「ど、どうして私なんですか? わた、私なんて映像にも出たことないですよっ!」

 ソファーから立ち上がってあからさまに狼狽えるヴィヴィオに

「高町さん落ち着きなさい、座って聞きましょう。」

 学院長からお叱りを貰い大人しく元居た場所に座る。

「驚かせてすみません。高町さんを選んだ理由は幾つかあります。第1に八神はやて、八神司令が高町さんと同じ『古代ベルカ式魔法』魔導師…古代ベルカでは騎士と呼ばれる希な魔法体系を使います。管理局にも古代ベルカ式魔法が使える騎士は殆ど居らず、もし居たとしても聖王教会の関係者です。」
「第2に当時の八神司令はテスタロッサさん、高町さんと同じ年齢です。これらの該当者として本局教導隊のヴィータ教導官が居ますが、彼女も闇の書事件の関係者ですから当人役で出演を依頼しています。」
「高町さんのご家族は事件を解決した高町教導官とハラオウン執務官ですし、八神司令とも交流があると聞いています。それにStヒルデ、聖王教会系列の学院に通っていますが先程名乗られた通り高町さんは無限書庫司書、局員の1人です。」

 彼の言うとおり古代ベルカ式の魔法が使えてアリシアと同い年の少女とくれば…ヴィヴィオくらいだろう。

「…で、でも、今の映像みたいに後で追加しちゃってもいいんですよね? フェイトママのファランクスシフトやなのはママのスターライトブレイカーみたいに。私なんかよりもっと演技の上手な人も居ますよ、絶対!!」

 先の映像では大半の魔法が戦闘シーンを撮った後で合成されていた。魔法が違った所で映像化時に書き換えられるのは知っている。術式が違っていてもどうにでもなる筈だ。

「ええその通りです。ですが私達は高町さんでなければいけないのです。」
「ど、どうしてですか~っ?」

 訳が判らない。もう半分涙目で訴える。

「闇の書事件の映像化にはジュエルシード事件記録に参加されたテスタロッサさん達の他に八神司令やシグナム空尉、ヴィータ教導官、シャマル医師、ザフィーラ氏、リインフォースⅡ司令補の協力がなければ出来ません。」

 頷く。闇の書事件の主要人物の協力が無ければ作りようもない。

「シグナム空尉や他の方々は八神司令が協力するなら協力すると条件付きで承諾されました。私は先程地上本部で八神司令に会いその旨を伝えたところ、ある条件が満たされれば協力してもいいという答えを得ました。その条件が…」

 まさか…ゴクリと喉をならす。

「高町ヴィヴィオさんが八神はやてを演じてくれるなら全面協力すると。」
(………はやてさんーーっ!!!!!)

 脳裏でニヤリと笑った彼女が浮かび上がった。
 そう、これは彼女がしかけた盛大な悪戯なのだ。
 カッと頭が熱くなって「嫌です!!」と言って席を立ってその足で地上本部へ押しかけたいところだったが、学院長の視線を感じぐっと我慢した。

結局

「少し考えさせてください」

そう言ってその話を保留した。


~コメント~
もしヴィヴィオの世界でMovie2ndA'sが作られたら?
ヴィヴィオがはやて役をするというのはなのは役より面白い展開になるんじゃないかと考えていました。
どんなMovie2nd…ができるのでしょうか?

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