第08話「意地と思い」

「だぁあああああっ!!」
「ハアアアアッ!!」

 2人がぶつかった衝撃波で砂が巻き起こる。
 赤い光を見つけセイクリッドクラスターを放つ。しかしヴィータは最小限の動きでそれを避け、グラーフアイゼンを振り下ろす。

「後ろががら空きだーっ!」

 しかし肉薄した所で急に止まり後ろに下がった。直後彼女がさっきまで居た所を砲撃魔法が掠める。
 思わず舌打ちをする。単純な誘いには乗ってくれないらしい。
 
だったらっ

【ヴィヴィオ、3つ目の模擬戦闘試験、ヴィータちゃんが直接ヴィヴィオを指名してくる。ヴィータちゃんは戦闘経験だけならママ達より多いし強い。でもブレイカーは撃っちゃだめ。あれは絶対に倒せるって状況じゃない限り使うとこっちの魔力が無くなっちゃう。】

 先の模擬戦で周囲の魔力はある程度満ちている。集めれば相応の集束砲になるし負担はない。でもヴィヴィオはなのはの言葉に従った。
 近接戦だとスターライトブレイカーのチャージ時間が命取りだからだ。シューターを使ってヴィータの放ったシュワルベフリーゲンを相殺する。

【ヴィータちゃんの得意な距離は近接から中距離、特に近接戦は警戒してね。逆に言えば長距離は苦手。模擬戦のどこかで自分の得意な距離を模擬戦で見せつけちゃえ。ヴィータちゃんが一方的に避け続ける状況を作れたら戦技魔法を把握して使っているって加点されるよ。】  

 言われた通りヴィータとの距離を保ちながら、セイクリッドクラスターを追随させ、迎撃態勢に入るとインパクトキャノンを放つ。
 何発かは当たるが全部グラーフ・アイゼンかシールドで受け止められてしまう。だが彼女が受け止めた瞬間、止まった所を狙ってインパクトキャノンを放ちながらセイクリッドクラスターを集束させクロスファイアシュートに切り替え撃ち出した。

「アダッ!」

 流石に離れたところから切り替えられるとまで読んでいなかったらしく直撃した。

【作戦が成功してヴィヴィオがノーダメージでヴィータちゃんだけ幾つか直撃を受けていたら、ヴィータちゃんは攻撃パターンを変えてくる。もの凄いスピードで接近して近接格闘戦に持ち込もうとする。ここできついのを1発でも浴びたら勝てない。だからその前に魔力を削っちゃえ♪】

「…のやろーっ!、いくぞぉおおおっ!!」
(すごい…ママの言った通り! ここでヴィータさんの魔力を削る)

 セイクリッドクラスターで迎撃しながらそれ以上の光球をばらまいて上下左右に無作為に動かし、ヴィータが来る反対方向へ離れる。
 高速で動く物を同じ速度で追いかけるのは難しい。だが、相手から突っ込んでくる場合は違う。

「!!」

出力を抑えたインパクトキャノンを砂面に撃ち込み砂を煙幕代わりに姿を隠す。撃ち出されると思っていた虹色の光球が集まる中へヴィヴィオは自ら飛び込んでしまった。爆発音の中で更に集束したクロスファイアシュートが4発撃ち出され直撃した。



「ヴィヴィオ凄いですね。ヴィータさん相手にノーダメージで…逆にヴィータさんが何度も直撃を受けるなんて。」

 モニタに映る2人を見てふぇ~と驚くシャーリー。その様子を見ててフェイトがクスッと笑う。

「ヴィヴィオ、魔法を上手く使ってる。でもあれはなのはが教えたんじゃないかな。」
「なのはさんが?」
「うん、いつものヴィヴィオの戦い方じゃないし試験の加点を狙って動いてる。教えたとおりにヴィータを動かせるのも凄いんだけどね。」

 ヴィヴィオはフェイトやなのはと比べて魔法のレパートリーが少ない。なのはの魔法はレイジングハートやユーノが教えた物を独自に改良、作り出した物が多いけれど、フェイトの魔法はほとんどがリニスに教えて貰ったものだ。
 学科試験や魔法制御ではいい評価はされていないだろう。それを覆すには模擬戦闘試験で取れる加点を全て取った上で試験官を負かすしかない。
 なのははヴィヴィオに教える前にヴィータが試験官の試験へ割り込ませた理由も判る…でも

(ヴィータ…気づいたら絶対怒る。でもなのはは怒ることも計算に入れてるんじゃないかな…)

 後で2人のフォローが大変だと苦笑いした。 




「あのやろーっ!」

 砂漠に突っ伏したヴィータが立ち上がって口に入った砂をペッと吐き出し叫んだ。あのやろーとはヴィヴィオではなくモニタで見ているであろう彼女の母だ。

(私がヴィヴィオを指名するところまでしっかり読んできてやがる。)
 2日前になっていきなり高位魔導師ランク認定試験にヴィヴィオを入れて来た時は何を考えてるんだ、試験を馬鹿にするなと怒った。。
 でもヴィータが自ら模擬戦闘試験で彼女と戦え、技能を見る事ができるまたとない機会だと考え直し引き受けた。
 その時から何を考えたのか読まれていたのだ。申請してでもヴィータがヴィヴィオの相手をする事も、制限を外す事も、その過程で学科試験の穴を埋める事も…
 こっちも裏をかこうと考えるが『ここでヴィータちゃんは裏をかこうと考える』と読まれているかも知れない。
 もしかするとなのはやフェイトだけでなくユーノやはやても…
 ブンブン頭を振ってその考えを振り払う。
やられっぱなしでは教導官としてもベルカの騎士としても良い面の皮だ。
 
(ヴィヴィオ、悪いな…全力でぶっつぶす!!)
「アイゼン、ヴィヴィオをぶっとばすぞ」
【Jawohl.Gigantform.】

 3発のカートリッジをロードした。



「近接戦での防御、迎撃、戦闘中の魔法属性変更と遠隔操作、得意な戦闘距離の固定…全て加点対象だ…君が教えたんだな。」
「アハハハ…」

 流石にわざとすぎたかと思いながらも目が離せない。

「本気になった彼女に対しどうやって相手をするか…」

 何も言わず頷く。顔つきが変わり、瞳の鋭さが増し、カートリッジも使った。

(本気になったヴィータちゃんは、本当に強いよ。ヴィヴィオ…頑張って)

 ここからが正念場だ。



【魔力を削られたヴィータちゃん、流石にここまでヴィヴィオが出来たらママが教えたのに気づく筈。そうしたら絶対本気になってくる。でもこの時には試験時間は残り少しになってる筈だからここからはヴィヴィオの本領発揮だよ。】

 見えるのは彼女の身の丈を越えた大きな鎚。カートリッジを使ったのだ。そして彼女から発される気迫

(本気になったヴィータさん。試験時間もそんなに残ってない)

 こっちも奥の手を出す。

「いくよ、RHd」
【Yes.Armored module Startup】 

一面砂ばかりの世界に虹の柱が立ち上った。



 虹色の柱と共に設置された魔力センサーが魔力を測定しデータを試験会場へ送る。そのデータは教導隊室にも届いた。上昇する魔力のグラフと相当ランク表示欄にSという文字が明滅する。

「魔力S…これが君達の自信か」
「はい、ここからは私もわかりません。戦闘経験はヴィータ教導官の方が圧倒的に上ですから。」

 部屋の中がざわつく。
 なのはやはやてがスターライトブレイカー・ラグナロクを使うとSランクを超える魔法出力が表示される。
 しかし今ヴィヴィオは何も魔法を使っていない。彼女の中から溢れる魔力なのだ。

「古代ベルカの騎士同士の戦い、私達しか見られないのは惜しいな。戦技披露会で見せたい位だ。」

そう呟いた上司に苦笑した。



 騎士甲冑姿に変わったヴィヴィオがヴィータ向かって突っ込んでいく。振り回された巨大な鎚の先と虹色の光を帯びた拳がぶつかる。

「ベルカの騎士の特性は近接攻撃。叩き切って進むのみ」

 前にシグナムが言った言葉を思い出す。

(私もベルカの騎士…王様なんだからっ!!)

 シグナムとの模擬戦は不意打ちスターライトブレイカーで勝利した。でもあれは彼女がヴィヴィオの力を計っていたから。でも今のヴィータは本気だ、こっちを叩き潰そうとしている。
 ここからは策はない。彼女を倒しにいく…グラーフ・アイゼンの攻撃力は半端じゃないけれど、逆に高速移動には弱いし、鎚より中に入り込まれたら不利になる。そこを狙えばと考える。
 でもヴィータは今までこのデバイスで戦ってきた。子供が咄嗟に考えた戦法なんて今まで何人もの対戦相手が考えたに違いない。ヴィヴィオ自身が模擬戦開始直後にした様に彼女の戦闘スタイルそのものが誘いだったら? 

(ううん、弱い部分を狙うんじゃなくて…強い部分を押し切る!!)

 足に魔力を集中させヴィータが振り回すアイゼンを思いっきり蹴った。



(正解♪ みんな懐に入ればいいって思うんだけどヴィータちゃんはちゃんと対抗策を持ってる。勝つつもりなら1番強い所を狙わなくちゃね。)

 モニタ向こうのヴィヴィオが距離を測りながら目標を切り替えたのを見てなのはは満面の笑みを浮かべる。

「…面白いな…」
「えっ?」

 どういう意味かわからず聞き返す。

「あの年でここまで出来るのなら教導隊に入って貰いたいとな。司書にしておくのは惜しい。親子で教導官というのも面白いと思わないか?」
「えっ、あっ、その…お誘いは嬉しいんですが申し訳ありません。あの子が進みたい道を歩いてくれればって思ってるんです。あっ、でももし教導隊に入りたいって言った時はよろしくお願いします。」


 
「お前やる気があるのかっ!!」

 砲撃魔法を撃たずにグラーフ・アイゼンの迎撃だけをするヴィヴィオに苛立ちを隠さないヴィータ。彼女が怒るのも当然だった。
 騎士甲冑になってからヴィヴィオが責めてこようとしたら一定距離を保って近づこうとしないのだ。何発かは砲撃魔法を使ったがどう見てもめくらまし。今も振り回すグラーフアイゼンを受け止めている。
 受け止めるヴィヴィオの体力、魔力消費の方が激しいからこのまま続けば軽い彼女は叩き飛ばされる。 
 でもそんな勝負は望んでいない。拮抗する力同士のぶつかりあいがしたい。その気持ちが更に苛立たせていた。



「当たり前ですっ!」

 グラーフアイゼンは滅茶苦茶硬い。魔力を集めて拳をカバーしているのにズキズキと痛む。でももう少しで条件が揃う。
 何度かの激突でその条件を遂に見つけた。

「いっっけええええっ!!」

 数メートル飛び上がって真っ逆さまにヴィータ目がけて飛び込む。左拳に帯びた虹色の光は輝きを増し一瞬白色に変わる。そのまま振り回したグラーフアイゼンの側面へ拳を突き入れた。
 突き入れられた拳から亀裂が走りグラーフ・アイゼンの鎚部分が砕け散った。

「何っ!?」
「星よぉぉおおおおっ!!」

 2人の間に虹色の光球が生まれ、更にその光球を囲む様に小さな光球が6個現れる。そして武器を失った騎士めがけ光球から放たれた虹の奔流は騎士の視界を全て覆ってしまった。



「ええっ、あれってなのはさんの!? どうしてヴィヴィオが?」

モニタ全面に虹が生まれたのを見て泡を食った様にシャーリーが驚く。

「凄いでしょ。私も初めて見た時ビックリしちゃった。仕事に戻ろ。早く帰ってお祝いしなきゃ。」
「えっ、そんな反応でいいんですか? 驚かないんですか?」

 その言葉にクスッと笑い彼女へ振り向く。

「言ったでしょ、初めて見た時ビックリしちゃったって」 



「ハァッハァッハァッ…」

 砂面に降りて肩で息をする。これで勝負はついた筈。だけど…

「ったく…アイゼンと服をこんなにしやがって…」

 砂埃が消えるとそこにはヴィータが立っていた。帽子や上着は無くなり、スカートも膝上までしかない。片手に持った愛機も鎚部分が半分なくなっている。
 慌てて構えるが彼女はデバイスを待機状態に戻しそのまま砂の上にドカッと座った。

「負けだ負けっ! ったく親子でここまでするか普通?」
「ごめんなさいヴィータさん。デバイス壊しちゃって…私もマリエルさんの所に行って急いで修理してもらえる様にお願いしますから、本当にごめんなさい」

 ヴィヴィオの目標はヴィータではなくグラーフアイゼン。完全破壊しなくてもいい、鎚の先から側面へ抜けた1カ所を常に狙う。
 同時にRHdにはストライクスターズを使う為に魔力チャージを任せていた。愛機が壊れたらヴィータは一瞬だけでも無防備になる。そこを狙った。 

「…まぁ私も悪かった。教導官が熱くなって力量を計らずにカートリッジまで使っちまった。」

 通常なら彼女もヴィヴィオが何を狙っているか気づいただろう。しかし彼女はなのはの作戦に振り回されて冷静さを欠いていた。

「ヴィヴィオ、よくやったな。」

 ヴィータは駆け寄ってきたヴィヴィオの頭を撫でる。その顔は今まで見た彼女の表情の中で1番優しかった。
 


 教導隊室ではなのはを除く全員が唖然としていた。
 彼女しか使えないと言われた魔法を目の前で使ったのだ。それも小さな女の子が。

「…あれは君が教えたのか?」
「いいえ、教えていませんし教えて出来るものでもありません。これで…どうでしょうか?」
「ああ、誰からも異論は出ないだろう。直接伝えてやってくれ」
「ありがとうございます。」

 なのはは敬礼すると試験を行っている部屋へと向かった。



 こうして小さなSランク空戦魔導師は誕生した。
 模擬戦闘試験で大量の加点と試験官に勝利した事が主な理由だったのだが、学科や使える魔法の数が及第点でしかなく、試験申請にあったロストロギア-レリック所持が条件となっていた為、完全な空戦Sではなく、条件付きになる方向だと後日ヴィヴィオはなのはから聞いた。

そして試験が終わった夜、高町家で催されたお祝いにはヴィヴィオとなのは、フェイトだけでなく八神家の全員も加わった。
 その宴の中で見られなかった者の為にと試験の映像が流された。
 恥ずかしいから見ないで~と顔を真っ赤にして言うヴィヴィオを横目に呟かれたのは…

「魔力制限を外し、カートリッジまで使ったにもかかわらず負けたのか…腕が鈍ったのではないか?」
「騎士が子供に踊らされるなど…情けない限りだ」
「本当にね~…感情的になりすぎよ。」
「後半動きが単調になってるですね。」
「ここまでされたら私でもわかるぞ。」
「う、うるせーっ!! シグナムだってヴィヴィオのスターライトブレイカー食らって負けたじゃねーかっ、訓練場でかっこ悪く伸びてさ」
「ああ、だがあの時私はカートリッジを使っていないし、主はやてからヴィヴィオのシールドを通さない程度に抑えるよう言われていたからな。誰かと違ってカートリッジ3発も使って本気になって潰しには行っていない。」
「まぁ、負けたから得るもんもあるってことやな~」
「……あーっもういい。ヴィヴィオそこのでかい皿取ってくれ。全部食う。」
「えっ…8人分あるよ?」
「やけ食いだ!!」
「うん…」

 大皿に盛りつけられたのを見て胃薬を用意した方がいいかと心配する。
 そんな中、はやてが何かを思いだしたのか

「ヴィヴィオ、明日なのはちゃんかヴィータを訪ねて教導隊に行ってみて、直通ゲート使わんと地上本部を通ってな♪ 申請は明日しとくから」
「明日…ですか? いいですけど…」

 その言葉でなのはやフェイト、ヴィータも何か思いだしたらしく 

「あっ♪ そうだね~、まぁ前みたいにヴィヴィオも嫌じゃないと思うし」
「ウンウン、後で私の部屋にも来て欲しいな。」
「ヴィヴィオ来る前に教えてくれよ。私も見たいから。絶対だぞ」
「ああ~♪、アレね」
「アレだな」


 はやて達の言ってる意味がわからずヴィヴィオは首をかしげた。

 そして翌日の放課後、はやてに言われた通り地上本部を経由して本局へ向かった。何が起こるのかわからず心配だったからアリシアにも来て貰っている。
 ヴィヴィオ達が地上本部に入った所で2人の女性局員が立っていた。敬礼されて慌てて頭を下げ、そのまま通り過ぎようとすると彼女達も後ろをついてくる。アリシアと顔を見合わせる。立ち止まると彼女達も立ち止まる。

「あの…私達に何か?」
「高町ヴィヴィオ司書が地上本部を訪れた際の護衛を命令されております。私達の事は気にしないでください。」
「「護衛!?」」
「本局への転移ですね。ゲートを用意しておりますのでこちらへどうぞ」
「…あ、ありがとうございます。」

 そして…

「高町ヴィヴィオ司書とアリシア・テスタロッサさんですね。本局にいらっしゃる間警護を担当します。よろしくお願いします。今日の要件は教導隊室にいらっしゃるお母様を訪ねて来られたと聞いておりますがよろしいですか?」
「は、はい、そうです。あと無限書庫にも行きます。」

 本局ゲートへ着いた所で違う女性局員が待っていた。丁寧に頭を下げられ慌てて頭を下げる。

「案内いたします。」 
「「案内!?…あ、ありがとうございます。」」

 一体何があったのかと面食らった顔で互いを見るヴィヴィオ達だった。



「ヴィヴィオ、今頃驚いてるやろな~♪」
「はやてちゃん、また何かしたですか?」

 地上本部の部屋で思い浮かべて笑うはやてにリインが聞く。

「ちゃうちゃう、何かしたって言ったらヴィヴィオがしたんかな。昔なのはちゃんとフェイトちゃんが候補生になる前にあったんやって、凄い無駄に丁寧な警備が。私も地上本部で受けたしな」
「凄く無駄に丁寧な警備…ですか?」
「リインも管理局内で優秀な魔導師の取り合いがあるの知ってるやろ?」
「はいです。」

 各管理世界の地上本部と本局との優秀な魔導師の取り合い合戦は酷い物だ。優秀な魔導師は本局に取られてしまうから八神家一同が揃ってミッドチルダ地上本部へ転属希望を出した時、地上本部の出迎え様は凄かった。
 それもその筈、管理局内で優秀な魔導師の取り合いをする前に多くの魔導師は収入も多く安全な民間企業を選ぶからだ。
 管理外世界出身のなのはは勿論、ミッドチルダ出身のフェイトも嘱託魔導師から候補生になる間、本局は民間に取られまいと色々思案をしていたらしい。
その状況が今回のヴィヴィオにぴったり適合した。
 ヴィヴィオはミッドチルダ出身だから民間の魔導師についても知っている。そして候補生ではなく無限書庫の司書、一般の管理局員扱いだ。
 そこに聖王教会系列の学院に通っていて新たに【空戦Sランクの古代ベルカ式魔法を使う少女】と認められた。
 模擬戦の様子は教導隊かその関係者しか見られないが結果は判る。Sランクを申請した理由まで調べられると色々やっかいだけれど学科を補える程の加点を取り教導官に勝利した少女は注目される。

(事情を知らんから『優秀な魔導師を民間なんぞに取られてたまるか』と躍起になるし、しかも民間に流したらもっときつい引き抜き合戦が起こるのも知ってるから局内の口も固くなる。制限を付けようなんて言う輩にはええ薬やな。)

 ヴィータが懸念していた『ヴィヴィオがSランクを取ればヴィヴィオが争いの火種になる』という考えもわかるが、局内で揉めて嫌気がさして退局し民間に流れる魔導師も少なくない。
 収集がつかない時はカリムに話して聖王教会へという道や、プレシアを通じて民間企業を紹介すると言えばすぐに治まるだろう。
 決めるのは管理局や聖王教会でもなのはやフェイト、はやて達でもなくヴィヴィオ本人なのだから。
  
「まぁ被害者って言える人がおるなら…ユーノ君やね…」

 今頃彼女の付加条件「レリック所持」の為にあっちこっちの部署を走り回っている事だろう。少しだけ彼に同情し、心の中で応援した。


~コメント~
もしヴィヴィオの世界でMovie2ndA'sが作られたら?
前話2話とまとめて番外編に近い話になっていますが、本編に関わってくる点が多かったのでAgainStory3に入れました。

 

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