第14話「蘇った旅人」

「撮影中止、全員クラウディアへ避難してください。」
「機材は置いて、急いでっ!!」

 闇の書が蘇った。なのはとフェイトは指示を出した。



 一方で状況を確認したアースラ内ではリンディとエイミィ、アレックス、ランディがクラウディアでもクロノが驚愕の面持ちでモニタを見ていた。

「ハラオウン執務官からスタッフを緊急避難させて欲しいと通信が…」
「……何故だ…」
「艦長!!」
「…! 許可する。クラウディアを軌道上、アースラ前に移動させる。」

 通信士の叱責で我に返ったクロノは指示を出す。

 
『アリシア急いで離れてっ』
『えっ、でも…何が起きてるの?』

 そうか…まだ2人そんなに飛行魔法が…
 闇の書に1番近いアリシアとなのは役の少女は魔力資質を持っていない。そんな2人が攻撃を受けたら…
 バリアジャケットを纏って悠久の書を取り出す。

「悠久の書、お願いっ」

 空間転移で2人の前に飛んだ。

「ヴィヴィオ?」
「何が起きてるの?」
「今は離れなきゃ。2人とも私に掴まって、急いでっ!!」

 顔を見て察したのかアリシアがなのは役の少女の手を取りヴィヴィオに掴まる。

(空間転移、ゲートの前にっ)

 直後その場から3人の姿は消えた。

「フェイトママっ!アリシア達を連れてきた」

 ヴィヴィオが戻るとフェイトが駆け寄ってくる。

「うん、ヴィヴィオ達は急いでクラウディアに戻って。理由はあっちで話すから。」
「う、うん…」
「なのはママは?」

 辺りを見回すがなのはの姿が見えない。

「はやてちゃんの所に行った。私も今から行ってくる。」
「じゃあやっぱり…」
「………」

 無言で頷くフェイト。それが何よりの答えだった。

「闇の書が復活した…」

 その近くで

「リインフォース…どうしてお前が」
「将よ…どうして止めてくれなかった。どうして主が我を呼び起こすのを諫めてくれなかったのだ」

 残されたカメラの前で涙し責める彼女。

「はやて、はやてはどうしたんだ!!」
「…もう遅い、我らの主は我が目覚める媒体となった。時を置かず夜天の魔導書、闇の書も目覚めるだろう。」
「はやてちゃん…」
「そんな…」

 絶句するシグナムとヴィータ。愕然とへたり込むシャマル、リインフォースと唸るザフィーラ。

「クラウディア、こちらハラオウン執務官。急いでシグナム達をクラウディアへ転送してください。このままでは彼女達が取り込まれます。」
「テスタロッサ! 待て、待ってくれ。我らは主はやてを…」
「シグナム、はやては私となのはが必ず助けます。だから…お願い。ヴィータ、シャマル先生、ザフィーラ…私達に任せて下さい。」

 彼女達に居られてもし彼女達が守護騎士として阻んできたら…、はやてを助けるのも困難になり彼女達も救えない。
 唇を噛みながらヴィータは頼む…と残し転送された。



 その頃報告を受けたクラウディアと接舷したアースラも騒然となっていた。
 消滅した筈の闇の書が復活した。
 撮影の映像と直後もたらされたフェイトからの報告、そして守護騎士4人と管制端末であるリインフォースツヴァイが転送されてきた事で現在の状況に陥っていた。
 数時間後には本局にも知れ渡る。管理局がロストロギアを生みだし1世界を破壊してしまったと尾ひれがつきかねない。
 不幸中の幸いは、クラウディアの艦長がクロノ・ハラオウンであり、退役艦アースラの指揮を撮影の都合でリンディがとっていた事だった。 
クロノは 直ぐさま撮影班を含むスタッフをクラウディアに避難させ、現場責任者としてなのはとフェイトに指示を出し艦内に情報管制を引いた。
リンディは彼の指揮を聞きながらレティや旧知の提督に、本局から闇の書消滅命令が出されないように時間稼ぎを依頼する。

「フェイト、なのは…頼む…」
「フェイト、なのはさん。私達が時間を作っている間にお願い。」
 


「はやてちゃん、リインフォースさん!!」

 なのははフェイトに避難を任せバリアジャケットを纏って1人リインフォースの居るビルに降りた。

「おまえは…どうしておまえ達が居ながら我を目覚めさせた。」
「私達は何もしてません。どうしてあなたがここに居るのか知らないんです。」
「古き時代より伝えられる持ち主の願いを叶う宝石」

 手に取った蒼く輝く宝石を見せる。

「!? ジュエルシード…」

 見知った宝石…まさかこんな力を持っているなんて…

「我を望んだ主が御身を以て呼び覚まされてしまった。主は我の中で深い眠りにある。もう誰にも目覚めさせる事叶わない。」

 はやてがリインフォースを大切に想っているのは知っている。でもそれがこんな事になるなんて

「そんな…」
「お前達に残された道は2つ。闇の書が完全に目覚める前に主や騎士達と共に消滅させるか」
「お前達も共に我の中で永遠の夢を見るか…」

 蛇状になった物体を掴み手に絡ませる。ナハトヴァールを取り込んだのだ。
 レイジングハートを構えるなのはめがけて一気に迫った。

「!!」
「ママっ!!」

 ナハトヴァールの鋒がなのはに届くことはなかった。

「ゆりかごの聖王…」
「ヴィヴィオっ!」

 シグナムやアリシア達と一緒にクラウディアに避難する事になっていたのだが、ゲートに入る直前に空間転移してきたのだ。

「リインフォースさんっ、はやてさんがあなたに会いたがっていたのは知ってます。リインフォースさんも一緒に居たいって事も…でも、だからって!」
「もう遅い。我が主は我を目覚めさせる糧となった…エース達よ、道を選べ…」

そう言うと今度はヴィヴィオめがけて拳を繰り出す。

「!!」
「ヴィヴィオっ」

 聖王の鎧で受けきるが勢いを押さえられずそのままビルのオブジェクトに叩きつけられた。

「…助けなきゃ…はやてさんも、リイン…フォースさんも…RHd、行くよっ」
 しかし…
【………】

 愛機は答えてくれない。それどころか…

「…うそ…どうして? RHd?」

 バリアジャケットも解除されてしまった。

「下ってヴィヴィオ。」

 立ち上がったヴィヴィオの横になのはが降りてくる。

「でも…私もはやてさんを助けたい。」
「はやてちゃんはママ達が絶対に助ける。高町教導官、フェイト執務官の権限で命令します。今すぐゲートからクラウディアに戻りなさい!」
「…ママ…」

 なのはにいつになく強く言われ言葉を失った。

「待たせた。ヴィヴィオを迎えに来た。」

 そこにゲートの魔方陣が現れ中から現れたのは…

「チンク、どうして」
「プレシアに頼まれてここに来た。ヴィヴィオ、何度も空間転移を使いすぎだ。相当魔力も減っているだろう。ここに居ては邪魔になる。」
「…」

 確かに彼女の言うとおりだった。バリアジャケットを使わずに1回、アリシア達を連れて転移もしたし、ここにも…

「チンク、ヴィヴィオをお願い。」
「クロノ提督から伝言を預かっている。『時間を延ばしている間に彼女を頼む。』」
「…わかった…」
「ママっ!」

 険しい顔をしてなのははそのままリインフォースの居る場所へと飛び立った。

「ヴィヴィオ…ここに居ても何も出来ない。1度クラウディアに戻ろう。」

 優しく諭すチンクにヴィヴィオは渋々頷くのだった。

 

 闇の書事件ではやてさんを助けられたのははやてさんが闇の書の中で目覚めていたから…
でも今のはやてさんは多分…眠ってる。

「お前達に残された道は2つ。闇の書が完全に目覚める前に主や騎士達と共に消滅させるか」 

 リインフォースさんがなのはママに言ってた…

「お前達も共に我の中で永遠の夢を見るか…」

 今のリインフォースさんが消えちゃうとヴィータさん達も消えちゃう。
 …チンクが言ってたみたいに私の魔力が無くなった訳じゃない…
きっと、どうすればいいかわかんなくて迷っちゃったから…RHdが止めてくれたんだ。
 ゲートを通りクラウディアに移った後でクラウディアに乗る執務官に直ぐ避難しなかった事を怒られながら考えていた。

「執務官それくらいで…彼女も疲れていますし」
「…そうですね。報告は後で聞きます。部屋を割り当てましたからそこで休んで下さい。」

 いつの間にか話は終わっていたらしい。
 エイミィがフォローしてくれて、そのまま部屋へと案内される。

「エイミィさん、ママ達は?みんなは?…はやてさんは?」
「うん…」
「…少し遠回りしようか」

 そう言って歩き始めた彼女について行く。



「…アリシアちゃんとプレシアさん、チェントちゃんは今部屋で休んで貰ってる。ヴィヴィオの部屋も一緒。なのはちゃん達は…今はやてちゃんを助けようしてる。武装隊も出て3人の周りに結界を張ってるし、これからクラウディアもフィールドを作って他の世界に影響しないようにするつもり。」

 エイミィは小さな会議室の様な部屋に入るとヴィヴィオを椅子に座らせ、自らもテーブルの反対側に座った。

「じゃあ…はやてさんは」
「うん…こっちでも確認した。ジュエルシードと闇の書の反応…」

 ジュエルシードは純粋で強い願いを叶える力がある。まさか…

「思った通りだよ。はやてちゃんがジュエルシードを持ってたんじゃないかな。だから…ヴィヴィオお願い。ヴィヴィオの魔法ではやてちゃんのジュエルシードを封印できない?」

 ジュエルシードの封印処理だけならヴィヴィオでなくとも封印出来る。なのはやフェイトだけでなくさっきヴィヴィオを怒っていた執務官や武装隊も使える。
 彼女が言いたいのはそういう意味じゃない。ヴィヴィオしか使えない魔法―【時空転移】を使ってはやての持つジュエルシードを封印出来ないのかと言っているのだ。
 でも…

「ごめんなさい…出来ません。私があの魔法ではやてさんを助けると助けた軸と助けられない…今の軸が出来ちゃいます。それに私、ある人と約束したんです。本当に…どうしようもない状況にならない限り使えません。」

 この魔法はそう簡単に使っていい魔法じゃないし、多分これが彼女が言っていた理だと思うから。

「…そっか…ごめんね。遅くなっちゃったね。部屋…行こうか…」
「ごめんなさい…」

~コメント~
もしヴィヴィオの時間でMovie2ndA'sが作られたら?
少し映画本編から離れていきます。
エイミィはヴィヴィオが時間移動魔法を使える事を知っています。
ヴィヴィオが時空転移をしてはやてが持つ(?)ジュエルシードを発動前に回収する方法はありますが、そうすると闇の書が蘇らない現在と蘇る現在に分岐してしまいます。
結局何処かの時間軸で闇の書を止めなければならない現在が残ってしまうのでは?という不安をヴィヴィオは持っていて、前作「刻の移り人」の様にいつか複数の時間軸がぶつかるかも知れないと器具しています。

Comments

ima
かーな様
いつも読んで頂きありがとうございます。
構成は…色々考えていますが無理矢理こじつけた感がいつもしています。(苦笑)
2013/02/01 05:52 AM
かーな
毎回構成力などに「ほげ……」と圧倒させられますが、今回はいつも以上にびっくりさせられてます。
いつも以上に「どないなるねん」と更新を楽しみにさせていただいてます。
2013/01/27 09:38 AM

Comment Form

Trackbacks