第15話「2人の関係」

「ヴィヴィオ、良かった。」

 部屋に入ったすぐアリシアが迎えてくれた。

「ごめんね…」
「ううん、何があったのか聞いたから…」

 先に避難した時に状況を聞いたらしい。奥にはチェントと絵を描いて遊ぶプレシアが居た。彼女はヴィヴィオを1目見た後、その視線を娘に戻す。
「どうするの? 並大抵の想いじゃジュエルシードは動かない。それ程八神はやてが彼女を望む想いは強い。」
 ここに来る間、ヴィヴィオもそれを考えていた。
「彼女はどうしてそこまで強い想いを持ってしまったのかしら…記録映像は発端でしかないわよね。じゃあ、原因は何?」

 原因…記録映像を作る前にあった事…時間軸の衝突、砕け得ぬ闇、異世界の海鳴市

「まさか、はやてさん海鳴市の記憶が…」
「戻ってないでしょうね。でも…曖昧だから余計に強く望んでしまう…異世界じゃなく、この時間の彼女に…」
「ママ~♪」

 そう言っていると、チェントが今まで描いていた絵を掲げた。
 3人の女性と猫らしき物…とても上手だとは言えないが、3人と1匹は皆笑っている。

「チェント上手く描けたね」

 アリシアが小さな画伯の頭を撫でると彼女は満面の笑みを見せた。

「曖昧だから会いたいって思っちゃう…か。ヴィヴィオ…」

アリシアの呟きに頷く。そう、これは時空転移が招いた事。

「どうしたいか、ヴィヴィオあなたが決めなさい。あなたにはその力と権利がある。理屈ではなくてヴィヴィオがどうしたいのか教えて頂戴。」
 


 私はどうすればいいの?
 はやてさんがどれだけ闇の書―リインフォースさんに会いたいって思っていたのはジュエルシードを発動した位強い。リインフォースさんもはやてさんやシグナムさん達を闇の書から守る為に消えたのだから…
 異世界で見た彼女達を思い浮かべる。2人とも助けたい。
 でも…

【お前達に残された道は2つ。闇の書が完全に目覚める前に主や騎士達と共に消滅させるか】
【お前達も共に我の中で永遠の夢を見るか…】 

リインフォースさんがママに伝えた言葉。
 時空転移を使ってはやてさんの持ってるジュエルシードを封印すれば…この事件は起きない。
でも、私が行った時から封印出来ない時間軸が生まれちゃう…
 ヴィヴィオ自身どうすればいいか全くわからなくなっていた。



 一方その頃

「はやてちゃんっ、目を覚ましてっ!!」
「はやてっ!」

 なのはとフェイトはリインフォースに対して必死に呼びかけていた。

「無駄だ。我が主にもう声は届かない。」

 数100本のブラッディダガーを2人目がけて放つリインフォース。

「!?」
「下がって、ブラスター1っ!!」

 なのははフェイトの前に出てアクセルシューターで迎撃しながら至近距離のものはシールドで受け止めた。

(このままじゃ…時間が…過ぎちゃう。)
「リインフォースさん、あなただってこんな事望んでないでしょ。はやてちゃんもこんなになったあなたと会いたいって思ってない筈だよ。」
「はやて、シグナム達も待ってる。お願いだから答えてーっ!」

 3人の周りはクラウディアの武装隊が結界を作っている。だが所詮AAランクレベルの魔導師が作った結界だ。闇の書―リインフォースを止める程のものではない。
 それが判っているからなのはとフェイトはリインフォースからの攻撃を避け防ぎながら結界内で動いていた。

(もう…本当に時間が…)



一方で

「全く…やっかい事しか持ってこないんだから。」

 本局でレティは嘆息しながら旧知の提督に連絡を取っていた。端から見れば普段と変わらない様子で連絡している風に見えていたが、内心は背筋が凍り酷く焦っていた。
 この焦りが逆に彼女を冷静沈着にさせていたのだろう。
 リンディから20分前送られてきた【闇の書蘇る。時間を頂戴】とだけ書かれたメッセージと1枚の画像。
 画像を開た瞬間、彼女の眼は大きく開かれた。
 そこに居たのは紛れもなく闇の書の管制人格だったからだ。
 慌てて連絡を取ろうとしたが、リンディやクロノ、エイミィ、はやて、アースラ、クラウディアと連絡がつかない。端末が圏外・故障したというのは論外、連絡がつけられない状況に陥っていると考えるのが自然だ。そう考えれば原因は何か?
 闇の書に関わる何かが起きている。そうすると後の【時間を頂戴】というのは、現場で解決する気でこちらから何らかの命令が入る事を想定している。
 何の命令かと考えればすぐに思い当たる。

【闇の書消滅作戦の遂行】

1文と画像だけで瞬時に友人の頼みを読み解いたレティは即座に動いた。 
 3提督には既に事情を説明し提督自らが制してくれると言ってくれた。だがクロノやリンディ、はやて達を快く思っていない者達も少なくない。
 転生する危険のある第1級指定遺失物が無人世界で見つかったのであれば消滅命令を得るのは容易い。だが、それには相応の装備が必要。
 幸いレティはその部署をまとめている。

「あの子達を消してたまるものですか。」

 鋭い眼差しを更に鋭くし拳を握るのだった。



「ママ、私気になってたんだけど…転生機能があるロストロギアって消えちゃったら直ぐに転生するの?」

 悩むヴィヴィオの横でアリシアがプレシアに聞く。

「? ええ、そうよ。依り代になる人が生まれる前に転生する時もあるし、幼少期、大人になってから入ってくる物もあるわ。」
「じゃあ…闇の書の転生機能もそうなのかな?」

 闇の書という名前に耳を傾けたヴィヴィオはアリシアが考えてる事が判らずプレシアと顔を見合せ首を傾げる。

「何か気になるの?」
「うん、ヴィヴィオ…台本持ってる?」

 そう言って自分の端末を出して台本を見せる。

「台本でクライド提督が亡くなったのは事件の11年前だよね。でも…闇の書事件が起きた時はやてさんは9歳。転生するまで1~2年もかかっちゃうの?」
「「!?」」
「それにね私闇の書が目覚めた時、大人モードのはやてさんがリインフォースさんだって思ってたんだ。でも…撮影で見たリインフォースさんってはやてさんが生まるずっと前の写真だった。」

 言われてみれば…
 ヴィヴィオは思い出す。ユーノと一緒に無限書庫で闇の書の情報を整理している時見たのは老若男女様々だった。はやてがもっと髪を伸ばすと…

「ここで通信繋がるかな…RHd、ユーノさんに繋いで」
「情報管制が引かれているから先にリンディかクロノ提督、エイミィさんに連絡しなさい。」
「RHd、お願い。」
【All Right】

 デバイスを取り出すとRHdは端末を開いた。1分ほど待つと

『ユーノです。ヴィヴィオ、撮影進んでる?』

 モニタにユーノの顔が映った。


~コメント~
 もしヴィヴィオの世界でMovie2ndA'sが作られたら?
 はやてがリインフォースを望んだ理由。曖昧になっているもの程思い返したり強くイメージを作ろうとします。
 復活した闇の書に対してヴィヴィオはどうすればいいのかわからなくなっています。
そしてリンディからのメッセージを受け取ったレティ。
 一方でリインフォースを攻撃出来ずはやてに呼びかけるなのはとフェイト。
 見えない道に光を灯すのも、わずかなメッセージで状況を推測出来るのも、わかっていても動けない辛さを感じるのも。苦難を共にした親友だからなのかも。

鈴風堂のホームページを全体的に改装する為下記の時間帯に
表示不具合が発生しておりました。

表示不具合が起きたと思われる時間帯
 2/1 15:00~16:00
 
尚、改装に伴いSSサイトのアドレスも少し変わります。
http://silentseason.sakura.ne.jp/ss/
(今までのアドレスにss/が付加されます)


Comments

Comment Form

Trackbacks