2話 小さな意志

「キャロっ!」

「スバル、身体を無理に動かさないで。緊急事態発生、重傷者1名。シャーリー本局医療班へ緊急連絡。ヴァイス君ヘリの搬送準備!急いでっ」

「はっ・はいっ」

「「りょっ・了解」」

 スバルはキャロを抱きかかえようと手を身体に触れようとした時、なのははその手を遮り指示を出した。
 真っ青になりながらその場に倒れる様に座り込むフェイトと震えるエリオ。ヘリが近くに着陸し局員が担架を持って来たのを見てなのははキャロを浮かし、担架に乗せヘリに運んでいった。そして、なのは達は管理局医療班へと向かった。

 医療班へ着いたキャロはそのまま緊急措置室に運び込まれていった。

「はい、機動六課 キャロ・ル・ルシエ、3等陸士です。いえ、保護者は・・フェイト・T・ハラオウン・・・本局執務官です」

「・・・」

「今はまだ不明です。六課の方で解析を行っている状態です。」

「・・・」

「上司・・六課所属ではなく武装隊より出向中です・・・・はい」

 なのはが、担当の医務官と話している。その間、他のスバル達はそのやりとりを見つめていた。

「わかりました、それではこちらへ」

 一通り聞き終えたのか医務官が隣の部屋に案内してくれた。どうやら待合室らしい。
 部屋に入る前になのはがシグナムとヴィータに近づいて2人の耳元で囁く

「シグナム副隊長・ヴィータ副隊長・・先に六課に戻っていて、それとシャマルさんにこっちへ来て貰うよう言ってくれるかな?それとはやてちゃんに・・」

「了解した」
「ああ・・」

 シグナムとヴィータは頷くとそのまま来た通路を戻っていった。そしてなのはは青ざめてその場で立ちつくしているフェイトの肩を抱き寄せた

「みんなも入って待とう。キャロは強い子だもん。大丈夫!」

少し微笑みながら全員を促す。


それだけ時間が経ったであろう、誰もが昼なのか夜なのかわからない。ただ部屋の明かりが時を止めた様な感覚を持っていた。

突然部屋の扉がノックされる

【コンコン】

「はい」
「失礼します」
「「シャマル先生、リイン曹長」」

 シャマルとリインフォースが部屋に入る。なのはがシグナム達に連絡したことをはやてが許可したらしい
 なのははシャマルに駆け寄り小声で聞いた。

「六課の方は?」
「シグナムとヴィータちゃん・ザフィーラが一緒に居るから大丈夫。それと、はやてちゃんがもしかすると【ユニゾン】が必要になるかもって・・」
「そこまで・・・ありがと・・はやてちゃん・・」

 シャマルのユニゾン・・・【湖の騎士】の真の力を使う事を意味する。滅多な事ではユニゾンの許可をしないはやてが、許可したと言う事になのはは少し不安を覚えた。
 シャマルが他の一同に
「それとさっきの映像が記録出来てたから、持ってきたの。リイン?」

「はいですの」

 リインフォースは手元の端末を開いて映像を開く。そこにはヘリに向かう間にキャロの手元で発光し何かが爆発した様子を映し出されていた。

「キャロの封印処理は完璧でした。しかし・・」

 映像を戻し発光する直前で映像を止める。そこには一瞬キャロの手元に魔法陣が現れていた。

「封印解除魔法?」
「はい、どうやら本体の外郭に予めセットしておいて封印魔法がかけられてから一定時間で発動する仕組みのようです。」

 リインはスローにして再生する。
 そこには封印が解除されたことに気づいたキャロが瞬時に何重もの結界魔法を張り、その後ロストロギアを抱きしめ自身の身体で被害を押さえようとしたところが映っていた。
 そしてロストロギアを中心に爆発し、映像も爆風の影響でノイズのみを映していた。

「キャロ・・・・」
「そこまでして・・・」

 呆然と見つめるスバルへリインが言葉を続ける

「キャロのこの結界が無ければ瞬時に爆発し、他のみんなも・・・・・」

 全員が黙り込んだ。
 キャロが身を挺して時間を作ったからこそ、自分たち無事だったのだと・・・

 措置室では彼女は今も1人戦っていた。

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