第23話「再びの朝」

 グランツ研究所でデュエルをした翌日、翌々日とヴィヴィオとアリシアの姿は八神堂にあった。
 思った通りヴィヴィオとアリシアがここに居るのを知って八神堂のデュエルスペースには多くの子供達が集まってきた。
 はやては勿論、八神家とチヴィットが全員フォローに回ったがそれ位で収まる筈もなく、

「はやてちゃん、お手伝いに来たよ~♪」
「私達もお手伝いします。」
「すずか!、ユーリ!」
「ありがとな~♪」

 すずかとユーリが彼女達のチヴィットを連れて手伝いに来てくれた。2人は昨日のデュエルの後、こうなるのは予想していたらしい。
 
 そして週が明けた月曜日の朝、ヴィヴィオは丘台にある公園へ来ていた。
 目を閉じ集中する。初歩のトレーニングである瞑想、どこでもできるがヴィヴィオはこの場所が好きだった。それに…

「ヴィヴィオおはよ♪」
「おはよう、アリシア」

 声が聞こえて瞼を開くと目の前にアリシアが居た。

「練習?」
「うん、使えないのはわかってるんだけど落ち着くから。恭也さんと美由希さんは?」
「山頂までランニング、私はヴィヴィオが居たから…と待ってるんだ。練習メニュー増やしてすぐ倒れちゃったら大変だし」

 倒れる? 誰が? 首を傾げていると山頂に向かう坂道をハァハアと息を切らしながら走るなのはが見えた。

(あ~…納得)

 ブレイブデュエルの勝ち抜き戦でシュテル達が再戦に燃えているのはユーリから、すずかからもフェイトとこっちのアリシアがリベンジを狙っていると聞いていた。
 そんな中でなのははと言うと…彼女も違う意味で火がついていた。
 家族と一緒にずっと前から剣術の練習をしていて、ブレイブデュエルもヴィヴィオ達より長く遊んでいるのにデュエルの中で使えると考えもしていなかったのが悔しいらしい。

「恭也さん達も一緒だから大丈夫だけど、そうだ!ヴィヴィオも見て行かない?ちょっと走ったとこに広い場所があってそこで練習してるの。」
「私?邪魔にならないかな…」
「大丈夫だって♪ なのは~あと少しだよ。早く早く」

 手を取って駆けだした。




「おはよう、ヴィヴィオちゃん」
「ヴィヴィオちゃんおはよ~」
「おはようございます、恭也さん、美由希さん」

 アリシアとなのはと一緒に山頂付近まで来た時、恭也と美由希は汗を拭い一息ついていた。

「ハアハァッ…お、お兄ちゃん…ちょっと休ませて~」

 息も絶え絶えに言うとなのははその場に座り込んだ。

「全く…それはそうと朝早くからどうしたんだい?」
「えっと、あの…その…練習を見せて貰っていいですか?」
「いいけどあんまり面白くないよ」

 美由希はそう言いながら休憩を終えたのか短い木刀を持って私達と少し離れて構えた。直後恭也と凄いスピードでぶつかり甲高い音が立て続けに鳴り響く。

「凄い…」  

 ヴィヴィオは何度か恭也達の剣を見ている。その時も凄いと思ったけれども伯仲しているとここまでとは…
 10分後、2人は構えを解いて息をついた。

「面白くなかったでしょ?」
「ううん、凄かったです。」
「そうだ、ヴィヴィオちゃんもしてみない? 恭ちゃん、いいよね?」
「へ?」
「ああ、見てみたいな。」
「アリシアちゃんがよく話してくれるんだよ。『ヴィヴィオちゃんは強い』って。木刀だと怪我しちゃうからいつもは私か恭ちゃんとこれでね。」

 枝に掛けられていたリュックから細長い棒を取り出して見せる。先が柔らかくて力を入れると曲がる。練習用の模擬刀らしい。

「アリシア~っ!」

 振り返ると発端の彼女は手を合わせ謝ていた。それは兎も角、藪蛇というより彼女の事だからどれだけ話を盛ったのか…。

「もうっ…」
「危ないと思ったら止めるから。」

 美由希から模擬刀を1本受け取って構える。
 美由希も同じ様に1本取り出すとヴィヴィオの前で構えた。

「始めっ!」

 恭也のかけ声で

「やぁああああっ!」
「はぁああああっ!!」

 2人は同時に動いた。



「へぇ~初めてなのにやるじゃない♪」

 アリシアはヴィヴィオと美由希の練習を見ていて感嘆の声を洩らす。美由希への攻撃は彼女に全て避けられてるし、彼女からの攻撃は何度も当たっている。
 ヴィヴィオのデバイスはユニゾン型だから形となるデバイスは持っていない。だから剣どころか棒や杖も使わないから慣れない武器を手にしていれば一方的にやられているのは当たり前。
 痣が出来ない内に止めなきゃと思い前に出ようとした時、恭也に手で制された。

「恭也さん?」

 恭也の方を振り向くと彼は鋭い眼差しで2人を見ている。話しかけられるような雰囲気はない。

「………」

 仕方なく再び2人に視線を戻した。


 そうこうしている間にヴィヴィオのポケットから【PiPiPiPi…】と電子音が鳴る。

「待って!」

 そう言うと携帯を取り出す。はやてからだ。

「もしもし、ヴィヴィオです。」
『ヴィヴィオちゃんどこにおるん? そろそろ朝ご飯やから帰って来てな~』
「えっ、わ!!もうこんな時間。ごめんさいすぐ帰ります。」

 電話を切って 

「恭也さん、美由希さん、練習見せて貰ってありがとうございました。アリシアとなのはも頑張ってね」

 アリシアに模擬刀を渡して駆けだす。

(散歩すると言って出てきたのにここに来ちゃったから、急がなきゃ!)

 更にスピードを上げ下り坂を一気に駆け下りるのだった。



「悪いことしちゃったかな…」

 アリシアはヴィヴィオの背を見送りながら呟く。用事があるのを聞かず連れてきていたから、怒られなきゃいいけど…
 練習を再開しようと思い振り返ると美由希が恭也に歩み寄っていた。

「美由希…」
「うん…、アリシアちゃん、ヴィヴィオちゃんも何かの武道を習ってない? それか家族が武道の経験者とか…」

 家族が武道の経験者ではないけれどヴィヴィオの母。高町なのはの家族は経験者というより目の前に居る。どんな答えを求められているのかわからずヴィヴィオの事だけ答える。

「習ってないと思いますけど…どうしてです?」
「う~ん…どう言えばいいのかな…恭ちゃん」

 聞き返すと美由希は言い辛いのか恭也の方を向く。しかし…

「……いや…いい。俺達も帰ろう。」

 恭也はそう言うだけで気に立てかけていた木刀を手に取った。



「ヴィヴィオちゃん、相談があるんやけどな…」
「はい?」

 少し遅れた朝食ではやてが話かけてきた。

「午後…夕方からでええからお店手伝ってくれへん?」

 お店、八神堂の手伝いはご飯を食べたらはやてと一緒に行って書庫整理を始める気でいた。

「お店?」
「ん? ああ、本やのうてブレイブデュエルな。いつもヴィータやみんなも手伝ってくれてるんやけど、土日の事もあるやろ♪ 初めての子に教えたり、挑戦を受けてデュエルを盛り上げてくれたらいいよ、ショッププレイヤーみたいな感じやな。」
「はい♪ 私も初めたばっかりだから教えられちゃうかもだけど」

 2つ返事で答える。
 ブレイブデュエルのメインショップを全て訪れて判った事がある。
 ホビーショップT&H、ホビーショップなだけに子供や親子連れの客が多いからエイミィを含め店員も多数居る。
 グランツ研究所、ブレイブデュエルの開発元兼ショップも兼ねている為、多数の機械を含め操作する技術スタッフが多数居る。
 古書店八神堂、八神はやてが店主の珍しい古書が沢山あるお店。ブレイブデュエルを始める迄は年配の人が多く、子供の姿は滅多にみかけない。飛び級とは言え社会人1年生のはやてが人を雇う余裕がある訳もなく、家族で切り盛りしていた。
 ブレイブデュエルもどちらかと言えばグランツ研究所とT&Hが盛り上げて、八神堂はそれに乗っかっている感が強い。そんな場所に土日の様な子供が沢山押しかけて来たら…。
 きっかけを作ったヴィヴィオとしても断る理由はなかった。

「ありがとな。」

 その日からヴィヴィオは夕方になると八神堂の臨時ショッププレイヤーとしてブレイブデュエルに参加し始めた。



 同じ頃アリシアは汗を流して翠屋で桃子の焼いたシューをショーケースに運んでいた。
 その時電話が鳴って近くに居た士郎が取る。

「はい翠屋です。…ええ…はい、少し待って下さい。アリシアちゃん、電話~。グランツさんって男の人から」

 男の人? グランツ? ああっ!
 電話先の相手がグランツ・フローリアンだと判る。

「はい、お電話代わりました。」
『おはよう、朝早くからすまないね。ブレイブデュエルについてアリシア君に少し相談に乗って貰いたい話があるんだけれど、今日はこっちに来られるかい?』

 何か聞きたいらしい。しかしアリシアは躊躇った。

「ごめんなさい、3日間お手伝いお休みしてるので…」
『あ、そうか! 昨日一昨日は八神堂だったね。無理を言ってしまった。じゃあ僕がそっちに行こう。話が出来そうな時間はいつ頃だろう?』
「えっと…お昼過ぎから夕方迄の間でしたら」
『わかった、その頃に行くよ。そうだ、研究所のみんなにも食べて貰いたいから30個程ユーリがいつも恃んでいる物を置いておいて貰えるかい。忙しい所悪かったね。じゃあ午後に』

 そう言うと電話は切れてしまった。
 受話器を下ろす。

「グランツさんは何だって?」
「何か私に相談があるそうです。午後に来るからいつも頼んでるのを30個程置いておいて欲しいって」
「30個、そりゃ大変だ。桃子~」

 士郎はそう言うと厨房へと入っていった。

「私に相談って…何だろう?」

 博士自らブレイブデュエルで相談という話にアリシアは首を傾げるのだった。

~コメント~
 もし高町ヴィヴィオがなのはイノセントの世界にやってきたら?
やっと新章突入です。第3章はタイトル通りヴィヴィオとアリシアがイノセントの世界にやって来た理由に迫っていきます。

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