第24話「Prelude of the INNOCENTS」

「いらっしゃいませ~、あっ! こんにちは」

 お昼の賑わいも落ち着き、アリシアが桃子達と少し遅めのご飯を食べているとドアベルが鳴った。
 お客だと思って立ち上がる。でもそこに居たのは

「こんにちは」
「おっじゃましま~す♪」

 ペコリと会釈をしてシュテルと彼女の後にレヴィが元気良く入ってくる。

「こんにちは、まだ早かったかな?」
 白衣を着たグランツが顔を見せた。

「だからまだ早いと…」
「ええ~早く帰ってみんなで食べようって言ったのって…」

 グランツの横で小声で言い合う2人を見て本当に仲良しだと思いながら

「いいですよ。私達もご飯食べたところです。こっちへどうぞ♪」  
3人をテーブル席に案内した。
 ジュースとコーヒーを持っていった後グランツの対面に座ろうとした時、桃子が手招きしているのが見えた。何だろうと思って駆け寄る。

「ねぇねぇアリシアちゃん、あの子誰? なのはにすっごく似てるんだけど、もう1人もアリシアちゃんやフェイトちゃんそっくり!!」

 彼女はシュテルやレヴィと会うのは初めてらしい。

(こっちじゃ桃子さんシュテル達の事知らないんだ。似てて当たり前なんだけど…)

 そう思えばなのはとシュテル、私とフェイトとレヴィ…なかなかに複雑な関係だ。どこまで話せばいいかと考えるが、こっちの話だけで良いのだと気付いて

「シュテルとレヴィです。ブレイブデュエルを作ってるグランツ研究所でお手伝いしてるそうですよ。後で紹介しますね」
「わ~ありがと、焼きたてのシュークリーム持っていくわね♪」
「はい♪」



「お待たせしました。」

 そう言って席に座る。

「いや、時間を取って貰ってるんだから礼を言うのは僕たちだ。礼と言えば先日は助かったよ、ありがとう。」

 笑顔で言うグランツ。アリシアも色んな所で多くの大人を見てきている、対等に見てくれる人も居ればプレシアの娘だと下手に出る人も居たし高圧的な人も居た。でも彼の様な大人は初めてだった。
 初対面の私でもそのまま受け入れ気づけば輪の中に入っている。シュテル達が気を許しているのも彼の人望なのだろう。

「今日の相談っていうのは他でもない、ブレイブデュエルの新しいアイデアなんだ。」
「ブレイブデュエルがどんなゲームなのかは前に話した通りだよ。そこへアリシア君は新しい可能性を見つけてくれた。だからアリシア君だったらどんなデュエルをしたいかという意見を聞きたくてね。何でもいいから思いついた事を聞かせてくれないかな」

 満面の笑みで言うグランツ、しかし…

「新しい可能性で…思いついた事…ですか?」

 当のアリシアは何を聞きたいのかさっぱりわからない。?マークが頭上にたくさん浮かんでいる。そんな時、シュテルが助け船を出してくれた。

「博士、それではアリシアが混乱してしまいます。ブレイブデュエルでは主に魔法を使った対戦の他に障害物競走やドッジボール等のスポーツを取り入れてきました。どのデュエルでも皆スキルカードからの魔法に頼っていて、アリシアの様に現実の剣技を使う為に補助として魔法を使うデュエリストは居ないのです。」

 アリシアの話に引っかかりを覚える。

「でも私が使ってたのもスキルカードで出した剣の魔法だよ?」
「フェイトとのデュエルでもし空を飛べ相応効果を持つ剣があれば同じ結果になったでしょう? しかしフェイトやレヴィ、私を含め全てのデュエリストはスキルカードが起こす魔法効果に頼っています。」
「アリシアに相談したいのは魔法効果ではなく剣の様な付加アイテムです。あなたなら他にどんな装具や魔法が欲しいですか?」
(そっか…こっちじゃゲームの中でしか魔法が使えないから…)

 ブレイブデュエルの中でしか魔法は使えないから無意識の内に魔法を使い魔法に頼ってしまう。
 アリシアはコアが無ければ元世界でも殆ど魔法が使えないからその気持ちはわかるけど逆にコアに頼らないと使えないから出力の大きな魔法は使わず、最小限で最大の効果を発揮する魔法を選ぶようにしていた。
 2刀流もプレシアが入れてくれたアシスト機能を参考にしつつ、元世界に戻ってもアシストなしで動けたらいいなと思い恭也や美由希の練習に参加していた。
 そう言う意味で私はキラープレイヤーなのかも知れない。
 じゃあどんなアイテムや魔法があれば楽しめるだろう?

「う~ん…ありきたりですけど防御が凄く高くなる…とか、ライフポイントが回復する~なんてスキルカードはありますよね? あと何回かの攻撃は絶対当たらないとか、逆に当たるとか…」
「はい。回復系も攻撃無効化もあります。どちらかと言えばゲームでありそうな物より現実であったらいいなと思う様な物があればと」

 シュテルの突っ込みに唸る。

(う~ん…現実って言っても私の現実がゲームの中みたいなものだよね…リインさんやアギトさんなら面白そうな物も知ってると思うんだけど…あっ!!)
「……じゃあ例えばスケーター…こっちにもあります? 靴の下に車輪が付いてるの」
「はい、ローラースケート、インラインローラーと呼ばれています。」
「飛ぶんじゃなくて空に道を作ってそれで走るのって楽しいと思いません? 他にボードとか…サーフボードっぽい物で盾とかおっきな銃にもなったり…」
「いいね♪ そういうのが聞きたかったんだ。」

グランツはメモを取りながら頷いた。
 そう、ここでアリシアが思いついた…思い出したのは海鳴には居ないであろうスバル達のデバイス。
 スバルのリボルバーナックルやマッハキャリバー、ティアナのクロスミラージュ、チンクやセイン、ディエチ、ウェンディのISやデバイスは魔法が上手く使えなくても色んな使い方ができる。
 一通り話尽くした後、

「あと…ブレイブデュエルで出来るか判らないんですけど、大人に変身出来たら楽しいって思うんですがどうでしょう?」

 アリシアが言うとグランツの表情がさっきまで笑顔だったのに少し曇り

「ああ、うん…そうだね。」

 何か考える様に頷くだけに止まった。




 その頃ヴィヴィオはというと…

「はやてさん、整理出来た本持って来ました。」

本が入ったコンテナを台車に積んで持って来た。

「こんなにいっぱい! ありがとな。お茶入れるから休憩してて」
「はい♪」

 彼女がカウンターから後ろにあるポットに移動するのを見て代わりに立つ。
 店内には5~6人の大人と何かを探している学生が2人…あとカウンター横にあるテーブルで男の子が2人、彼らはブレイブデュエルの準備が出来るのを待っているらしい…

「ヴィヴィオちゃん、はい」

 カップを手渡され受け取る。

「どうして古書店でブレイブデュエルを始めようと思ったんですか?」

 ヴィヴィオが聞くとはやては苦笑しつつ

「古本屋がゲームショップするのはやっぱ変に思う? まぁ、でもT&Hや研究所と客層重ならんやろ。社会人1年生にとってはこれでも大きい位や…」

 と話しているとこっちに向かって歩いてくる少女に気付いた。おっとりとしてて読書が似合いそうな雰囲気だけれど

(あれ? どこかで会ったような気がするんだけど…誰?)

 誰だっけ? と見ていると目の前の少女が会釈され慌ててペコリと頭を下げる。

「近くに来たから頼んでいた本届いたかなって…」
「あ~はいはい、ちょお待ってな。」

 はやてはそう言いながらカウンター横にある本棚に向かう。本には紙が挟まっていてそこに名前が書かれている。中に『永遠結晶の作り方Ⅷ』というタイトルと挟まった紙にユーリの名前が書かれているのが目に留まる。
 一体何冊までシリーズ化されているのだろう…
 そう思いながらカップに口をつけた。

「えっと確か昨日入ったから…ここにある筈、名前教えてくれる?」
「中島ディエチです。」
「!? ブッ!! ケホケホっ…」

 名前を聞いて思いっきり噎せた。お茶を吹き出さなくて良かった

「熱かった? 大丈夫?」
「だ、大丈夫です。」

 答えながらも中島ディエチと言った少女を見る。何処かで会ったどころじゃない

(どうしてここにディエチが居るの!?)

 彼女は私を不思議そうに見ていたが

「あ、あった。これやね」

 そう言うとはやては本を確認して貰った後紙袋に入れ精算を済ませる。

「ありがと」

 ディエチはそう言うと大切そうに紙袋を抱えて店を出て行った。


~コメント~
 もしヴィヴィオがなのはイノセントの世界にやってきたら?
 ヴィヴィオが行った時期についてですがINNOCENTが終わり、INNOCENTSが始まる迄です。
 こんな風に違う世界から新しいデバイスが継がれていくのも面白いですよね

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