第28話「アリシアが消えた日」
- リリカルなのは AdditionalStory > 第3章 転移の理由
- by ima
- 2014.10.25 Saturday 19:52
その凶報が届いたのはヴィヴィオがはやてやシグナム達と八神堂を閉め家に帰ろうとしている時だった。
【PiPiPi…】
店から出てきたヴィヴィオに続いてはやてが出てきた時、携帯が鳴る。
「もしもし~八神です。え? はい、今一緒に居ますよ。」
彼女がヴィヴィオの方を見ている。相手はグランツかシュテル・ユーリだろうか?
「ヴィヴィオちゃん、T&Hのリンディさんから代わってって」
「私?」
何だろう? 先に使っていたブレイブホルダーは返したし、ブレイブデュエルを手伝っていた時も何もなかった。
【PiPiPi…】
店から出てきたヴィヴィオに続いてはやてが出てきた時、携帯が鳴る。
「もしもし~八神です。え? はい、今一緒に居ますよ。」
彼女がヴィヴィオの方を見ている。相手はグランツかシュテル・ユーリだろうか?
「ヴィヴィオちゃん、T&Hのリンディさんから代わってって」
「私?」
何だろう? 先に使っていたブレイブホルダーは返したし、ブレイブデュエルを手伝っていた時も何もなかった。
「はいヴィヴィオです。」
『夜遅くにごめんなさいね。ヴィヴィオさん…あのね…落ち着いて聞いて欲しいのだけど…』
「はい、何です?」
そう直後リンディの口から発された言葉をヴィヴィオはすぐに理解できなかった。
【アリシアがブレイブデュエルから戻って来ていない】と…
「え? アリシアが…って夕方にフェイトとデュエルしてましたよね?」
アリシアはフェイトと一緒に滅茶苦茶熱いデュエルを見せていた。…あの後?
『ええ…何か知っているなら教えて頂戴、電話じゃなくて…お願い』
「…………」
『ヴィヴィオさん?』
「…………」
『ヴィヴィオさんっ!!』
「…はい…」
『大声を出してごめんなさい、はやてさんに代わって貰えるかしら』
「はい…はやてさん」
「ヴィヴィオちゃん?」
何も考えられず言われるがままはやてに携帯を返す。
アリシアが…戻ってこない? どうして? 何で…アリシア!!
「私…行かなくちゃ…」
「えっ? 何? ヴィヴィオちゃん!?」
ただ行かなくちゃという気持ちだけが先走り、はやてが自分を呼ぶ声だけが背に響くのだった。
「アリシアっ!!」
「待っていた、こっちへ」
T&Hの前まで来るとクロノとリニスが待っていてくれた。
そのままブレイブデュエルの部屋に案内される。その間にもアリシアについて聞いたけれどクロノ達も何が原因かわからないらしい。
(何があったの?)
「ヴィヴィオさん、ごめんなさいね。」
「ヴィヴィオ…」
「リンディさん、アリシア…」
オペレーションルームに入るとリンディとアリシアが出迎える。彼女の横ではプレシアのエイミィが誰かと話している。3人から少し離れた所にあるベンチには
「わた…が…わた…のせいで…」
涙で顔をクシャクシャにしてフェイトが嗚咽をもらしていた。彼女を支える様になのはとすずか、アリサも居る。
「リンディさん、アリシアは?」
「……あの中よ…」
角のモニタに映っていたのはシミュレーターの中で目を瞑ったまま動かないアリシアの姿。
その姿は1年前に見たPT事件の時の庭園で見た彼女の亡骸を連想させた。
「アリシア…」
「フェイトとのデュエルが終わった後ずっとブレイブデュエルから戻って来てないの。緊急用のデュエル停止命令とか色々試したのだけど…全部駄目で…ヴィヴィオなら何か知っているんじゃないかと思って来て貰ったんだ。アリシアと一緒に異世界から来たんでしょ?」
息を呑む。
この話を知っているのは…なのはの方を向くと彼女は静かに頷いた。
「でも大丈夫よ、グランツ研究所でも総動員で原因を調べているわ。」
笑顔を作って答えるリンディ、でもヴィヴィオにはそれが数時間経っても原因が掴めていないと認識するには十分だった。
「………はい、私とアリシアは異世界…ゲームの中じゃなくて本当に魔法が使える世界から来ました。でも…原因はわかんないです…無理矢理デュエルを止めてあの中から…シミュレーターをこじ開けて連れ出せないんですか?」
『それは最後の手段だ。デュエルの中で命令を受け付けない、無理矢理連れ出した場合彼女に何があるかわからない…』
グランツの声がスピーカーから突然聞こえた。リンディにマイクの近くへ促され近寄る。
「グランツ博士、じゃあアリシアが何処にいるか見つけて無理矢理戻しちゃえないんですか?」
『そうだ、僕たちは今アリシア君がブレイブデュエルの何処にいるのか探しているんだ。だが彼女はフェイト君とのデュエルを終えた後消えていてね、何処にいるのかもわからない。だからチヴィットも含め全員でデュエルスペース全てを探している』
一方その頃…
「もうっ折角みつけたのに…五月蠅いな~っ!!」
繰り返し表示されるウィンドウを消して先に進む。
ここが何処かはわからないけど、魔力が弱い私でも感じられる位になってきた。
向かう先に何かがある。
光が見えた先に飛び込むとそこは大きなドーム状の部屋だった。その中央には…
「あれが…もしかして…」
「待ってたよ」
いきなり声が聞こえ慌てて振り返り構える。だが目の前に居たのは…呆然と立ち尽くす。
「ウソ…どうして…」
その問いかけに彼女は笑みを浮かべるだけだった。
「それじゃ…見つかるまで何も出来ないんですかっ!!」
叫びに近いヴィヴィオの声が部屋内に響き渡る。
「……」
「………」
『………そうだ…すまない』
リンディとプレシアが無言で答える中、グランツだけが言葉にする。
「そんな…どうして…」
愕然と立ち尽くすヴィヴィオ。
『遅うなってすみません。八神堂の八神はやてです。八神堂のブレイブデュエルも今動かしました。チヴィットも全員使えます。こちらも調べ始めます。』
「はやてさん…」
その時スピーカーからはやての声が聞こえた。
『それと私の家族も一緒に調べてくれるそうなんで、今から言う場所にブレイブデュエルを繋いで下さい。場所は…』
『わかった。』
何か呪文めいた言葉をやりとりすると
『接続確認しましたです。私達も微力ながらお手伝いします。』
モニタ上に現れたのは
「リインさん・アギト!?」
驚きの声をあげる。ジャケット姿になったリインとアギトだった。
すぐに探索を開始したリインとアギト、チヴィット達はもの凄い速度で八神堂のデュエルスペースを全て調べ上げ、続いてT&Hのデュエルスペースを探し始めた。
「すごい…私達の数十倍の速度で調べてる…」
それはエイミィが驚きを洩らす程で
『うちはスタッフが不足してるんで、リインとアギトがチヴィットに手を加えてるんです』
そうこうしている内にはやてのチヴィット-子狸丸が看板をもってきて見せた。
【みつけました】
緊迫していた部屋の空気が幾分和らぐ。
『見つけました。場所は海鳴市ステージ6の上空です。今から4時間程前にここから別のスペースに移動しています。移動先は…?、デュエルスペースではないみたいです。』
「デュエルスペースじゃない?」
『リイン、デュエルスペースとは違うってどういう事や?』
『アリシアさんがここから何処か別の場所に移動したみたいです。その時別の場所と繋がったんじゃないでしょうか。アギトと子狸丸がそこから移動しようと試みてますけど無理みたいです。』
はやてとリインの会話を聞いてプレシア達のキーボードを叩く音が激しくなる。
その一方でリイン達の登場とアリシアの痕跡が見つかった事で落ち着きを取り戻したヴィヴィオは考える。
「アリシアが移動した? 何処に行こうとしたの? ブレイブデュエルで何かあった? 何か…見つけた?」
「見つけた?」
「あっごめん、ちょっと考え事してた。アリシアはどうしてそこから移動したのかなって」
アリシアに聞かれて答える。
「フェイト、アリシアと別れる時何か言ってたって言わなかった?」
「………グスッ…うん…」
さっきまで啜り泣いていたけれど少し落ち着いたらしい。
「…魔力が…って」
「!! フェイト、アリシアは魔力って言ったの?」
聞き返すヴィヴィオの勢いに少し驚きながらも彼女は頷く。
(アリシアは魔力の痕跡を見つけたんだ。だから戻らずにそれを探しに行ったんだ…)
だったら…アリシアが危ない。
ゲームの中なら危険は少ないけど、実際の魔力が関わっているならアリシアは無力に等しい。
「リンディさん、私をその場所に送ってください。」
「駄目よ。」
「危険すぎるわ、あなたまで戻って来れない可能性だってあるのよ。」
「でも、このままじゃアリシアが何処にいるかわかりません。アリシアが『魔法が』って言ってたなら何か魔法と関係した所に行ったと思うんです。そこに行けるのは私しか居ません。」
「でも…」
『わかった。但し僕達が危険だと判断した時はちゃんと指示に従ってもらうよ。』
「はい」
「どうしてここにあなたが居るの?」
再び双剣を構えたまま彼女に質す。
「……」
「……まさか、ここに私達を飛ばしたのもあなたのせい?」
「…うん…私が望んだ…私達が望んだ世界がここだっただけ」
「私達? ある訳ない。あなた1人が望んだ世界でしょっ!」
「違うよ。私達が望んだ世界だから…見て来たんでしょう? 同じ様に見えて違う世界。仮想の中でしか魔法の使えない世界を。ここなら私は私達でいなくてもいい。」
「見て来た。でもここは私達が居る世界でも行く世界でもないんだよ。どうしてあなたはここを望んだの?」
「私が私達でいなくて良い世界、私達でいれば私じゃなくなる。」
意味の判った様で判らない問答を繰り返す。
その中で相反した意味を話している事に気づく。
「……私が私達でないほうがいい? 私達でいれば私じゃなくなる?」
自分で呟く、彼女の存在と今までの彼女の行動を思い出し照らし合わせた時その意味を理解した。
構えを解いてため息をつく。
「全くもう…最初からそうならそう言ってよ。それはあなたの思い違い。でも…私がそれを言ってもきっとあなたは信じてくれない。だから…」
「何もみんなで来なくても…」
同じ頃、ブレイブデュエルのT&H海鳴ステージ6にセイクリッドのジャケットを纏ったヴィヴィオは立っていた。
「ううん、こういう時はみんなで来た方が心強いよ。」
「アリシアが居なくなったの私のせいだから」
「も~っ、フェイトは考えすぎ。」
「ここまで来たら一蓮托生よっ♪ 早く見つけて一言言ってやらないと気が済まないわ。」
「一言で済めばいいんやけどな…」
「1時間くらいは…かかるかも。」
なのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずかのT&Hエレメンツのメンバーと八神堂から飛び入り参加したはやてが揃っていた。
「はやてちゃん」
空からリインが降りてくる。
「リイン忙しいのにありがとな。この子は末っ子のリインフォースです。もう1人の末っ子アギトと外国に居るんですが手伝いを頼みました。」
「初めまして、リインフォースツヴァイです。リインと呼んで下さい。」
ペコリとお辞儀をした後、ヴィヴィオの顔をジーッとみる。
「ヴィヴィオさんですよね? どうして私達の事を知ってたんです? さっき挨拶でいきなり名前を呼ばれちゃったからびっくりしてたんですよ。」
「あ…えっと…まぁ色々あって…それよりリインさんアリシアが消えた場所に急いで案内してください。アリシアに危険が迫ってるかも知れないんです。」
「ヴィヴィオちゃんの事は後で話すから先に案内して」
「はいです♪」
そう言うとフワリと浮いてそのまま上空へと飛んでいった。
「待ってて、アリシア…」
彼女の後を追いかけてヴィヴィオも飛ぶ、それに続いてなのは達も付いて行った。
「こっちこっち」
リインの向かった先にはアギトと子狸丸が待っていた。
「アギトも久しぶり、元気やった?」
「うん、それよりもここなんだけど…ここに何処かのステージへの扉が繋がった形跡があるんだけどどんだけ頑張ってもアクセスできないんだ。」
指さす方を見てヴィヴィオが移動する。
「アギト…さん、この辺り?」
「もうちょっと右、そうその辺。」
言われた位置に移動し目を瞑り集中する。魔法の因子が漂っているならリンカーコアが反応する筈…
微弱だけれどリンカーコアから魔力が出ているのを感じる。因子の来る方向を確かめる。
「見つけた、そっち!!」
「ちょっ!?」
アギトの居る方目がけインパクトキヤノンを放つ。慌てるアギト、しかしインパクトキヤノンは彼女に届かず途中で消えてしまった。
「いやはや…本当にすぐ見つけてしまうとは、凄いね。」
ブレイブデュエルの開発者で誰よりもシステムの事は知っていると思っていたけれど、八神堂のチヴィットの検索能力と精度の高さ、海外で家族がブレイブデュエルを使える様にしているとは思ってもみなかった。
そしてT&Hで彼女が消えた場所は知っていたがそこには情報が残されていて、リインとアギト、子狸丸はそれを見つけてヴィヴィオは更に彼女の居るであろう場所を見つけた。
飛び込んだヴィヴィオ達は海鳴ステージから姿を消した。これで彼女が居る場所も絞り込める。
「ですが博士、これを」
しかしスタッフから見せられた移動経路を見て
「…うん…シュテル、アミタ達を呼んで来てくれるかい?」
近くでモニタに向かっていた彼女を呼んだ。
~コメント~
もしヴィヴィオがなのはイノセントの世界にやってきたら?
ここからはオリジナル展開を含んで進んでいきます。
『夜遅くにごめんなさいね。ヴィヴィオさん…あのね…落ち着いて聞いて欲しいのだけど…』
「はい、何です?」
そう直後リンディの口から発された言葉をヴィヴィオはすぐに理解できなかった。
【アリシアがブレイブデュエルから戻って来ていない】と…
「え? アリシアが…って夕方にフェイトとデュエルしてましたよね?」
アリシアはフェイトと一緒に滅茶苦茶熱いデュエルを見せていた。…あの後?
『ええ…何か知っているなら教えて頂戴、電話じゃなくて…お願い』
「…………」
『ヴィヴィオさん?』
「…………」
『ヴィヴィオさんっ!!』
「…はい…」
『大声を出してごめんなさい、はやてさんに代わって貰えるかしら』
「はい…はやてさん」
「ヴィヴィオちゃん?」
何も考えられず言われるがままはやてに携帯を返す。
アリシアが…戻ってこない? どうして? 何で…アリシア!!
「私…行かなくちゃ…」
「えっ? 何? ヴィヴィオちゃん!?」
ただ行かなくちゃという気持ちだけが先走り、はやてが自分を呼ぶ声だけが背に響くのだった。
「アリシアっ!!」
「待っていた、こっちへ」
T&Hの前まで来るとクロノとリニスが待っていてくれた。
そのままブレイブデュエルの部屋に案内される。その間にもアリシアについて聞いたけれどクロノ達も何が原因かわからないらしい。
(何があったの?)
「ヴィヴィオさん、ごめんなさいね。」
「ヴィヴィオ…」
「リンディさん、アリシア…」
オペレーションルームに入るとリンディとアリシアが出迎える。彼女の横ではプレシアのエイミィが誰かと話している。3人から少し離れた所にあるベンチには
「わた…が…わた…のせいで…」
涙で顔をクシャクシャにしてフェイトが嗚咽をもらしていた。彼女を支える様になのはとすずか、アリサも居る。
「リンディさん、アリシアは?」
「……あの中よ…」
角のモニタに映っていたのはシミュレーターの中で目を瞑ったまま動かないアリシアの姿。
その姿は1年前に見たPT事件の時の庭園で見た彼女の亡骸を連想させた。
「アリシア…」
「フェイトとのデュエルが終わった後ずっとブレイブデュエルから戻って来てないの。緊急用のデュエル停止命令とか色々試したのだけど…全部駄目で…ヴィヴィオなら何か知っているんじゃないかと思って来て貰ったんだ。アリシアと一緒に異世界から来たんでしょ?」
息を呑む。
この話を知っているのは…なのはの方を向くと彼女は静かに頷いた。
「でも大丈夫よ、グランツ研究所でも総動員で原因を調べているわ。」
笑顔を作って答えるリンディ、でもヴィヴィオにはそれが数時間経っても原因が掴めていないと認識するには十分だった。
「………はい、私とアリシアは異世界…ゲームの中じゃなくて本当に魔法が使える世界から来ました。でも…原因はわかんないです…無理矢理デュエルを止めてあの中から…シミュレーターをこじ開けて連れ出せないんですか?」
『それは最後の手段だ。デュエルの中で命令を受け付けない、無理矢理連れ出した場合彼女に何があるかわからない…』
グランツの声がスピーカーから突然聞こえた。リンディにマイクの近くへ促され近寄る。
「グランツ博士、じゃあアリシアが何処にいるか見つけて無理矢理戻しちゃえないんですか?」
『そうだ、僕たちは今アリシア君がブレイブデュエルの何処にいるのか探しているんだ。だが彼女はフェイト君とのデュエルを終えた後消えていてね、何処にいるのかもわからない。だからチヴィットも含め全員でデュエルスペース全てを探している』
一方その頃…
「もうっ折角みつけたのに…五月蠅いな~っ!!」
繰り返し表示されるウィンドウを消して先に進む。
ここが何処かはわからないけど、魔力が弱い私でも感じられる位になってきた。
向かう先に何かがある。
光が見えた先に飛び込むとそこは大きなドーム状の部屋だった。その中央には…
「あれが…もしかして…」
「待ってたよ」
いきなり声が聞こえ慌てて振り返り構える。だが目の前に居たのは…呆然と立ち尽くす。
「ウソ…どうして…」
その問いかけに彼女は笑みを浮かべるだけだった。
「それじゃ…見つかるまで何も出来ないんですかっ!!」
叫びに近いヴィヴィオの声が部屋内に響き渡る。
「……」
「………」
『………そうだ…すまない』
リンディとプレシアが無言で答える中、グランツだけが言葉にする。
「そんな…どうして…」
愕然と立ち尽くすヴィヴィオ。
『遅うなってすみません。八神堂の八神はやてです。八神堂のブレイブデュエルも今動かしました。チヴィットも全員使えます。こちらも調べ始めます。』
「はやてさん…」
その時スピーカーからはやての声が聞こえた。
『それと私の家族も一緒に調べてくれるそうなんで、今から言う場所にブレイブデュエルを繋いで下さい。場所は…』
『わかった。』
何か呪文めいた言葉をやりとりすると
『接続確認しましたです。私達も微力ながらお手伝いします。』
モニタ上に現れたのは
「リインさん・アギト!?」
驚きの声をあげる。ジャケット姿になったリインとアギトだった。
すぐに探索を開始したリインとアギト、チヴィット達はもの凄い速度で八神堂のデュエルスペースを全て調べ上げ、続いてT&Hのデュエルスペースを探し始めた。
「すごい…私達の数十倍の速度で調べてる…」
それはエイミィが驚きを洩らす程で
『うちはスタッフが不足してるんで、リインとアギトがチヴィットに手を加えてるんです』
そうこうしている内にはやてのチヴィット-子狸丸が看板をもってきて見せた。
【みつけました】
緊迫していた部屋の空気が幾分和らぐ。
『見つけました。場所は海鳴市ステージ6の上空です。今から4時間程前にここから別のスペースに移動しています。移動先は…?、デュエルスペースではないみたいです。』
「デュエルスペースじゃない?」
『リイン、デュエルスペースとは違うってどういう事や?』
『アリシアさんがここから何処か別の場所に移動したみたいです。その時別の場所と繋がったんじゃないでしょうか。アギトと子狸丸がそこから移動しようと試みてますけど無理みたいです。』
はやてとリインの会話を聞いてプレシア達のキーボードを叩く音が激しくなる。
その一方でリイン達の登場とアリシアの痕跡が見つかった事で落ち着きを取り戻したヴィヴィオは考える。
「アリシアが移動した? 何処に行こうとしたの? ブレイブデュエルで何かあった? 何か…見つけた?」
「見つけた?」
「あっごめん、ちょっと考え事してた。アリシアはどうしてそこから移動したのかなって」
アリシアに聞かれて答える。
「フェイト、アリシアと別れる時何か言ってたって言わなかった?」
「………グスッ…うん…」
さっきまで啜り泣いていたけれど少し落ち着いたらしい。
「…魔力が…って」
「!! フェイト、アリシアは魔力って言ったの?」
聞き返すヴィヴィオの勢いに少し驚きながらも彼女は頷く。
(アリシアは魔力の痕跡を見つけたんだ。だから戻らずにそれを探しに行ったんだ…)
だったら…アリシアが危ない。
ゲームの中なら危険は少ないけど、実際の魔力が関わっているならアリシアは無力に等しい。
「リンディさん、私をその場所に送ってください。」
「駄目よ。」
「危険すぎるわ、あなたまで戻って来れない可能性だってあるのよ。」
「でも、このままじゃアリシアが何処にいるかわかりません。アリシアが『魔法が』って言ってたなら何か魔法と関係した所に行ったと思うんです。そこに行けるのは私しか居ません。」
「でも…」
『わかった。但し僕達が危険だと判断した時はちゃんと指示に従ってもらうよ。』
「はい」
「どうしてここにあなたが居るの?」
再び双剣を構えたまま彼女に質す。
「……」
「……まさか、ここに私達を飛ばしたのもあなたのせい?」
「…うん…私が望んだ…私達が望んだ世界がここだっただけ」
「私達? ある訳ない。あなた1人が望んだ世界でしょっ!」
「違うよ。私達が望んだ世界だから…見て来たんでしょう? 同じ様に見えて違う世界。仮想の中でしか魔法の使えない世界を。ここなら私は私達でいなくてもいい。」
「見て来た。でもここは私達が居る世界でも行く世界でもないんだよ。どうしてあなたはここを望んだの?」
「私が私達でいなくて良い世界、私達でいれば私じゃなくなる。」
意味の判った様で判らない問答を繰り返す。
その中で相反した意味を話している事に気づく。
「……私が私達でないほうがいい? 私達でいれば私じゃなくなる?」
自分で呟く、彼女の存在と今までの彼女の行動を思い出し照らし合わせた時その意味を理解した。
構えを解いてため息をつく。
「全くもう…最初からそうならそう言ってよ。それはあなたの思い違い。でも…私がそれを言ってもきっとあなたは信じてくれない。だから…」
「何もみんなで来なくても…」
同じ頃、ブレイブデュエルのT&H海鳴ステージ6にセイクリッドのジャケットを纏ったヴィヴィオは立っていた。
「ううん、こういう時はみんなで来た方が心強いよ。」
「アリシアが居なくなったの私のせいだから」
「も~っ、フェイトは考えすぎ。」
「ここまで来たら一蓮托生よっ♪ 早く見つけて一言言ってやらないと気が済まないわ。」
「一言で済めばいいんやけどな…」
「1時間くらいは…かかるかも。」
なのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずかのT&Hエレメンツのメンバーと八神堂から飛び入り参加したはやてが揃っていた。
「はやてちゃん」
空からリインが降りてくる。
「リイン忙しいのにありがとな。この子は末っ子のリインフォースです。もう1人の末っ子アギトと外国に居るんですが手伝いを頼みました。」
「初めまして、リインフォースツヴァイです。リインと呼んで下さい。」
ペコリとお辞儀をした後、ヴィヴィオの顔をジーッとみる。
「ヴィヴィオさんですよね? どうして私達の事を知ってたんです? さっき挨拶でいきなり名前を呼ばれちゃったからびっくりしてたんですよ。」
「あ…えっと…まぁ色々あって…それよりリインさんアリシアが消えた場所に急いで案内してください。アリシアに危険が迫ってるかも知れないんです。」
「ヴィヴィオちゃんの事は後で話すから先に案内して」
「はいです♪」
そう言うとフワリと浮いてそのまま上空へと飛んでいった。
「待ってて、アリシア…」
彼女の後を追いかけてヴィヴィオも飛ぶ、それに続いてなのは達も付いて行った。
「こっちこっち」
リインの向かった先にはアギトと子狸丸が待っていた。
「アギトも久しぶり、元気やった?」
「うん、それよりもここなんだけど…ここに何処かのステージへの扉が繋がった形跡があるんだけどどんだけ頑張ってもアクセスできないんだ。」
指さす方を見てヴィヴィオが移動する。
「アギト…さん、この辺り?」
「もうちょっと右、そうその辺。」
言われた位置に移動し目を瞑り集中する。魔法の因子が漂っているならリンカーコアが反応する筈…
微弱だけれどリンカーコアから魔力が出ているのを感じる。因子の来る方向を確かめる。
「見つけた、そっち!!」
「ちょっ!?」
アギトの居る方目がけインパクトキヤノンを放つ。慌てるアギト、しかしインパクトキヤノンは彼女に届かず途中で消えてしまった。
「いやはや…本当にすぐ見つけてしまうとは、凄いね。」
ブレイブデュエルの開発者で誰よりもシステムの事は知っていると思っていたけれど、八神堂のチヴィットの検索能力と精度の高さ、海外で家族がブレイブデュエルを使える様にしているとは思ってもみなかった。
そしてT&Hで彼女が消えた場所は知っていたがそこには情報が残されていて、リインとアギト、子狸丸はそれを見つけてヴィヴィオは更に彼女の居るであろう場所を見つけた。
飛び込んだヴィヴィオ達は海鳴ステージから姿を消した。これで彼女が居る場所も絞り込める。
「ですが博士、これを」
しかしスタッフから見せられた移動経路を見て
「…うん…シュテル、アミタ達を呼んで来てくれるかい?」
近くでモニタに向かっていた彼女を呼んだ。
~コメント~
もしヴィヴィオがなのはイノセントの世界にやってきたら?
ここからはオリジナル展開を含んで進んでいきます。
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