笑顔で答えるヴィヴィオ。その時、なのはは彼女の表情を見て何をするつもりなのか判った気がした。

「じゃあいくよ、２戦目始めっ！」



　なのはのかけ声と共にミウラが動く、今度はヴィヴィオもシューターを出さずに突撃する。
高速ダッシュで２人がぶつかる。

「ハンマァアアっ！」

　ミウラが拳を繰り出すがそれよりヴィヴィオの方が速かった。
　振り向き様に横薙ぎにした手刀はミウラの拳に集まった魔力を切り捨てる。

「！？」

　驚いて止まったミウラに対し回し蹴りを見舞う。
　危険を察して後ろへ飛んだのか吹っ飛ばされながら体勢を立て直す。

「ベルカの騎士の本領は近接戦、叩き切って進むのみ。シグナムさんが言ってなかったですか？」
「はい、教えて貰いました。ハァアアアッ！」

　再び猛スピードで突っ込んでくるミウラ。逆サイドに来たかと思った瞬間向きを変え再び懐に入り込んだ。

「ヤアアアッ！」

　拳を受け止め体を捻って蹴りを放とうとするが、ミウラも同じ考えだったらしく右足が上がった。
　２人の魔力がぶつかって爆発を起こす。

「『届く距離まで近づいて斬れ』って」　
「シグナムさんらしいです。じゃあこんなのはっ！」

　両手に魔力を集め今度はヴィヴィオがミウラ目がけて進む。左パンチを放つがミウラは両腕を交差させて受ける。
　でもそれがヴィヴィオの作戦。

「！？」

　手の魔力が彼女の両腕を鉤爪の様に捉え拘束する。砕け得ぬ闇－ユーリと戦った時に使った方法だ。ミウラのガードを奪った状態で右手を再び手刀に変え

「紫電一閃っ！」

　電撃属性が付加された斬撃をぶつける。
　防御出来ない状態で受けてミウラはその場に膝をつく。

「叩き斬るなら相手の攻撃を避けるか、攻撃やカウンターもまとめて斬らなきゃ反撃を受けちゃいます。幾ら撃たれてポイントが削られてもここって言う時に必殺の１撃を撃てるように考えなくちゃ。」
　相手の方が強い時は特にそう。

「まだですっ…まだ負けてませんっ！！」

　ふらつきながらも立ち上がった彼女を見て

「うん、そうでないと♪」

　ヴィヴィオは笑った。



「ミウラさんが…」
「一方的に…押されてる」
「嘘…」

　ヴィヴィオやリオ、コロナが愕然としている。アリシアも驚いていたけど

「ヴィヴィオいつの間にあんなの出来る様になったのよ…」

　さっき彼女が見せたのはシグナムの魔法『紫電一閃』。
　ブレイブデュエルの中で彼女はシグナムの紫電一閃をデッキに入れていた。シュテルとのデュエルでも多用していたけど、まさか現実に使える様になっていたなんて…

「ヴィヴィオさんはあの姿だと近接戦のみに変わるのでしょうか？」
「ううん、多分手加減っていうかミウラさんと同じ条件で相手してる。でも…この感じ何処かで」

　こんな事が前にあった様な…と思い出そうとしていると。
　ミウラが構えて飛び出し再びヴィヴィオに迫る。しかしヴィヴィオは動きが粗くなった彼女の攻撃をサラリとかわし腕を取り反動で投げ飛ばした。

「ミウラさん動きが粗くなってますよ。こっちのベルカの騎士ってこの程度なんですか？」
『それとももう終わりですか？　あなたの意思はそんなものですか？』

　脳裏にある光景がフラッシュバックする。

（ヴィヴィオ…まさか…オリヴィエみたいに…）

　なのはとフェイトの方を見ると２人は何も言わずヴィヴィオとミウラの攻防を見ている。既に気づいていたらしい。
　同条件で戦うだけじゃない…ヴィヴィオはかつて彼女がオリヴィエにして貰った様に見せているのだ。同じ最年少のベルカの騎士として、ミウラと彼女を通してヴィヴィオを見ているヴィヴィオに対して。
　


　ここのヴィヴィオ達はアスリート、競技者として魔法を練習している。そんな中に私の魔法はイレギュラーでしかない。
　彼女が封鎖された記憶を取り戻した時、私を目標にするかも知れない。でも私はヴィヴィオの目標になっちゃいけない。彼女にはこんな沢山の事件に巻き込まれて欲しくない。
　ミウラ・リナルディ、ヴィヴィオが負けた相手で八神道場の期待の星。少し拳を合わせただけで強いのはわかった。彼女ならヴィヴィオが目指し、ヴィヴィオと同じ目線に立って一緒に競い合ってくれる。
　私には出来ないけれど彼女なら…

（上手くいけば良いんだけど…）

　ミウラの目つきが鋭くなった。彼女がまだ何か使っていない魔法がある。

「ＲＨｄ…チャージ始めて」

　相棒に伝える。



「行きます、抜剣　四天星煌っ！」

　ミッドチルダ式の魔法陣が展開し両手両足のデバイスが光る。

（光って…光を集めてるんだ。集束系の砲撃じゃないね…打撃、連撃）
「ミッド式…。」
「ベルカの騎士だからベルカ式の魔法しか使っちゃいけない…なんて決まりはありません」

　彼女は本戦が控えているからなるべく無理させない位でと思っていたけれどそんな考えは甘かったらしい。

「確かにそうだね」

だったら…

「だったら私達も負けられないね。行くよ、聖王ヴィヴィオっ！」

　１０個の魔法球を作り出し更に両手に魔力を集中させた



「聖王って、ちょっと！」

　ヴィヴィオの雰囲気が変わる。でもそれが何を意味しているのかわからない。魔力量が上がった訳でもないしレリックを使ってユニゾンした訳でもない。
　でも…この違いは何だろう？

「あの雰囲気は…オリヴィエ？」
「え？」

　アインハルトが呟いた言葉にアリシアはヴィヴィオを凝視する。



「聖王…ヴィヴィオ？」

　アインハルト達と一緒にヴィヴィオの言葉を聞いて頭の奥がチリチリする。

「ヴィヴィオ？」
「どうしたの？」

　隣のリオとコロナが聞くが彼女の視線はヴィヴィオに釘付けになっている。

「聖王……ヴィヴィオ…レリック…！！」

　レリックの名前を口にした瞬間、強烈な痛みが頭を駆け巡って一緒にヴィヴィオが戦う光景が蘇ってきた。思わず頭を抱え込んでしゃがみ込む。

「ヴィヴィオ！」

　その声にアインハルトとアリシアも気づいて顔を覗き込む。

『私は…高町ヴィヴィオ、本が好きな普通の初等科３年生で…なのはママとフェイトママの娘で…聖王だぁあああっ！』
「そうだ…私はヴィヴィオに会った…小さなママたちとシュテル…レヴィ…ディアーチェ…アミタ…キリエ…紫天の書の盟主…ユーリ」
「ヴィヴィオ、しっかりして！」

　リオが肩を揺する。

「アリシアさんっ」

　アインハルトはアリシアの方を振り向く。

「うん…記憶封鎖が解けた。」



「飛龍っ！」

　ヴィヴィオとミウラはそんな事も気づかず激闘を続ける。
　ミウラが離れた場所から足を振り上げる。集束された魔法がその軌跡を描き弧状になって襲う。私はそれを難なく避けた。だがその直後ミウラが急接近していて
　左右の連続パンチを繰り出す。しかしヴィヴィオに手を払われた瞬間ミウラの拳に集まった魔力が消えた。

「！？」

　状況に気づいた彼女はそのまま後ろに飛び引き反動を使って跳び蹴りの体勢を取った。足のデバイスから眩い光が溢れる。

「天衝っ…」

　だけど、その間合いならっ

「星よぉぉおおおおおおっ！」

　その光をヴィヴィオから発された虹色の光がミウラを包み込んだ。
　２人の間に大きな虹色の魔法球が出現し、ヴィヴィオの声と共に周りの魔法球がミウラ目がけて襲い来る。更にヴィヴィオがそこに飛び込んだ。虹色の光の奔流がアリシアやアインハルト、なのはのの前を覆い尽くした
　光が収まった後、倒れたミウラとそこから離れた場所で膝をついて肩で息をするヴィヴィオの姿があった。



「ミウラさんっ！」

　ヴィヴィオはジャケットを解除して慌てて駆け寄る。
　練習していて魔力ダメージのみに絞っていたけど、完全にカウンターが決まった形になってしまった。

「ミウラさんっ！」

　抱き起こすと彼女は苦悶の表情を浮かべたあと瞼を開いた。

「良かった、ごめんなさい。」
「いえ…凄かったです…」



　模擬戦の後、ミウラは家の中でメンタルチェックを受けた。
　デバイスにも特に破損はなく、ミウラ自身も疲労した程度だったと聞いてヴィヴィオはホッと安堵の息をつく。
　フェイトが魔法練習を見ている間、ミウラとヴィヴィオ、なのははアルピーノ邸のリビングに居た。

「ヴィヴィオさん、最後の魔法は一体？」
「あれは聖王の鎧の応用とストライク・スターズです。」
「聖王の鎧？　ストライク・スターズ？」

　聞いた事が無かったのかミウラが聞き返す。

「ミウラさん、エレミアの手記という本を知ってますか？」
「エレミアの手記、無限書庫に探しに行きました。」

　エレミアの手記を知っていると言うことはヴィヴィオの出生もある程度知っている。

「私達…私とヴィヴィオはオリヴィエの子孫です。ベルカ聖王は全ての魔法、物理攻撃を無効化する聖王の鎧という固有スキルを持っています。こっちの私は使えなくなっちゃったみたいですが…それを応用して両手に集めた魔力を消したんです。ストライク・スターズはこっちのなのはママに教えて貰いました。」
「砲撃魔法と魔力弾の複合魔法だよ。まさかあんな風に使うなんて思ってなかったけどね」

　なのはに言われて苦笑いする。

「凄かったです。私はまだまだですね。」
「ミウラさんも凄く強かったです。でも…最後の魔法だけは注意して使って下さいね。」

　集束系の打撃魔法を使う彼女には伝えなきゃいけない。

「え？」
「集束系魔法、ミウラちゃんは抜剣って言ってたけどこの系統の魔法は体に負担が溜まるんだ。ザフィーラやヴィータちゃんから言われてない？　連続で使っちゃいけない…とか」
「えっ？　はい。使ったら数日間は絶対に使わないようにって言われてます。」
「特にさっきのアレはかなりの負担がきてる筈だよ。」

　リンカーコアの状態を情報をミウラに見せる。
　１０分程度の模擬戦だったのにリンカーコアが消耗している。

「だから…今すぐという訳じゃないですけど、集束系以外の魔法を見つけてください。きっとヴィータさんだったら何か考えてると思います。そうじゃないと…」

　真剣な私の眼差しにミウラは息を呑み頷いた。


～コメント～

　もしヴィヴィオがなのはＶｉｖｉｄの世界にやってきたら？
　ヴィヴィオVSミウラ戦、結着です。