第16話「GRAND PRIX ~Zero~」
- リリカルなのは AdventStory > 第2章 遭遇と前兆
- by ima
- 2016.01.17 Sunday 19:44
「ごめ~んヴィヴィオちゃん、ちょっと手伝って。」
「あっ、はい。」
八神堂のカウンター奥で読書中のヴィヴィオははやてに呼ばれたのを聞いて本を棚に置いて彼女の方を向いた。彼女はタウンター横の棚から大きな箱を下ろそうとしていたが今にも箱が落ちそうになっている。
慌てて駆け寄って箱を支える。
「重っ、これを下ろせばいいですか?」
「うんありがとな。」
ゆっくりと床に下ろし、はやてが箱を開けると何か変わった機器が出てきた。
その横に看板も…
「あっ、はい。」
八神堂のカウンター奥で読書中のヴィヴィオははやてに呼ばれたのを聞いて本を棚に置いて彼女の方を向いた。彼女はタウンター横の棚から大きな箱を下ろそうとしていたが今にも箱が落ちそうになっている。
慌てて駆け寄って箱を支える。
「重っ、これを下ろせばいいですか?」
「うんありがとな。」
ゆっくりと床に下ろし、はやてが箱を開けると何か変わった機器が出てきた。
その横に看板も…
「ブレイブデュエルGRAND PRIX受付 グランプリ。なんですか?」
はやては大きな機器をよいしょっとカウンターにおいて近くに伸びていたケーブルを挿しスイッチを入れる。
暫くすると機器の液晶部分に『エントリー中です。ここにブレイブホルダーを置いて下さい。』と表示された。どうやらこの機械でグランプリの参加を申し込むらしい。
「ブレイブデュエルの大会…みたいなもんかな。前にヴィヴィオちゃんが参加したWeeklyデュエルあったやろ、あれの大きな大会を定期的にやってるんよ。」
「今回は5回目で1回目はクローズロケテストで、まぁブレイブデュエルの恒例イベントやね。上位2人は殆ど決まった様なもんやけど3位以下はどんどん変わってきてる。」
「上位2人?」
「1位がシュテルで2位がフェイトちゃん、そろそろ殿堂入りにした方がって話も出てるんやけど普段見れへん2人のデュエルが楽しみって声もあってな。」
「へぇ~」
シュテルやフェイトが勝ちに拘る理由が何となくわかった。
「そや、ヴィヴィオちゃん出たら大会盛り上がるな♪ ヴィヴィオちゃんのブレイブホルダーをっと…」
棚に置いていたポシェットのポケットに入れてあったブレイブホルダーを取り出し機械に触れようとする。
「ちょっちょっと待って下さい! 何を自然に申し込もうとしてるんですかっ!」
慌てて彼女を止めてブレイブホルダーを取り返す。
「えっ? 出たら盛り上がるやろ? 出えへんの?」
何を今更という感じで聞き返される。
「そ、そうじゃなくて、今グランプリの話を聞いたばかりなんです。どんな大会かも判らないのに…」
「そやからさっき話したよ。Weeklyデュエルを大きくした大会やって。ルールも同じやけど違うのは10戦勝ち抜けとトーナメントの違い位かな~。嫌やったら後で棄権すればいいだけやし、登録完了、ついでに正常動作確認っと♪」
「えっ!?」
手元にブレイブホルダーがあるのにどうして?と彼女の手元を見ると別のブレイブホルダーが握られていた。
「これは?」
「ヴィヴィオちゃんの持ってるのはイミテーション、サンプルやね。さっき本読んでる間に入れ替えた♪ はい、返すな♪」
「はやてさん~っ!!」
いつの間にと思いつつ、肩を震わせても彼女は何処吹く風、もうっと嘆息する。
「でも…私が勝っちゃったらどうするんです?」
「お~いきなり優勝宣言♪ まぁそれはそれで盛り上がるやろ。それに…ヴィヴィオちゃんが出るの知って燃える子もおるしな」
ブレイブホルダーを手渡される。
「ついでに今日はまだカード引いてないんやろ、行ってきたら?」
(もう…)
仕方ないなと思いつつ彼女に促されてエレベーターで降りて地下のカードローダへと向かう。
昼も過ぎて殆どのプレイヤーが引いてしまった後らしく、誰も並んでいないのを見てブレイブホルダーを宛てると1枚カードが出てきた。
カードを見て目を見張る。
「これなら、フォートレス使わなくても出来るかも…」
カードを強く握りしめた。
同じ頃、T&Hとグランツ研究所でもGRAND PRIXの受付準備が始まっていた。
両方とも八神堂より登録デュエリストの人数が多い為専用のブースが設けられている。
受け付け開始と共にブレイブデュエルの順番待ちをしているデュエリスト達が列を作って受付を始めていた。
そんな中エイミィとアミタが受付リストをチェックしていた。過去のグランプリで好成績を挙げたデュエリストをピックアップして紹介していくのだ。
そこへピッと新たに1人表示される。所属は八神堂。
「八神堂も受付始めたんだね~♪」
「忙しくなりますよ~♪」
「「えっ!?」」
そこに映されたデュエリスト名とアバターを見て2人は驚く。現時点での最強ダークホースであろう高町ヴィヴィオが八神堂で最初に申請したからだ。
ついさっき起きた偽物騒動の彼女ではなく彼女の所属は八神堂のベルカマークになっている。
アミタは勿論エイミィも昨日のデュエルについては伝え聞いている。フェイト・なのは、トーレ・セッテをアリシアと2人で倒してしまったのを…
「これは大番狂わせが起きるかも。」
「うかうかしてられませんね。グランツ研究所としてもフルメンバーでいきますよ~っ。」
更に盛り上がるという期待に胸を膨らませるのであった。
「セイッ!!」
「タァッ!!」
所が変わって、海鳴市外れにある山林から1人の少女の声と【カカカッ】と連続して聞こえる音が聞こえていた。
「今だっ、ターッ!!」
少女ーアリシアが目の前の相手ー高町美由希に対して2本の木刀を横薙ぎにする。しかし美由希はその攻撃を読んでいたのか半歩退いて避けた後振り抜いた直後の彼女の頭をポコンと叩いた。
「隙ありっ」
「イタッ」
「相手だけ見ていたらダメ、ちゃんと次の行動も考えなきゃ隙ができるよっ。」
そう言って足払いをかけ重心を狂わせる。普通はそのまま転ぶのだけれどアリシアは背を大きく反らして剣を持ったままバック転から何度か回って美由希と距離を取った。
その様子に美由希は笑みを浮かべる。
(やっぱり凄いね~)
【PiPiPiPi】
息を整えたところでアラームが鳴る。
「はい、休憩~」
「ハァッハァッ…ありがとうございました。」
美由希が声をかけるとアリシアは頭を下げそのまま屈むようにして荒げた息を整え始めた。
「美由希、アリシア」
「ありがと」
声をかけられて振り返ると恭也がペットボトルを投げていた。慣れた手つきで2本受け取ってアリシアに渡す。ひんやりとしたスポーツ飲料だ。河で冷やしていたらしい。
「ハァッ…あ、ありがとうございます。」
そう言うとアリシアは美味しそうに飲んだ。
「あんなに動けるなんてびっくりしたよ。ね、恭ちゃん」
「ああ」
アリシアと練習を始めたのは全部合わせても10日も無い。
最初はブレイブデュエルの練習で滞在期間中だけでスポーツ用の柔らかい刀を使って休憩の間につきあえばいいと思っていた。
しかし彼女の体のバネや咄嗟の判断はなのは以上で更に自分たちの剣技に余りにも似た動作を見て美由希や恭也は勿論、士郎も驚かされた。同門の師からでも教わらない限りここまで似ない。
そして先日彼女が再び来た時
『私も木の刀でお願いします。』
と言われて軽いブナ製の木刀を貸して彼女と練習に加わった。
…と言っても、まだ成長期前の身体に過度な運動はさせてはいけないと士郎にも注意を受けていた為今の様に彼女と練習最長でも10分間、しかも隙があっても恭也・美由希からは打ち込まないと決めた。
「ブレイブデュエルでイメージトレーニングしていたから思っていた以上に動けました。でも…全然敵いませんでしたけど。」
「流石にね。それだけ動けて魔法も使ってなのはやフェイトちゃんに勝っちゃうなら殆ど敵なしでしょ。」
美由希に褒められてアリシアは頬を崩す。
「なのはさん…私達と一緒に来た大人の方ですね。なのはさんには全然敵いませんし、きっと今頃特訓を受けてるレヴィ達やフェイトはもっと強くなるから油断は出来ません。それに…」
「それに…どうしても勝ちたい女の子が居るから。」
「勝ちたい女の子?」
「はい。私の親友、高町ヴィヴィオ。向こうじゃ気になって全力出してくれませんけどゲームの中でなら…」
「そっか、じゃあとびっきりの秘策教えてあげる。恭ちゃんいいよね?」
とびっきりの秘策と聞いて思わず前のめりになる。
「ああ、でも見せるだけだ。アリシアの身体で使えば絶対に身体を壊す。だからブレイブデュエルの中だけで現実での練習は一切禁止、もし破ったら練習には参加させない。それが守れるならいいよ。」
話している途中に険しい眼差しに変わるのを見て
「はいっ、約束守ります。絶対」
強く頷いた。
その頃名前の挙がった高町ヴィヴィオはというと…
「………」
八神堂のカウンター奥に場所を変えて読書に没頭していた。
「………」
「……ファ~……」
「………」
「……おおきにな~……」
「………」
「……なぁヴィヴィオちゃん?」
「はい?」
「グランプリに無理矢理参加させといて何やけど、ブレイブデュエルせんでいいの?」
「どうしてです?」
「グランプリにヴィヴィオちゃんの名前が乗って直ぐにグランツ研究所とT&Hの殆どフルメンバーが申し込みしてるし、アリシアちゃんもT&Hから代理申請されとる。」
「アリシアも出るんだ…凄く盛り上がりそうですね。」
「そうやね~それは嬉しいけど、ちゃうちゃう! どう見てもヴィヴィオちゃんは優勝候補で皆に注目されてる。だったら今日引いたカードを効率よく使う方法とかもっとデュエルした方が練習になるんとちゃう? プロトタイプ以外で殆どブレイブデュエル使ってないやろ?」
偶然にしても【あのカード】が出てくる訳がないと納得しつつ そこまで言われて『ああ』と納得する。
「そうですね。アリシアもキャンプでいっぱい練習してるでしょうし、ママ達に教えて貰ってシュテル達も強くなると思います。」
「せやったら…」
「楽しみなんです。【このカード】で私の得意魔法は全部揃ったから、本気で遊べます。」
そう言ってはやてにカードを見せる。
ヴィヴィオの魔法バリエーションは少ない。元世界ではもっと色々覚えなくちゃいけないのだけれど、ブレイブデュエルでは逆になった。直ぐ使えるカードーデッキに入れられたからだ。
フォートレスとストライクカノンも魅力的だけれど何か違う気がする。でも…これなら思いっきり遊べる。
「ヴィヴィオちゃんは楽しみなんやね。みんなと本気で遊べるのが」
ヴィヴィオにカードを見せられたはやては思わず納得した。
今思えば彼女がブレイブデュエルに慣れてしまった後、楽しんでいたとは思うけれどそれは本当の意味で心の奥底から楽しいを思っていたのだろうか?
Weeklyでシュテルと激戦を繰り広げた時は楽しそうに見えたけれどその後アリシアを捜しに行った時、彼女はシュテル・レヴィ・ディアーチェ・ユーリの4人を一瞬で倒してしまった。
…本気になれば当時の彼女達では足下にすら及ばないということ。そしてそれは昨日のデュエルでもはっきりと出ていた。
(もしかしてヴィヴィオちゃんがなのはさんとフェイトさんを連れてきたのって…)
シュテル達に強くなって貰う為…
「はい、出るからには勝ちます。全力で!」
彼女の真っ直ぐな眼差しが眩しく見えた。
~コメント~
ようやくブレイブデュエル編でグランプリまで来ました。
アリシアの話の到達点はご存じのアレです。リアルでは無理なのでせめてブレイブデュエルの中だけでもと思いました。
はやては大きな機器をよいしょっとカウンターにおいて近くに伸びていたケーブルを挿しスイッチを入れる。
暫くすると機器の液晶部分に『エントリー中です。ここにブレイブホルダーを置いて下さい。』と表示された。どうやらこの機械でグランプリの参加を申し込むらしい。
「ブレイブデュエルの大会…みたいなもんかな。前にヴィヴィオちゃんが参加したWeeklyデュエルあったやろ、あれの大きな大会を定期的にやってるんよ。」
「今回は5回目で1回目はクローズロケテストで、まぁブレイブデュエルの恒例イベントやね。上位2人は殆ど決まった様なもんやけど3位以下はどんどん変わってきてる。」
「上位2人?」
「1位がシュテルで2位がフェイトちゃん、そろそろ殿堂入りにした方がって話も出てるんやけど普段見れへん2人のデュエルが楽しみって声もあってな。」
「へぇ~」
シュテルやフェイトが勝ちに拘る理由が何となくわかった。
「そや、ヴィヴィオちゃん出たら大会盛り上がるな♪ ヴィヴィオちゃんのブレイブホルダーをっと…」
棚に置いていたポシェットのポケットに入れてあったブレイブホルダーを取り出し機械に触れようとする。
「ちょっちょっと待って下さい! 何を自然に申し込もうとしてるんですかっ!」
慌てて彼女を止めてブレイブホルダーを取り返す。
「えっ? 出たら盛り上がるやろ? 出えへんの?」
何を今更という感じで聞き返される。
「そ、そうじゃなくて、今グランプリの話を聞いたばかりなんです。どんな大会かも判らないのに…」
「そやからさっき話したよ。Weeklyデュエルを大きくした大会やって。ルールも同じやけど違うのは10戦勝ち抜けとトーナメントの違い位かな~。嫌やったら後で棄権すればいいだけやし、登録完了、ついでに正常動作確認っと♪」
「えっ!?」
手元にブレイブホルダーがあるのにどうして?と彼女の手元を見ると別のブレイブホルダーが握られていた。
「これは?」
「ヴィヴィオちゃんの持ってるのはイミテーション、サンプルやね。さっき本読んでる間に入れ替えた♪ はい、返すな♪」
「はやてさん~っ!!」
いつの間にと思いつつ、肩を震わせても彼女は何処吹く風、もうっと嘆息する。
「でも…私が勝っちゃったらどうするんです?」
「お~いきなり優勝宣言♪ まぁそれはそれで盛り上がるやろ。それに…ヴィヴィオちゃんが出るの知って燃える子もおるしな」
ブレイブホルダーを手渡される。
「ついでに今日はまだカード引いてないんやろ、行ってきたら?」
(もう…)
仕方ないなと思いつつ彼女に促されてエレベーターで降りて地下のカードローダへと向かう。
昼も過ぎて殆どのプレイヤーが引いてしまった後らしく、誰も並んでいないのを見てブレイブホルダーを宛てると1枚カードが出てきた。
カードを見て目を見張る。
「これなら、フォートレス使わなくても出来るかも…」
カードを強く握りしめた。
同じ頃、T&Hとグランツ研究所でもGRAND PRIXの受付準備が始まっていた。
両方とも八神堂より登録デュエリストの人数が多い為専用のブースが設けられている。
受け付け開始と共にブレイブデュエルの順番待ちをしているデュエリスト達が列を作って受付を始めていた。
そんな中エイミィとアミタが受付リストをチェックしていた。過去のグランプリで好成績を挙げたデュエリストをピックアップして紹介していくのだ。
そこへピッと新たに1人表示される。所属は八神堂。
「八神堂も受付始めたんだね~♪」
「忙しくなりますよ~♪」
「「えっ!?」」
そこに映されたデュエリスト名とアバターを見て2人は驚く。現時点での最強ダークホースであろう高町ヴィヴィオが八神堂で最初に申請したからだ。
ついさっき起きた偽物騒動の彼女ではなく彼女の所属は八神堂のベルカマークになっている。
アミタは勿論エイミィも昨日のデュエルについては伝え聞いている。フェイト・なのは、トーレ・セッテをアリシアと2人で倒してしまったのを…
「これは大番狂わせが起きるかも。」
「うかうかしてられませんね。グランツ研究所としてもフルメンバーでいきますよ~っ。」
更に盛り上がるという期待に胸を膨らませるのであった。
「セイッ!!」
「タァッ!!」
所が変わって、海鳴市外れにある山林から1人の少女の声と【カカカッ】と連続して聞こえる音が聞こえていた。
「今だっ、ターッ!!」
少女ーアリシアが目の前の相手ー高町美由希に対して2本の木刀を横薙ぎにする。しかし美由希はその攻撃を読んでいたのか半歩退いて避けた後振り抜いた直後の彼女の頭をポコンと叩いた。
「隙ありっ」
「イタッ」
「相手だけ見ていたらダメ、ちゃんと次の行動も考えなきゃ隙ができるよっ。」
そう言って足払いをかけ重心を狂わせる。普通はそのまま転ぶのだけれどアリシアは背を大きく反らして剣を持ったままバック転から何度か回って美由希と距離を取った。
その様子に美由希は笑みを浮かべる。
(やっぱり凄いね~)
【PiPiPiPi】
息を整えたところでアラームが鳴る。
「はい、休憩~」
「ハァッハァッ…ありがとうございました。」
美由希が声をかけるとアリシアは頭を下げそのまま屈むようにして荒げた息を整え始めた。
「美由希、アリシア」
「ありがと」
声をかけられて振り返ると恭也がペットボトルを投げていた。慣れた手つきで2本受け取ってアリシアに渡す。ひんやりとしたスポーツ飲料だ。河で冷やしていたらしい。
「ハァッ…あ、ありがとうございます。」
そう言うとアリシアは美味しそうに飲んだ。
「あんなに動けるなんてびっくりしたよ。ね、恭ちゃん」
「ああ」
アリシアと練習を始めたのは全部合わせても10日も無い。
最初はブレイブデュエルの練習で滞在期間中だけでスポーツ用の柔らかい刀を使って休憩の間につきあえばいいと思っていた。
しかし彼女の体のバネや咄嗟の判断はなのは以上で更に自分たちの剣技に余りにも似た動作を見て美由希や恭也は勿論、士郎も驚かされた。同門の師からでも教わらない限りここまで似ない。
そして先日彼女が再び来た時
『私も木の刀でお願いします。』
と言われて軽いブナ製の木刀を貸して彼女と練習に加わった。
…と言っても、まだ成長期前の身体に過度な運動はさせてはいけないと士郎にも注意を受けていた為今の様に彼女と練習最長でも10分間、しかも隙があっても恭也・美由希からは打ち込まないと決めた。
「ブレイブデュエルでイメージトレーニングしていたから思っていた以上に動けました。でも…全然敵いませんでしたけど。」
「流石にね。それだけ動けて魔法も使ってなのはやフェイトちゃんに勝っちゃうなら殆ど敵なしでしょ。」
美由希に褒められてアリシアは頬を崩す。
「なのはさん…私達と一緒に来た大人の方ですね。なのはさんには全然敵いませんし、きっと今頃特訓を受けてるレヴィ達やフェイトはもっと強くなるから油断は出来ません。それに…」
「それに…どうしても勝ちたい女の子が居るから。」
「勝ちたい女の子?」
「はい。私の親友、高町ヴィヴィオ。向こうじゃ気になって全力出してくれませんけどゲームの中でなら…」
「そっか、じゃあとびっきりの秘策教えてあげる。恭ちゃんいいよね?」
とびっきりの秘策と聞いて思わず前のめりになる。
「ああ、でも見せるだけだ。アリシアの身体で使えば絶対に身体を壊す。だからブレイブデュエルの中だけで現実での練習は一切禁止、もし破ったら練習には参加させない。それが守れるならいいよ。」
話している途中に険しい眼差しに変わるのを見て
「はいっ、約束守ります。絶対」
強く頷いた。
その頃名前の挙がった高町ヴィヴィオはというと…
「………」
八神堂のカウンター奥に場所を変えて読書に没頭していた。
「………」
「……ファ~……」
「………」
「……おおきにな~……」
「………」
「……なぁヴィヴィオちゃん?」
「はい?」
「グランプリに無理矢理参加させといて何やけど、ブレイブデュエルせんでいいの?」
「どうしてです?」
「グランプリにヴィヴィオちゃんの名前が乗って直ぐにグランツ研究所とT&Hの殆どフルメンバーが申し込みしてるし、アリシアちゃんもT&Hから代理申請されとる。」
「アリシアも出るんだ…凄く盛り上がりそうですね。」
「そうやね~それは嬉しいけど、ちゃうちゃう! どう見てもヴィヴィオちゃんは優勝候補で皆に注目されてる。だったら今日引いたカードを効率よく使う方法とかもっとデュエルした方が練習になるんとちゃう? プロトタイプ以外で殆どブレイブデュエル使ってないやろ?」
偶然にしても【あのカード】が出てくる訳がないと納得しつつ そこまで言われて『ああ』と納得する。
「そうですね。アリシアもキャンプでいっぱい練習してるでしょうし、ママ達に教えて貰ってシュテル達も強くなると思います。」
「せやったら…」
「楽しみなんです。【このカード】で私の得意魔法は全部揃ったから、本気で遊べます。」
そう言ってはやてにカードを見せる。
ヴィヴィオの魔法バリエーションは少ない。元世界ではもっと色々覚えなくちゃいけないのだけれど、ブレイブデュエルでは逆になった。直ぐ使えるカードーデッキに入れられたからだ。
フォートレスとストライクカノンも魅力的だけれど何か違う気がする。でも…これなら思いっきり遊べる。
「ヴィヴィオちゃんは楽しみなんやね。みんなと本気で遊べるのが」
ヴィヴィオにカードを見せられたはやては思わず納得した。
今思えば彼女がブレイブデュエルに慣れてしまった後、楽しんでいたとは思うけれどそれは本当の意味で心の奥底から楽しいを思っていたのだろうか?
Weeklyでシュテルと激戦を繰り広げた時は楽しそうに見えたけれどその後アリシアを捜しに行った時、彼女はシュテル・レヴィ・ディアーチェ・ユーリの4人を一瞬で倒してしまった。
…本気になれば当時の彼女達では足下にすら及ばないということ。そしてそれは昨日のデュエルでもはっきりと出ていた。
(もしかしてヴィヴィオちゃんがなのはさんとフェイトさんを連れてきたのって…)
シュテル達に強くなって貰う為…
「はい、出るからには勝ちます。全力で!」
彼女の真っ直ぐな眼差しが眩しく見えた。
~コメント~
ようやくブレイブデュエル編でグランプリまで来ました。
アリシアの話の到達点はご存じのアレです。リアルでは無理なのでせめてブレイブデュエルの中だけでもと思いました。
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