第19話「GRAND PRIX ~2nd~」

「これは凄いな♪」
「うん、流石だね」

 八神堂のカウンターでヴィヴィオ達のデュエルを見てはやてとフェイトは少し驚いていた。
 研究所に行くとは伝えていたけれどまさかいきなりセクレタリーのデュエルに参加するとは…
 ヴィヴィオも凄いが彼女の指示で動ける少年達やトーレと激戦を繰り広げる少年は流石グランツ研究所のデュエリストと言ったところか。
 しばらくするとヴィヴィオの近くに居た少年2人が離れウーノとクアットロに対し砲撃魔法を撃ち始めた。ただ彼らも黙っているだけではなく中距離型・支援型の彼女達に対し攻撃することでセクレタリーの収集能力を全て奪うつもりだろう。
 仮に3対3のチーム戦に持ち込まれても時間稼ぎが出来ればより多くのカードを集めた方が勝ちになる。

(冷静になったらあこの子は怖いな~)

 ヴィヴィオも把握したらしく他の5人をつれて戦闘エリアから離れながらカードを集め始めた。

「これで決着やね。ディアーチェかシュテルの判断勝ちかな」

 ヴィヴィオをいきなりブレイブデュエルに放り込んだのは彼女達の判断だろう。
 グランツ研究所はT&Hのガーディアンの様なセクレタリー対応はしていない。しかしデュエル中に乱入してきたセクレタリーに勝利・撃退した場合に限って参加していたデュエリスト全員がローダでは出ないレアカードを貰える様にしている。レアカードが貰えるイベントと言うことで過去に乱入した時は全て撃退されている。今回はデュエル形式を変えてウーノを基軸にと考えたのだろうけれど…

「相手が悪かったな。」

 タイムアップ後にポイントが表示されセクレタリーが敗れたのを見て呟いた。



「ブイッ♪」

 5人の少年達とハイタッチして喜ぶヴィヴィオ。
 そこに先にトーレを迎撃する為に離れた少年が彼女と一緒に戻って来た。

「ったく、まさかお前が来るなんてな。ディアーチェを誘い出す予定だったのに…でも違うお前を見られたからそれで納得するか。」
「違う私?」

 何かしたのかなと聞き返す。

「ヴィヴィオさんがカードを見つけて教えてくれなかったらきっと僕たちは負けていた。上を飛ぶだけでカードを見つけるなんて誰も出来ないよ。」
「ウーノ姉でも無理だな。」

 笑顔で頷くトーレにそうなんだ…と頷く。

「私もグランプリに出る。当たったら全力勝負だ、手加減するなよ。お前もな、今日は楽しかった。」
「僕も、ありがとうございました。」
「うん、私も楽しかったです。明日はがんばろうね♪」

 少年とトーレと拳を軽く小突き合ってヴィヴィオは仮想空間から戻った。



「お疲れ様でした、ヴィヴィオ」
「うむ、よくやった♪」

 ポッドから出るとシュテルとディアーチェが待っていた。

「いきなりだったから凄く驚いたよ。でも、楽しかった♪」
「それは何よりでした。ところでグランツ研究所では乱入者セクレタリーに勝利・撃退したデュエリストはレアカードを貰える権利があります。ヴィヴィオはショッププレイヤーではありませんから権利はありますがどうしますか? 先ほどの少年達も全員貰えるので誰かが損をするというものではありませんよ。」
「ううん、私は飛び入り参加しただけだから」
「欲のない奴め…それとも余裕か?」
「わかりました。ヴィヴィオとアインハルトに会いに来たのでしたね。案内します。ディアーチェ、ここをお願いします。」
「うむ」

 ニヤリと笑うディアーチェ、デュエルをする前にシュテルには伝えていたから彼女は納得したらしく素直に引き下がって歩き始めた。



「ここにヴィヴィオとアインハルトさんがいるの?」

 連れてこられたのは地下室の1つだった。所狭しと色んな機器が置かれていて床や天井のあちこちにケーブルが張り巡らされている。

「こちらです。線に引っかからないようにしてください。ビリっとしますよ。」

 ケーブルに触れようとしていた手を慌てて引っ込めてシュテルの後について行った。
 10m程進むとヴィヴィオとアインハルトがグランツとユーリと一緒に何かをしていた。

「ヴィヴィオ、アインハルトさん」
「あっ、わたし…じゃなくてヴィヴィオ。」
「おはようございます。ヴィヴィオさん」
「おはよう、ヴィヴィオ君」
「おはようございます。」
「おはようございます。何をしてるんですか?」

 ペコリと頭を下げて彼女達に近づく。

「2人が来た詳しい時間と場所を調べるのにクリスとティオのデータを見てるんです。」

 ピョコっと手を上げるクリスと尻尾を振って返事するティオ。

「私達がこっちに来る前に来ちゃったら来る前の私達と会っちゃうでしょ、逆に来て1年後とかに戻っちゃったらみんなを驚かせちゃう。」
「理想はこちらに来て数分後…ですね。」
(へぇ~こっちの時間移動も似てるんだ…)

 ヴィヴィオは思わず納得した。


 刻の魔導書を使った時空転移はイメージを魔導書に送り、そこで紡がれた言葉を鍵にして転移していた。
 管理者権限を持っていないこともあって思った通りの時間には移動できず、数時間から数日ずれてしまっていた。
 でもプレシアが修復してくれた刻の魔導書のコピー、悠久の書はヴィヴィオを管理者として登録してあって、イメージや行きたい時間と場所を送るだけで転移出来る。こんな風に異世界にも来られるのだから便利な魔法だと思う。
 

「どころで今日は何か用かい?」
「あっ、用という程じゃないんですけど、昨日ヴィヴィオとアインハルトさんとあまりお話出来なかったから。お話したいなって」
「そのままなのはママと一緒に来ちゃいましたしね。」
「そう言われてみればそうですね。」

 ヴィヴィオとアインハルトの返事に転けそうになる。どうやら気にしていたのは私だけだったらしい。

「もう少しでデータが取り終わるから待っていてくれたまえ。」

 そう言うとグランツの視線はモニタに戻った。
 2人を元の時間に戻そうとしている彼の邪魔をしないようにヴィヴィオはそっと離れて様子を見守るのだった。
 


「待たせたね。あとはスカリエッティ研究所にデータを送れば彼が転移装置を作ってくれるよ。そういう面では優秀だからね…直感で他に手を加えなければ。」

 データを取り終えたのか端末から離れたグランツが振り返ってヴィヴィオとアインハルトに向かって言った。    

「あははは…」
「無いとは言い切れないのが何とも…」

 3人が互いの顔を見て苦笑する。
 どうやらここのスカリエッティもそれなりのトラブルメーカーらしい。

「話すならカフェや家に行ってはどうかな? 機械に囲まれているここよりいいだろう。ヴィヴィオ君もアインハルト君も必要なデータは取り終えたからブレイブデュエルで遊んでもいいよ。但し君たちが持っているカードが使えるかは判らないから…シュテル、ユーリ頼めるかい?」
「はい」
「わかりました。あっ、博士」

 用は済んだと部屋から出て行こうとするグランツをシュテルが呼び止め何か耳打ちすると2人は一瞬ヴィヴィオの方を向いた。

「うん、そうだね。指示しておくから後でテストを頼むよ」
「はい、ありがとうございます。」

 シュテルが礼を言うとグランツはそのまま部屋を出て行った。

「私達も行きましょうか。折角ですから私達もブレイブデュエルで遊びましょう。2人はその為にここに来たのですから、ヴィヴィオ、アインハルト後でカードを見せてください。実装していないスキルやアイテムは使えないので私のカードを代わりに貸します。ヴィヴィオも一緒にどうですか?」
「えっ、私? でもシュテルは今ママ達に特訓して貰ってるんだよね?」
「はい」
「先にママ達に聞いた方がいいんじゃないかな。」
「そうですか?…そうですね。」

 その後、シュテルが翠屋のなのはに連絡すると「明日のグランプリまで我慢しようね」と言われ
 結局ユーリを交えて5人でおしゃべりの時間を楽しんだ。

 

 ヴィヴィオとアインハルト、シュテル、ユーリと話しているとお昼になっていてそのままお呼ばれした。

「我らの代わりに撃退してくれた礼だ。」

 ディアーチェが予めはやてに連絡していたらしい。
 彼女の作る料理はとても美味しく感動して褒めちぎるヴィヴィオに顔を真っ赤にする彼女がとても可愛く見えた。
 そして、午後になってなのはとフェイトがこっちのフェイトと一緒にやってきた。
 特訓の内容を見るのも何だと思い、ヴィヴィオとアインハルトがブレイブデュエルで遊ぶのを応援するか八神堂に戻ろうかと思っていると

「ヴィヴィオ、少しだけ朝の部屋に来て貰えませんか?」

 ユーリに言われて彼女と一緒に朝来た機械がいっぱいある部屋に再び来た。
 
「ヴィヴィオ、その円形の台の上に立ってください。」
「うん。」

 言われるままに立つと透明な枠が上がってきてヴィヴィオの背を少し越えた所で止まった。

「ブレイブデュエルのアバターのジャケットチェックです。ブレイブデュエルでアバタージャケットは特定の条件で違う色や形状のジャケットに変わります。セイクリッドもシュテルやなのはも幾つかのバリエーションを持っています。」

 言われて思い出す。シュテルの紺色のジャケットやなのはの黒いジャケット…アリサやすずかもジャケットを変えていた。

「ヴィヴィオのジャケットもリライズで変わるのですが…それを調整しています。狭い場所で窮屈ですが小さくでいいので体を動かしてみてください。」

 言われた通り腕や手、足を上げたり捻ったりジャンプする。30秒位動いていると

「はい調整できました。」

 透明な枠が下がった。

「見てみますか? ヴィヴィオの新しいジャケットですよ。」

 そう言ってモニタに表示させたのは

「あっ! これ…」

 モニタの中のヴィヴィオは騎士甲冑を纏っていた。

「ジャケット名はありませんが、ヴィヴィオがリライズするとジャケットが変わります。以前モンスターハントでヴィヴィオが来ていたアバタージャケットのデータを参考にしています。今ブレイブデュエルにデータを送りましたから明日には使えますよ。グランプリでみんなを驚かしてあげてください。」
『指示しておくから後でテストを頼むよ』

 シュテルがグランツに話していたのはこれだったのだ。

「うん、ありがとうユーリ」

 まさかこっちでこの姿になれるとは思って無かったからヴィヴィオは満面の笑みで答えるのだった。




 そしてヴィヴィオが遊びに来て5日目、グランツ研究所・ホビーショップT&H・古書店八神堂には朝から多くの人がやってきていた。
 ヴィヴィオとアリシアは八神堂のモニタをジッと見つめる。
 その訳は当然

『れでぃーすあんどじぇんとるめん、みんなこんにちは。T&Hのアリシア・テスタロッサです。』
『グランツ研究所のアミティエ・フローリアンです。』
『八神堂の八神はやてです。』

 大画面モニタに映る3人

『遂にこの日が来てしまいました。今回も激戦が繰り広げられるのは間違いないでしょう。』
『今度こそ1位の座をフェイトは奪えるのか!!』
『ニューフェイスも沢山参加してくれてるんで油断してたらベテランでも落とされますよ。』
『それ以上私達からは何も言うことはありません。全力全開で楽しんでください。』
『『『ブレイブデュエルGRAND PRIX5th開催ですっ!!』』』      
 3人の声に併せてウォォオオオという歓声がブレイブスペースを振るわせた。



「最初に予選があって5戦中3戦勝ち抜けば決勝トーナメントにノミネートされる…んだよね?」
「そう、3連勝しちゃえば後の2戦は出なくて良い。その分有力デュエリストを観戦してデッキを考える時間が貰える…ってところかな。」

 ポッドの列に並んでいる間にアリシアと一応ルールの確認をする。
 彼女は昨夜高町家に帰ってきた。体つきが変わった訳じゃないけど、何か余裕というか凄みの様なものを感じる。

「予選で当たっても手加減なしで。」
「もちろん♪」

 そう言うと前が空いて次はヴィヴィオの番になった。そして

「次の人…ヴィヴィオ、期待してるよ。」

 列を整理していたリインフォースの応援を受けて

「はいっ! ヴィヴィオ…いくよ」

 ポッドの中へ入って

「ブレイブデュエル スタンバイ、カードドライブ リライズアップ」

 仮想空間へと飛び込んだ。



 グランプリが始まってシュテルはスタッフと一緒に列整理をしていた。
 ユーリはグランプリに参加しておらず、エラーが出た場合の緊急要員としてオペレータルームで全てのデュエルをチェックしている。  シュテルとレヴィ、ディアーチェは前回のグランプリでトップ10に入っていた為3人とも決勝トーナメントからの参加になる。予選から参加しているのはステージでマイクを握って司会をするアミタとキリエだけだ。彼女達はシュテル達より経験豊富なテストプレイヤー、予選突破は確実だろう。むしろ彼女達と決勝で当たって勝てるのか?
 そんな事を考えていると、インカムからユーリの声が聞こえた。

『シュテル、レヴィ、八神堂で参加しているヴィヴィオとアリシア予選通過です。』

 予想通り2人とも3勝したらしい。

「流石ですね。」
『しかも2人ともスキルカードを一切使わずに3勝しています。』

 その言葉に驚く。相手が弱くて使う必要も無かったのか…それとも…

「温存ですか…やりますね。」

 彼女達の手持ちカードは少ない。だからデッキのカード構成も限られる。それが判っているから隠したのかもしれない。

『休憩時間に見られるようにしておきますか?』
「いいえ、私達だけが知っていたらズルになりますから。あくまで対等でレヴィもいいですか?」
「おっけー!」

 グランプリの全国1位、今回その座は誰かに奪われるかも知れない。しかしシュテルは

(心躍る良き戦いが始まります。)

 そんな事以上に期待に胸を膨らませていた。

~コメント~
 少し寄り道気味になってしまいましたがグランプリ開始です。
(グランプリのルールとかは特に無かったので参加人数を考えてこれ位かなと勝手に解釈させていただいています。)
 これから始まるグランプリのデュエル内容についてですが、色んな登場キャラクターと対戦させたいところではあるのですが、戦闘描写は文章が長くなるので、ダイジェスト感覚でいければと考えてます。


PS:今朝あるイベントのチケットを取ろうとしていたら年度末・年度初めにあるとあるライブのチケットをゲットしてしまいました。…曲は年末に聴いた1曲しか知らない新参者ですがよろしくお願いします。

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