第22話「GRAND PRIX ~5th~」

「クロスファイアアアアーッ」
「遅いよっ!」
「!?」

 慌てて離れる。直後集束される魔法が爆発した。
 アクセルシューターが集まる場所へレヴィが何かの射撃系魔法を放ったからだ。

(すごいっ、ここまで出来るんだ…)

 ヴィヴィオは対戦相手のレヴィに驚く。
 常に高速移動系魔法と2本の大きな剣を使っている状態でまだ射撃魔法を撃つ余裕があるとは思っていなかった。

「ママもお喋りなんだからっ!」

 クロスファイアシュートの弱点を突かれて思わず悪態をつく。

 
  
 どっちが教えたのか判らないけれど彼女達は知っている。
 今までと違って魔法を使う合間の隙が無い。常に使っているのか先を読んで起動しているのか?
どちらにしても今までの彼女ではあり得ない。
 こうなるとより多くのカードから攻略を練れるレヴィの方が有利になるのだけれど、ヴィヴィオはこの窮地を楽しんでいた。

「レヴィ、いくよ~♪」

 再びアクセルシューターを放ち拳に魔力を込めてレヴィに向かって飛び込んでいった。



「ヴィヴィオちゃんは本当に楽しそうやね~。」

 八神堂のオペレーションルームではやてはデュエルの様子を眺めていた。
 魔法を駆使しての激戦ではあるけれど、さっきのなのはとアリシアの様に鬼気迫るものはない。

「レヴィも肩の力が抜けて良い動きをしています。」

 リインフォースの言葉に頷く。最初に感じたレヴィの強ばった動きは無くなっている。2日でここまで変わるとは思っていなかった。

「これも名デュエルになりそうな気がするね。良い意味で♪」

 そう呟きながらブレイブスペースの端にある応援席で見ているなのはとフェイトに視線を移す。

(2人はどんな風にみてるんかな?)


 
「………」
「………」

 はやての視線の先に居たなのはとフェイトもヴィヴィオとレヴィのデュエルを眺めていた。
 普段であればなのはは2人の動きを具に観察し、フェイトはオロオロしていただろう。しかし今は2人の表情は悲哀に満ちていた。
 それ程ヴィヴィオが楽しそうだったから、逆に言えば普段どれだけの重圧に耐えているのかが判ってしまったからである。
 古代ベルカ聖王の末裔、空戦Sランク魔導師、そして…失われた時間移動魔法【時空転移】の使い手…
 母親なのに…守ってあげられない不甲斐なさを感じざるえなかった。
  


 グランプリのトーナメントはベスト8戦位まで各店舗のシミュレーターを併行稼働させる。
 ユーリは今行われている8デュエルのエラーチェックをスタッフと一緒に行っていた。
 そんな中でどうしても気になるのがヴィヴィオとレヴィの1戦。
 端末の右端にウィンドウを出して時折見ていた。

「…?」

 その時ふとヴィヴィオの動きに違和感を感じた。
 先日見た彼女のデュエルと比べてスキルの使い方がぎこちない?
 レヴィがなのはとフェイトの特訓によって上手になったからそう感じたのだろう。

(レヴィ、頑張ってください)

 そう考えて心の中で応援するのだった。



「本当に強くなった。びっくりしちゃった。」

 草原に降り立ったヴィヴィオはレヴィに言う。

「いっぱい練習したんだぞっ!」
「うん、わかるよ。」

 残り時間を確認すると2分を切っている。ライフポイントの残量は殆ど同じ。このままいけばどっちが勝つか判らない。

「んじゃ最後に思いっきりやっちゃおうか。」
「受けて立ーつ♪」

 受け答えに思わず頬が緩む。
 彼女と戦うとやっぱり楽しい。
 ヴィヴィオはカードを読み込ませる。
 ジャケットが変わると同時に3つのシールドと巨大な砲身が現れる。フォートレスとストライクカノンだ。
 ジャケットだけを残して全ユニットを外し1番小さなシールドを手に取って右手に装着する。
ジャキッという音と共に白銀の刀身が現れた。
 シールドにしては他のと比べても小さく、どちらかと言えばナハトヴァールに近い気がしていた。

「うん、思った通り♪」

 そしてそのまま弓を引く様に下げ左手を前伸ばし、レヴィに対して向ける。
 それはアリシアが何度かのデュエルで見せた形。レヴィも対抗する為にジャケットを高速戦用に切り替える。

「いくよっ!」

 ヴィヴィオはそのまままっすぐレヴィ目がけて飛ぶ。しかしSonicMoveの様な高速系スキルを持っていない為その速度は遅く、逆にレヴィがヴィヴィオの進む方向を見て側面から突撃する。
 だがそれはヴィヴィオの作戦だった。
 横から来るのを見て射程に入った瞬間、地に足を着き

「テェェエエエイッ!」

 数10mの虹の柱を生み出し横薙ぎにした。

「うそぉっ!?」

 目の前に突然現れた光の壁に軌道を変えられずレヴィは斬ると言うより壁にぶつけられた様になって吹っ飛ばされライフポイントは消し飛んでしまった。


「……何あれ?」

 アリサが思わず呟く。彼女と同じように2人のデュエルを見ていた者は皆度肝を抜かれていた。

「あんな…スキル…知らない」

 別の場所で見ていたフェイトもその1人だった。
 先日からの大人のなのは・フェイトとの特訓で『相手の攻撃手段を常に考える大切さ』と何度も教わった。レヴィも一緒に教わっていたから知っている、彼女がヴィヴィオのデッキカードを見届け、その上で得意な接近戦を挑まれたから勝てると考えて動いたんだろう。
 パーソナルカードとリライズカード、アクセルシューター、紫電一閃、そしてフォートレス。デッキカード、それが今のヴィヴィオのデッキ。だったら今のは何?

(ヴィヴィオは何をしたの…)

 だが一方で彼女のデュエルを冷静に見つめる者もいた。

「やっぱりね。」

 アリシアはヴィヴィオ達の映像を見て笑い

「それが、あなたの新しい魔法ですか。」

 ブレイブスペースのポッドの前でシュテルも笑みを浮かべるのだった。
 


 ヴィヴィオ達がデュエルで熱戦を繰り広げていた頃、喫茶翠屋ではお昼の忙しさも落ち着いていて士郎が桃子と一緒に昼食を食べていた。
 翠屋ではアルバイトと順番に食事休憩を取るのだけれど、来客時の対応を疎かにしないよう士郎と桃子は別々に食事する事が多い。
 でも今日は

「たまには一緒に食べない?」

 そう言ってきた彼女に訝しげに感じながらも頷いた。

「ブレイブデュエルって凄いのよ。」

 食事のあらかた済んでコーヒーを持って来た時桃子が話始めた。士郎は多分これを話したかったんだろうと思い聞き役にまわる。


 ブレイブデュエルは仮想世界の中で魔法を使って遊ぶゲームだとなのはから教えて貰っていたけれど、桃子が体験したのは仮想世界でも魔法とは少し違っていたらしい。
 彼女が体験したのはカードになったアイスのトッピングや材料を集めてそれを使って美味しいアイスを作るゲーム。驚いたのはカードから実際に材料にした時、チョコの甘さや氷の冷たさを実際に感じた事だったらしい。
 でもチョコアイスを作る過程で幾つかの違和感を覚えた。
 最初に気づいたのは作ったアイスには香りがない。チョコとバニラを混ぜたら美味しそうに見えるのだけれど、カカオやバニラの香りが全くしないから甘くて冷たいという感じしかしない。フルーツ等のトッピングにも香りがなかった。
 次に口に入れた時の溶ける感触がなく直接甘いという感触しかない。更にトッピングでナッツを塗しても舌触りが感じない。甘いとは思うけれど美味しいとは思わないだろう。わかりやすく言えば甘くて冷えた流動食を食べている感じだった。


 ブレイブデュエルから出た桃子はグランツやスタッフから感想を聞かれてブレイブデュエルを純粋に凄いと思うのと同時に問題点を話したらしい。先の事を次々言われたら彼らも驚いただろう。

「それは手厳しいな。」
「そう? アイスやお菓子に限らず料理は5感で楽しむものでしょう? 見た目は十分に素晴らしいから、後は香りや歯ごたえ・喉ごし、舌触りなんかの触感とそれぞれの香り、甘さにも深みがあれば凄く良くなるわ。」

 士郎自身、ブレイブデュエルの中=仮想世界がどれ程凄いのかよく判っていないけれど、なのはや桃子が言うほどのものであれば凄いと思う。しかしそこに味覚や嗅覚、触覚を加えるのは並大抵の努力で出来るものでもない筈だ。

「それでね…グランツさんからお願いされたの。毎日じゃなくてもいいから手伝って欲しいって。お休みの日だけ行く様にするから…ダメ?」  

 上目遣いで桃子が聞く。
 彼女がここまで聞くということはそれ程魅力的だったからだろう。

「やりたいんだろう? いいよ。グランツさんに思いっきり要望を出してくればいい。」

 士郎がそう言うとパァァアアと晴れやかな笑顔で

「ありがとう、あなた。翠屋の味をブレイブデュエルの中で再現してみせるわ!」

 昔の漫画であれば彼女の後ろにメラメラと燃える炎が見えただろう。苦笑しながら

「おぃおぃ、店の方も頼むよ。翠屋の売りは…」

 桃子手製のと言いかけた時

「すみませーん! 着いたよっ」
「この子のお母さんがここに居るって聞いたんですがっ!」
「は~い♪ !? ヴィヴィオちゃん! あなたっ!」

 桃子の裏返った声を聞いて彼女の視線の先へと振り向くとそこには気を失っているヴィヴィオが2人の少女に抱きかかえられていた。

「ヴィヴィオちゃん!!」

 慌てて彼女達の所へ駆け寄りヴィヴィオを抱きかかえる。
 顔色は良くないが平熱だし呼吸もはっきりしている。病院へ連れて行けば…と考えたが彼女達は別世界から来ているのを思い出す。

「なの…ヴィヴィオちゃんのお母さんには私が連絡しておくからあなたはヴィヴィオちゃんを家で寝かせてあげて。」
「そうだな。」  

 桃子に頷いてから2人の少女に

「気を失ってるだけだから大丈夫だよ。ありがとう後は任せて、2人とも大変だっただろう、少し休憩していきなさい。」

 そう言い残してヴィヴィオを抱きかかえて家へと向かった。


~コメント~ 
 ヴィヴィオVSレヴィ編が終わりました。
 又桃子がグランツ研究所に行く話の後日談になっています。(なのはから頼まれた後ヴィヴィオの話で日が変わってしまったので)
 アイスの話はコミック版INNOCENTSで出てきた味覚エンジン云々の延長です。お菓子作りなら桃子さんの右にでるキャラはなかなか居ませんよね(笑)

 そして、現れるもう1人のヴィヴィオ(?)
 彼女はこれからヴィヴィオが巻き込まれるある事件の鍵になるキャラクターです。
 先日AdventStoryのあらすじを全て書き終えました。
 少しずつ成長するヴィヴィオの活躍を見守って頂ければ幸いです。

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