第24話「GRAND PRIX ~Stern VS Vivio~」

「これは…」
「どっちが勝つか判らなくなってきたな。」

 ユーリの呟きに続ける様にディアーチェが言う。

「うん…」

 レヴィも頷く。
 ディアーチェとレヴィはユーリの居るオペレーションルームに移動してデュエルを観戦していた。モニタの中で戦っているフェイトとアリシアはそれ程白熱していた。
 ライトニング2とソニックフォーム、どちらも高速移動に特化したジャケット。その上でSonicMoveを同時に2つ使いながらそれぞれが魔法を使っている。
 若干アリシアが押していて、最初に受けたダメージは大差が無くなってきている。それよりも3人を驚かせたのがフェイトがアリシアに合わせてかSR+カード【疾風迅雷】でバルディッシュを2本の剣に変えていたからだ

 
 元々フェイトはデバイスを両手で持つ武器として斧や鎌、大剣状で使っていた。当たった時の威力は大きいがどうしても大振りになってしまう為、キリエの様なテクニック系と相性が悪かった。
 彼女がそれをあえて変えてきた。その意味は大きい。
 練習もしたらしくぎこちない動きはないけれどアリシア程鋭さはない、しかし他の魔法が使える事が大きかった。
 そしてアリシアがなのはを倒した時に使った技はある種の溜めが要るのか、離れてもアリシアにその時間を作らせない様にしていた。



「さすがフェイトちゃん、アリシアちゃんを研究してきたな…」

 八神堂ではやては感心する。
 数日前、プロトタイプシミュレーターでアリシアがレヴィとデュエルした事があった。
 その映像を後で見た大人フェイトがレヴィに話していた。

『休ませない様にずっと何か攻撃していたら勝てるかも知れないよ。』
 と、一呼吸でも出来る時間があれば体制を直して来るだろうがそれを言い当てた彼女も凄いが実践しているフェイトも大概だと思う。
 それだけ攻撃し続けるということは魔法力の管理も大変だからだ。

「あらら…フェイトも知ってたんだ。」

 ヴィヴィオもアリシアの苦戦をみて苦笑する。

「研究もしていて、なのはと練習していたみたいだよ。」

 アリシアも迎撃タイプだから相手のタイミングに合わせる時間を考えている。でもその時間を作らせないようにすれば…彼女の技は全て使えなくなる。

「押し切っちゃうか押し切られちゃうか…それとも…」

 ヴィヴィオにはまだ何か隠してる物がある気がした。


 
「っもう! ずっと付いてくるなんてしつこいよっ!」
「そうしないと勝てないからっ 行けっ!」

 金色の矢が数本アリシア目がけて放たれる。アリシアはそれを避けるが矢はアリシアがさっきまで居たところで止まって方向を変え再び襲い来る。避け続ける方法もあるけれど回り込まれるのが嫌だから叩き切る。しかしその時にはフェイトは間近に来ていて

「はああっ!」

 左の剣を振り下ろしていた。右の小太刀で受けると彼女の右手の剣で突きに来る。

「も~っ、いじわるっ!」

 更にそれを弾くとフェイトの左手が光っていて。

「プラズマスマッシャーっ」

 砲撃魔法が炸裂する。

(誰よっ零距離砲撃なんて教えたのはっ)

 そんな滅茶苦茶を教えそうな人は数人居るけれど同一人物しか浮かんでこない。

「そこまでするなら私も本気になるよっ!」

 後から放たれた金色の矢を弾いてフェイトに突っ込む。振りかぶるアリシアと構えるフェイト。
 しかし次の瞬間、アリシアが振りかぶって来たのは短剣ではなく水色の光だった。しかもそれを彼女は投げて来た。弾くフェイト。

「!?」
「まだまだっ!」

 次々と左右の手から投げられる剣。数は少ないけれど近接戦だけだと思っていたフェイトにとってこの攻撃方法は完全に予想外で飛礫の様に放たれるその魔法を弾く事しか出来ず。更に視界を弾いた後の剣の欠片によって奪われ

「タァアアアッ!!」

 気がついた時には何度か見たあの突きが迫っていた。

【Winner Alicia】
  
 メッセージが現れた時、八神堂は大歓声に包まれた。


 
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト…」

 ヴィヴィオにはアリシアが使った魔法が判った。魔力で作った剣を一気に放つ範囲攻撃魔法、でもアリシアが使えば範囲攻撃ではなく近接用にもなる…

「こんな使い方するなんて…」

 フェイトも魔法そのものは知っているらしく驚いている。

「次は私か…ママ、アリシアにドリンクお願い。きっと疲れてると思うから。」

 そう言うと椅子からトンッと飛び降りて

「じゃあ行ってきます。」

 ステージへと向かった。



「アリシア、格好良かったよ。」

 ステージ袖まで行った時アリシアを見つけて声をかける。

「折角ヴィヴィオと対戦する時まで隠しておきたかったのに、フェイトが凄かったから使っちゃったよ。」
「うん、私がフェイトと対戦してたら負けちゃってたかも…」
「次はヴィヴィオの番だよ。決勝で待ってるから。」
「うん、思いっきり遊ぼうね。」

 アリシアが上げた手をパンっと叩いてステージへと上がった。

『白熱したデュエルの次は準決勝2試合目、シュテるんとヴィヴィオがデュエルするよっ。シュテるんもヴィヴィオもがんばれーっ!!』

 グランツ研究所でレヴィがアミタからマイクを取ったらしい。両方を応援しているのが可笑しくて彼女らしくて頬が緩む。

『レヴィ返しなさいっ!。し、失礼しました。シュテルさんはみんなが知ってる通り、ロケテストからグランプリ1位を保持し続けているブレイブデュエルのチャンピオン。対するヴィヴィオさんもWeeklyデュエルのノンダメージと催促クリアタイムのレコードホルダーです。』

 アミタがマイクを取り返したらしい。八神堂でも笑い声が聞こえる。

『シュテルとヴィヴィオちゃんは何度も対戦をしてるいわばライバル同士でアバタージャケットもセイクリッド同士、T&Hは全員負けちゃいましたが白のセイクリッド繋がりでヴィヴィオちゃんを応援しちゃうよ♪』

 アリシアが勝った時点でT&Hは全員負けた事になる。

(応援される分頑張らなきゃね。)
『は~い♪ こちらは八神堂です。アリシアちゃんの勝利に続いてヴィヴィオちゃんを応援しようと盛り上がっています。』

 シャマルにウィンクで合図されて手を大きく振ると何人もの声援が聞こえた。聞こえた方へ更に大きく振る。

「ありがと~♪」

 その後ポッドへと向かう。

『『では準決勝の用意は良いですか?』』
『『『グランプリデュエル、レディーGoっ!!』』』 

 3人のかけ声と共に仮想空間へと向かった。


  
「姉さん、お疲れ様。はいこれ」
「ありがと~、のど渇いてたんだ。」

 フェイトの居るテーブルに戻って彼女から貰ったスポーツドリンクを飲む。体は動いていないけど頭の中が疲れてる奇妙な感じだ。

「よく見てるね。」
「ん? 何?」
「ううん、姉さんとヴィヴィオ…仲良しなんだなって。」
「当然っ!」

 ビッと親指を立てる。

「ヴィヴィオとシュテル、姉さんはどっちが勝つと思う?」
「ヴィヴィオに決まってるじゃない。」
「即答だね。」

 苦笑いするフェイトに

「だってヴィヴィオ全然本気じゃないんだもん。あの中で…多分1番強いんじゃないかな?」 
「えっ? 本気じゃないって?」
「ずっと見てたでしょ。ヴィヴィオ、対戦相手に合わせてデュエルしてたんだよ。近接戦が得意な子は近接戦で、中長距離戦が得意な子や作戦を考えてた子も防御が高い子もそうだった。誰にでも合わせて対戦するなんて出来ると思う? それだけ余裕があったってこと。少し本気になったのってレヴィとアミタさん位かも…」
「手を抜いてたってこと?」
「悪く言っちゃえばそうなる…だけど、きっとヴィヴィオは対戦相手にもグランプリを楽しんで欲しいって思ってるんだと思う。管理局の練習でもあるでしょ、同じスタイルで模擬戦して悪いところを教える方法。私もヴィータさんに散々やられたし…ヴィヴィオはきっと同じ事をブレイブデュエルで遊びながら教えてたんじゃないかな。」

 アリシアにはそう言える自信があった。
 ヴィヴィオは既に異世界のヴィヴィオとミウラにそれをしている。
 あの時はもっと荒々しかったけれど…

「凄いよね~ヴィヴィオは。」

 ため息をつきながら呟くのだった。



「変わったステージだね」

 空中ステージだと思っていたら大きな地面があってその中央にある円柱形の場所に降りる。

「フリーステージです。相手と何処でデュエルするか相談して決めます。草原、岩場、森林、廃墟都市、この闘技場、もちろん空中や湖の中、洞窟の中等もあります。」

 トンッと降りてきたシュテルがその問いに答えた。

「そうなんだ、教えてくれてありがと…」

 シュテルのジャケットを見て驚く。
 なのはと色は違うがエクセリオンモードだったからだ。つまりは彼女は開始から全力で行くと言う意思表示。

「何処で戦いますか?」
「何処でも良いんだけど…じゃあ全部、折角広いんだし。」
「クスッ、判りました。」
「シュテルのジャケット…」
「はい、始めから全力です。あなた相手に手加減出来ると自惚れる程強くありません。2人に教えて貰って痛感しました。」

 相当なのはとフェイトに鍛えられたらしい。

「判った。じゃあ私も、RHdいくよ。カードドライブ、リライズアーップ!!」
【Yes.Armored module Startup】

 虹色の光がヴィヴィオを包み込み鎧を纏い直した。それを見てシュテルもデバイスを構える。

「では…」

 ヴィヴィオも構える。

「レディ…」
「「Goっ!」」 

 そして2人のデュエルの幕が開いた。
 


「あれはっ!?」

 オペレーションルームで見ていたはやては思わず立ち上がる。

「うそ…」
「騎士甲冑!!」

 テーブルで観戦していたフェイトとアリシアも驚く。確かにアレを纏えばヴィヴィオは本気だと判る。でも逆にアレを纏ってしまったら多分ここでは誰も彼女に勝てない。聖王の鎧が全ての攻撃を弾くからだ。
 初めてジャケットを見た者や前回来た時のモンスターハントを知っている者も居たらしく会場がざわめく。

『ヴィヴィオさんのジャケットについて説明します。ヴィヴィオさんは先日グランツ研究所でセクレタリー迎撃戦に参加しましたがその際のカード報酬を固辞しました。その代わりとして彼女がモンスターハントで使用したジャケットを参考に改造し提供しました。彼女が纏っているジャケットはセイクリッドの最終形ジャケット【エクセリオン】と同じ効果です。』  

 アミタのアナウンスが聞こえて3人はホッと息をついた。
 だがその時には息もつかせぬ激戦が始まっていた。

 数10のアクセルシューター同士がぶつかり、それと同時に

「ハァァァアアアッ!」
「紫電一閃っ!」

 フォートレスのシールドから伸びた剣とディザスターヘッドが激しい火花を放つ。直後

「インパクトっ」
「ディザスター」
「キャノン」「ヒートッ!」

 逆手から砲撃が零距離でぶつかった。どちらかの攻撃力が高ければダメージを負う筈だが爆風を飛び越えて更にぶつかる。
 2人とも全くライフポイントは減っていない。

「クロスファイアァア」

 ヴィヴィオは再び10個のアクセルシューターを放った後高速回転させる。

「弱点は知っています。」

 射撃魔法を集束中心点へと放つ。集束点を爆発させてしまえばクロスファイアシュートは撃てない。だが高速回転したアクセルシューターはシュテルの予想に反し、集束直前に軌道を変え射撃魔法が通り過ぎた地点へと集まって

「シュートッ!」

 砲撃魔法となって襲った。

「くっ!」
「ずっと弱点を残すわけないでしょっ!」

 更にアクセルシューターを作ってヴィヴィオは攻勢をかけた。



「凄い…」
「シュテルさんと互角です。」

 オペレーションルームで見学していたヴィヴィオとアインハルトは2人のデュエルに目を奪われていた。
 さっきのフェイトとアリシアのデュエルも凄かったけれど、こっちはこっちで豪快な正しく魔法同士のぶつかり合いといった感じだ。

「ユーリ…あやつ…ヴィヴィオの魔法、プロトタイプの時と比べて遅くないか?」

 しかしその中でディアーチェは見ていて気になったらしくユーリに聞く。

「遅い…ですか?」
「ああ、使うたびにスキルカードを使っていないからそれ程遅いと感じないのだろうが、見ていて気になってな。」
「あっ、ボクも気になってた。ヴィヴィオ最初から飛ばしてるけど魔法力多すぎない?」

 シュテルには魔法力を使い切らせるまでの持久戦も想定している筈。

「わかりました。調べてみますね。最初に魔法力と…え?」

 思わずキーを打つ手が止まる。

「どうした?」
「どうしたの?」
「ヴィヴィオのMP…7割くらい残ってます。シュテルの方が半分を切っているからこのまま続けばシュテルが負けちゃいます。」
「「!?」」   

 その言葉に2人は驚いてモニタに駆け寄る。

「ホントだ…」
「そんな馬鹿な話があるかっ!何が理由だっ」

『クロスファイアァアアアシュートッ!!』

 ブレイブデュエルの中でヴィヴィオが砲撃魔法を放つ。その瞬間MPが1割ほど減る。
 シュテルがそれを避けて炎に染めて近づき振り下ろすとヴィヴィオが右手のシールド部分で弾いてそのまま剣を振り上げる。その間にMPゲージが元に戻っていく。休息状態でもこれ程急激にMPは戻らない。

「ヴィヴィオは何を入れて…!!」

 デッキのカードリストを出して思わず息をのむ。

「うそ…」
「まさか…あやつはこれを使い続けているのか…」

 どうすればこんな事を出来るのか?
 その能力に驚かされるのだった。

~コメント~
 同日2話掲載になってしまいました。
 フェイトvsアリシア編~シュテルvsヴィヴィオ編です。
 
 アリシアが使った魔法ですが、もし彼女が使ったら1番面白そうな魔法って何だろう?と考えた結果です。



 

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