第26話「GRAND PRIX ~決勝戦開始~」

「…表情が変わったね。」

 モニタを見てアリシアは呟く。
 シュテルが言い出した時どうフォローしようかと考えたけれど先にディアーチェがフォローしてくれて助かった。
 でも同時に彼女の言葉も引っかかる。ヴィヴィオはシュテルとデュエルしながら何かをしている…それは何?

(ストライクスターズも使ってないし…何を狙ってるの?)

 アリシアがなのは戦やフェイト戦で見せた様にヴィヴィオも何かを隠している。それがもうすぐ見られるかもしれない。
「うん…」
「フェイトは知ってるの? ヴィヴィオが隠してるの」
「ううん、でも…何となくわかるかな。」
「そう…」
「聞かないの?」
「うん…ヴィヴィオも私の事聞いてないでしょ。でもグランプリが終わればちゃんと話すよ。フェイトにもね」
「うん、待ってる。」

 会話をしながらも視線は中央モニタから離さなかった。



 ブレイブデュエルの中では激戦も終盤に差し掛かっていた。
 これまでの2人の攻防は今までのデュエルと比較しても異質だった。堅い防御と大出力砲撃に定評のあるセイクリッド同士のデュエルだった事もあり派手な魔法の応酬が行われていた。それにもかかわらずライフポイントは最初に僅かに減っただけで2人とも9割以上残っていて既に残り時間は2分を切っていた。
 このままいけばクリーンヒットを与えた方が優勢勝ちになる。誰もがそんな事を考える様になった時、ヴィヴィオが動いた。
  
『フォートレスっ!』

 騎士甲冑の上にフォートレスのシールドとストライクカノンを装備する。
背丈以上の砲身と盾を両腕に抱え砲口を向ける。  

『ルシフェリオン』

 対するシュテルもルシフェリオンを砲撃戦用に切り替える。
 2人は1度この状態で戦っている。その時は砲撃を跳ね返すという予想外の反撃でシュテルは敗れたが今の彼女にはもう通じない。

『いくよっ!』

 そう言うと一気に上空へと飛んだ。飛び上がりながらもアクセルシューターを10個放っている。
 シュテルはヴィヴィオの後を追いかけながら襲い来るアクセルシューターを同じ系統のシューターで打ち落とし、残ったシューターで彼女を追随する。そこへストライクカノンが火を噴いた。シュテルの放ったシューターが消し飛ぶが彼女はそれを予想していた様に

『ルシフェリオンブラスター』

 引き金を引いた。

(そうか…シュテル…)

 さっきまでは先制していたから相殺されたけれど、先にヴィヴィオが放てばそれ以上の攻撃を以て吹っ飛ばせばいい、いくらヴィヴィオでもクロスファイアシュートの様な変化させたり反射させない限り放った後の攻撃値を変えられない。
 2人の放った砲撃魔法同士がぶつかる。
 次の瞬間ルシフェリオンブラスターがヴィヴィオの砲撃を突き破ってストライクカノンに直撃した。ルシフェリオンブラスターの方が強かったからだ。

『!!』

 ヴィヴィオがストライクカノンを取り外すと直後に爆発、ヴィヴィオのライフポイントが1割程減った。だが彼女は気にせず急降下しながら右手の大型シールドの先を向け

『いっけぇええええっ!!』

 再び虹色の砲撃を放った。

『盾って言うよりウェンディのライディングボードを細くしたみたい。武装タイプなのかな?』
『名前はフォートレスとストライクカノン。AMFの中でも運用出来る魔力駆動の兵器』

 ヴィヴィオが言っていた様に只の盾じゃなく、なのはが言った兵器。だがそれもシュテルは予想していたのか、再びルシフェリオンで迎撃する。これも貫かれシールドに戻したが即座に防御に切り替えられず直撃、爆発する前に外し背に爆風を受ける。

「何を…?」

 シュテルの迎撃でストライクカノンとシールドを壊されライフポイントを削っても勢いを変えない。何を考えているのか判らない。
 アリシアが呟いてる間に少し小さいシールドを左手で掴み先端から砲撃を放つ。
 シュテルはそれを容易く避けながら1直線に向かってくるヴィヴィオに3撃目を放つ。アリシアなら余裕で回避できるが、SonicMoveの様な高速移動系スキルカードを持っていないヴィヴィオには避けられない。そもそも避けるつもりがないのかそのままシールドを文字通り盾にして放り出し爆発の勢いを付けて更に迫る。
 シュテルも4撃目を準備している。残ったのは小さなシールドのみ。アレは剣にはなるけれど砲撃魔法は放てない。でも…シュテルはレヴィ戦で大きな柱を作ったのを知っている。離れてもアレを受けたら落ちる。

『ファイアっ!』

 シュテルもそれを考えたのか今度は先に放った。ヴィヴィオはシールドで受け爆発する直前に捨て爆風を背負って更に速度を上げた。

「…そうか!!ヴィヴィオっ」

 その時になってアリシアはヴィヴィオの目的に気づいた。
 彼女の目的は2つ、
 1つはシュテルの魔法力をギリギリまで削る。
 そしてもう1つは移動力を奪う為の重武装を付けさせた状態でヴィヴィオが近づけるタイミングを作る。

『ベルカの騎士の本領は近接戦、叩き切って進むのみ。シグナムさんが言ってなかったですか?』

 以前ヴィヴィオがミウラに言った言葉が脳裏をかすめる。

『ハァァアアアアッ!』

 5撃目を放つシュテルだが、ストライクカノンとシールドを全て外した時点でエクセリオンと同じジャケット能力を持ったヴィヴィオの機動に当たるはずもなく空へと軌跡を作ってヴィヴィオが胸元に入る時間を作るだけだった。

『!!』

 シュテルは片手をクロー状にしていたがヴィヴィオはそれを避けヴィヴィオの光った拳がルシフェリオンブラスターに突き刺さる。そしてルシフェリオンブラスターごとシュテルを引き込んで

『紫電一閃っ!』

 防御態勢に入る前にもう片手から伸びた光剣で強打を与えその1撃で全てのライフポイントを奪ってしまった。

【Winner Vivio】

(思い出したよ…ヴィヴィオのカウンター。アレを超えなきゃ勝てないのを…)

 ヴィヴィオが勝利したアナウンスを聞きながらアリシアは背筋をブルッと震わせた。



 ヴィヴィオは力が抜けたシュテルを抱きかかえてフゥッと息をつく。デュエルは終わった。

「…肉を切らせて骨を断つ…ですか…」

 抱き支えたシュテルが言う。

「肉と骨が何かわかんないけど…そんなに余裕はなかったよ。ギリギリだった。」

 もう大丈夫です。と言われて抱きとめていた手を離す。

「自らもダメージを負いながら相手に決定的になダメージを与えるこちらの言葉です。私はどこかで誤りましたか?」
「う~ん…最後の砲撃を撃たずにブラスターからブラストヘッドとルシフェリオンクローに切り替えられちゃってたらちょっとピンチだったかな。」

 ニヘラと笑う。

「そうですか…ですがそれも予想範囲の中ですね? もしかして…私の魔法を相殺していた理由がそれですか?」
「まぁそんなとこ…かな。」
「そうですか…心躍る良き戦いでした。アリシアとの決勝戦、応援しています。」

 差し出された手をヴィヴィオはギュッと両手で握って

「ありがとう、楽しかったよ♪ また遊ぼうね。」

 頬を崩し答えた。



 決勝の前、連続でデュエルは行わず10分間の休憩時間が設けられた。流石に一般席に居ると騒がしくなるのでヴィヴィオはアリシアと観戦していたフェイトと一緒に管制室に来ている。
 先に準決勝で敗れたシュテルとフェイトのデュエルがあって3位を決めるらしい。モニタにT&Hとグランツ研究所で準備をしている2人の様子が映される。

「何だか凄いね…」

 フェイトから受け取ったスポーツドリンクを飲みながら会場が異常に盛り上がっているのに驚く。

「私たちが勝っちゃってブーイングが起きるかもって思ってたのに…」
「何しろグランプリ初やからね、同じショップから決勝に出るのは。しかも八神堂は今までヴィータが6位になったのが最高。決勝、準決勝には誰も入れへんだから嬉しさもひとしおや。盛り上げてくれてありがとうな。」

 そう言えばデュエル前にそんな事を聞いた気がする。

「でも、私たちが引っかき回しちゃった感も凄くあるんですが…」

 頬を掻きながら言う。
 ヴィヴィオとアリシアがここに来てブレイブデュエルを知らなければ順当にシュテルとフェイトが決勝戦に残っていただろう。

「そうやね。ヴィヴィオちゃんはモンスターハントで見たことないジャケット着て1人で倒しかけるしWeeklyで全部の魔法同時に使うし、アリシアちゃんもフェイトちゃんに勝った後、起きひんしブレイブデュエル終了?みたいな状態にもなって、ヴィヴィオちゃんが切れてあの部屋壊し出すし…色々あったな。」
「2人が帰った後博士の白髪増えてたらしいからな~」

 目を細めながら呟くはやての言葉がトストスと2人に突き刺さる。耳が痛いどころの話じゃない。

「あ、あれは…その…」
「ええ、色々とあって」
「でも、その分新しい世界も見えた。これからブレイブデュエルは大きく変わるよ、ヴィヴィオちゃんとアリシアちゃんのおかげでな。」

 ニコリと笑ってはやてが言うのを見てアリシアと目を合わせ苦笑した。


 
 中央モニタでは休憩時間が終わりシュテルとフェイトが白熱したデュエルを繰り広げている。
 対シュテル用にデッキ構成を変えたフェイトにシュテルも迎撃用にデッキを変えたらしく、先ほどとは違って高速で射撃魔法と近接打撃系魔法が飛び交うデュエルになっていた。
 2人のライフポイントも残り2割くらいになっているからそろそろ決着が付くだろう。
 理詰めのシュテルと高速戦のフェイト、応援していたいけれど

「ヴィヴィオ、アリシア時間だが用意はいいか?」

 シグナムが呼びに来た。こっちの準備が出来たらしい。
 ヴィヴィオはアリシアと拳をコツンとぶつけ合って

「思いっきり遊ぼうね」

と笑顔で言った。



『は~い、T&Hのウグイス娘、アリシアです。当店のエース、フェイトが負けちゃうという大波乱のグランプリもいよいよ決勝戦。改めてプレイヤーを紹介するね。』

 ステージに立ったアリシアの顔がアップでモニタに映る。

『私と同じ名前のアリシア・テスタロッサちゃん。T&Hのショッププレイヤーを次々に勝ってセクレタリーのトーレとの激戦に勝ち抜いて決勝戦まで来ました。もうみんな知ってると思うけどに2刀流の達人です。私を応援するみたいでちょっと恥ずかしいけどT&Hはアリシアちゃんを応援するよ~!!』

 少し頬を赤らめて小さく手を振る。
 T&Hに居たら違うよと慌てて突っ込んでいるところだろう。
 ステージ袖でヴィヴィオはクスッと笑う。

『は~い、グランツ研究所のアミタです。グランツ研究所も今までグランプリの覇者だったシュテルが負けてしまい響めきが起こっていましたが今は落ち着いています。こっちも決勝に進出したプレイヤーを紹介しますね。』
「行ってこい」

 シグナムに背を押されてトトトッとステージの階段を上るとモニタにヴィヴィオの顔がアップで映った。

『2人目の白のセイクリッド、ヴィヴィオちゃん。彼女はシュテルやレヴィ、グランツ研究所の猛者を次々と破りました。そのデュエルは対戦相手に併せて変えていく多彩な攻撃スタイルが特徴です。特にクロスファイアシュートはブレイブデュエルの可能性を広げてくれました。T&Hさんがアリシアさんを応援しちゃうならグランツ研究所はヴィヴィオちゃんを応援します! ヴィヴィオちゃん熱いバトルをお願いします!』
『は~い、アミタさんもアリシアもありがとうな~。最後に八神堂の司会兼店主の八神はやてです。グランプリの決勝戦が1ショップのプレイヤー同士になるのは初めてで、それが八神堂やったのはとても嬉しいです。ヴィヴィオちゃん、アリシアちゃん。最後に思いっきり盛り上げてな。』

 管制室からの言葉に頷く

「ヴィヴィオ、全力勝負! 本気で来なきゃ怒るからね。」
「もちろんアリシアもねっ!」

 アリシアの差し出した拳に自らの拳を突き合わせた後、シャマルとリインフォースによって用意されたポッドに入って

「「ブレイブデュエル スタンバイ、カードドライブ リライズアーップ!!」」

 同時に仮想世界へと飛び込んだ。

~コメント~
 更新が遅れてしまいました。(遅れた理由は又後で…)
 ヴィヴィオVSシュテル戦から決勝、ヴィヴィオVSアリシアです。
 
 イノセントの世界に来て文字通り引っかき回しているヴィヴィオとアリシアですが、2人が見る方向性には違いがあります。
 アリシアは元世界でヴィヴィオと並んで歩きたいと思いながら時空転移の理『どの世界に行っても自分の流れる時間は1つだけで、選んだ事象が必然になる』から自らプラスになる事を率先して取り入れています。剣術だったり、ブレイブデュエルの中での魔法運用だったり…
 一方ヴィヴィオはというと、行った先の世界の未来を変えてしまうのを理解しながら更に1歩踏み込んでその未来を良い方向に変えようとしています。なのでブレイブデュエルも楽しんでいますが、なのはとフェイトを連れてきてシュテル達の教導して貰ったりブレイブデュエルを通しての新しい可能性を考えています。

 そんなヴィヴィオがアリシア戦でどんな風に動くのか楽しみです。


 さて、少し話題を変えまして1週掲載が遅れた理由です。
 3/31と4/1に東京でありましたとあるライブに参加してきました。(3/30の物販の列にはびびらせて頂きました…あれ凄い。)
 放送当時のアニメを全部見た訳でも劇場に足を運んだ訳でも全曲聴いた訳でもないのですが、受かれば行ってみたいな~と思っていて劇場チケット1枚と某サイトの争奪戦で両日券を入手した次第です。

 ライブに行ったのは以前静奈君からけいおんのライブチケットを貰って以来だったのですが…120%楽しませて頂きました。

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