第08話「魔法を使わない魔導師」
- AdventStory's After > 第2章 SIDE-M
- by ima
- 2017.08.29 Tuesday 16:23
ヴィヴィオ達が海鳴市に行った日の朝
「行ってきまーす。」
「行ってらっしゃい。アリシアデバイスは持って行きなさい。」
「ちゃんと持ったから大丈夫~♪」
アリシアは玄関を出たところで家の中に声をかけて走り出した。
練習をするのにママと約束したのは4つ
『危ない事には関わらない。もし巻き込まれそうになったらどんな小さな事でも相談する。』
『体を壊すような練習はしない。』
『デバイスとペンダントはどんな時も必ず持っていく。』
『勉強や食事の時間はきちんと守りチェントが寂しがらせない』
「行ってきまーす。」
「行ってらっしゃい。アリシアデバイスは持って行きなさい。」
「ちゃんと持ったから大丈夫~♪」
アリシアは玄関を出たところで家の中に声をかけて走り出した。
練習をするのにママと約束したのは4つ
『危ない事には関わらない。もし巻き込まれそうになったらどんな小さな事でも相談する。』
『体を壊すような練習はしない。』
『デバイスとペンダントはどんな時も必ず持っていく。』
『勉強や食事の時間はきちんと守りチェントが寂しがらせない』
普通これだけを聞いたら「なんだ、どこの家にでもある約束じゃない」と思うだろう。だけどその約束の本当の意味がどこにあるのか?と聞かれたらアリシアとプレシア以外誰も理解出来ないに違い無い。
ヴィヴィオやフェイトが居ない今、私に何かあったら大変な事になる。
異世界の私が言っていた様に『プレシアの娘で、フェイトとチェントの姉』は私しか居ない。
私やママが居ない世界がどうなって行くのか見ているから…。
(…っていうより何かあった方が大変なんだよね…ママとフェイトとヴィヴィオ…ジュエルシード事件のレベルで終わる気がしない…)
苦笑いしながら住宅地から近くの公園へ抜ける坂道を一気に駆け上がる。
「っと!」
駆け上がった所で息を整えずにそのまま走りだす。ここから公園に入って湖畔を1周して帰れば朝食の時間になる。
走り出して数分も経たない内に見覚えのある3人が見えた。
正確に言えば2人と1匹か…
「おはよ、アリシア」
「はやてさん、ザフィーラさんと…ミウラさん?」
「おはようございます…どうしてここに?」
「アリシアも知ってるんやね。昨日なのはちゃん家に泊まったんよ。フェイトちゃんからアリシアが練習始めたって聞いて顔と手合わせをってな。」
「は、はじめましてっ、ミウラ・リナルディですっ! アリシアさんの事は映像や皆さんからお聞きしてましてっ…あのっ…」
そうだった、忘れていた。こっちの彼女とは初めて会うのだ。
(ヴィヴィオ、そんな大事な事教えてよっ…ってそっか、通信も念話も使えないんだ。)
魔法が使えずデバイスも修理中、何だかんだと言っても魔法に頼ってるんだと妙な所で実感してしまい苦笑する。
「はじめまして、アリシア・テスタロッサです。顔合わせは兎も角手合わせって? 流石に魔法使えませんよ?」
そんなことをしたら始めて2日目で練習を禁止されてしまうし、何よりここは聖王教会の管理区域。余程じゃない限り魔法を使ったら怒られる。
…まぁどこかの誰かが近くで集束魔法を連続で放っていたけれど…
「そこは大丈夫、ここでデバイス使ったら私らも怒られるから。ミウラ、アリシアは魔力は弱いけど魔法なしならヴィヴィオより強いよ。アリシアもデバイス無しで少し相手頼める?」
はやてが言うとミウラは少し驚いた風に私を見る。
(そういうことか…)
何となく理解する。はやてはミウラを海鳴に行く前のヴィヴィオと会わせたついでに私にも紹介する為にここに来たらしい。何の為なのかは…いまいち判らない。
「ヴィヴィオと魔法無しでも全然勝ってないんですけど…。ここを1週する位の時間でよければ。」
そう言うと林の中に落ちていた枝を2本取って手頃な長さに折って持つ。
「おっ、お願いしますっ。」
「こちらこそ、いつでもいいよ。」
真剣な眼差しで2.3歩前に出て構えるミウラ。
直後もの凄いダッシュで目の前に来る。そのまま回し蹴りが来る。
「っ!」
「ハァアアッ!」
数歩引いて避けると続いて連続でのパンチ。それも難なく避ける。
そこから右に体を捻ってローキックから足払い。ジャンプして避けると体勢を立て直しながらジャンプしキック。
アリシアは膝を屈めてミウラの足先に合わせキックの勢いを借りてクルッと回転して先に着地し
「ていっ!」
彼女が着地する瞬間を狙って足払いをかけて
「!!」
尻餅をついたミウラの頭を枝でコツンと叩いた。
これで勝負は終わった。
「凄いな~、アリシア。前と全然動き違うやん」
「ありがとうございます。魔法が使えない分こっちで頑張らないとなので…。あっもうこんな時間! ミウラさん、また練習しましょうね。今度はヴィヴィオも一緒に。はやてさん、ザフィーラさんもまた。」
そう言うとペコリと礼をして元来た道を走り出した。
「どうやった? ミウラ」
ザフィーラに起こされたミウラは走って行くアリシアを見つめている。
「…師匠が言われていた事がよくわかりました。」
「ヴィヴィオさんとアリシアさん…凄い魔力を持っていても、全然魔力が強くなくても…本当に強い人は強いんだって。私…いっぱい練習して強くなっていた気になってました。でも、私より強い人なんていっぱい居るんですよね。」
「ああ…そうだな。」
ヴィヴィオはあの鎧を見せた。けれどあくまで見せるだけでミウラを倒すのではなく彼女に合わせていた。
アリシアは魔法を使わない代わりにミウラの弱点を瞬時に見つけ彼女にわかりやすい様に指摘した。
限られた枠内で1番強くなってしまうと言葉で強い者が居ると言っても頭で判ってはいても慢心が出てきてしまう。
ここまではっきり差を見せつけられるとそんな心も吹き飛んでしまっただろう。
「もっと練習します。練習して強くなって一緒に練習出来るくらいに…」
ザフィーラを見ると静かに頷いた。
彼女の中で答えは見つかったらしい…
「そうやね、頑張ろうな」
満面の笑みではやても頷くのだった。
~コメント~
Side-M(MIDCHILDA)ということで、アリシアとミウラの初顔合わせでした。
追記:
9/3にインテックス大阪で開催されるコミックトレジャー30にサークル参加いたします。AdventStory3の新刊を頒布予定しています。
(私の準備は終わったのであとは静奈さんが調整中だそうです。)
春から夏にかけてはサークル活動が全く出来なかったのでその分色々頑張ります。
ヴィヴィオやフェイトが居ない今、私に何かあったら大変な事になる。
異世界の私が言っていた様に『プレシアの娘で、フェイトとチェントの姉』は私しか居ない。
私やママが居ない世界がどうなって行くのか見ているから…。
(…っていうより何かあった方が大変なんだよね…ママとフェイトとヴィヴィオ…ジュエルシード事件のレベルで終わる気がしない…)
苦笑いしながら住宅地から近くの公園へ抜ける坂道を一気に駆け上がる。
「っと!」
駆け上がった所で息を整えずにそのまま走りだす。ここから公園に入って湖畔を1周して帰れば朝食の時間になる。
走り出して数分も経たない内に見覚えのある3人が見えた。
正確に言えば2人と1匹か…
「おはよ、アリシア」
「はやてさん、ザフィーラさんと…ミウラさん?」
「おはようございます…どうしてここに?」
「アリシアも知ってるんやね。昨日なのはちゃん家に泊まったんよ。フェイトちゃんからアリシアが練習始めたって聞いて顔と手合わせをってな。」
「は、はじめましてっ、ミウラ・リナルディですっ! アリシアさんの事は映像や皆さんからお聞きしてましてっ…あのっ…」
そうだった、忘れていた。こっちの彼女とは初めて会うのだ。
(ヴィヴィオ、そんな大事な事教えてよっ…ってそっか、通信も念話も使えないんだ。)
魔法が使えずデバイスも修理中、何だかんだと言っても魔法に頼ってるんだと妙な所で実感してしまい苦笑する。
「はじめまして、アリシア・テスタロッサです。顔合わせは兎も角手合わせって? 流石に魔法使えませんよ?」
そんなことをしたら始めて2日目で練習を禁止されてしまうし、何よりここは聖王教会の管理区域。余程じゃない限り魔法を使ったら怒られる。
…まぁどこかの誰かが近くで集束魔法を連続で放っていたけれど…
「そこは大丈夫、ここでデバイス使ったら私らも怒られるから。ミウラ、アリシアは魔力は弱いけど魔法なしならヴィヴィオより強いよ。アリシアもデバイス無しで少し相手頼める?」
はやてが言うとミウラは少し驚いた風に私を見る。
(そういうことか…)
何となく理解する。はやてはミウラを海鳴に行く前のヴィヴィオと会わせたついでに私にも紹介する為にここに来たらしい。何の為なのかは…いまいち判らない。
「ヴィヴィオと魔法無しでも全然勝ってないんですけど…。ここを1週する位の時間でよければ。」
そう言うと林の中に落ちていた枝を2本取って手頃な長さに折って持つ。
「おっ、お願いしますっ。」
「こちらこそ、いつでもいいよ。」
真剣な眼差しで2.3歩前に出て構えるミウラ。
直後もの凄いダッシュで目の前に来る。そのまま回し蹴りが来る。
「っ!」
「ハァアアッ!」
数歩引いて避けると続いて連続でのパンチ。それも難なく避ける。
そこから右に体を捻ってローキックから足払い。ジャンプして避けると体勢を立て直しながらジャンプしキック。
アリシアは膝を屈めてミウラの足先に合わせキックの勢いを借りてクルッと回転して先に着地し
「ていっ!」
彼女が着地する瞬間を狙って足払いをかけて
「!!」
尻餅をついたミウラの頭を枝でコツンと叩いた。
これで勝負は終わった。
「凄いな~、アリシア。前と全然動き違うやん」
「ありがとうございます。魔法が使えない分こっちで頑張らないとなので…。あっもうこんな時間! ミウラさん、また練習しましょうね。今度はヴィヴィオも一緒に。はやてさん、ザフィーラさんもまた。」
そう言うとペコリと礼をして元来た道を走り出した。
「どうやった? ミウラ」
ザフィーラに起こされたミウラは走って行くアリシアを見つめている。
「…師匠が言われていた事がよくわかりました。」
「ヴィヴィオさんとアリシアさん…凄い魔力を持っていても、全然魔力が強くなくても…本当に強い人は強いんだって。私…いっぱい練習して強くなっていた気になってました。でも、私より強い人なんていっぱい居るんですよね。」
「ああ…そうだな。」
ヴィヴィオはあの鎧を見せた。けれどあくまで見せるだけでミウラを倒すのではなく彼女に合わせていた。
アリシアは魔法を使わない代わりにミウラの弱点を瞬時に見つけ彼女にわかりやすい様に指摘した。
限られた枠内で1番強くなってしまうと言葉で強い者が居ると言っても頭で判ってはいても慢心が出てきてしまう。
ここまではっきり差を見せつけられるとそんな心も吹き飛んでしまっただろう。
「もっと練習します。練習して強くなって一緒に練習出来るくらいに…」
ザフィーラを見ると静かに頷いた。
彼女の中で答えは見つかったらしい…
「そうやね、頑張ろうな」
満面の笑みではやても頷くのだった。
~コメント~
Side-M(MIDCHILDA)ということで、アリシアとミウラの初顔合わせでした。
追記:
9/3にインテックス大阪で開催されるコミックトレジャー30にサークル参加いたします。AdventStory3の新刊を頒布予定しています。
(私の準備は終わったのであとは静奈さんが調整中だそうです。)
春から夏にかけてはサークル活動が全く出来なかったのでその分色々頑張ります。
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