第29話「聖王再臨」

『ヴィヴィオっ、なのはとアミタさんがフィルの追撃、フェイトがユーリを引きつけてはやてが大型機動外殻の相手をするって!。キリ…なんでもない。後は任せたよっ!』

 アリシアから通信が届く。

「うん、任せて。みんないくよっ」

 アリシアからの通信を聞いてヴィヴィオはシュテル、レヴィ、ディアーチェに声をかける。3人とも頷く。

「シャマルさんもはやての所へ行って下さい。八神家が全員揃えば最強なんですから♪」
「ええ、みんなも気をつけて」

 私は笑顔で頷くと虹の光へと身体を飛び込ませた。  
    
 
 ユーリの追撃をかわすフェイト、そこに

『フェイト避けてっ!』

 念話の直後、砲撃魔法が迫ってきた。慌てて避けるとその光はユーリの外装に直撃した。

「ヴィヴィオ!」

 高速道路の上にヴィヴィオを見つける。

「ユーリは私達が助ける、フェイトはなのはの応援に行って」
「私達?」

 ヴィヴィオが斜め後ろを向く。その視線を追いかけるとビルの屋上にレヴィ達を見つけた。

「大丈夫だから、行って」
「…わかった。」

 ヴィヴィオにそう答えると踵を返してなのはの居る方へと向かった。
 

 
 笑顔で頷くヴィヴィオとフェイトは離れていく。ユーリが追いかけようとするが

「行かせない。」

 セイクリッドクラスターを放つ。彼女は避けるがそれでも数発が当たって爆発する。

「アリシアっ!」

 舞台は整った。アリシアを呼ぶ。

『エイミィさん、ユーリとヴィヴィオの周辺に居る局員を退避させてください。じゃないと巻き込まれます。』

 彼女はバルディッシュの中に入れていた作戦を読んでくれたようだ。

『局員へ退避命令っ!』

 聞いたエイミィは即座に命令を出した。再び動きだそうとしたユーリに今度はRHdがセイクリッドクラスターを放つ。しかしユーリを守る外装に全て弾かれた。
 バリアジャケットで威力が弱い状態だと今の彼女には効かないらしい。

『すまん。今の我等では…フェイトを行かせても良かったのか?』
『やっぱり1人で戦うなんて無茶だよ。』
『平気、私よりあっちを…なのはを1人にしてる方が危ないの。特に今のなのはは…。』 

 助ける事に強い執着を持っている彼女は危ない。だけど…それを知っている彼女が居れば…。

『でも2人が…ママ達が揃ったら負けないよ。絶対!!』

 私が笑顔で言うとシュテルとディアーチェは私の【存在理由】に気づいたのか驚きながらも納得する。

『あなたは…そういうことですが。わかりました、合図は私が出します。それまで…我等の主をお願いします。』
『任せて♪』

 頷いた。


  
「……」

 私を目の前にしてユーリはフェイトを追いかけるのを止め、こっちに左手をかざす。
 彼女自身か彼女を操っているプログラム【フォーミュラー】はフェイトより私の方が驚異だと判断したらしい。シュテル達に向けていた笑顔から真剣な顔つきに変わりジッと見る。
 
 永遠結晶エグザミアを守るシステム、アンブレイカブルダーク。それが彼女を操っているなら向こうの彼女達は私1人で戦うなと言っていた。でも相手がフォーミュラープログラムだけであれば…。

「ユーリ…今までユーリが居てくれたから闇の書の主になった中でも助けられた人も居たんだと思う。…今度はユーリを助けたい。私は…泣いてるユーリより…みんなと一緒に笑ってるユーリが好きだから。」
「だから…痛いけど少しだけ我慢してね。」

 組み上げた魔方陣を描き上空に手を翳した。



「はやてちゃん、ベルカ式魔方陣を確認。あの魔法は…っ!」

 大型機動外殻を一気に殲滅しようとウロボロスへのチャージを行っている最中、突然中に居るリインから声が聞こえた。

「えっ…まさかっ!」 

 リインが言った魔法にはやては驚きの余り一瞬ウロボロスを発動させかけてしまい慌てて制御に戻った。

「あれは…」
「嘘だろ…」 
「そんな…」

 近くで迎撃しているシグナムやヴィータ、シャマル、ザフィーラも驚きを隠せない。   
 八神家の全員がそこまで驚いたのには理由があった。
 空に広がったベルカ式魔方陣。その魔法を知っているからだ。

「どうして…、まさかリインフォース…?」

 虹色の光が煌めく方向へと目を向けながら姿の見えぬ家族に語りかけた


  
「遠き地にて…虹に染まれ…」

 ヴィヴィオがプログラムの起動キーを紡ぐ。
 その直後、虹色の光球が彼女を中心に一気に広がった。ユーリや少し離れたビルの屋上で待機していたシュテル達も一気に包み込む。
 デアボリックエミッション。夜天の書に記された古代ベルカ式の広域空間攻撃魔法。広範囲攻撃と共に結界を展開する魔法、しかしヴィヴィオにとって攻撃要素は要らなかった為はやてと相談・カスタマイズして広範囲攻撃を無くし結界の更なる強化を施す術式に組み替えた。
 リンディの作った関東全域を包む結界の中に強固な結界が生まれる。
 無論その中にあったセンサーの行動が制限されてしまう。


 
『広域結界!? 何が起きているの?』

 本局の本部でも幾つかのウィンドウがノイズに変わって何が起きたのか驚くどよめく。レティが何が起きているのかと聞くとリンディは

「【彼女達の秘策】らしいわよ。」

 と苦笑いしながら答えた。



「どうして…広域結界の中に更に結界なんて…」

 エイミィが呟いたのを聞いてアリシアが答える。

「見ていればわかります。先に生き残ってる魔力センサー全部切っちゃってください。じゃないと全部壊れちゃいます。」
「壊れる?」

 ニコッと笑って言うアリシアの言うとおりにヴィヴィオの結界の中で残っていたセンサーの魔力系センサーを全部止めた。  



 周囲を更なる結界に包まれてしまったユーリは外装から結界を壊そうと何度も殴っている。しかし彼女の攻撃ではデアボリックエミッションはビクともしなかった。  

「ここからは昔のベルカ同士、いくよRHd、レリック封印解除、ユニゾンインッ!」
【StandbyReady Setup. Armored module Full Drive Startup】

 バリアジャケットから騎士甲冑に変わり更に甲冑から放たれた7色の光が白色に変わり更に輝きを強める。
 ヴィヴィオは既に作られている結界の中に更に結界を作ったのか?
 それにはいくつかの目的があった。

 1つはユーリを縛り付ける檻。
 星の誕生にも影響すると言われた永遠結晶エグザミアとエグザミアを保護する為のプログラム、アンブレイカブルダークであれば一瞬で壊されたであろう。しかしそれらを持たないユーリではどうにかなるものではない。
 ヴィヴィオの目的通り出られない檻と化した。
 
 1つはヴィヴィオが力を使うための器
 管理局のセンサーを振り切り、艦船の複合シールドでも短時間しか抑えられない程の魔力。そんな力をここで使えば管理局が作った広域結界を簡単に壊してしまう。
 この状況で広域結界を失うのは街に被害を出すのと同じ。
 自身の魔力で外部に影響を出さない為の『器』として、結界特化させたデアボリックエミッションを使った。
 これも目的通りに外部への魔力遮断が出来ている。
 檻と器が揃えばフルパフォーマンスの力が出せる。
 白色の光はやがてヴィヴィオに溶け込んでいく。

 何度も外装で結界の壁を殴るユーリ、彼女の前に目映い光を全身に纏った少女が現れる。
 もしフォーミュラープログラムに自我があればその姿に恐怖しただろう。。
 世の中には絶対に敵にしてはいけないものがあり、不運にも今それを相手にしてしまったのだと…

「ここからは手加減なし、本気でいくよ。」

 こうして私にとって2度目の古代ベルカ同士の戦いの幕が切られた。

~コメント~
 遂にヴィヴィオとユーリの激突です。
 デアボリック・エミッションについては種別としては広域空間攻撃でリインに言わせると「ドバーって広がる」魔法なのですが、ヴィヴィオのイメージとしては闇の書事件(TV版A's)でリインフォース(アインス)が覚醒直後に攻撃と合わせて使った魔法が根底にあります。
 AdventStoryでも同じ魔法を使いましたが、その後に行われた戦技披露会以降に八神家で魔法を伝えている時にデアボリック・エミッションの攻撃属性をなくし結界強化する方法を作り込んでいました。

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