第01話「新しい朝 VerA」
- なんでもないただの1日
- by ima
- 2020.01.04 Saturday 22:13
夜の暗闇がもうすぐ朝日によって消されていく時間、ミッドチルダの中央部から少し北にある閑静な住宅地、その中のある家のある部屋のベッドがもそもそと動き始めた。
シーツが動いて起き上がった少女はまだ眠いのかその後暫く微動だにしなかったがやがて…
「ふぁ~…おはよ…」
ベッドから降りた。
これが私、アリシア・テスタロッサの1日の始まりだ。
起きる時間は以外と早い。夏であれば朝日が昇る頃、冬であれば昇る前に起きている。
元々私は朝が弱くて去年の今頃はまだ温々とベッドの中で夢を見ていたに違い無いし、その後も家族が起こしてくれるまで起きなかった。
シーツが動いて起き上がった少女はまだ眠いのかその後暫く微動だにしなかったがやがて…
「ふぁ~…おはよ…」
ベッドから降りた。
これが私、アリシア・テスタロッサの1日の始まりだ。
起きる時間は以外と早い。夏であれば朝日が昇る頃、冬であれば昇る前に起きている。
元々私は朝が弱くて去年の今頃はまだ温々とベッドの中で夢を見ていたに違い無いし、その後も家族が起こしてくれるまで起きなかった。
そんな私が朝早く起きる様になったのには訳がある。
「ん~っ!! よしっ」
背伸びをしてからまだ半分寝ぼけ眼でパジャマを脱いで着替える。着替えるのは制服じゃなくて伸縮性のある上下のウェア。パジャマをベッドの上に畳んだ後、同部屋のパートナー、家猫リニスを起こさない様に静かに部屋を出る。
「ママ。いってきまーす♪」
玄関でそう言うとママがパタパタとスリッパを鳴らせて顔を見せた。
彼女はプレシア・テスタロッサ。とっても優しいママ…偶に怖かったりもするんだけど…。
魔導関係の研究者で色々知っていて凄い発明もしている、自慢のママ。
私達のお弁当の用意をしているのか美味しそうな香りを纏わせている。
「デバイスは持った? まだ暗いのだから気をつけなさいね」
「は~い♪」
私はママに笑顔で答えてから家を駆け出た。
扉を開けると外の冷気で身が引き締まって一気に目覚める。ブルッと体を震わせた後そのまま走り始めた。
ここから近くにある湖の周囲を1周走る。これが私の訳の理由。
親友のママ、高町なのはさんの家族、高町士郎さんに教わったトレーニング法である。
1年位前から私は士郎さん達が修めた剣術を練習している、といっても半分通信教育みたいなものなんだけど…。
その基礎トレーニングで教わったのがジョギングとジョギング中に緩急をつけて走る練習。
本当はもっと実践的で沢山練習したいのだけれど、私の体はまだ成長前で今無理な練習をすると怪我をして将来に残ってしまうらしい。
だから今はハードトレーニングをするより下準備になるこの方法がいいそうだ。
実際に同じ剣術を修めている恭也さんと美由希さん、なのはさんのお兄さんとお姉さん達もすっごく強い筈なのに同じ練習を毎朝欠かさず行っている。
基礎トレーニングはそれ位大切なもの…と偉そうに言っているけれど私も最近始めたばっかりなんだけどね。
走り始めて少し経った頃、暗かった空が少しずつ白く明るくなってくる。今の季節だからこそ味わえる感覚で私はこの時間がお気に入りだ。緩急をつけた走り込みを繰り返しながら湖畔にさしかかると幾つか動いている光が見えた。
「バルディッシュ、お願い」
【Yes.Sir】
ペンダントとして待機状態になっているバルディッシュに声をかけると、私の前に水色に光る小さな魔法球を作り出した。
この時間湖畔を走る人は私以外にも居る。健康の為だったりダイエットの為だったり昔からの習慣だったりと皆理由も違うし走るスピードも違う。だから互いにぶつからないようにするのと足下を照らして転ばないようにする為らしい。
私もここに来始めた時に以前から走っている人に教わってから使い始めた。
「でも…ここって聖王教会の管理区域なのに魔法使っちゃって大丈夫なのかな?」
走りながらふと考える。
ミッドチルダには魔法を使う魔導師と呼ばれる人が沢山居る。だから魔法を使って良い場所と駄目な場所もあって、ここの湖も何かの遺跡らしく湖畔の周囲と私の家を含む場所は魔法使用禁止になっている。
日中に魔方陣なんかを広げたら聖王教会からシスターか教会騎士が飛んでくる。
でも今みたいな薄暗い中照らす魔法だと逆に使わない方がぶつかって怪我をしかねないから見逃しているのかも知れない。
「まぁ…それでもアレよりはいいよね」
以前ここで何発も集束砲を空に放った彼女を思い出す。
ここより厳重管理された聖王教会付近でのオーバーSランク戦技魔法、スターライトブレイカーの連続発射。普通であれば聖王教会だけでなく、時空管理局ミッドチルダ地上本部からも駆けつけてくる程の事態。よく退学にならなかったと思う。とは言え、色々お叱りは受けていたみたいだし彼女の母も子供の頃、同じ事をしたことがあるらしい…。
「クスッ、変なところがそっくりなんだよね~♪」
【Master】
そんなことを考えているとデバイスから呼びかけられた。いつもよりゆっくり走っていたから遅れているらしい。
「急がなきゃ!」
慌てて走るスピードを速めた。
「ただいま、寒かった~…」
小1時間程でトレーニングは終わり家に帰ると、汗を流すのにお風呂に向かう。
「おかえりなさい。いつもより遅れているわよ。急ぎなさい」
「は~い」
ママに答えながら駆け足で着替えを取りに部屋に行きそのまま浴室へと向かった。
「あったまる~♪」
体の中は暖かくても手足や肌は冷たくなっていて、暖かいシャワーが気持ちいい。
「にゃ~」
部屋で寝ていたリニスが入ってくる。部屋に入った時に起きたらしい。
リニスは私が生まれた時から一緒に居て言わば姉妹みたいな関係だ。にゃ~としか言わないけれど私達の言葉はわかるみたい。私もリニスの声のトーンで何となく言っていることがわかる。
今は『私もシャワーをかけて』って言っている。
「リニスも浴びたいの? お風呂は苦手なのに変わってるよね♪」
お風呂は嫌いで一緒に入ろうとしても逃げるのに、シャワーは好きみたいで音がすると入ってくる。
「にゃ~」
少し湯温下げて弱くしてから顔にかからないようにシャワーヘッドを背中に向けてかけると気持ち良さそうにお腹を見せてゴロゴロと音を鳴らした。
汗を流して制服に着替えてキッチンの横にあるダイニングに行くとママと妹のチェントが朝食を食べていた。
「一緒に食べましょう。」
「おねーちゃんおはよう。」
「おはようチェント。」
彼女はチェント、2年前にあった事件の後で妹になった。
以前は妹になる前からの癖か「ねえさま」「かあさま」と呼んでいたのだけれど最近「おねえちゃん」「おかあさん」と呼んでくれるようになった。
朝から少し嬉しくなって妹の頭を撫でた後隣の席に座って朝食を食べる。
「忘れ物は無いわね? アリシア、チェント、お弁当は持った?」
「「うん♪」」
2人で頷いた後、私達は3人一緒に家を出る。
レールトレインの駅まで行って私とチェントはクラナガン方向へ、ママは研究所のある聖王教会方向へと向かう。
私達の通うStヒルデ学院は聖王教会系の教育機関、私達の住んでいる地域は聖王教会関係の人が多いから駅の近くまで来ると同じ制服を見かける。
ここからレールトレインに乗り最寄りの駅に着くと多くの学生が降りる。私達も降りてそこから小高い丘の上に向かって歩く。
「ごきげんよ~」
「ごきげんよう」
「ごきげんよ~チェントちゃん」
「ごきげんよ~♪」
ここまで来るとクラスメイトや妹の友達を見かけるようになる。彼女が手を繋いだ女性に会釈し並んで歩きながらご挨拶をする。
「おねーちゃんいってきま~す♪」
「いってらっしゃい」
幼等科の前に着くと大きく手をブンブン振って言う妹に笑顔で手を振る。
そして校舎の中に入って見えなくなると、初等科へと全力ダッシュ。
走る理由はトレーニングとか遅刻しそうだからじゃなくて…
「よかった、まだ集まってない!」
私がチェントと一緒に向かったのを見た別のクラスの同級生や下級生達が私の登校を待ちかまえているのだ。
この原因になったのは管理局が作った記録映像。
10年以上前にあったジュエルシード事件と闇の書事件を舞台に作られたのだけれど、それに私はフェイト・テスタロッサ役として参加した。
おかげさまというか何と言うかその映像が人気になってしまって、学院内にファンクラブが出来そうになった。ファンクラブは先生が止めてくれたけれど影響が残らなかった訳ではなくこんなことになっている。
先生も朝挨拶するくらいだからと黙認されてしまっている。
既にいた何人かに「ごきげんよう」と挨拶をして足早に校舎に入って階段を駆け上がって教室に入り
「着いたっ!」
自分の席に着くなりへたり込んだ。
「本当にもう…これ、いつまで続くんだろう…」
息を整えなが少し崩れた髪を直そうとまとめたリボンを解いて結び直し、バッグを横にかけてテキストを出して机に入れていく。
2つの記録映像が作られた一因が私達にある。私とママ、リニスはここの時間の住人じゃない。
この時間に居た私達は10年以上前に死んでいる。
死んだ筈の私達がここに居るのは未来の親友が時間移動魔法【時空転移】を使ってここに連れてきたから。
時間移動が伝承でしか残っていない存在しない幻の魔法である限り私が死んだ時には私は生まれていないのだから別人になる。
でもママはそうじゃない。ママ…プレシア・テスタロッサは死んじゃった私を生き返らせる為に違法研究をしていた。プレシア・テスタロッサ(故人)はジュエルシード事件の被疑者死亡という形で事件記録に残っているから調べられたら同一人物だと気づかれてしまう。
だからなるべく目立たない様に暮らしてきた。
でもママの友人、時空管理局本局の提督、リンディ・ハラオウンさんが管理局の映像で私達を出演させた。私の遺伝子を使って作り出したフェイトとプレシア本人として。
『事件を解決した管理局が被疑者本人役として登場させる訳がないし、聖王教会も疑われるような人を使ってまで協力しない。』という誰も思いつかないような方法で…。
リンディさんは記録映像に出るだけで隠れなくてよくなるというその方法を思いついて動いた。
(まぁ…それでもみんな集まって挨拶した時は驚かれたんだけどね…)
撮影前に全員が集まって挨拶した時、私達を見て多くの局員が驚いていた。オリジナルと本人なのだから知っていたらそうなるだろう。私なんて当時のフェイトと見た目そっくりだったんだから…。
それでも10年以上前に死んだ2人が居るわけがないし、私達は第97管理外世界出身になっているから一応「見た目そっくりな親子」となっている。
映像に人気が出れば出る程私達が別人だと知られるわけで…下手に止めるよりこうやって無難に過ごすしかない。
「そのうち飽きちゃうかもだしね…」
そのうちがいつになるかは…考えたくない。
~コメント~
令和2年、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
今話は昨年リリカルマジカルで頒布した話の再編集版になります。
何処が編集されているかというと…
随時見比べて頂けると幸いです。
「ん~っ!! よしっ」
背伸びをしてからまだ半分寝ぼけ眼でパジャマを脱いで着替える。着替えるのは制服じゃなくて伸縮性のある上下のウェア。パジャマをベッドの上に畳んだ後、同部屋のパートナー、家猫リニスを起こさない様に静かに部屋を出る。
「ママ。いってきまーす♪」
玄関でそう言うとママがパタパタとスリッパを鳴らせて顔を見せた。
彼女はプレシア・テスタロッサ。とっても優しいママ…偶に怖かったりもするんだけど…。
魔導関係の研究者で色々知っていて凄い発明もしている、自慢のママ。
私達のお弁当の用意をしているのか美味しそうな香りを纏わせている。
「デバイスは持った? まだ暗いのだから気をつけなさいね」
「は~い♪」
私はママに笑顔で答えてから家を駆け出た。
扉を開けると外の冷気で身が引き締まって一気に目覚める。ブルッと体を震わせた後そのまま走り始めた。
ここから近くにある湖の周囲を1周走る。これが私の訳の理由。
親友のママ、高町なのはさんの家族、高町士郎さんに教わったトレーニング法である。
1年位前から私は士郎さん達が修めた剣術を練習している、といっても半分通信教育みたいなものなんだけど…。
その基礎トレーニングで教わったのがジョギングとジョギング中に緩急をつけて走る練習。
本当はもっと実践的で沢山練習したいのだけれど、私の体はまだ成長前で今無理な練習をすると怪我をして将来に残ってしまうらしい。
だから今はハードトレーニングをするより下準備になるこの方法がいいそうだ。
実際に同じ剣術を修めている恭也さんと美由希さん、なのはさんのお兄さんとお姉さん達もすっごく強い筈なのに同じ練習を毎朝欠かさず行っている。
基礎トレーニングはそれ位大切なもの…と偉そうに言っているけれど私も最近始めたばっかりなんだけどね。
走り始めて少し経った頃、暗かった空が少しずつ白く明るくなってくる。今の季節だからこそ味わえる感覚で私はこの時間がお気に入りだ。緩急をつけた走り込みを繰り返しながら湖畔にさしかかると幾つか動いている光が見えた。
「バルディッシュ、お願い」
【Yes.Sir】
ペンダントとして待機状態になっているバルディッシュに声をかけると、私の前に水色に光る小さな魔法球を作り出した。
この時間湖畔を走る人は私以外にも居る。健康の為だったりダイエットの為だったり昔からの習慣だったりと皆理由も違うし走るスピードも違う。だから互いにぶつからないようにするのと足下を照らして転ばないようにする為らしい。
私もここに来始めた時に以前から走っている人に教わってから使い始めた。
「でも…ここって聖王教会の管理区域なのに魔法使っちゃって大丈夫なのかな?」
走りながらふと考える。
ミッドチルダには魔法を使う魔導師と呼ばれる人が沢山居る。だから魔法を使って良い場所と駄目な場所もあって、ここの湖も何かの遺跡らしく湖畔の周囲と私の家を含む場所は魔法使用禁止になっている。
日中に魔方陣なんかを広げたら聖王教会からシスターか教会騎士が飛んでくる。
でも今みたいな薄暗い中照らす魔法だと逆に使わない方がぶつかって怪我をしかねないから見逃しているのかも知れない。
「まぁ…それでもアレよりはいいよね」
以前ここで何発も集束砲を空に放った彼女を思い出す。
ここより厳重管理された聖王教会付近でのオーバーSランク戦技魔法、スターライトブレイカーの連続発射。普通であれば聖王教会だけでなく、時空管理局ミッドチルダ地上本部からも駆けつけてくる程の事態。よく退学にならなかったと思う。とは言え、色々お叱りは受けていたみたいだし彼女の母も子供の頃、同じ事をしたことがあるらしい…。
「クスッ、変なところがそっくりなんだよね~♪」
【Master】
そんなことを考えているとデバイスから呼びかけられた。いつもよりゆっくり走っていたから遅れているらしい。
「急がなきゃ!」
慌てて走るスピードを速めた。
「ただいま、寒かった~…」
小1時間程でトレーニングは終わり家に帰ると、汗を流すのにお風呂に向かう。
「おかえりなさい。いつもより遅れているわよ。急ぎなさい」
「は~い」
ママに答えながら駆け足で着替えを取りに部屋に行きそのまま浴室へと向かった。
「あったまる~♪」
体の中は暖かくても手足や肌は冷たくなっていて、暖かいシャワーが気持ちいい。
「にゃ~」
部屋で寝ていたリニスが入ってくる。部屋に入った時に起きたらしい。
リニスは私が生まれた時から一緒に居て言わば姉妹みたいな関係だ。にゃ~としか言わないけれど私達の言葉はわかるみたい。私もリニスの声のトーンで何となく言っていることがわかる。
今は『私もシャワーをかけて』って言っている。
「リニスも浴びたいの? お風呂は苦手なのに変わってるよね♪」
お風呂は嫌いで一緒に入ろうとしても逃げるのに、シャワーは好きみたいで音がすると入ってくる。
「にゃ~」
少し湯温下げて弱くしてから顔にかからないようにシャワーヘッドを背中に向けてかけると気持ち良さそうにお腹を見せてゴロゴロと音を鳴らした。
汗を流して制服に着替えてキッチンの横にあるダイニングに行くとママと妹のチェントが朝食を食べていた。
「一緒に食べましょう。」
「おねーちゃんおはよう。」
「おはようチェント。」
彼女はチェント、2年前にあった事件の後で妹になった。
以前は妹になる前からの癖か「ねえさま」「かあさま」と呼んでいたのだけれど最近「おねえちゃん」「おかあさん」と呼んでくれるようになった。
朝から少し嬉しくなって妹の頭を撫でた後隣の席に座って朝食を食べる。
「忘れ物は無いわね? アリシア、チェント、お弁当は持った?」
「「うん♪」」
2人で頷いた後、私達は3人一緒に家を出る。
レールトレインの駅まで行って私とチェントはクラナガン方向へ、ママは研究所のある聖王教会方向へと向かう。
私達の通うStヒルデ学院は聖王教会系の教育機関、私達の住んでいる地域は聖王教会関係の人が多いから駅の近くまで来ると同じ制服を見かける。
ここからレールトレインに乗り最寄りの駅に着くと多くの学生が降りる。私達も降りてそこから小高い丘の上に向かって歩く。
「ごきげんよ~」
「ごきげんよう」
「ごきげんよ~チェントちゃん」
「ごきげんよ~♪」
ここまで来るとクラスメイトや妹の友達を見かけるようになる。彼女が手を繋いだ女性に会釈し並んで歩きながらご挨拶をする。
「おねーちゃんいってきま~す♪」
「いってらっしゃい」
幼等科の前に着くと大きく手をブンブン振って言う妹に笑顔で手を振る。
そして校舎の中に入って見えなくなると、初等科へと全力ダッシュ。
走る理由はトレーニングとか遅刻しそうだからじゃなくて…
「よかった、まだ集まってない!」
私がチェントと一緒に向かったのを見た別のクラスの同級生や下級生達が私の登校を待ちかまえているのだ。
この原因になったのは管理局が作った記録映像。
10年以上前にあったジュエルシード事件と闇の書事件を舞台に作られたのだけれど、それに私はフェイト・テスタロッサ役として参加した。
おかげさまというか何と言うかその映像が人気になってしまって、学院内にファンクラブが出来そうになった。ファンクラブは先生が止めてくれたけれど影響が残らなかった訳ではなくこんなことになっている。
先生も朝挨拶するくらいだからと黙認されてしまっている。
既にいた何人かに「ごきげんよう」と挨拶をして足早に校舎に入って階段を駆け上がって教室に入り
「着いたっ!」
自分の席に着くなりへたり込んだ。
「本当にもう…これ、いつまで続くんだろう…」
息を整えなが少し崩れた髪を直そうとまとめたリボンを解いて結び直し、バッグを横にかけてテキストを出して机に入れていく。
2つの記録映像が作られた一因が私達にある。私とママ、リニスはここの時間の住人じゃない。
この時間に居た私達は10年以上前に死んでいる。
死んだ筈の私達がここに居るのは未来の親友が時間移動魔法【時空転移】を使ってここに連れてきたから。
時間移動が伝承でしか残っていない存在しない幻の魔法である限り私が死んだ時には私は生まれていないのだから別人になる。
でもママはそうじゃない。ママ…プレシア・テスタロッサは死んじゃった私を生き返らせる為に違法研究をしていた。プレシア・テスタロッサ(故人)はジュエルシード事件の被疑者死亡という形で事件記録に残っているから調べられたら同一人物だと気づかれてしまう。
だからなるべく目立たない様に暮らしてきた。
でもママの友人、時空管理局本局の提督、リンディ・ハラオウンさんが管理局の映像で私達を出演させた。私の遺伝子を使って作り出したフェイトとプレシア本人として。
『事件を解決した管理局が被疑者本人役として登場させる訳がないし、聖王教会も疑われるような人を使ってまで協力しない。』という誰も思いつかないような方法で…。
リンディさんは記録映像に出るだけで隠れなくてよくなるというその方法を思いついて動いた。
(まぁ…それでもみんな集まって挨拶した時は驚かれたんだけどね…)
撮影前に全員が集まって挨拶した時、私達を見て多くの局員が驚いていた。オリジナルと本人なのだから知っていたらそうなるだろう。私なんて当時のフェイトと見た目そっくりだったんだから…。
それでも10年以上前に死んだ2人が居るわけがないし、私達は第97管理外世界出身になっているから一応「見た目そっくりな親子」となっている。
映像に人気が出れば出る程私達が別人だと知られるわけで…下手に止めるよりこうやって無難に過ごすしかない。
「そのうち飽きちゃうかもだしね…」
そのうちがいつになるかは…考えたくない。
~コメント~
令和2年、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
今話は昨年リリカルマジカルで頒布した話の再編集版になります。
何処が編集されているかというと…
随時見比べて頂けると幸いです。
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