第10話「私達にできることVerV」

「…あっ、フェイトママ…アリシアだけど」

 夕食後、一緒にお皿を洗っているフェイトに私は思い出したように言った。

「姉さんがどうしたの?」
「アリシア…Stヒルデ初等科の生徒会長になっちゃうかも…」
「生徒会長? Stヒルデ学院初等科の?」
「うん…」
「アリシアが生徒会長になるの? すご~い♪」

 一足先にリビングで休んでいたなのはも聞いていたみたいで話に加わる。

 
「凄いね。…ヴィヴィオは嬉しくないの?」
「…うん、アリシアがしたいなら応援するんだけど…」
「姉さんは生徒会長になりたくないの?」
「…そうみたい。撮影でアリシアも私も知られちゃって…生徒会長がふさわしいからじゃなくて人気投票になりそうなの…。私は立候補しないとなれないけど、アリシアは学院際のクラス委員だったから立候補しなくても推薦されたらなるらしいって先生が…。」

 私がそう言うとママ達も納得したのか互いの顔を見て苦笑いした。

「フェイトちゃん、まさか姉妹揃って同じ事で悩むなんて思って無かったね。」
「なのはも親子揃って同じ事で悩むなんて思って無かったでしょ。」

 2人はクスクスと笑った。どうして笑っているのかわからず首を傾げる。

「なのはママ? フェイトママ?」
「昔、フェイトちゃんも聖祥小学校の生徒会長に推薦されたことがあるの。」
「ええっ!?」
「うん…」

思いっきり驚いた私に顔を少し赤めながらフェイトママは頷いた。

「みんなに優しいし、運動得意だし、可愛いしって凄く人気になっちゃって…」
「え?でもママ達管理局は…」

聖祥小学校の生徒会長…Stヒルデと同じかはわからないけど、その頃には既に嘱託魔導師から管理局に入っていた筈じゃと思い出す。

「うん、私もフェイトちゃんもはやてちゃんもみんな管理局の候補生になってた。フェイトちゃんは更に執務官試験に向けて凄く勉強が大変だったのに、みんなから言われて生徒会長を引き受けようとしたんだ。」

管理局の仕事も、執務官試験も簡単じゃない…いくら何でも全部しようとしたら倒れてしまう。

「その時ね、私とはやてちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんが4人で言ったんだ。」
「『私がしたいなら応援するよ、でもするなら責任を持ってしなきゃ駄目、生徒会長になるなら執務官試験は卒業してから受けて。生徒会長と執務官…どっちが大切なの? 』って。」
「フェイトちゃんが生徒会長になった学校も見たかったけれど、それでフェイトちゃんが倒れちゃったら私達も選んだ子達もみんな悲しくなるでしょ。だからどっちかを選んでって4人揃ってフェイトちゃんに言ったんだ。」
「私はフェイトちゃんが急いで執務官試験を受けなくても良いって思ってたから、少しだけ生徒会長になって欲しかったって思ってたんだけど…」
「ううん、みんなに言われて気づいたんだ。無理して倒れちゃったらみんなに心配かけちゃうって。だから生徒会長にならないって決めて、執務官試験に集中したんだ。」
「そんなことがあったんだ…」

 私は驚きながら聞いていた。

「ヴィヴィオ、姉さんと私じゃ事情も違うけれど…姉さんがしたいって言ったら応援してあげて欲しいな。」
「ヴィヴィオも立候補して一緒に生徒会に入っちゃえばいいのに♪」
「ええ~っ! 私は入らないよ~。お風呂入ってきま~す。」

 話の矛先が私に向いた、これ以上ここに居ると色々言われちゃいそうだから、食器を急いで洗ってリビングを駆け出た。



「生徒会か…アリシアはどうするつもりなんだろう?」

 お風呂に入った後、自室で宿題を終わらせてからベッドで横になって今日の事を考える。

「ママ達もはやてさんも私と同じ位で嘱託魔導師になって、候補生に進んでたんだよね…」

 そう言えばこのまえ会った異世界の3人は大人というか昔のクロノさんに近づいていた気がする。

「私も少しずつ大人になってるのかな…?」

 魔力も強くなっているし、魔法のレパートリーも増えている。でも…それと大人になるっていうのは違う気がする。もっと何か…。

「古代ベルカ…はやてさんは…アインスさんに教わっていて…あっ!」

 考えていることを口に出していると私の中にあるアイデアが生まれた。
 生徒会とは全然関係なくて、ある事を実現する為の方法を思いついたのだ。

「RHd、アリシアのバルディッシュに通信お願い」
【AllRight】

 相棒に声をかけ通信ウィンドウを出す。少し待つとウィンドウ向こうにアリシアが映った。
 彼女もパジャマを着ていた。

「夜にごめ~ん、今いい?」
『良いけどヴィヴィオ、どうしたの?』

 雑談するにしても夜も遅いし、明日になればまた学院で会うのにわざわざ夜に通信してくるのが気になったみたいだ。

「アリシアに相談…打ち合わせ…何て言えば良いのかな、ちょっと聞いて欲しい話があるんだけど…」
『私に?』

 そこで私が話したのはブレイブデュエルの世界にはやてさんを連れて行けないか?ということだった。

 目的は勿論アインスさんと逢って貰う方法。だけどその理由じゃ彼女は首を縦に振らないし、無理矢理連れて行っても逃げてしまうだろう。
 だからあえて違う目的で彼女を頷かせて連れて行く。
 魔力コアデバイスを使った古代ベルカ式魔法とかそう言うので釣ろうとしても彼女は古代ベルカ式の使い手が殆ど固有魔法として使っているのを知っているから難しいし、そもそもそういう話なら『プレシアさんや聖王教会に頼んだら?』と逃げられる。
 だったら魔法と全然違う話から連れ出せないか?と考えた。
 それには私から言うと転移魔法で何処かに連れて行くのではと思われてしまうからアリシアからお願いすればいいのではと考えた。ママ達も一緒に行くなら更にハードルは下がるだろう。
 最初にアリシアに約束してもらい、その後私が転移して一緒に連れて行く。
 約束するのはプレシアさんに驚いて貰いたいからとかで桃子さんに料理を教わりに行くと言えばどうかなと考えた。  
 まだはやてさんを連れて行く理由が弱い気がしたからアリシアに相談したかった。

『クスッ…アハハハハハッ♪』

 一気に話すとアリシアが思いっきり笑った。何かおかしかったかなと首を傾げる。

「えっ? 何か可笑しいところあった?」
『ごめんごめん、こっちの話。凄くいいと思うよ。』
『じゃあさ私がはやてさん家に行って「一緒に行く」って言って貰えればいいんだよね?フェイト達にも聞いて貰ったらより良いから家に入る前から通信は繋ぐのがいいかな。理由は少し弱い様な気がするから私も少し考えてみる。』
「わかった、お願いね。」

 連れて行く方針は決まった。あとは方法を考えていく…。

 
『あっそうだ、ヴィヴィオお昼に何か言おうとしてなかった?』
「え~っと、何の話だったかな…」

 突然話が変わって何の話だったかなと思い出そうとする。

『私にはやてさんから通信が来て管理局と聖王教会で…っていう話』

 キーワードを貰って何の事か思い出した。
 
「…あっ思い出した! 私ね、その話を聞いて思い出したんだけど…はやてさん達が作ろうとしてるの【ストライクアーツ】じゃないかなって」
『ストライクアーツって、異世界のヴィヴィオやアインハルトさん達がしてるスポーツ格闘技だよね?』
「うん…はやてさん、私の話を聞いてストライクアーツを作ろうとしてるんじゃないかなって、そう思ったの。」

 ストライクアーツ、異世界の私が練習しているスポーツ格闘技。あっちではミッドチルダだけじゃなくて多くの管理世界で広まっていて競技人口も多く、年齢でも分かれている。
 でもこっちで彼女達が作ろうとしているのは少し理由が違う。
 魔力コアを普及させていく中で優秀な能力を持った者を見つけ管理局・聖王教会に取り込む、多くの色んなデバイスを作ってその情報を集めていく。
 ある意味独占する様な考えでずるい気がするけれど、その目的も判っている。
 魔力コアとそのデバイスが市販されれば魔法を使った犯罪や違法な活動は一気に増えるだろう。
 その時何も出来なければ多くの被害者が出てしまう。だからそれまでに対策を整えなくちゃいけない。私も管理局員の1人だからその大切さは気づいていた。

『そっか…そうかも。』
「それでねママ達とも相談したんだけど…」
『フェイトとなのはさんに? 何て言ってたの?』
「『良い未来になるならとても良いことだよね』って。私、もし大会があってはやてさんが言ってた様にママ達との模擬戦をしてって言われたら受けようと思う。そこでアインハルトさんやミウラさん、リオが競いあえるならきっと楽しいよ。」     
「それで…アリシアも一緒にしようよ。撮影に参加した3人の中でアリシアしか出られないだから…」

 私はこっちじゃストライクアーツに出られない。あっちの私と違って管理局員で魔導師ライセンスを持っているのもあるけれど、ストライクアーツの目的から離れすぎているから…。
 前の撮影でなのはママ役を演じた彼女も出ないだろう。彼女は競うより演じるのが好きで今のお仕事をしているのだから…。
 だからアリシアには出て欲しいと思う。

『うん…でも私だけじゃ決められないからママと士郎さん、恭也さん、美由希さんにも相談してみる。』
『それに…』
「それに?」
『さっきの作戦でちょっと思いついた。あのね…桃子さんに料理を教わるんじゃなくて、士郎さんと恭也さんに相談しに行く時に連れて行けないかな。私が参加する条件でストライクアーツについて説明して欲しいとか何とか言えば頷くしかないでしょ。一応責任者みたいだし、まさかあっちの士郎さん達と相談するなんて絶対思わないよ。うん、理由も完璧♪ フェイトとなのはさんの協力もあれば成功間違い無し♪」

 ニコリと言うより【ニヤリ】と笑った姿が彼女が悪戯する際のはやてさんの笑みと重なった。

「……アリシア…あっちのアリシア…はやてさんに似てきたんじゃない?」

 ため息交じりに呟く。

『ひどーい! 折角いいアイデアだと思ったのに。』
「ごめん、私も良いと思うよ。じゃあ一緒に行く日は…いつにする?」
『そうだね~先にシグナムさんとヴィータさんに…』

 と話していると階段の下から

「ヴィヴィオ~そろそろ寝ないと明日知らないよ~」

 なのはママに怒られた。彼女にも聞こえたらしく

『詳しいことはまた明日。』
「うん、おやすみ~」

 私はそう言って通信を切りベッドに横になって微睡みに身を任せた。

 私達の作戦が始まるのは2週間後、私達とママ達の休みとはやてさんの休日が重なった日である。

~コメント~
 同日更新です。先の話と併せてアリシアとヴィヴィオの見方や考え方の違いが出ていれば面白いかなと思います。
 9話は一昨年頒布したAS外伝の編集版でした。ページと進行の都合でヴィヴィオの会話が省略されていましたが、今話ではそれを含めて掲載しました。
 ヴィヴィオが何故はやてをブレイブデュエルの世界に連れて行こうとしているのかはアインスに逢わせる為の他に目的があります。これは後のヴィヴィオ版の外伝(ヴィヴィオの場合は外伝じゃないですね)で書けたらと思います。

 近況ですが、今月の中旬に体調不良をおこして入院となりました。
 入院と書いていますが、私自身は元気でこの1年弱のオーバーワークの反動が来ているのかなと思い、ゆっくり静養させてもらっています。
 とある事情で全く部屋から外出出来なくて、静奈君や職場の同僚に色々私物を運び込んで貰って久しぶりの連休を過ごしています。
 そのような訳でこの機会に今まで考え貯めていた話を書き進めていこうと思っていますのでよろしくお願いします。

 

Comments

Comment Form

Trackbacks