第11話「作戦開始」
- なんでもないただの1日
- by ima
- 2021.02.27 Saturday 20:13
今日は学院がお休みの日。
私、アリシア・テスタロッサはいつもの朝のトレーニングを終えた後、家族と朝食を食べていた。
待ちに待ったお休み、今日はヴィヴィオと一緒に異世界、ブレイブデュエルの世界に遊びに行く日。
ここの所、週に1~2度しか行けなくて行っても夕食迄には帰らなくちゃいけないから思いっきり遊べていない。
でも今日と明日はお休みで思いっきり遊べる!
そして今日は色々考えていることがある。
その1つが
「ママとチェントも一緒に行かない? リニスも連れて」
私だけじゃなくてみんなも一緒に。
私やヴィヴィオ、フェイトとなのはさんを連れて行っただけでもブレイブデュエルは大きく変わったのだから研究者のママが一緒に行けば新しい可能性も生まれるに違いない。
私、アリシア・テスタロッサはいつもの朝のトレーニングを終えた後、家族と朝食を食べていた。
待ちに待ったお休み、今日はヴィヴィオと一緒に異世界、ブレイブデュエルの世界に遊びに行く日。
ここの所、週に1~2度しか行けなくて行っても夕食迄には帰らなくちゃいけないから思いっきり遊べていない。
でも今日と明日はお休みで思いっきり遊べる!
そして今日は色々考えていることがある。
その1つが
「ママとチェントも一緒に行かない? リニスも連れて」
私だけじゃなくてみんなも一緒に。
私やヴィヴィオ、フェイトとなのはさんを連れて行っただけでもブレイブデュエルは大きく変わったのだから研究者のママが一緒に行けば新しい可能性も生まれるに違いない。
「そうね…止めておくわ。ごめんなさいね」
少し興味を持ったみたいだけれどすまなさそうに言う。
「ええ~っ、一緒に行きたかったのに。」
「今日チェントがお友達の誕生日パーティにお呼ばれしているのよ。1人で行かせられないでしょう?」
「うん♪」
笑って頷く妹を見る。彼女も楽しみにしているみたいなので無理矢理には連れて行けない。
チェントは勿論ママにとっては普段出来ない親同士が交流出来る機会、私の我が儘につきあって急遽欠席…は流石にまずい。
「そっか残念。友達にいっぱいお祝いしてあげてね」
「うん♪」
笑顔で頷いた妹の頭を撫でた。
早速の作戦失敗、だけど今日は落ち込んでいられない。
本当の作戦はこれから始まるからだ。
「着替えも入れたし準備OK、それじゃ行ってきま~す。」
家の中へ声をかけて私は家を出た。
レールトレインの駅までトレーニングも兼ねて軽く走っていく。朝よりは暖かくなったけれどそれでも吐く息は白いし寒い。それでも少し走っていると体が暖まってきた。
レールトレインに乗ってクラナガンへと目指す。
目的地はヴィヴィオの家…じゃなくて更にクラナガン方向へと向かい途中の駅で降りる。
「バルディッシュ、間に合いそう? ヴィヴィオが来る前に着きたいんだけど」
【No problem】
愛機の応答を聞いて私は再び駆けだした。
その家の前に着いた私は息を整えるとチャイムを鳴らす。すると
「は~い…いらっしゃいアリシア」
中から足音がしてその家の主、八神はやてさんが顔を見せた。
「おはようございます。はやてさん」
「今日はどうしたん? シグナムとヴィータに私の予定聞いてたみたいやけど…」
はやてさんが私をリビングに案内しながら聞いてくる。
「はい、先日のストライクアーツの話を詳しく聞かせて貰おうと思いまして、シグナムさんとヴィータさんにはやてさんの予定を聞いていました。」
「ストライクアーツ? ああ、この前の大会の話か、あれってストライクアーツって言うん? はいどうぞ♪」
リビングに案内されると
「来たか」
「おう」
「こんにちは」
シグナムさんとヴィータさん、リインさんが居た。
「シャマルさんとザフィーラさん、アギトさんは…」
「3人は本局と地上本部に行ってるよ。家族が多いと全員集まるんも一苦労や」
苦笑いしながらはやてさんに席に促される。私が座るとリインさんがジュースを持って来てくれた。
「ありがとうございます。走ってきたので喉が渇いちゃって。」
グラスを持って早速頂く。熱くなった体にヒンヤリしていて気持ちいい。
「それでストライクアーツについて聞きたいっていうのは?」
はやてさんが対面のソファーに座る。もう1度グラスに口をつけて1口だけ飲む。
「連絡があった次の日にママ、プレシア・テスタロッサに相談しました。ママも聖王教会本部から少し聞いていたみたいで『危なくないならいいよ』って言ってくれています。ヴィヴィオもフェイトとなのはさんと相談して『協力するよ』って言ってました。」
「ありがとうな、先に話してくれて助かる。それでアリシアは?」
「私は…先の撮影でフェイトとはやてさん、なのはさんの役を演じた中で仕事の都合からなのは役の子は参加出来ませんし、ヴィヴィオも魔力資質が強すぎて参加出来ません。」
シグナムとヴィータがウンウンと頷く。
「私まで出なかったらあの撮影は全部作り物だって思われちゃう…実際作ってる所も多いですけどそれでも全部違うって思われるのは嫌です。」
「それに…私も同じ様な…アインハルトさんやミウラさん、同じ様に格闘経験を積んでる同世代の人達と競いたいと思っています。」
「ありがとうな、広報部も喜ぶよ。じゃあ早速…」
「待って下さい。」
通信を繋ごうとするはやてを止める。ここからが勝負だ、私とはやてさんの駆け引き…
グラスを取り1口ジュースを飲んで頭をフル回転させる。
「私が参加する条件は2つあります。2つとも叶えていただけるなら参加します。」
「条件…ですか?」
リインさんが首を傾げる。シグナムさんとヴィータさんも首を傾げながら私を見る。
「2つの条件? 出来るかどうかは聞いてからでええ?」
「はい、1つ目の条件は魔力コアを使ったスポーツ格闘技…異世界でストライクアーツって言っていたので私も習ってそう言いますが、ストライクアーツとは別に魔導学でも競う大会を作りたいって言ってましたよね。そっちにも参加させて下さい。」
「理由は…私が魔力コアを作ったプレシア・テスタロッサの娘だからです。ストライクアーツで良い成績を残してもそっちに参加してなかったら天才魔導学者の娘がバトルしか出来ないって思われるのは嫌です。だったら両方参加しない方がいいです。折角魔力コア試作デバイスのマスターになったんだから魔力コアを使った新しい魔法を作っていきたいです。」
「なるほど」
「だな♪」
シグナムさんとヴィータさんは納得して頷いてくれた。
「そうやね、わかった。そっちを主催する方に言っとくよ。聖王教会にも声をかける。管理局と聖王教会、どっちから参加してもいいやろ?」
早速快諾して貰えた。でもこれからが本命
「はい、ありがとうございます。もう1つの条件はストライクアーツに参加するならママ以外にも良いよって許可を貰わなくちゃいけない人が居ます。撮影みたいな動きだけなら平気ですけど、本当に強い…アインハルトさん、ミウラさんと全力で模擬戦をしなくちゃいけなくなったら私も全力で応えたいです。でも私が全力を出そうとするとあの剣術を使う事になります。」
「なのはちゃんの家族、士郎さん、恭也さん、美由希さんの許可が要るってことか?」
察しの良い彼女は誰の許可が要るのか私が言う前に聞いてきた。
「はい、士郎さんからは見せるものじゃなくて誰かを守る為につかうものだって言われています。でも…ストライクアーツに出るなら見せるものになっちゃいます。士郎さん達から信用されていてストライクアーツの意味を話せて説得して貰えなかったら…練習を始めたばかりなのに破門になっちゃいます。」
「…つまり、私に士郎さん達を説得して欲しいって?」
「説得まではして貰わなくてもいいですけど、ストライクアーツはこういう物だよって話をして欲しいです。」
ジッとはやてさんを見つめる。ここで断られてしまえば作戦は失敗する。
でも、彼女は私の目的に気づかなかったらしく
「わかった。『詳しい事聞かれたら説明しに行くよ』って言ったからな。私が行って話す。」
はやてさんの言葉を聞いて私は内心やったと握りこぶしを作った。
「ありがとうございます。じゃあ早速…ヴィヴィオも聞いたよね?良いって♪」
通信状態で愛機を待機させていたのを取り出して開く。
「ヴィヴィオ?」
『うん、今から行くね~♪』
そう言った直後、庭がパッと光った。私は立ち上がって庭に続く窓を開くと
「こんにちは、はやてちゃん」
「少しぶり…かな、シグナム、ヴィータ」
「リインさん、おはようございます。」
ヴィヴィオとフェイト、なのはさんが立っていた。3人とも少し大きめのバッグを持っている。
「ヴィヴィオになのはちゃん、フェイトちゃんまで? 何?」
「お前達…一体?」
「アリシア、何を?」
はやてさん達が振り返って私を見る。私はニッコリと笑って
「何?って決まってるじゃないですか♪ これから行くんですよ。異世界の…ブレイブデュエルの世界に居る士郎さん達に説明しに♪ さっき言いましたよね? 『私が行って話す』って♪」
はやてさんを異世界に連れて行くこと、これが私とヴィヴィオの作戦。
数日前の夜、私はヴィヴィオから相談を受けていた。相談の内容は『はやてさんをブレイブデュエルの世界のリインフォース―アインスさんと会わせたい。』
闇の書事件の撮影時、はやてさんはアインスさん役をすることで彼女を強く意識しすぎていた。
不幸な事故も重なってジュエルシードがその意識を受けてしまい闇の書の管制人格としてのリインフォースさんを蘇らせてしまった。
ヴィヴィオや私とチェント…色んな人の活躍でリインフォースさんは消滅させられたけれど、彼女はその後異世界に居るアインスさんの話を聞いても行こうとしなかった。
はやてさんの心にはまだアインスさんへの蟠りが残っている。
ブレイブデュエルの世界はゲームをしなければ魔法とは無縁の世界だし会った位で闇の書が蘇るとは思えない。そして、向こうのアインスさんもはやてさんの事を気にしていて、1歩進んで欲しいと言っていたそうだ。
私達ははやてさんを半ば無理矢理に連れて行く作戦を考えた。
私の剣術の師匠は士郎さん達、だけれどこっちの世界だけじゃなくてブレイブデュエルの世界の士郎さん達も師匠だ。
『はやてさんが行って話すよ』という言質を取り連れて行く。それも私だけじゃなくてヴィヴィオやフェイト、なのはさんにも聞いて貰う、八神家にシグナムさんやヴィータさんが居れば証人も増える。
ここでもし拒否すれば、私もストライクアーツに参加出来ないと言えば…はやてさんも断れない。
でも、『管理局の狸娘』と言われている彼女が私達の意図に気づいてその上で何か罠をしかけられる可能性もある。
だから念には念を入れて、私が1人で行って彼女の言質を取り、ヴィヴィオを通じてフェイト達に聞かせる作戦を立てた。
「アリシア…まさか…私を…!」
はやてさんがジト目で私を見る。私は満面の笑みを浮かべて首を傾げる。
いつも何かしらで巻き込まれているから上手く罠にはめられたのは心地が良い。
「何の事ですか♪ 士郎さん達にはやてさんが行って話してくれるんですよね? シグナムさんとヴィータさんから今日と明日はお休みだって聞いています。2日もあれば沢山お話できますよ♪」
ニヤリと笑みを浮かべながらも判っていても誰にとは言わない。あとは言葉尻を取られないように追い込むだけ。
「ごめんなさい、シグナムさん、ヴィータさん、リインさんはお留守番お願いします。あっちはゲームの中しか魔力がないので…。」
シグナムさんとヴィータさんは判らないけれど、リインさんは融合騎だから向こうに着いた瞬間に消えてしまいかねない。流石にそんなリスクは取りたくない。
「そうか…残念だけど仕方ねーな♪」
「そうですね~お留守番しています。あっ、宿泊の準備ですね。用意してきますからちょっと待ってて下さい。なのはちゃん達も寒いから家の中に入って下さい♪」
リインはそう言うとフルサイズに変わって2階へと階段を駆け上がっていった。
「もはや勝敗は決しました。ここはアリシアの言うとおり行かれてはどうでしょう?」
「…わかった、降参や。私を手玉に取るなんて成長したな…」
ため息をつきながら溢した言葉に
「ありがとうございます。これからも頑張ります。」
私達が初めてはやてさんに完勝した瞬間だった。
~コメント~
第9・10話でアリシアとヴィヴィオが話していた作戦が遂に始まりました。
アリシアは兎も角、ヴィヴィオは今まで何度も手玉に取られています。
そんな2人が初めて作戦勝ちをしたのは今までの成長の証とも思えますね。
少し興味を持ったみたいだけれどすまなさそうに言う。
「ええ~っ、一緒に行きたかったのに。」
「今日チェントがお友達の誕生日パーティにお呼ばれしているのよ。1人で行かせられないでしょう?」
「うん♪」
笑って頷く妹を見る。彼女も楽しみにしているみたいなので無理矢理には連れて行けない。
チェントは勿論ママにとっては普段出来ない親同士が交流出来る機会、私の我が儘につきあって急遽欠席…は流石にまずい。
「そっか残念。友達にいっぱいお祝いしてあげてね」
「うん♪」
笑顔で頷いた妹の頭を撫でた。
早速の作戦失敗、だけど今日は落ち込んでいられない。
本当の作戦はこれから始まるからだ。
「着替えも入れたし準備OK、それじゃ行ってきま~す。」
家の中へ声をかけて私は家を出た。
レールトレインの駅までトレーニングも兼ねて軽く走っていく。朝よりは暖かくなったけれどそれでも吐く息は白いし寒い。それでも少し走っていると体が暖まってきた。
レールトレインに乗ってクラナガンへと目指す。
目的地はヴィヴィオの家…じゃなくて更にクラナガン方向へと向かい途中の駅で降りる。
「バルディッシュ、間に合いそう? ヴィヴィオが来る前に着きたいんだけど」
【No problem】
愛機の応答を聞いて私は再び駆けだした。
その家の前に着いた私は息を整えるとチャイムを鳴らす。すると
「は~い…いらっしゃいアリシア」
中から足音がしてその家の主、八神はやてさんが顔を見せた。
「おはようございます。はやてさん」
「今日はどうしたん? シグナムとヴィータに私の予定聞いてたみたいやけど…」
はやてさんが私をリビングに案内しながら聞いてくる。
「はい、先日のストライクアーツの話を詳しく聞かせて貰おうと思いまして、シグナムさんとヴィータさんにはやてさんの予定を聞いていました。」
「ストライクアーツ? ああ、この前の大会の話か、あれってストライクアーツって言うん? はいどうぞ♪」
リビングに案内されると
「来たか」
「おう」
「こんにちは」
シグナムさんとヴィータさん、リインさんが居た。
「シャマルさんとザフィーラさん、アギトさんは…」
「3人は本局と地上本部に行ってるよ。家族が多いと全員集まるんも一苦労や」
苦笑いしながらはやてさんに席に促される。私が座るとリインさんがジュースを持って来てくれた。
「ありがとうございます。走ってきたので喉が渇いちゃって。」
グラスを持って早速頂く。熱くなった体にヒンヤリしていて気持ちいい。
「それでストライクアーツについて聞きたいっていうのは?」
はやてさんが対面のソファーに座る。もう1度グラスに口をつけて1口だけ飲む。
「連絡があった次の日にママ、プレシア・テスタロッサに相談しました。ママも聖王教会本部から少し聞いていたみたいで『危なくないならいいよ』って言ってくれています。ヴィヴィオもフェイトとなのはさんと相談して『協力するよ』って言ってました。」
「ありがとうな、先に話してくれて助かる。それでアリシアは?」
「私は…先の撮影でフェイトとはやてさん、なのはさんの役を演じた中で仕事の都合からなのは役の子は参加出来ませんし、ヴィヴィオも魔力資質が強すぎて参加出来ません。」
シグナムとヴィータがウンウンと頷く。
「私まで出なかったらあの撮影は全部作り物だって思われちゃう…実際作ってる所も多いですけどそれでも全部違うって思われるのは嫌です。」
「それに…私も同じ様な…アインハルトさんやミウラさん、同じ様に格闘経験を積んでる同世代の人達と競いたいと思っています。」
「ありがとうな、広報部も喜ぶよ。じゃあ早速…」
「待って下さい。」
通信を繋ごうとするはやてを止める。ここからが勝負だ、私とはやてさんの駆け引き…
グラスを取り1口ジュースを飲んで頭をフル回転させる。
「私が参加する条件は2つあります。2つとも叶えていただけるなら参加します。」
「条件…ですか?」
リインさんが首を傾げる。シグナムさんとヴィータさんも首を傾げながら私を見る。
「2つの条件? 出来るかどうかは聞いてからでええ?」
「はい、1つ目の条件は魔力コアを使ったスポーツ格闘技…異世界でストライクアーツって言っていたので私も習ってそう言いますが、ストライクアーツとは別に魔導学でも競う大会を作りたいって言ってましたよね。そっちにも参加させて下さい。」
「理由は…私が魔力コアを作ったプレシア・テスタロッサの娘だからです。ストライクアーツで良い成績を残してもそっちに参加してなかったら天才魔導学者の娘がバトルしか出来ないって思われるのは嫌です。だったら両方参加しない方がいいです。折角魔力コア試作デバイスのマスターになったんだから魔力コアを使った新しい魔法を作っていきたいです。」
「なるほど」
「だな♪」
シグナムさんとヴィータさんは納得して頷いてくれた。
「そうやね、わかった。そっちを主催する方に言っとくよ。聖王教会にも声をかける。管理局と聖王教会、どっちから参加してもいいやろ?」
早速快諾して貰えた。でもこれからが本命
「はい、ありがとうございます。もう1つの条件はストライクアーツに参加するならママ以外にも良いよって許可を貰わなくちゃいけない人が居ます。撮影みたいな動きだけなら平気ですけど、本当に強い…アインハルトさん、ミウラさんと全力で模擬戦をしなくちゃいけなくなったら私も全力で応えたいです。でも私が全力を出そうとするとあの剣術を使う事になります。」
「なのはちゃんの家族、士郎さん、恭也さん、美由希さんの許可が要るってことか?」
察しの良い彼女は誰の許可が要るのか私が言う前に聞いてきた。
「はい、士郎さんからは見せるものじゃなくて誰かを守る為につかうものだって言われています。でも…ストライクアーツに出るなら見せるものになっちゃいます。士郎さん達から信用されていてストライクアーツの意味を話せて説得して貰えなかったら…練習を始めたばかりなのに破門になっちゃいます。」
「…つまり、私に士郎さん達を説得して欲しいって?」
「説得まではして貰わなくてもいいですけど、ストライクアーツはこういう物だよって話をして欲しいです。」
ジッとはやてさんを見つめる。ここで断られてしまえば作戦は失敗する。
でも、彼女は私の目的に気づかなかったらしく
「わかった。『詳しい事聞かれたら説明しに行くよ』って言ったからな。私が行って話す。」
はやてさんの言葉を聞いて私は内心やったと握りこぶしを作った。
「ありがとうございます。じゃあ早速…ヴィヴィオも聞いたよね?良いって♪」
通信状態で愛機を待機させていたのを取り出して開く。
「ヴィヴィオ?」
『うん、今から行くね~♪』
そう言った直後、庭がパッと光った。私は立ち上がって庭に続く窓を開くと
「こんにちは、はやてちゃん」
「少しぶり…かな、シグナム、ヴィータ」
「リインさん、おはようございます。」
ヴィヴィオとフェイト、なのはさんが立っていた。3人とも少し大きめのバッグを持っている。
「ヴィヴィオになのはちゃん、フェイトちゃんまで? 何?」
「お前達…一体?」
「アリシア、何を?」
はやてさん達が振り返って私を見る。私はニッコリと笑って
「何?って決まってるじゃないですか♪ これから行くんですよ。異世界の…ブレイブデュエルの世界に居る士郎さん達に説明しに♪ さっき言いましたよね? 『私が行って話す』って♪」
はやてさんを異世界に連れて行くこと、これが私とヴィヴィオの作戦。
数日前の夜、私はヴィヴィオから相談を受けていた。相談の内容は『はやてさんをブレイブデュエルの世界のリインフォース―アインスさんと会わせたい。』
闇の書事件の撮影時、はやてさんはアインスさん役をすることで彼女を強く意識しすぎていた。
不幸な事故も重なってジュエルシードがその意識を受けてしまい闇の書の管制人格としてのリインフォースさんを蘇らせてしまった。
ヴィヴィオや私とチェント…色んな人の活躍でリインフォースさんは消滅させられたけれど、彼女はその後異世界に居るアインスさんの話を聞いても行こうとしなかった。
はやてさんの心にはまだアインスさんへの蟠りが残っている。
ブレイブデュエルの世界はゲームをしなければ魔法とは無縁の世界だし会った位で闇の書が蘇るとは思えない。そして、向こうのアインスさんもはやてさんの事を気にしていて、1歩進んで欲しいと言っていたそうだ。
私達ははやてさんを半ば無理矢理に連れて行く作戦を考えた。
私の剣術の師匠は士郎さん達、だけれどこっちの世界だけじゃなくてブレイブデュエルの世界の士郎さん達も師匠だ。
『はやてさんが行って話すよ』という言質を取り連れて行く。それも私だけじゃなくてヴィヴィオやフェイト、なのはさんにも聞いて貰う、八神家にシグナムさんやヴィータさんが居れば証人も増える。
ここでもし拒否すれば、私もストライクアーツに参加出来ないと言えば…はやてさんも断れない。
でも、『管理局の狸娘』と言われている彼女が私達の意図に気づいてその上で何か罠をしかけられる可能性もある。
だから念には念を入れて、私が1人で行って彼女の言質を取り、ヴィヴィオを通じてフェイト達に聞かせる作戦を立てた。
「アリシア…まさか…私を…!」
はやてさんがジト目で私を見る。私は満面の笑みを浮かべて首を傾げる。
いつも何かしらで巻き込まれているから上手く罠にはめられたのは心地が良い。
「何の事ですか♪ 士郎さん達にはやてさんが行って話してくれるんですよね? シグナムさんとヴィータさんから今日と明日はお休みだって聞いています。2日もあれば沢山お話できますよ♪」
ニヤリと笑みを浮かべながらも判っていても誰にとは言わない。あとは言葉尻を取られないように追い込むだけ。
「ごめんなさい、シグナムさん、ヴィータさん、リインさんはお留守番お願いします。あっちはゲームの中しか魔力がないので…。」
シグナムさんとヴィータさんは判らないけれど、リインさんは融合騎だから向こうに着いた瞬間に消えてしまいかねない。流石にそんなリスクは取りたくない。
「そうか…残念だけど仕方ねーな♪」
「そうですね~お留守番しています。あっ、宿泊の準備ですね。用意してきますからちょっと待ってて下さい。なのはちゃん達も寒いから家の中に入って下さい♪」
リインはそう言うとフルサイズに変わって2階へと階段を駆け上がっていった。
「もはや勝敗は決しました。ここはアリシアの言うとおり行かれてはどうでしょう?」
「…わかった、降参や。私を手玉に取るなんて成長したな…」
ため息をつきながら溢した言葉に
「ありがとうございます。これからも頑張ります。」
私達が初めてはやてさんに完勝した瞬間だった。
~コメント~
第9・10話でアリシアとヴィヴィオが話していた作戦が遂に始まりました。
アリシアは兎も角、ヴィヴィオは今まで何度も手玉に取られています。
そんな2人が初めて作戦勝ちをしたのは今までの成長の証とも思えますね。
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