第14話「4人の共同作業」

「食材は全部揃えてくれてるから人手だけで大丈夫。メニューはディアーチェから聞いてって…」
「何を作るつもりなのかな?」

 私達は八神堂を出て再びグランツ研究所へと向かっていた。

「これから大人数用となると絞られるな…。まぁこっちの私もディアーチェの料理の腕は認めてたから、とにかく急ごうか。」

 グランツ研究所の奥にあるフローリアン家の居住エリア、その中のキッチンに着いた時
 そこでは何体ものチヴィットを使いながらディアーチェが食材を切っていた。
「ディアーチェ、お待たせ~応援に来たよ。」
「まさか応援というのは貴様等か?」
「そういうこと♪」
「はやて…さん、あなた方を歓迎する為なのにお手伝いをお願いしてすみません。そこのおまけ2人、邪魔はせぬようにな。」

 はやてさんの前に行って頭を下げるディアーチェ

「なんか私達とはやてさんの扱いの差酷くない?」
「ふ~ん、これを見てもそんなことが言えるかな?」

 私とヴィヴィオはフフフと笑みを浮かべて後手に隠していた物をバッと広げた。

「黒いエプロンに文字が…それはっ!?」
「こっちのじゃないけど、桃子さんに作って貰った私達専用のエプロンよっ♪」
「料理、いっぱい教わってるんだから、こっちのはやてにもね♪」

 2人で料理を教わりに行った時に作って貰った翠屋エプロン。勿論私達の背丈にあった特別製。

「私も2人の料理食べた事あるよ。心強い応援や。喋ってたら時間が無くなる。何を作るのかメニュー教えて。」

 はやてさんの持って来た荷物にもいつも使っているエプロンが入っていた。着替えを用意したリインさんに心の中で拍手を送る!


             
「え~と…ヴィヴィオ、そっちのキャベツ6個千切りにして。アリシアはピーマン洗って段切りにしたらジャガイモと人参を乱切りに、2人とも包丁が変われば切る感触も変わるから最初ゆっくりな。ディアーチェちゃん、圧力鍋ってある? 大きい方がええんやけど、あったらそこに今鍋にあるの入れて10分位中火で…そこの小っちゃい子達は野菜をテーブルに出して入ってた箱を片付けてからこれ位のお皿を6…8つ持って来て。」

 そこからははやてさんの独壇場だった。
 火元に居るディアーチェが動かないでに次々料理出来る様に肉や魚、野菜を彼女の手に届く所に用意しながら、初めて見る様な大きなオーブンや調理器具を使い時間のかかりそうな料理の下ごしらえを始める。
 更に大きな中華鍋を見つけて手慣れた手つきで使っていく。
 その間にも私達の進捗を見て次々と指示を出していく。

「凄い…」
「全部見えてるみたい…」
「ヴィヴィオ、アリシア手が止まってるよ。あと少し頑張ろうな」
「「は、はいっ!」」

 はやてさんに注意されて慌てて動き始めた、私達が見えない筈なのに…。
 全員の動きを見ながら指示を出していく…これがはやてさんが言っていた統率なんだろう…。
 元機動6課の部隊長、その力量は並ではなく改めて感心した。


  
「では、皆さんの出逢いとブレイブデュエルの更なる発展を願って、乾杯」

 何人か増えて総勢30人強が揃ってかんぱーいとコップを掲げる。
会議室っぽい部屋は綺麗に飾られ会議用の長いテーブルも幾つかくっつけて白いテーブルクロス がかけられていた。部屋の奥には大きなモニタにデュエルのダイジェストっぽい映像が流れている。「私達が料理してる間に用意してたんだ…」
「みたいだね~」
「アリシア、ヴィヴィオ♪」

 私達が話していると声をかけてきたのはこっちの私、アリシアだった。

「アリシア、久しぶり♪」
「本当久しぶり、こっちには何度も来るのにお店に来てくれないんだから全然会えないじゃない。フェイトは時々会ってるのに~っ」

 同じ私でもこっちの私とは少し違う所がある。まず年齢が2歳彼女の方が上、でも背は私達より小さい…。そろそろ伸びないと背が低いままに…。

「失礼ね、ちょっとずつ伸びてるわよ、来年の私を見て驚きなさいっ!」

 胸を張るアリシア 
          
「来年なんだ…」

 ヴィヴィオが突っ込みを入れようとするのを肘で小突く。

「た、楽しみにしてるね。」
「ヴィヴィオ、アリシア!」

 私達を見つけてかフェイトとなのは、アリサ、すずかがやって来た。これでT&Hショップチーム勢揃いだ。

「ねぇねぇ、あっちの3人ってさ…すっごくなのはとフェイト、はやてに似てると思わない?」

 アリサが興味津々に言う。それを聞いてなのはとフェイト、アリシアはしまったと言った顔をしている。すずかはニコニコ笑っている。彼女の様子から3人についてはユーリかはやてあたりから聞いていたのだろう。

(話すの忘れたみたいだね…)  
「うん、私達の世界のなのはさんとフェイトさんとはやてさん。折角お泊まりで遊びに来るんだからって一緒に来たんだ。なのはさんとフェイトさんはブレイブデュエルの先生みたいな仕事をしてるからフェイトとシュテルの特訓をして貰ってるの。」
「えっ!? じゃあ本物! だったら大人になった私やアリシア、すずかもそっちに居るんでしょ?」
「それは…秘密。だって知っちゃったらつまらなくなるよ。はやてさん達だって本当は一緒に来ようか考えたんだから。」
「そこまで気になるんだったら直接聞いてみたら?」
「…わかった。すずか行くわよっ」

 そう言ってアリサとすずかは離れていった。その様子を見て残った3人はフゥっと息をついた。
ヴィヴィオと揃ってクスッと笑う。

「『あれ? アリサ、なのはとフェイトから聞いてないの? もう何度も一緒に来てるよ』なんて言ったら大変だったね。」
「アリシア、それ1番危ない答え方だよ。」
「わかってるって、そんな事言ったらアリサが怒って私達も巻き込まれちゃうでしょ。」 

 ヴィヴィオが苦笑いをし、なのは達はウンウンと頷く

「ありがとう。アリサとすずかに話そうかって相談はしてたんだ。」
「でも…じゃあ会わせてって言われても何にも出来ないし…」
「それで良いと思うよ。はやてさん達、フォローしてくれるって。すずかは知ってたみたいだし。ユーリかはやてから聞いてるんじゃないかな?」

 話しているとユーリとディアーチェがやって来た。

「ヴィヴィオ、アリシアありがとうございます。料理とっても美味しいです。」
「殆どディアーチェとはやてさんが作ってて私達は用意しただけだよ。」 
「だがそれも我やチヴィットにさせていたら間に合わなかった、礼を言う。メニューを伝えてから出来上がる時間までを考えて采配を助かった彼女は凄いな。」
「私達も驚きました。はやてさん、幾つか同時に料理をしながら私達とチヴィット全員の状況を見ていたみたいです。」

 そう言ってはやてさんを見るとアリサの相手をしながら小皿に取り分けた白身魚のソテーを掲げ『美味しいよ』と口パクで言っていた。何処かに隠しマイクでも仕込んでいるんじゃ無いかと言うくらいよく見ている。
                  
「代わりに明日は腕を振るいたいところだが、シュテルとフェイトが朝から特訓するらしいから我等もフォローに入らねばならぬ。」
「いいですよ、また次の機会で」
「うん、みんなにはいっぱいお世話になってますから。」

 私達は笑顔で答えた。
 その後、折角だからと中々顔を合わせない人達とも話そうと言うことになりそれぞれに分かれた。
 私はこっちのリンディさんやプレシアさん、クロノさんと久しぶりに話した。以前私のせいでみんなにご迷惑をおかけしたことにお詫びもお礼も言っていなかったからだ。
 リンディさんとプレシアさんも私達の世界の2人について少し気にしていたけれど、どちらかと言うと、ブレイブデュエルが良い方向に向かって広がっているのが嬉しくて、将来が楽しみで隣の町に2号店を出そうかという計画もあるらしい。
 その後でキリエさんやレヴィ、アリサとフェイトも混ざってブレイブデュエルで剣を使う時のコツ…みたいなのも沢山話した。そして…


 
「あ~久しぶりに沢山作れたからスッキリした。」

 歓迎会が終わって私達は家路についた。
 ヴィヴィオとフェイト、はやてさんは八神家に…私となのはさんは高町家でお世話になる。
 夜も遅いし途中まで一緒に帰っている。

「とても美味しかったです。明日の朝食は期待してて下さいね。」

 はやてが言う。彼女はというとリンディさんとプレシアさん、スタッフやグランツ博士と色々話ながら出ていた料理を一通り食べたらしい。時間と世界を超えて八神家レシピが更新されたみたいだ。

「一応はやてさんのブレイブホルダーとメモリは持って来てますけど…どうします?」
「明日でいいよ。今日は満足してるから。」
「でしたら開店前にしましょう。アインス、ヴィヴィオちゃん、頼めるか?」
「はい、我が主」
「勿論。」

 2人のやりとりを見ているはやてさんは少し笑っていた。

(もう…大丈夫かな…)

 彼女も歩き始めることが出来たらしい。それを感じて少し嬉しくなった。
 


「アリシアちゃん、午後から私達グランツ研究所に行くけど来ない?」

 翌朝、トレーニングを終えてお風呂で汗を流していた時、一緒に入っていた美由希さんが言った。

「はい、夕方に帰る予定なのでいいですよ。私達?」
「うん、私と父さんと恭ちゃん、プロトタイプシミュレーターで練習するの。一緒にどうかなって」

 実際にプロトタイプシミュレーターを使って美由希達がどんな風に練習するのか見たことが無かった私は胸が躍り

「行きます! 絶対!!」

 何度も頷いて言った。こんなチャンス見逃す手はない!



「あれ? アリシアどうしたの?」

 桃子さんとなのはさんが作った朝食を食べた後、私はなのはさんと八神家に向かった。
 私達が着いた頃にははやてさん達も出かける準備をしていてそのまま八神堂へと向かう。
 ここでフェイトとなのはさんはグランツ研究所へと向かう為別れる。

「ブレイブデュエルか…どんなんかドキドキするね。」
「少し感じが違うけれど、面白いよ。」
「うん。はやてなら直ぐに慣れる。」

 フェイト達が話している間に

「ねぇヴィヴィオ、はやてさんのジャケット…どうなると思う?」
「え?…はやてと同じじゃないの?」
「私と同じって…あのジャケットは凄いレアで私とディアーチェしか持ってないよ? 流石にそれを引くのは無理ちゃうかな…」

 はやてが話に入ってきた。

「そうかな~、それも楽しみの1つだね。」

 はやてさんがどんなジャケットになるか楽しみになった。



『ブレイブホルダー掲げて、ブレイブデュエルスタンバイ』
「「ブレイブデュエル、スタンバイ」」

 八神堂に着くと開店作業をするはやて達を残して私達は地下のプレイルームへと向かった。
 早速ブレイブデュエルを起動させて私とヴィヴィオ、はやてさんが仮想空間へと飛び込んだ。

「はやてさん、どんな感じですか?」

 アバタージャケットを纏って飛び立ち平原ステージに立って辺りをキョロキョロしていたはやてさんを見つけて降りる。    
 私に続いて反対方向からヴィヴィオも飛んで来た。

「魔法とは違う…なんか不思議な感覚やね。

「来た時にブレイブホルダーにカードが5枚入った筈です。見せて貰って良いですか?」

 はやてさんはそう言うとポケットからブレイブホルダーを取り出して中を開くと5枚のカードが出てきた。

「カード…これ?」
「はい…パーソナルカードは置いておいてレアが2枚、N+とNが1枚ずつ…。アインスさんこれでリライズ出来ますか?」
『少し待って…レアカード2枚を通せば出来るね。』

 空に向かって聞くと、オペレーションルームに居るアインスさんから返事があった。

「私と同じだ♪ Rって書いたカードを2枚ブレイブホルダーの反対に読み込ませて『カードフュージョン、ストライカーチェンジ、ドライブレディリライズアップ』って言って下さい。」      
「ええっと…他の2枚は元の場所に戻して、これを…カードフュージョン、ストライカーチェンジ、ドライブレディリライズアップ」

 はやてさんが言った直後、彼女が輝き出しアバタージャケット姿に変わった。
 はやてやディアーチェに似たジャケットだけれど、所々に細かな装飾が施されていて重厚感が感じられる。

『アバター名、キングオブグローリー。我が主やディアーチェのグローリーシリーズの上位ジャケットだね。』
「スキルは。『夜天の王、このスキルを持つ者が同じチームに居ると、チームメンバー全員の能力値がLP・MPを含め50%上昇する。』やって、パッシブスキルかな?」
「凄い、それってチーム戦にはやてさんが居たら滅茶苦茶強くなるんじゃないですか?」
「1人じゃあまり意味が無いけど…はやてさんらしいスキルです。私達とデュエルしてみます?」
「う~ん、スキルってこれしか無いから何にも出来んかな。」
『パーソナルカードにジャケットの登録をしたから次から4枚入れ替えてもそのジャケットが使えるよ。私のカードを貸そうか?』
「そうですね。1度出てカード見せて貰って考えます。デュエルはまた今度やね。」
「はい」

 流石に戦闘用のスキルが無ければデュエルのしようもない。          
 私達は頷いて仮想空間から出た。

~コメント~
 イノセントのゲーム本編もコミックも終了して久しいですが、ようやく大人はやてがブレイブデュエルに入りました。
 どこかでマスターモードのはやてと一緒に登場させられたら楽しいかなと思っています。

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