第16話「バルディッシュ」
- なんでもないただの1日
- by ima
- 2021.04.10 Saturday 10:49
「…と…戻った…あ…あれ?」
カプセルの中で瞼を開いて外に出ようとすると、足が上手く動かない。バランスを崩して慌てて手でカプセルの壁を掴もうとしたが腕も上がらない。
「な、なに?」
何か言おうとしても上手く話せない。一体何が起きているのか判らず半分パニックになった。
「っと、間に合った。」
プロトタイプから転がり落ちそうになったところを柔らかい感触に受け止められた。
「…ヴィ…ヴィ…オ…?」
「ね、出たらわかったでしょ?」
その時の私は彼女が何を言っているのか全く理解出来なかった。
カプセルの中で瞼を開いて外に出ようとすると、足が上手く動かない。バランスを崩して慌てて手でカプセルの壁を掴もうとしたが腕も上がらない。
「な、なに?」
何か言おうとしても上手く話せない。一体何が起きているのか判らず半分パニックになった。
「っと、間に合った。」
プロトタイプから転がり落ちそうになったところを柔らかい感触に受け止められた。
「…ヴィ…ヴィ…オ…?」
「ね、出たらわかったでしょ?」
その時の私は彼女が何を言っているのか全く理解出来なかった。
私はヴィヴィオに肩を担がれて近くの椅子に座った。フェイトがスポーツドリンクを持って来てくれたけれど、まだ手が上手く動かなくてヴィヴィオがボトルキャップを開けて口に入れてくれた。
1口…2口…喉に冷たい感触が通り過ぎるのと共にぼんやりした頭がはっきりしてくる。手も動き出したからペットボトルを受け取って自分で飲む。
半分くらい飲んだところでフゥ~っと息をして落ち着いた。
「極度の緊張が続いたことによる脱水症状ですね。全く…私達でもあんなデュエルを長時間するなんて出来ません。プロトタイプにリミッターが無いとは言え無茶をしすぎです。」
シュテルが呆れながら言う。
「脱水症状? 実際に走ってないのに?」
「ブレイブデュエルの中で実際に飛んだり走っても体は動きません。実際に動くイメージを読み取って仮想空間の中で動きます。だから現実より体の負担は少ないです…でも無い訳じゃありません。」
「アリシアと美由希さんのデュエルの様に現実世界であり得ない動きをすれば頭に相当な負担がかかって心拍数も増えて熱くなり汗もたくさん出ます。それが長時間続けば今の様になって当然です!」
言われてみれば走ってないのに服は汗だくでビショ濡れになっていた。
見れば近くの椅子に座っている美由希さんも汗だくで立てないらしく、恭也さんからスポーツドリンクを貰っている。
それよりも…私もその時になって部屋の雰囲気に気がついた。
「本体の方はリミッターがありますけどプロトタイプは試験用なのでつけていません。何か起きていたらどうするつもりだったんですか。みんな何か勘違いしていませんか?」
「ブレイブデュエルは仮想世界の中でみんなで安全に楽しく遊ぶものなんです。その為に博士やスタッフみんなが頑張ってるんです。倒れるまで無茶をして使う為のものじゃありません。」
「みんなどうして止めてくれなかったんですか。シュテル、フェイト、アリシア、ヴィヴィオ、なのはさんとフェイトさんも前にフェイトとアリシアがデュエルして1人じゃ出られなくなった時を見ていた筈です。」
「士郎さん、恭也さん、美由希さん…私達はブレイブデュエルの新しい可能性を広げたいからって協力をお願いしました。でもこんな使い方をしたいからじゃないです。こんなことをする為にお願いした訳じゃ…ック…ッ…。」
そう…ユーリは怒っていた。
それももの凄く…。
昔ヴィヴィオが言っていたブレイブデュエルの良い可能性を作りたいと言っていたけれど、今の私達のデュエルは只の死闘でしかないし、実際倒れる寸前で、ユーリ達の目標とは真逆。
きっと何度も止めようとしてくれたのだろう…でも誰も止めるのに賛成してくれなかった…頼みの綱だったヴィヴィオも含めて…。
DMSの中で1番ブレイブデュエルに近い彼女だから尚更辛かったに違い無い。
静かに泣くユーリに私も含めてその場に居た全員が何も言えなかった。
「やっぱりこうなったか…急いで来たんやけどな。知ってるけど似てる町って迷子になるな。」
その時部屋に入ってきたのははやてさんだった。
「昨日の今日やからこっちの私が『もしかすると…』って言ってくれたんよ。『士郎さん達がアリシアを呼んで何かしてて、その使い方はブレイブデュエルの目的からかけ離れてるからユーリがヴィヴィオを呼んだんとちゃうか?』って…。ズバリ的中やったみたいやね。」
はやてさんはそのままユーリを優しく抱きしめる。
「ごめんなユーリ、こっちの事情でこんな使い方をされたら怒るの当たり前やな…本当にごめん…。これは…そうやね『アリシアへのプレゼント』やったんよ。」
「…グスッ…プレゼント…ですか?」
「士郎さん、アリシア…私の推測含みで話していいですね?」
私と士郎さんが頷くとはやてさんは私に何が起きていたのかを全員に話した。
私達の世界で起きていること、その中で私がストライクアーツに出る為に士郎さん達の許可を貰いに来たこと。そして…
「士郎さん達はアリシアが武術主体で競技会に出るなら何処かで壁にぶつかると思った。壁を越えるには魔法と武術を組み合わせた力が要るようになる、でもその時になっていきなり作れへんし気づいた時には遅い時もある。こっちと違って怪我するかも知らんからな。」
「だから武術も魔法も使えてどれだけ攻撃されても平気なブレイブデュエルの中でそれを教えようとした。アリシアよりも強い美由希さんにアリシアが勝つにはアリシアが美由希さんを超える力、組み合わせた力を出さんとあかん…。」
「なのはちゃん、フェイトちゃん…そんなとこやろ? アリシアとヴィヴィオも気づいてたんとちゃう?」
フェイトとなのはさんが頷く。2人も気づいていたらしい。
「2つの組み合わせ…っていうのはわかりませんでしたけど、アリシアに何かを伝えようとしていたのはわかりました。」
ヴィヴィオも頷いて言う。彼女はそれに気づいてたからブレイブデュエルの中に来てまで応援してくれた。
「私は、私よりも強い人と対戦しなくちゃいけない時どうすればいいのか教えてくれてるんだと思ってました。だって美由希さん演技下手なんだもん、バレバレでした。私ももっと怒らせようとしてました。私の心を本気で折るなら美由希さんじゃなくて恭也さんが来てた筈ですよね。」
「アハハハ…気づいてたんだ。」
「酷いな~」
苦笑いする美由希さんと恭也さん。
「その為にプロトタイプを…」
「うん…でも、ユーリが思う楽しく遊ぶっていう使い方とは全然ちゃう。怒るのは当たり前やしユーリにきちんと話してなくて心配かけたのは私らが悪い…ほんまにごめんな。」
「アリシア…最後のスキルは何だったの?」
ユーリが落ち着くのを見てホッとしたところでフェイトが聞く。
「ジャケットチェンジのカードと…今日ローダーで引いたカードを使ったの。」
ブレイブホルダーの中から2枚のカードを出して見せた。
1枚はフェイトも持っているカードでもう1枚は…
「SR+ホーネットジャベリン…初めて見た。直射砲撃の防御貫通スキルなんだ…」
「変ですね…イベント期間中ならともかく、今日はレアまでしか出ない筈ですが…、ユーリ、アリシアがローダーでこれを引いたそうなんですが見て貰えますか? アリシア、これいつ受け取りました?」
「ユーリのチヴィットが呼びに来て、ここに来る前に寄ったから…1時間位前かな?」
シュテルがプロトタイプでのデュエルデータを整理しているユーリにカードを持っていく。
「…ホーネットジャベリン…直射砲撃の防御貫通スキル………????。」
「…………」
ユーリは首を傾げた後、端末のキーを叩いて調べていく。
「えっ…何か使っちゃまずいカードだった?」
流石に不安になって聞き返す。
「これを見て下さい、SR+のスキルカードリストです。カードにはみんな個別にIDが割り振られてます。タイプ別に並べ替えますね。」
手元の画面を大型モニタに映して、更にその中にリストを表示させる。スターライトブレイカーやラグナロク、ジェットザンバー等各々の必殺魔法の名前もある。
私はフェイトと同じタイプだから…ジェットザンバーの近くに名前がないか探すが見当たらない。
「? 無い…?」
「それで、これは誰がいつどんなカードをロードしたかの記録です。アリシアのIDは…これですね。ブレイブデュエルのシミュレーターでもカードを読み込ませる時と起動する時に何のカードだったかは記録されています。」
そう言って何が書かれているか直ぐには読めない細かなテキストを横に映してIDらしき値部分の色を変える。
「アリシアがブレイズⅡのカードを読み込ませた時にホーネットジャベリンも読み込ませていました。あと使った時がこれ…。」
更にテキストウィンドウが2つ重なる。
「みんな同じIDだね…」
「はい、改造したり勝手に作ってもカードローダーとデュエルシステムは個別に管理・チェックしているので2つの記録で同じIDが出ているのでアリシアが自分で作った改造スキルじゃなくてブレイブデュエルに登録されたスキルということが証明出来ます。」
「無理無理~。私、改造だなんてそんな難しい事出来ないし、ローダーで引いてからまっすぐここに来たんだからそんな時間も無いよ。」
頭をブンブン振って言う。
「ごめんなさい、先に言わせて貰ったのはこれを見て貰う為です。SR+のカードIDはバラバラですが特定のルールがあっていつ作られたカードか判る様になっています。判りやすくしますね。」
そう言うとバラバラの数値だったSR+リストが規則正しい数値に変わった。最初に作られたのはシュテルとレヴィ、ディアーチェ、アミタ、キリエのスキルだ。グランツ研究所内でテストをしていた時だろうか、それぞれのジャケットタイプのスキルが追加されていっている。
「それで…これがホーネットジャベリンの名前が見つからなかったので、カードIDをリストに照らし合わせて見ると…」
継続的に増えていたリストからホーネットジャベリンのIDだけが抜き出ている。
「これは…来年?」
シュテルが言う。
「そうなんです。カードIDから見れば来年の8月に生まれるカードなんです。だからSR+のリストにもテスト中や作る予定のスキルカードにも名前はありませんでした。」
「ちょ、ちょっと待って。でもそのカード普通に使えたよ? みんなも見てたでしょ?あんなに凄まじい威力とは思って無かったけど…。そもそもそんなカードがどうしてローダーから出たの?」
驚いて思わず立ち上がった。
まだヴィヴィオと一緒に1年後に行ってカードを持って来た~とか言うなら話もわかるけど、少し前に引いたカードが未来に作られたカードだなんて余計に判らない。
「それは…調べないとわかりません。でもさっきシュテルが言った様にSRやSR+のカードはグランプリとか特定のイベントの時にしか出ないんです。昨日と今日のローダーをチェックしていますが、SR+が出たのはアリシアだけです。」
「……アリシア、私…アリシアが使ったスキル…魔法だけど見たことがあるの。お正月に巻き込まれた事件で…オールストン・シーで3人が向かってきた時あったでしょ。アリシアのバルディッシュをフェイトが使っていてレヴィに壊されちゃったけど、新しいバルディッシュが間に合って…その時フェイトがレヴィに勝った魔法が同じだった。」
「「「「!?」」」」
私は勿論、フェイトやなのはさん、はやてさんも思わず驚く
「多分だけど…私達の世界って何処か繋がってるんじゃないかな…こっちの未来に私が居るみたいに…」
「……そっか…そうだね。」
呟いた直後、ヴィヴィオが言った意味が頭の中で繋がっていく。
カードのIDが来年の8月なのは多分ここのフェイトが来年の8月には異世界の彼女と同じ6年生になっている。向こうでも同じ時間に彼女が使った魔法。ホーネットジャベリンがユーリが固定したLPを飛ばし地形を大きく変えてしまったのは…
(あの声…ヴィヴィオとチェント…だよね。)
バルディッシュをRHdを繋いだことで魔力供給されてブレイブデュエルのシステムと違う同質の力が動いたから…
そして、あのカードを送ってくれたのは…
(あっちのフェイトとバルディッシュからのプレゼントなのかな…)
異世界で起きた事件で私とフェイトのバルディッシュ同士が何度もやりとりをしているのは私のバルディッシュとフェイトから聞いていた。
世界や魔力の供給システムは違っても同じバルディッシュ同士、帰る前にプログラムだけ送ってくれていて…、でも私とバルディッシュだけじゃ使えなくてブレイブデュエルを使ってスキルカードとして作り出してくれたのかも…。
「ありがとうね、ずっと…頑張ってくれてたのに気づいてなくて、これからもよろしくね」
ペンダントに向けて話しかける。こっちじゃ応えられない相棒がキラッと光った気がした。
~コメント~
以前の話、AffectStory~刻の護り人~でバルディッシュ同士の交流がありました。複数話になっていたので少し紹介します。
魔力の弱いアリシアと共に戦うバルディッシュ(A)を見て、フェイトのバルディッシュ(F)は昔フェイトが幼かった頃に同じ原因に対して使ったプログラムを送る。バルディッシュ(F)はその後キリエとの戦闘で修理(改修)行き。
バルディッシュ(A)は戦闘後にバルディッシュ(F)が修理中なのを知って代わりとしてフェイトの力になりたいとアリシアに頼みフェイトが使用。
(Detnationでフェイトが急遽使ったデバイスの出番はこれで消えちゃいました)
レヴィとの戦闘でフェイトとリンディを守る為に最後の手段を使ってバルディッシュ(A)は停止。停止直前に改修されたバルディッシュ(F)が戻って来たので自身で組んでいたプログラム【Penetrate】をバルディッシュ(F)に送る。
バルディッシュ(F)は礼を言って事件中にプログラムを使い、レヴィ戦やフィル戦で活躍。バルディッシュ(A)は異世界アリシアによって修理(改修)されて再びアリシアの手元に戻って来ました。
という感じでした。その後2機の交流については触れていませんでしたが、寡黙なデバイス同士で何らかのやりとりはあったと思います。今話ではその1部がカードとなって登場しました。
1口…2口…喉に冷たい感触が通り過ぎるのと共にぼんやりした頭がはっきりしてくる。手も動き出したからペットボトルを受け取って自分で飲む。
半分くらい飲んだところでフゥ~っと息をして落ち着いた。
「極度の緊張が続いたことによる脱水症状ですね。全く…私達でもあんなデュエルを長時間するなんて出来ません。プロトタイプにリミッターが無いとは言え無茶をしすぎです。」
シュテルが呆れながら言う。
「脱水症状? 実際に走ってないのに?」
「ブレイブデュエルの中で実際に飛んだり走っても体は動きません。実際に動くイメージを読み取って仮想空間の中で動きます。だから現実より体の負担は少ないです…でも無い訳じゃありません。」
「アリシアと美由希さんのデュエルの様に現実世界であり得ない動きをすれば頭に相当な負担がかかって心拍数も増えて熱くなり汗もたくさん出ます。それが長時間続けば今の様になって当然です!」
言われてみれば走ってないのに服は汗だくでビショ濡れになっていた。
見れば近くの椅子に座っている美由希さんも汗だくで立てないらしく、恭也さんからスポーツドリンクを貰っている。
それよりも…私もその時になって部屋の雰囲気に気がついた。
「本体の方はリミッターがありますけどプロトタイプは試験用なのでつけていません。何か起きていたらどうするつもりだったんですか。みんな何か勘違いしていませんか?」
「ブレイブデュエルは仮想世界の中でみんなで安全に楽しく遊ぶものなんです。その為に博士やスタッフみんなが頑張ってるんです。倒れるまで無茶をして使う為のものじゃありません。」
「みんなどうして止めてくれなかったんですか。シュテル、フェイト、アリシア、ヴィヴィオ、なのはさんとフェイトさんも前にフェイトとアリシアがデュエルして1人じゃ出られなくなった時を見ていた筈です。」
「士郎さん、恭也さん、美由希さん…私達はブレイブデュエルの新しい可能性を広げたいからって協力をお願いしました。でもこんな使い方をしたいからじゃないです。こんなことをする為にお願いした訳じゃ…ック…ッ…。」
そう…ユーリは怒っていた。
それももの凄く…。
昔ヴィヴィオが言っていたブレイブデュエルの良い可能性を作りたいと言っていたけれど、今の私達のデュエルは只の死闘でしかないし、実際倒れる寸前で、ユーリ達の目標とは真逆。
きっと何度も止めようとしてくれたのだろう…でも誰も止めるのに賛成してくれなかった…頼みの綱だったヴィヴィオも含めて…。
DMSの中で1番ブレイブデュエルに近い彼女だから尚更辛かったに違い無い。
静かに泣くユーリに私も含めてその場に居た全員が何も言えなかった。
「やっぱりこうなったか…急いで来たんやけどな。知ってるけど似てる町って迷子になるな。」
その時部屋に入ってきたのははやてさんだった。
「昨日の今日やからこっちの私が『もしかすると…』って言ってくれたんよ。『士郎さん達がアリシアを呼んで何かしてて、その使い方はブレイブデュエルの目的からかけ離れてるからユーリがヴィヴィオを呼んだんとちゃうか?』って…。ズバリ的中やったみたいやね。」
はやてさんはそのままユーリを優しく抱きしめる。
「ごめんなユーリ、こっちの事情でこんな使い方をされたら怒るの当たり前やな…本当にごめん…。これは…そうやね『アリシアへのプレゼント』やったんよ。」
「…グスッ…プレゼント…ですか?」
「士郎さん、アリシア…私の推測含みで話していいですね?」
私と士郎さんが頷くとはやてさんは私に何が起きていたのかを全員に話した。
私達の世界で起きていること、その中で私がストライクアーツに出る為に士郎さん達の許可を貰いに来たこと。そして…
「士郎さん達はアリシアが武術主体で競技会に出るなら何処かで壁にぶつかると思った。壁を越えるには魔法と武術を組み合わせた力が要るようになる、でもその時になっていきなり作れへんし気づいた時には遅い時もある。こっちと違って怪我するかも知らんからな。」
「だから武術も魔法も使えてどれだけ攻撃されても平気なブレイブデュエルの中でそれを教えようとした。アリシアよりも強い美由希さんにアリシアが勝つにはアリシアが美由希さんを超える力、組み合わせた力を出さんとあかん…。」
「なのはちゃん、フェイトちゃん…そんなとこやろ? アリシアとヴィヴィオも気づいてたんとちゃう?」
フェイトとなのはさんが頷く。2人も気づいていたらしい。
「2つの組み合わせ…っていうのはわかりませんでしたけど、アリシアに何かを伝えようとしていたのはわかりました。」
ヴィヴィオも頷いて言う。彼女はそれに気づいてたからブレイブデュエルの中に来てまで応援してくれた。
「私は、私よりも強い人と対戦しなくちゃいけない時どうすればいいのか教えてくれてるんだと思ってました。だって美由希さん演技下手なんだもん、バレバレでした。私ももっと怒らせようとしてました。私の心を本気で折るなら美由希さんじゃなくて恭也さんが来てた筈ですよね。」
「アハハハ…気づいてたんだ。」
「酷いな~」
苦笑いする美由希さんと恭也さん。
「その為にプロトタイプを…」
「うん…でも、ユーリが思う楽しく遊ぶっていう使い方とは全然ちゃう。怒るのは当たり前やしユーリにきちんと話してなくて心配かけたのは私らが悪い…ほんまにごめんな。」
「アリシア…最後のスキルは何だったの?」
ユーリが落ち着くのを見てホッとしたところでフェイトが聞く。
「ジャケットチェンジのカードと…今日ローダーで引いたカードを使ったの。」
ブレイブホルダーの中から2枚のカードを出して見せた。
1枚はフェイトも持っているカードでもう1枚は…
「SR+ホーネットジャベリン…初めて見た。直射砲撃の防御貫通スキルなんだ…」
「変ですね…イベント期間中ならともかく、今日はレアまでしか出ない筈ですが…、ユーリ、アリシアがローダーでこれを引いたそうなんですが見て貰えますか? アリシア、これいつ受け取りました?」
「ユーリのチヴィットが呼びに来て、ここに来る前に寄ったから…1時間位前かな?」
シュテルがプロトタイプでのデュエルデータを整理しているユーリにカードを持っていく。
「…ホーネットジャベリン…直射砲撃の防御貫通スキル………????。」
「…………」
ユーリは首を傾げた後、端末のキーを叩いて調べていく。
「えっ…何か使っちゃまずいカードだった?」
流石に不安になって聞き返す。
「これを見て下さい、SR+のスキルカードリストです。カードにはみんな個別にIDが割り振られてます。タイプ別に並べ替えますね。」
手元の画面を大型モニタに映して、更にその中にリストを表示させる。スターライトブレイカーやラグナロク、ジェットザンバー等各々の必殺魔法の名前もある。
私はフェイトと同じタイプだから…ジェットザンバーの近くに名前がないか探すが見当たらない。
「? 無い…?」
「それで、これは誰がいつどんなカードをロードしたかの記録です。アリシアのIDは…これですね。ブレイブデュエルのシミュレーターでもカードを読み込ませる時と起動する時に何のカードだったかは記録されています。」
そう言って何が書かれているか直ぐには読めない細かなテキストを横に映してIDらしき値部分の色を変える。
「アリシアがブレイズⅡのカードを読み込ませた時にホーネットジャベリンも読み込ませていました。あと使った時がこれ…。」
更にテキストウィンドウが2つ重なる。
「みんな同じIDだね…」
「はい、改造したり勝手に作ってもカードローダーとデュエルシステムは個別に管理・チェックしているので2つの記録で同じIDが出ているのでアリシアが自分で作った改造スキルじゃなくてブレイブデュエルに登録されたスキルということが証明出来ます。」
「無理無理~。私、改造だなんてそんな難しい事出来ないし、ローダーで引いてからまっすぐここに来たんだからそんな時間も無いよ。」
頭をブンブン振って言う。
「ごめんなさい、先に言わせて貰ったのはこれを見て貰う為です。SR+のカードIDはバラバラですが特定のルールがあっていつ作られたカードか判る様になっています。判りやすくしますね。」
そう言うとバラバラの数値だったSR+リストが規則正しい数値に変わった。最初に作られたのはシュテルとレヴィ、ディアーチェ、アミタ、キリエのスキルだ。グランツ研究所内でテストをしていた時だろうか、それぞれのジャケットタイプのスキルが追加されていっている。
「それで…これがホーネットジャベリンの名前が見つからなかったので、カードIDをリストに照らし合わせて見ると…」
継続的に増えていたリストからホーネットジャベリンのIDだけが抜き出ている。
「これは…来年?」
シュテルが言う。
「そうなんです。カードIDから見れば来年の8月に生まれるカードなんです。だからSR+のリストにもテスト中や作る予定のスキルカードにも名前はありませんでした。」
「ちょ、ちょっと待って。でもそのカード普通に使えたよ? みんなも見てたでしょ?あんなに凄まじい威力とは思って無かったけど…。そもそもそんなカードがどうしてローダーから出たの?」
驚いて思わず立ち上がった。
まだヴィヴィオと一緒に1年後に行ってカードを持って来た~とか言うなら話もわかるけど、少し前に引いたカードが未来に作られたカードだなんて余計に判らない。
「それは…調べないとわかりません。でもさっきシュテルが言った様にSRやSR+のカードはグランプリとか特定のイベントの時にしか出ないんです。昨日と今日のローダーをチェックしていますが、SR+が出たのはアリシアだけです。」
「……アリシア、私…アリシアが使ったスキル…魔法だけど見たことがあるの。お正月に巻き込まれた事件で…オールストン・シーで3人が向かってきた時あったでしょ。アリシアのバルディッシュをフェイトが使っていてレヴィに壊されちゃったけど、新しいバルディッシュが間に合って…その時フェイトがレヴィに勝った魔法が同じだった。」
「「「「!?」」」」
私は勿論、フェイトやなのはさん、はやてさんも思わず驚く
「多分だけど…私達の世界って何処か繋がってるんじゃないかな…こっちの未来に私が居るみたいに…」
「……そっか…そうだね。」
呟いた直後、ヴィヴィオが言った意味が頭の中で繋がっていく。
カードのIDが来年の8月なのは多分ここのフェイトが来年の8月には異世界の彼女と同じ6年生になっている。向こうでも同じ時間に彼女が使った魔法。ホーネットジャベリンがユーリが固定したLPを飛ばし地形を大きく変えてしまったのは…
(あの声…ヴィヴィオとチェント…だよね。)
バルディッシュをRHdを繋いだことで魔力供給されてブレイブデュエルのシステムと違う同質の力が動いたから…
そして、あのカードを送ってくれたのは…
(あっちのフェイトとバルディッシュからのプレゼントなのかな…)
異世界で起きた事件で私とフェイトのバルディッシュ同士が何度もやりとりをしているのは私のバルディッシュとフェイトから聞いていた。
世界や魔力の供給システムは違っても同じバルディッシュ同士、帰る前にプログラムだけ送ってくれていて…、でも私とバルディッシュだけじゃ使えなくてブレイブデュエルを使ってスキルカードとして作り出してくれたのかも…。
「ありがとうね、ずっと…頑張ってくれてたのに気づいてなくて、これからもよろしくね」
ペンダントに向けて話しかける。こっちじゃ応えられない相棒がキラッと光った気がした。
~コメント~
以前の話、AffectStory~刻の護り人~でバルディッシュ同士の交流がありました。複数話になっていたので少し紹介します。
魔力の弱いアリシアと共に戦うバルディッシュ(A)を見て、フェイトのバルディッシュ(F)は昔フェイトが幼かった頃に同じ原因に対して使ったプログラムを送る。バルディッシュ(F)はその後キリエとの戦闘で修理(改修)行き。
バルディッシュ(A)は戦闘後にバルディッシュ(F)が修理中なのを知って代わりとしてフェイトの力になりたいとアリシアに頼みフェイトが使用。
(Detnationでフェイトが急遽使ったデバイスの出番はこれで消えちゃいました)
レヴィとの戦闘でフェイトとリンディを守る為に最後の手段を使ってバルディッシュ(A)は停止。停止直前に改修されたバルディッシュ(F)が戻って来たので自身で組んでいたプログラム【Penetrate】をバルディッシュ(F)に送る。
バルディッシュ(F)は礼を言って事件中にプログラムを使い、レヴィ戦やフィル戦で活躍。バルディッシュ(A)は異世界アリシアによって修理(改修)されて再びアリシアの手元に戻って来ました。
という感じでした。その後2機の交流については触れていませんでしたが、寡黙なデバイス同士で何らかのやりとりはあったと思います。今話ではその1部がカードとなって登場しました。
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