第1話 「それは不思議な出会いなの」

「ハァッハァッ・・・・」
「逃がし・・ちゃった・・・・追いかけ・・なくちゃ・・」

(誰の・・声?)

「誰か僕の・・声を聞いて」

(だれ? 誰なの?)

「力を・・・貸して・・・魔法の力を・・」

(力って? 答えてよっ)

声はその後聞こえなくなってしまった。

 ここは一体何処なんだろう。ハッと意識を取り戻す。
 林、林道? 見知らぬ場所。でも、1人なのに何故か心細くは無かった。ここが何処なのか? 立ち上がり辺りを見回して明るい方へ走ろうとした時

『助けてっ・・・』

突然念話が飛び込んでくる。聞こえた方を見つめるが誰も居ない

『助けてっ!!』

再び届く。さっきよりも強くはっきりと。これは目覚める前に聞いた声

『誰? どうしたの?』

念話を送り返すが、再び声は聞こえなくなった。

 耳を澄ましていると今度は逆方向から声が聞こえる。

「なのはっ」
「なのはちゃん!?」
(なのは?)

 知っている名前を聞いて再び振り返ると、少女が走ってくる。そして目の前にいた動物を見つけた。

「あっ!」

 思わず声が漏れ、少女が振り向く。

「この子・・あなたの?」
「ううん、知らない」   
「この子、怪我してる。」

 少女がその動物を不思議そうに抱き上げる。

「どうしたのよなのは、急に走り出して・・あなた?」
「見て、動物・・怪我してるみたい」

 後から同じ服を着た少女が2人追いかけてきた。最初に来た少女は
「なのは」という名前らしい。同じ年頃で、服は制服みたいだ。

「ねぇ、あなた。この子の飼い主?」
「ううん、知らないって。動物病院!」

 金髪の少女が聞くが、答える前になのはが答えた。

「この近くに獣医さんなんてあったっけ?」
「えっとこの辺りだと確か・・」
「まって家に電話してみる」

 藍色の髪の少女が何かを取り出して操作し始めた。この辺りに住んでいるのかも知れない。

「あの・・・ここは・・」
「待って、先にこの子の治療が先! 聞きたいことあるんなら一緒に来てっ!」
「なのはちゃん、アリサちゃん、近くに【槙原動物病院】があるって。場所も教えて貰ったよ」
「ありがと、すずか。なのは、その子しっかり抱いてついて来て」
「うん」
「えっ、あのっ!」

 そのままアリサに手を取られなのはと一緒にすずかの後を追いかけた。

 ここは一体どこなのだろう?



 槙原動物病院に着くのに10分もかからなかった。
 すずかの電話相手が先に連絡していたのか、4人が着くなり白衣の女性がなのはから抱き上げ診察室へと連れて入った。
 なのは・アリサ・すずかは台の上に乗せられた動物が気になるらしい。

(あの動物の様子がわかってから聞いてみよう)

 そう思い辺りを見回すとカードを見つけた。手に取ると紙製で連絡先等が書かれている。
(槙原動物病院・・・うそっ! ここはまさかっ!?)
 連絡先の中で【海鳴市】の名前を見つけた。転送ポートで一気に飛んだのか? 見知らぬ場所なんかじゃない。何度も来た事のある場所、第97管理外世界の海鳴市。

 そこでハッと3人の少女を改めて見る。この制服も知っていた。聖祥小学校の制服

「なのは・・・あなたの名字って・・」

 聞きかけたところで【ガチャ】とドアの開く音がして白衣の女性が出てくる。

「怪我はそんなに酷くないけど、ずいぶん衰弱してるみたいね。きっとずっと独りぼっちだったんじゃないかな?」
「「「院長先生、ありがとうございます」」」
「ありがとうございます」
「いいえ、どういたしまして♪」

 なのは達に続いて診察室に向かった。

「この子、フェレットなんですか?」
「フェレット・・なのかな?」

 3人が話している最中全く別のことを考えていた。どうして急に海鳴に飛んだのか? ふと動物の首元のペンダントの様な物が目に入った。あれはっ!

「レイジング・・ハート・・まさかっ!」

『どうしてあなたがそれ持ってるの? それレイジングハートでしょ?』
『念話っ!? それにどうしてその名前をっ!』
『答えてっ! どうしてあなたがそれを持ってるのっ?』
『これは僕が作ったデバイスです。それよりあなたは一体』

 その名前を持つデバイスは1つしか無いしそれを持っているのは大切な人だけだ

『嘘っ! 私、レイジングハートの持ち主知ってる。 答えて! どうしてそれをあなたが持ってるの?』

「あの子をじっと見てる・・・」
「飼い主じゃないっていってたよね?」
「うん、さっきそうだって」
「あなたもこっちに来てみない?」

 なのは達が不思議そうにこっちを見ている。院長先生の誘いでフェレットに近寄る。手を差し出すとぺろっと舐めた。フェレットも流石にまずいと思ったらしい。

「今日だけ預かろうと思ってたんだけど、ちょっと元気になったみたいだし、おうちで休ませてあげられるならいいわよ」
「本当ですか?」
「よかった~、なのはちゃんのお家・・どうかな? 私の家もアリサちゃん家もこの子預かれないし」
「うん、聞いてみる。」

 アレ?・・どこかで違和感を覚える。正体がわからない
 考えている間になのはがすずかが取り出した機械と同じ様な物を操作して話していた。

「あっお母さん。なのはです。あのね・・・」

 
 -始まりはほんの小さな物だけれど-

「うん、そうなの・・それでね・・・・」

 -時が経てば経つほどうねりは大きくなっていく-

「うん♪ お母さんありがとう。じゃあ連れて帰るね。お父さん・お兄ちゃんお姉ちゃんにもありがとうって」

 -気付いた時にはもう-


「お家に連れて来ていいって。院長先生」
「うん。それじゃあもし本当の飼い主さんが来た時誰が預かっているか判らないと困るから、お名前教えてくれるかな?」
「はい、高町なのはです!」
「!!」


 それからの話は驚きのあまりただ呆然としていた。
 習い事があるからとアリサとすずかと別れ、なのはの後をついていくと見慣れた家があり、なのははその中に入っていった。
 それで信じるには十分だった。
 その後、家を見つめていると桃子が現れ何も聞かずに家に招き入れてくれた。

 
【時空転移】
 昔、ある魔導師が失った娘を蘇らせようと次元の狭間にある世界へと向かう事件があった。
 命を蘇らせる研究、それ以上に、難しいとされる時間を操れる技術。それを今体感していた。
 動物病院に向かう間に何度も転送ポートへアクセスを試みたが成功する訳がない。今はまだ設置すらされていないのだから。

「ねえ、お名前なんて言うの?」
「私も知らない」
 
 ハッっと気がついて我に返った時、食卓に料理が並べられなのは達は先に座っていた。

「名前くらい先にきくものだろう。」

 少し笑いながらなのはの兄、恭也が言う。

「まぁ・・でも、こんな可愛い女の子だったら・・な。美由希」
「父さん、それって」
「あなたっ~」

 凄く幸せそうな家族、これが彼女「高町なのは」が育った世界なんだ。

「あの・・たか・・じゃなかった。ヴィヴィオです。」

 その時ヴィヴィオは初めて名乗った。

「ヴィヴィオちゃんか~良い名前だ」

父、士郎の言葉に全員が頷く。

「さっヴィヴィオちゃんも立ってないで、座って座って」
「お母さんの料理とっても美味しいんだから♪」

 なのはと一緒に来た時の暖かさと変わり無い家族。いつまでもここに居たいと心の隅で感じていた。

『ユーノ・スクライアさんですね。スクライア一族の』
『どうして僕の名前をっ?』

 夕食の後、なのはの部屋でフェレットを見つめながらヴィヴィオは念話を使った。以前なのはや司書長の方のユーノから聞いた事を思い出しながら続ける

『ロストロギア、ジュエル・シードを探しにこの世界にやって来て、この世界で回収しようとしたら怪我を負ってしまった』
『・・・・・あなたは一体?』

 時空管理局の名前を出そうかと思うが躊躇い、止める。この後たしか・・・

『今は教えられません。ですが、ユーノさんの回収を邪魔しませんから安心してっ・・下さい』

 オットーの様に落ち着いた風を感じさせるよう振る舞おうとする。

『・・・わかりました。詳しくは聞きません。ですが、僕のお願いを聞いて貰えますか?』
(何だろう?)
『何か』
『もうすぐ、僕の魔力を追ってジュエルシードが襲ってきます。1週間・・3日・・今夜だけでもいいんです。そのジュエルシードを回収して貰えないでしょうか』

 確か1つめのジュエルシードは動物病院を襲った筈、でもユーノはなのはの家にやって来ている。
 もしここでジュエルシードが襲ってくれば、この家が壊されてしまう。それに・・・

『わかりました。それと・・・』
『それと?』
『この話し方すっごく疲れるから元に戻すね。私の事はヴィヴィオって呼んでくれたらいいから♪ 私は・・ユーノ君・・でいいかな?』

 この緊張感に耐えられる筈もなく大人びた話し方は長く続けられない

『は・・はぁ・・それでいいです』

 ユーノの声からも力が抜けた。



 この時、ヴィヴィオはある事を心に決めた。
 もし、ここでジュエルシードを封印してしまえば保護者であるなのはママこと高町なのはが魔法に関わらず、大怪我も負わない。別の道が生まれる筈と。
 ヴィヴィオが決意した瞬間、ユーノにはその時一瞬だけヴィヴィオの指先が透けた様に見えた。

「あら、ヴィヴィオちゃん。どうしたの?こんな夜中に?」

 ユーノを抱いてそーっと外へ出て行こうとしたが、この家では気付かない者はなのはだけらしい。

「すみません、落とし物探してきますっ」
「誰かついていった方が、おーい恭也?」

 暗い夜道を女の子1人が外に出るのは危ないと思い、士郎が恭也に声をかけると恭也も同じ事を考えていたらしく頷く。

「暗いから一緒に・・・」

 ここから離れないとダメなのに誰かがついてきたら家から離れる意味が無い。

「いえっ、近くだからすぐ戻ってきますっ」
「ヴィヴィオちゃん、待って」

 慌てて靴を履き桃子達が止めるのを待たずに飛び出した。



「この辺りなら・・大丈夫だよね。誰にも見られないし」
「はい・・弱らせてもらえば、後の封印は僕が」
「わかった」

 出会った林道の奥へ進み、抱いていたユーノを地面に降ろしてその時を待つ。
 ヴィヴィオは攻撃魔法が好きでは無い。誰かが傷つくのが怖いから。でも、今はそうしないと無関係な人達が傷ついてしまう。
 そう考えていると奥の方から何かやってくる気配がする。

「来ますっ!」
「・・・あれ・・がジュエルシード・・」

 周りの木々と同じくらいの大きさで黒く、目だけははっきりとわかる異形のモノ。
(なのはママ・・こんなのと戦っていたの!?)

「危ないっ! ヴィヴィオ逃げてっ」

 ユーノの叫び声で我に返るとその物体は目前に迫ってきていた。ぶつかるっ!
 そう感じた瞬間、虹色の防壁がヴィヴィオの身を守った。

【聖王の鎧】ベルカ聖王家の血を引くヴィヴィオの持つ固有技能でありヴィヴィオを守る強固な防壁

「あの攻撃を・・無傷で・・凄い」

 それを知らず驚きを隠せないユーノを気にする間も無く、

「この位ならこれでっ!」

 ヴィヴィオは一瞬だけ手に魔力を集中させ1発の魔力弾を撃ち出した。ジュエルシードの暴走体にぶつかる前にはじけ無数の小型魔力弾が当たる。
 デバイスを使わなかった分威力は落ちていたが、元々強力な魔法である。魔力弾を浴びてジュエルシードの暴走体から「ウォォォオオ」という声が辺りに響く。

「ユーノ君!」
「ジュエルシード シリアルⅩⅩⅠっ 封印!」
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 ユーノがかざした赤い宝石、レイジングハートが光り暴走体を包んだ。そして、光が消えた時・・そこには蒼く輝く石だけ残り、暴走体の姿はなかった。

「これが・・・ジュエルシード。封印できたんだ」
「ええ、ヴィヴィオのおかげです。ありがとう。」


 ヴィヴィオはユーノと一緒にジュエルシードの1つを回収した。
 だがそれが原因でなのはやなのはを取り巻く歴史は大きく変貌しつつあったのを、この時のヴィヴィオはまだ気付いていなかった。


~~コメント~~
 if~もしも・・というのがこの話の始まりです。「時をかける少女」より「BackToTheFuture」の方をイメージしています。
 この話を進めるにあたり、1期シリーズを見返してしまいました。
なのはも魔法少女らしい魔法少女していたのですね。
 どこで熱血バトル魔法少女になったのでしょう(苦笑)

 先に1期を見ていただける方が楽しめるかと思います。
それでは、暫くの間おつきあい下さいませ。

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