第8話 「それは大いなる危機なの」

「そんなに遠くない。あっちの方向」
「うん、レイジングハートお願いっ」
【Standby Ready Setup】

「なのは~ヴィヴィオ~お散歩行くの? 車には気をつけて・・・あら?声が聞こえたと思ったんだけど・・・」

 桃子がキッチンから顔を出した時、もうそこには2人と1匹の姿は無かった。


 4月27日 早朝
 それは突然始まった。
 ジュエルシードの発動に気付いたなのはは完治したレイジングハートを使ってバリアジャケットを纏い、ユーノを肩に乗せ飛び立った。
 なのはが飛び立ったのとほぼ同時刻、フェイトもアルフを伴いジュエルシードの反応がある場所へと飛び立っていた。
 この日この時、発動するのを知っていたヴィヴィオは何も言わず、後はなのはとフェイトに任せ離れて見ていようと思っていた。

 
「あれがジュエルシード!?」
「もう周りを取り込み出してる・・・封時結界、展開っ!!」

 ユーノを降ろした後、レイジングハートを構える。



(動物だけじゃないんだ、止めなきゃっ)

 レイジングハートを構えたその先には異様な姿に変わった物が蠢いている。
 元は公園の木だったのだろう、枝や根・幹らしき箇所がある。

「相手の意識をこっちに向けなきゃ。リリカルマジカル・・・!」

 ディバインシューターでジュエルシードの意識をなのはに向かわせようとした瞬間、空から魔法弾がジュエルシードに向かった。
 だが、それも手前ではじかれてしまう。

「お生意気にバリアまで張るのかい」
「今までのより・・・強いね・・・それに、あの娘がいる・・」

 なのはの振り返った先、そこにアルフとフェイトがいた。

(フェイトちゃん!! でも先にっ)
「飛んでっレイジングハート、もっと高く!」
【AllRight FlierFin】

 攻撃されない高さまで、一気に飛びあがった。

【Shootingmode Setup】
「なのはっ!」
「逃げて、ユーノ君!ヴィヴィオ」


(ここまで・・・)

 ユーノの近くでジュエルシードの発動を直に見たヴィヴィオは戦慄を覚えていた。
 機動六課にいた頃、なのはママとフェイトママが映っている映像を見た中に、ジュエルシードを封印している映像もあった。
 でも目の前のそれは、遙かに禍々しくて悪意そのものを感じる。
 知っているジュエルシードの発動体より遙かに大きく、周りの地面や木々を次々に取り込み異形な姿を映し出していた。

(こんなの・・封印できるの?)

 一歩後ずさりする。でも

(守らなきゃ!この町をっ)

 足が震える。でも、逃げちゃダメだ。

「ユーノは結界を張り続けてっ。ここは通さない!!」

 鞭の様に襲いかかる根に向かって、次々とシューターを撃ち出した。



(このジュエルシードは渡さない)
「アークセイバー。行くよっバルディッシュ!!」

 フェイトが構えたバルディッシュから金色の刃が現れ、振りかざしたままジュエルシードへ急接近し振り下ろす。
 魔法で出来た刃が本体へと向かう。
だが、先程と同じバリアが受け止めてしまった。

「!!」
「フェイトっ!」

 勢いのまま飛び込むフェイトにジュエルシードを取り込んだ木の枝が槍状になって襲いかかる。

「ディバイィィン、バスタァアアアッ!」

 だが、それらはフェイトに当たる事はなかった。
上空からなのはが当たる前に打ち抜いたのだ。すかさず距離を取るフェイト

「・・・・」
「・・・・」

 礼を言うつもりはない。フェイトはなのはに何も言わず場で魔法陣を広げた。

(奥の手は出せない。これでっ!)



「もう一度、レイジングハートっ」
【BusterSet】

 なのはは上空から一番大きな幹に狙いをつける。
「撃ち抜いてっ! ディバイン!!」
【Buster】

 ほぼ同時に

「貫け轟雷」
【Thunder Smasher】

 2本の光の柱が一気にジュエルシードを貫いた。

【【Sealing Mode Setup】】
「ジュエルシード」
「シリアル7」
「「封印っ」」

 息を合わせた様に揃った同時射撃と封印。だが、なのはもフェイトもそんなのを気にとめてもいない。



「これがなのはの・・・魔法・・・」
「そう、本気になったなのはの魔法」

 ヴィヴィオとの練習では、ワザと威力を落としていたのだ。
何の為? 決まっている。ヴィヴィオを傷つけたくないから。
 でも、フェイトとは向き合いたいが為の力だから手加減なんて要らないのだろう。



 なのはとフェイト、2人の魔法で封印されたジュエルシードは丁度2人の間で静止した。

「ジュエルシード・・譲れないから・・」
「私は、フェイトちゃんとお話したいだけなんだけど・・・私が勝ったら・・お話・・聞いてくれる?」

 頷くフェイト。それが2人の戦いの始まりの合図だった。



(話してみたい。フェイトちゃんと・・友達になりたいから。)

 この1週間でなのはは考えていた。

(ユーノ君がレイジングハートは凄く丈夫なデバイスだって言ってた。それを壊す程の力があるのに、アイは怪我ひとつしてなかった。それに私を攻撃した時悲しそうな顔、独りぼっちの時の私と一緒なんだ。)

 アイを取り込んだジュエルシードを封印するだけなら、もっと別の方法もあった。
 でもフェイトは手加減をして気を失わせるだけに止めた。
 なのははそれに気付いた時フェイトは優しい女の子なんだと感じた。彼女の事が余計に気になった。どうしてジュエルシードを集めているのかを

(こっちを向いてくれないなら、向いて貰うっ。向き合って、友達になりたいから・・・絶対負けないっ!)



(ジュエルシードを集めなきゃ、母さんが待ってる)

 フェイトの瞳にはジュエルシードしか映っていない。
 母さんの夢を叶えたい。でも、その為に誰かを傷つけたくない。
 白い服の魔導師、なのはという名前をアルフから聞いた。もう一度傷つけるのは嫌だ
 でも、先に ジュエルシードを取ってしまえば傷つけなくていい
 そう考えたフェイト一気にジュエルシードへ向かった。



「ユーノ、次元震! 結界っ!」
「次元震? まさかっ!?」

 なのはとフェイトがジュエルシードへと駆け出した瞬間、ヴィヴィオはユーノに向かって叫んだ。
 完全に封印出来ていないとは言え、RHdの中に取り込んだ状態であるにもかかわらず魔力干渉があっただけで小規模次元震を起こしたのだ。
 なのはとフェイトの2人の魔力がジュエルシードへぶつけられた時、どれ程の次元震が起こるのか? 想像出来なかった。

「結界の中だけに押さえなきゃっ!」
「わ、わかった。」

 魔力を集中しシールドを広げた瞬間、ソレは来た。

「RHd、お願いっ。この世界を守って!」

 ストレージ系デバイスには意志は無い。だが、ヴィヴィオもユーノに併せて結界魔法を更に強化させた。



(手加減できないっ! 倒さなきゃっ)
「ハァァァアアアッ!!」

 向かってきたなのはをかわしてジュエルシードを封印、その後一気に飛ぼうと思っていたフェイトだった、なのはの速度に驚かされた。
 魔力が強いだけの女の子だった筈なのに・・・
 スフィアを作り牽制しつつ自らはなのはと接近戦へ持ち込もうとする。しかしなのははシューターを使いスフィアを撃破し、その後も高速軌道を描くフェイトにシューターを打ち込む。
 更になのは自身が接近戦を苦手と思わせた隙を突く形で飛び込んできた。

「バルディッシュ・・いくよっ」

 紙一重で避けたフェイトは考えを改めた。

 (手加減出来る相手じゃない。倒さないとっ)

 金色の刃の残像を作りながら、なのはに襲いかかった。



(凄く速い・・・けど、追いきれる!!)

 ディバインシューターで相手を撹乱させ、2射目で気絶させる。
 なのはの戦法は至って簡単だった。その単純さ故にフェイトは深読みをしすぎていた。
 ディバインバスターをいつでも撃てる様に保ちつつ、シューターと自身を囮にしながら機会を待っていた。
 ヴィヴィオとの練習で、速さに慣れているからフェイトの姿は捉えられる。
 そして、なのはが誘い込んだ場所にフェイトが入った瞬間。

「ディバインバスターッ!」

 威力は落ちるが速射性に優れたタイプ。一度でもフェイトに当てられたら差を縮められると思っていた。



「バルディッシュ!」
【Arc Saber】

 フェイトもバルディッシュの刃を飛ばし相殺を測る。だが、その余波をジュエルシードが受けてしまった。
 その瞬間、辺りが震える。


「なのはっ。うわっ!!」
「なのは、離れてっ! キャアッ」

 結界の中だけに押さえる。
 ヴィヴィオとユーノの張った魔法。ジュエルシードは2人の魔法の余波を受けただけなのに、一気にそれを弾き飛ばしてしまった。
 吹き飛ばされるユーノ。
 ヴィヴィオもバリアジャケットが外れ飛ばされてしまう。

「まだ、まだ終わってないの。結界・・張らなくちゃ」
 もう一度封時結界を張ろうと起き上がるヴィヴィオ、それを突然アルフが支えた。
「おチビちゃ・・んや、ヴィヴィオ、あんたどうしてそこまでするんだい? フェイトとなのはが戦ってる間に、あんたがジュエルシードをさっさと持っていけばいいじゃないか。どうしてここまでするんだ? あんたは敵なのか味方なのか・・どっちなんだい?」
「守りたいの。この町もなのはも。助けたいの!フェイトも・・アルフもっ!」
 ヴィヴィオの本心、誰も傷つかず傷つけない・・そんな世界は出来ない。でもみんなが笑っていられる世界にしたい。
 大人に言えば「そんな世界は無い」とか「あったらいいねー」と言われるだろう。だからと言ってそれを曲げたくない。
 ヴィヴィオを助け、守り、ママになってくれた人の為にも。

「お願いっRHd。もう一度力を貸してっ。封時結界、展開!!」

 次元震を受け止めたヴィヴィオのデバイスは主の必死の願いにも反応すら出来なかった。それでもヴィヴィオは諦めない。
 出来たのは弱々しい結界魔法。それでも無いよりは良い

「・・・・・ヴィヴィオ、どいてな・・・・敵とか味方なんて関係ない。あたしもフェイトも助けられる程弱くないさっ!」

 狼形態で吠えるとヴィヴィオの結界とは比べものにならない程強い結界魔法が張られた。

「アルフ・・・」
「あんたの為じゃないよ、フェイトのため。フェイト!ジュエルシードに魔力をぶつけたらこの世界に影響しちゃう。」
『わかった。ゴメンねアルフ』

 上空でフェイトが軌道を変え、ジュエルシードと距離を取った。

(この世界でもフェイトママはフェイトママなんだ・・・)

 なのはを目の前にしながらも、この世界を気遣える優しさ。それをヴィヴィオは感じた。



「ストップだっ!」
「「!?」」
「ここでの戦闘は危険すぎる。時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせて貰おうか」

 それはなのはとフェイトが互いのデバイスをそれぞれに向かって振り降ろした瞬間だった。光の中から現れた少年、クロノによって止められた。

(やっと・・・やっと来た)

 本当ならもっと早く、なのはとフェイトが戦闘を始めた瞬間に来るはずだったのに、どうして? その理由はヴィヴィオ自身にあったのを彼女は知らない。
 なのはの練習に関わり、フェイトとの戦いにおいてバルディッシュを一時使用不能にした。
 それがきっかけとなり、なのはもフェイトもヴィヴィオの知る世界の2人より魔力が上回っていたのだ。
 魔力が上回った事で封印直前のジュエルシードに魔力が送られ、一時的に次元に歪みを作ってしまい、それがクロノを遅らせる原因になってしまった。
 
「まずは2人とも武器を引くんだ。このまま戦闘行為を続けるのなら・・・」 

 2人の杖を掴んだまま、下りてくるクロノとなのは・フェイト。
 これで戦闘が終わると思った。だが、直後クロノ目掛けて魔法弾が撃ち出される。

「フェイト、撤退するよ。離れてっ」

 アルフの援護で生まれた一瞬の時間、その時間を使いフェイトはジュエルシードを奪いに跳ぶ。 しかし、クロノには計算内でフェイトの手がジュエルシードに届きかけた時、魔法弾で打ち落とされた。

「フェイトっ!!」

 落ちていくフェイトをアルフが受け止めるが、クロノはデバイスを向けている。



「フェイトちゃんっ! ダメーッ!」

 なのはは気がついたらフェイトとクロノの間に入りフェイトを庇っていた。 どうしてフェイトを庇ったのか? と聞かれても説明なんて出来ない。でも、このままじゃダメ、そう思ったから。

「逃げるよフェイト。しっかり捕まってっ」

 アルフが一瞬だけこっちを見てフェイトを乗せ飛び去った。

「フェイトちゃん!」

 フェイトを呼ぶなのはの声だけが、その場に残されていた。



「戦闘行動は停止、捜索者の一方は逃走。」
「追跡は?」
「多重転移で逃走しています。追い切れませんね。」
「そう・・まっ、戦闘行動は迅速に停止、ロストロギアの確保も終了。よしとしましょう。事情も色々聞けそうだしね。」

 そう呟いた女性は目の前の機器を操作してクロノを呼び出した。

「クロノ、お疲れ様」

 

「クロノ、お疲れ様」
「すみません。片方は逃がしてしまいました。」
「う~ん、まぁ大丈夫よ。でね、ちょっとお話を聞きたいからそっちの子達をアースラに案内してくれるかしら」
「了解です。すぐに戻ります」

(クロノさんちっちゃい・・・リンディさんも若くて綺麗・・)

 木陰に隠れながらヴィヴィオはそんなことを思っていた。
 2人が聞いていたらきっと怒られるだろう。
 このままなのはとユーノだけをアースラに案内してくれたら、元に戻ると思っていた。
 だが、クロノはデバイスをこっちに向けて

「木陰に隠れている君も一緒に来るんだ。逃げても無駄だよ」
(見つかっちゃった!?)

 元々ヴィヴィオとフェイトの戦闘から捕捉されていたのだから、見つからない訳がない。

「・・・・・行くしかないよね」

 そう言い聞かせて木陰からなのは達の所へ足を進めた。

「ヴィヴィオ!? どうしたの、それ?」
「次元震をユーノと止めようとしたんだけど・・失敗しちゃった」
「ううん、あれはヴィヴィオのせいじゃなくて、規模が大きすぎたんだ。結界の中だけで治まっただけでも凄いよ」
「次元震?」
「あ・・あのね、なのは・・」
「すまないが、人を待たせてるんだ。その件はアースラで聞かせてくれないか? 僕達も少し知りたい。」
「すみません。」

 そう言うとクロノを中心に魔法陣が現れ、消えた時にはヴィヴィオ達の姿はなかった。



『ねえ、ヴィヴィオ・ユーノ君・・・ここって?』

 なのははかなり緊張しているみたいで、キョロキョロと周りを見ている。いきなり知らない世界に連れてこられたのだから当たり前だろう。

『次元航行船の中だ。簡単にいうと、いくつもの次元世界を渡り歩く・・・』
『なのはの世界の船とか飛行機? それで、その船に乗って色んな世界を守る仕事をしてるのが時空管理局。そんなの・・でいいんじゃない?ユーノ』
『・・・そうだね。そんな感じ』


(懐かしいな~アースラ)

 緊張しているなのはやユーノと違い、ヴィヴィオはアースラを懐かしく感じていた。
 JS事件の後、アースラは任務を終えクラナガン郊外にその身を休めている。耐用年数を越え、廃艦が決まっていたのを機動六課が借り受け臨時本部として利用。
 その後ミッドチルダを守ったシンボル・海と陸を繋いだ橋としてクラナガンに残されたと教えられた。
 ヴィヴィオも機動六課にいた頃やなのはと一緒に何度か乗った思い出がある。
 でも、このアースラはまだ現役の航行船だ。

「ああ、いつまでもその格好でいるのは窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは解除して平気だよ。」
「あ、そうですね」

 そう言いながらなのはは元の制服姿に戻った。

「それと・・君も元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」
「そう言えばそうですね。ずっとこの姿でいたから忘れてました。」

 ユーノもそう言うと光に包まれる。

「なのはとヴィヴィオにこの姿をみせるのは久しぶりになるのかな?」

 その直後現れた少年の姿にヴィヴィオは感嘆の声をあげた。

「ユーノ、かわいい♪ 女の子みたい!!」
「僕・・男なんだけど・・・」

 一方、なのははヴィヴィオとは違いユーノを指さして

「ア・・・アワワワ・・・・」
「どうしたの、なのは?」
「・・・エエ~ッ!!」

 あまりに大きな声になのは以外の全員が耳を塞ぐ。

「なのは?」
「ビックリしたじゃない。なのはっ!」
「ユーノ君ってユーノ君って・・・何っ!! だって・・ウソっ・・エーッ!!」

 かなり驚いている。

「君達の中でなにか見解の相違が?」
(相違・・・あ、忘れてた)
「どうしたの? ・・・あっそうか! ユーノがフェレットに変身してたの知らないんだ」

 フェレット形態のユーノも見ているし、人間形態のユーノにも会っているヴィヴィオにとって、気にも留めていなかった。
 でもなのはにとってはかなりショッキングな出来事だった。

「え? 僕達が最初に会ったのってこの姿じゃ?」
「違う違う! 最初からフェレットだったよ~っ!」
「・・・・・あ!、そうだった。ゴメン この姿、見せてなかった。」
「だよねっ! ビックリした~」

 ようやく落ち着くなのは。

「ちょっといいか? 君達の事情は良く知らないが、艦長を待たせているので早めに話を聞きたいのだが?」
「すみません・・」

 クロノの言葉でここがどこだかを思い出したなのは達は、クロノの後についていった。その間にヴィヴィオはそっとユーノに耳打ちする

「ユーノ、飛ばされた後どうしてなのはと一緒だったのか後でゆっくり教えてね。じゃないと・・・」
「えっ!・・・じゃないと?」
「お風呂や温泉の話、しちゃうから。なのはと・・アリサとすずかも一緒の方がいいかな~♪」

 次元震で吹き飛ばされた後、アルフのおかげでなんとか封時結界の中で終わらせられた。
 でも、ヴィヴィオが気付いた時にはユーノはちゃっかりとなのはの肩に乗っていたのだ。
 そのままで済ませる気はかけらも無い。

「ええっそんなっ!」
「ユーノ君どうしたの?」
「ななっ、何でもないからっ。何でも」

どうかしたの? と言う風にユーノを見るなのは。

「何でも無いって。なのは行こっ」

となのはの手を取って、クロノの後を追った。



(船の中に和室? ここ・・日本?)

 手入れされた盆栽と鹿威し、それにテレビでしか見ない様なお茶のセット等々・・・
 なのはは一瞬何かタチの悪いイタズラなのかと思った。
 魔法に関わっていなければ絶対そう思ったという変な自信はある。
 そしてその部屋の真ん中で、正座している女性を見つめる。さっきクロノと話していた女性だ。

「お疲れ様。どうぞどうぞ、楽にして~♪」

 ユーノと2人呆然としてしまっていた。頭のどこかでお母さんと話が合うんじゃないかと思っていた。



(ここ・・艦長室だったんだ・・・)
 ヴィヴィオはその部屋をなのはと全く違う目線で見つめていた。
 アースラの中で唯一デザインが違う部屋。
 この部屋だけどうして違うの? となのはやはやて、クロノとエイミイ夫妻に聞いたら、

「う~ん。昔の艦長の趣味かな~」
「前の艦長の趣味ちゃう?」
「前艦長の趣味だ!」
「そうだね~、前の艦長の趣味じゃない♪」

 その後にその艦長は誰かと聞いたら、全員がわからないと言ってクスリと笑うのだ。

(リンディさんがここを作ったんだ・・)

 なのは達がジュエルシードやロストロギアの話をしている間、ヴィヴィオは辺りをキョロキョロと見つめていた。


「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収については時空管理局が全権を持ちます。」
「君達は今回の事を忘れて、それぞれ元の世界に戻って暮らすと良い」
「そんなっ」
「でも・・・」
(時空管理局がここで入るんだ・・)

 なのはとユーノは少し不満げだ。

「まぁ、急に言われても気持ちの整理がつかないでしょう。今夜一晩ゆっくり考えて2人で話し合って、それから改めてお話しましょう」

 リンディの言葉に引っかかった。なのはとユーノとヴィヴィオ、ジュエルシードには3人が関わっていたのにどうして?

「送っていこう。元の場所でいいね」
「クロノ、先になのはさんとユーノさんを送ってあげて。ヴィヴィオさんは少しお話があるから・・」

 何かに気付かれた。そう感じた。

「はい。」
「はい。それではこちらへ・・」

クロノに続いてなのはとユーノが部屋を出て行く。

「なのは、桃子さんに言っておいて。少し遅くなるって」
「うん・・・あとでね」

 心配そうにヴィヴィオを見つめながら3人は部屋を後にした。


~~コメント~~
 if ~もしも、ヴィヴィオは幼い頃のなのはの世界にやって来たら・・
 1期8話「それは大いなる危機なの」第9話「決戦は海の上でなの」と同じ位の時間軸で進んでいます。

 ヴィヴィオとなのはとフェイトとリンディ・・・視点がコロコロ変わってしまい読みづらいかも・・いえ、読みづらいです。すみません。戦闘シーンの描写をもっと頑張ります。
 何か知ってても口に出さない桃子さんとそれとなく教えるリンディさん。私の中ではこの2人がある意味最強ではないかと思っております。皆様にとっての最強は誰でしょうか?
 

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