第12話 「宿命が閉じる時なの」
- リリカルなのは AnotherStory > 第3章 繰り返す世界へ
- by ima
- 2009.03.03 Tuesday 12:13
「ちょっと待ったっ!」
「「!!」」
アルフの道案内で居住区と思われる場所にやって来たヴィヴィオ達をアルフが突然静止させた。
「アルフ?」
「結界だ。あれを壊さなきゃこの先進めないよ。」
見れば結界魔法というよりシールドに近い魔法が通路全面に張られている。
「「!!」」
アルフの道案内で居住区と思われる場所にやって来たヴィヴィオ達をアルフが突然静止させた。
「アルフ?」
「結界だ。あれを壊さなきゃこの先進めないよ。」
見れば結界魔法というよりシールドに近い魔法が通路全面に張られている。
(この先になのはが居る・・・)
こんな時に守らないといけない人か物がこの先にある。
時間稼ぎかも知れないけどそのまま見逃す訳にはいかない。
「これは・・・かなり複雑な結界魔法みたい。解除できるけど時間が・・」
「バリアブレイクでも・・」
アルフやユーノにもすぐに解除出来ないなら壊すしかない。
「アルフ、ユーノ、ちょっと離れてて。ハァアアアッ!!」
魔力を集中させボール状の塊を作り一気に放つ。虹色の魔力弾が結界にぶつかった衝撃で起きた爆風が3人を襲う。
「なんて魔力っ!」
「これでっ・・・ウソッ・・」
「なんて堅さだい・・」
爆風がおさまった後、3人の前には先程と変わらず無傷の結界があった。
(もっと、もっと強い魔法で貫かないとっ!)
「周りまで壊すつもりだったのに・・・アルフ、ユーノ、もっと離れててっ・・・」
ヴィヴィオは咄嗟に浮かんだ方法を試す為に2人を更に遠ざけ、自身も大きくバックステップで距離をとって両手に魔力を集中させる。
「ファイアッ!! アンドッツツ ブレイクッ!」
魔力を集め帯電させた右手から一気に帯電系砲撃魔法を、そして打ち終わった瞬間に飛び込み左手で弱った部分にさらに追い打ちをかけた。
遠距離用砲撃魔法と高速移動を使っての近接攻撃魔法の同時攻撃、思いつきの魔法。
(お願いっ、壊れて・・)
【ドクンッ】
体内で沸き立つ様な力を感じる
(何っこの感じ? 何か震えた?)
「きゃっ!」
「ヴィヴィオっ!」
ヴィヴィオが祈った瞬間、突然制御出来ない魔力が左手から溢れて後ろにはじき飛ばされた。壁にぶつかる前にアルフが受け止める
「っとと・・セーフ」
「あ、ありがとうアルフ」
「ヴィヴィオ! バリアジャケットまで吹き飛ばして・・・もうっ!」
「でも壊れたんだしいいじゃない。」
肘から手先にかけてのバリアジャケットが完全に吹き飛んでいた。でも、これは最後の魔力が溢れた時に破れただけ・・
「大丈夫、直ぐに元に戻るから。RHdお願い」
呟いた瞬間、何事も無かった様にバリアジャケットは元に戻った。
「瞬時に再生って・・・無茶苦茶な・・」
「なのはっ!」
結界を破った後、すぐにユーノの探査魔法にレイジングハートの反応が返ってきた。
反応の先へ全員で向かうとそこには台座の上で横に寝かされているなのはの姿があった。
「・・・う・・・ううん・・ユーノ君・・ヴィヴィオ?」
意識がはっきりしていないらしいが、ユーノやヴィヴィオの姿は見えるらしい。
「時間ごと凍結できる結界だったみたいだから、もしかするとなのははフェイトと戦った後、時間が経ってるの気付いてないかも」
「ここは、私・・・フェイトちゃんを助けようとして・・・」
「プレシア・テスタロッサ、なのははフェイトの母親に連れ去られたの。」
「なのは、そのバリアジャケット・・・吹き飛ばされた筈じゃ、それにほかの場所も」
「え? あれ?・・あ・・」
ユーノが驚いたのはなのはのバリアジャケットだった。
フェイトによって上着とリボンは無くなり、スカートもかなりボロボロだったのに、全て元通りに直っている。
そして、横に立てかけられたレイジングハートにも傷一つなく修復されていた。
「何でこんな、・・・あの人が何で・・うわっ!」
その時、庭園が大きく揺れた。
今までで一番大きい
「きゃっ!」
「っと!」
「エイミイさん、なのはを救出したよ。今凄く揺れたの。何かあったの?」
『ジュエルシードが発動し始めてるみたい。数が多くて全部は発動しきれてないみたいだけど、もう次元震がいつ起きてもおかしくないの。艦長がディストーションシールドで無効化している内にみんな急いでっ!』
「ヴィヴィオ、先にジュエルシードを封印する?」
「ううん、先に駆動炉を封印してから他のジュエルシードを封印する。ジュエルシードはきっとプレシア・テスタロッサが持ってると思うし、クロノがもう向かってるから・・・」
「わかった」
『負傷した局員はゲートにて避難、それ以外は転送ゲートと艦長を支援』
先行した武装局員の殆どがプレシアによって負傷させられてしまい、残った武装局員達も魔導騎兵から彼らを守りながら撤退するしか無かった。
エイミイの指示と現状が随時アースラに響き渡っている。
そんな慌ただしい中で医務室だけが別世界の様に静かだった。その中でベッドに寝かされているフェイトはただ宙を見つめていた。
(母さんは最後まで私に微笑んでくれなかった。生きていたいと思っていたのは母さんに認めて欲しかったからだ。どんなに酷いことをされても・・・だけど笑って欲しかった。あんなにはっきりと捨てられても、私まだ母さんにすがりついている・・・)
現状を伝えるモニタにはなのはを守ろうとするアルフが映っている。
(アルフ・・ずっと側に居てくれたアルフ・・言うことを聞かない私にきっとずいぶんと悲しんで)
まだふらついているなのはを支えながら回復魔法を使うユーノと2人を守ろうと群がる魔導騎兵を倒していくヴィヴィオ
(何度もぶつかった白と黒の服の女の子達。初めて私と対等にまっすぐに向き合ってくれたあの子達。何度も私の名前を呼んでくれた。生きていたいと思ったのは、母さんに認めてもらいたいからだった。それ以外に生きる意味なんて無いと思ってた。それが出来なきゃ生きていけないと思ってた。)
そして、なのはも必死になって魔導騎兵をからユーノと自分を守ろうとしている。
「捨てればいいってわけじゃない。逃げればいいって訳じゃもっとない。私の・・・私達の全てはまだ始まってもいない・・・そうなのかな? バルディッシュ・・・」
【GetSet・・・】
力強く答えるパートナー、各部に亀裂が入っていて動くのも大変な筈なのに・・・
「そうだよね・・・バルディッシュもずっと私の側に居てくれたんだよね。おまえもこのまま終わるのなんて・・やだよね・・・」
【YesSir】
そう、そうなんだ・・このまま終わるのは・・ううん、終わりたくなんかない
「上手くできるかわからないけど・・一緒にがんばろう」
あの子・・ヴィヴィオが言ってた通り、まだ何も始まってなんかない。だから・・・始めよう。今までの自分を終わらせる為に。
再び漆黒の鎧を纏った少女の顔には迷いや悲しみは微塵も無かった。
(まだなのはの魔力は戻ってない。だから私がここを開くんだ!)
アルフの案内で一路駆動炉を目指していたヴィヴィオ達だったが、目の前には無数の魔導騎兵が待ち構えていた。
RHdにはジュエルシードを封印出来るシーリングモードが無い。この場で完全封印が出来るのはなのはだけ。そこまでなのはの魔力は温存して貰わなければならない。
「なのはは近くに敵が来た時だけ攻撃して。それ以外は回復に集中」
「え、でもっ!」
「なのはが倒れちゃジュエルシードが封印出来ない。僕がなのはを守る」
なのはの前にユーノが出たのを見て、やっぱり男の子なんだと見直す。
だがそれも一瞬の事、駆動炉までの通路を開ける為にヴィヴィオと同じ位の大きさの魔法球を作り出し放出した。
だが、そのヴィヴィオもまさか通路の壁ごと攻撃されるとは思ってもみなかった。
「!?」
一回り以上大きな魔導騎兵が壁とヴィヴィオをまとめて一気に斧状の武器でなぎ払う。
「キャァアアアッ」
聖王の鎧は魔法・物理的な攻撃にもある程度は耐えられるが、正面に攻撃を集中している中で死角から攻められては相殺しきれない。そのまま吹き飛ばされ反対側の壁にぶつかってしまう。
「ヴィヴィオっ!」
「なのはっ危ないっ!!」
「え・・!」
ヴィヴィオの元へと行こうとしたなのはを魔導騎兵が複数体襲いかかる。
「なのはっ!」
立ち上がりながらなのはに迫る魔導騎兵を攻撃しようとするが、他のが邪魔をして届かない。
しかも突然ヴィヴィオの手が透け始めた。
「なのはっ 逃げてっ!!」
「・・ッツツ」
なのはが目を瞑る
「サンダァアアッ レイジィィッツツ!!」
叫び声と共に金色の雷がなのはの周りの魔導騎兵を一掃した。
全員が見上げると、そこには
「フェイトっ」
「フェイトちゃん!」
フェイト・テスタロッサがバルディッシュを構えていた。ヴィヴィオもフェイトを見上げた瞬間、透けていた手が元に戻る。
(良かった・・後は歪みを取り除くだけっ)
「なのは・・私・・・」
「ありがとう、フェイトちゃん。」
「ううん・・」
どうも、2人だけ違う世界に行ってしまっているらしい。
「なのは、フェイトっ!」
「「!?」
良かった、すぐに元に戻ってくれた。
「なのはとユーノはこのまま駆動炉の封印を、フェイトも一緒に」
「わかった。あなた・・ヴィヴィオは?」
「ジュエルシードを抑える。封印は出来ないけど抑える位なら」
魔力が回復しきっていないなのはと、同じ様に消耗していたフェイトでは2人がかりでも20個のジュエルシードを押さえられない。
ヴィヴィオが抑えている間にクロノが封印してくれれば何とかなると考えた。
(フェイトちゃんが来てくれた。助けてくれた。)
なのはにとってそれは嬉しい誤算だった。
海上でスターライトブレイカーを撃ち終え、落ちていくフェイトを助けようとした。
でも突如襲ってきた雷撃からフェイトを守ろうとして気を失った。
ぼんやりと女性の顔と暖かな温もりを感じた気がする。その後ヴィヴィオとユーノに助け出され、ここがフェイトが暮らしていた「星の庭園」という場所だと聞き、急いで駆動炉を封印しなければならないと今の状況も併せて聞いた。
でも、その間もフェイトの事を思っていた。
あの後フェイトがどうなったのか? 聞く余裕は無い。
それが、もうダメと思って目を瞑った時に助けてくれたのだ。
「ありがとう、フェイトちゃん」
「わたしこそ・・・」
魔力が、身体の中から力が湧き出てくる気がする。
「なのは、フェイトっ駆動炉の封印をっ」
「私も手伝う。一緒に」
「うん・・ウンウン♪」
一際輝いた桜色の羽は力を増し一気に駆動炉へと向かった。
同じ頃、星の庭園上部階層では魔導騎兵だった物の残骸の中、巨大な魔方陣を広げたリンディが立っていた。
背にはアースラからの魔力を受ける羽を広げている。
「プレシア・テスタロッサ。終わりですよ、次元震は私が抑えています。駆動炉はじき封印、あなたの下へは執務官が向かっています。」
リンディの目的は大きく2つある。
ジュエルシードによって起こる次元断層を止める、そして、次元航行部隊に消滅兵器を使わせぬ。
おそらく通信を開けば退避命令を告げられるだろうが、ディストーションシールドを作り出してしまえば告げられぬだろう。
ジュエルシードのエネルギーを抑えている間は手出しをしない。そう思っての盾。
「・・・・」
「忘れられし都アルハザード・・・そしてそこに眠る秘術は存在するか曖昧なただの伝説です」
「違うわ」
答えたのはプレシア・テスタロッサ
「アルハザードへの道は次元の狭間にある。時間と空間が砕かれた時、その狭間に滑落していく輝き・・・道は確かにそこにある」
伝説にのみ残る世界アルハザード。もしそんな世界があっても周りの世界を巻き込んで良い筈がない。
「随分と歩の悪い賭だわ。あなたはそこに行って一体何をするの? 失った時間と犯した過ちを取り戻すの?」
「そうよ、私は取り戻す。私とアリシアの過去と未来を・・・取り戻すの、こんな筈じゃなかった世界の全てを」
失った時を取り戻す。それが願って出来るのならどれ程魅力的だろう。
リンディも取り戻したい時、戻ってきて欲しい人がいる。だから、プレシアの気持ちは痛いほど判る。
でも・・・
「世界はいつだって、こんな筈じゃ無いことばっかりだよ! いつだって・・ずっと昔から、何時だって誰だってそうなんだ。」
扉を壊してクロノがプレシアの下に辿り着く。
「!」
「こんな筈じゃない現実から逃げるか立ち向かうかは個人の自由だ。だけど、自分の勝手な悲しみに無関係な人間まで巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしないっ!!」
リンディもクロノもそんな現実と立ち向かっているのだ。
「・・・自分の勝手な悲しみに無関係な人間まで巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしないっ!!」
プレシアの居る部屋に飛び込んだ時、ヴィヴィオの胸にクロノの言葉が突き刺さった。
(そう、私は弱かった。だからなのはママが傷つくのを見たくなくて、本当のママが居ないのを引きずってこの世界を無茶苦茶にしちゃった・・・)
この世界に来た時のヴィヴィオならそのまま逃げてしまっただろう。
だけどもう違う。逃げたりなんかしない。
「判ってるんでしょう! 間違ってるって。」
「何を・・・私は取り戻すの。アリシアとの・・」
「だったらどうしてなのはを助けたの? レイジングハートも直してなのはを巻き込まない様に結界まで作ってっ!」
「ッツ・・」
「誰かに言って欲しかった、止めて欲しかったんじゃないの? アリシアはもう戻らない、生き返らないんだって」
「言うなぁああああ!」
衝撃波がヴィヴィオとクロノを襲う。吹き飛ばされそうになるが、耐えてヴィヴィオも魔力を開放し衝撃波を打ち消した。
それと同時に大きな振動が建物を揺らした。なのは達が駆動炉を封印したらしい・・・
「プレシアさん、あなたはアリシアの母親だけどフェイトの母親なんだよ。あんなに頑張ってるのにどうして大嫌いなんて言うのっ!」
「言ってもきっとわからないわ。アリシアと同じ顔をして同じ声で仕草も全く一緒・・・でもフェイトはアリシアじゃない。私のアリシアじゃ・・いくら嫌ってもフェイトは私を慕ってくる。もううんざり」
「実の娘になんて事を・・・」
「言ったでしょう、娘なんかじゃない大嫌いだって。あの白い子を直したのだってただの気の迷いよ」
そう言い不気味な笑みを浮かべるプレシアにヴィヴィオは怒りを超え悲しくなった。
「ProjectFate・・・記憶を持ったクローンを、人造魔導師を生み出す技術。そんな技術、犯罪でも生まれてきたら新しい命、人なんだ。フェイトはフェイト、アリシアじゃないっつつ!!」
「・・・・フッ・・そうあなたも・・終わりにしましょう・・・」
正体に気付いたプレシアはそれ以上何も言わずジュエルシード全てに魔力を送る。
「封印をっ! はやくっ」
「この世界を・・・」
ヴィヴィオの願い、この時・・・この世界を守りたい。
なのはもフェイトもクロノ・リンディ、そして士郎や桃子も恭也も美由希もアリサもすずかも、みんな好きだから。
その純粋な願いは彼女の中にある結晶を動かすには十分だった。
「壊させたりなんか・・・絶対させないっ!!!」
両手から溢れ出す光の帯がジュエルシードに向かってまっすぐ伸びる。それはプレシアの魔法を打ち消し20個全てのジュエルシードに広がる。
「もう無駄よ。ジュエルシードは解き放たれたわ」
プレシアの言う通り辺りが大きく震え始め、駆動炉の封印と重なって天井や床・柱に亀裂が走り始める。
それでも諦めない。
「クロノ・・・」
「止めるんだろう。次元震を」
「うん!」
ヴィヴィオに呼応する様にクロノが横から砲撃魔法を打ち込む。ほぼ同時に天井を突き破って2色の光の柱がジュエルシードへと降り注いだ。
聞かなくても誰かわかる。
なのはとフェイトがジュエルシードの位置を捕捉して一気に撃ち抜いたのだ。
(お願いっ! 止まって!!)
その願いを受け更に魔力を強め、遂には両腕のバリアジャケットを内側から吹き飛ばす。
だが、ヴィヴィオはそれを気に留めずまっすぐジュエルシードを見つめていた。
~~コメント~~
if~もしもヴィヴィオが幼いなのはの世界にやってきたら・・・
この話はそんな話です。
プレシアの想い、なのはとフェイトの想い、リンディとクロノの想い、そしてヴィヴィオの想い。それらが全部集まった回です。
アニメ本編とどこまで話を合わせながら、SSの中の世界を守れるかが凄く難しかったです。
視点の切り替えが多いのは本当にすみません。
次回でいよいよ終了です。・・・・無事に終わらせられるのでしょうか?
こんな時に守らないといけない人か物がこの先にある。
時間稼ぎかも知れないけどそのまま見逃す訳にはいかない。
「これは・・・かなり複雑な結界魔法みたい。解除できるけど時間が・・」
「バリアブレイクでも・・」
アルフやユーノにもすぐに解除出来ないなら壊すしかない。
「アルフ、ユーノ、ちょっと離れてて。ハァアアアッ!!」
魔力を集中させボール状の塊を作り一気に放つ。虹色の魔力弾が結界にぶつかった衝撃で起きた爆風が3人を襲う。
「なんて魔力っ!」
「これでっ・・・ウソッ・・」
「なんて堅さだい・・」
爆風がおさまった後、3人の前には先程と変わらず無傷の結界があった。
(もっと、もっと強い魔法で貫かないとっ!)
「周りまで壊すつもりだったのに・・・アルフ、ユーノ、もっと離れててっ・・・」
ヴィヴィオは咄嗟に浮かんだ方法を試す為に2人を更に遠ざけ、自身も大きくバックステップで距離をとって両手に魔力を集中させる。
「ファイアッ!! アンドッツツ ブレイクッ!」
魔力を集め帯電させた右手から一気に帯電系砲撃魔法を、そして打ち終わった瞬間に飛び込み左手で弱った部分にさらに追い打ちをかけた。
遠距離用砲撃魔法と高速移動を使っての近接攻撃魔法の同時攻撃、思いつきの魔法。
(お願いっ、壊れて・・)
【ドクンッ】
体内で沸き立つ様な力を感じる
(何っこの感じ? 何か震えた?)
「きゃっ!」
「ヴィヴィオっ!」
ヴィヴィオが祈った瞬間、突然制御出来ない魔力が左手から溢れて後ろにはじき飛ばされた。壁にぶつかる前にアルフが受け止める
「っとと・・セーフ」
「あ、ありがとうアルフ」
「ヴィヴィオ! バリアジャケットまで吹き飛ばして・・・もうっ!」
「でも壊れたんだしいいじゃない。」
肘から手先にかけてのバリアジャケットが完全に吹き飛んでいた。でも、これは最後の魔力が溢れた時に破れただけ・・
「大丈夫、直ぐに元に戻るから。RHdお願い」
呟いた瞬間、何事も無かった様にバリアジャケットは元に戻った。
「瞬時に再生って・・・無茶苦茶な・・」
「なのはっ!」
結界を破った後、すぐにユーノの探査魔法にレイジングハートの反応が返ってきた。
反応の先へ全員で向かうとそこには台座の上で横に寝かされているなのはの姿があった。
「・・・う・・・ううん・・ユーノ君・・ヴィヴィオ?」
意識がはっきりしていないらしいが、ユーノやヴィヴィオの姿は見えるらしい。
「時間ごと凍結できる結界だったみたいだから、もしかするとなのははフェイトと戦った後、時間が経ってるの気付いてないかも」
「ここは、私・・・フェイトちゃんを助けようとして・・・」
「プレシア・テスタロッサ、なのははフェイトの母親に連れ去られたの。」
「なのは、そのバリアジャケット・・・吹き飛ばされた筈じゃ、それにほかの場所も」
「え? あれ?・・あ・・」
ユーノが驚いたのはなのはのバリアジャケットだった。
フェイトによって上着とリボンは無くなり、スカートもかなりボロボロだったのに、全て元通りに直っている。
そして、横に立てかけられたレイジングハートにも傷一つなく修復されていた。
「何でこんな、・・・あの人が何で・・うわっ!」
その時、庭園が大きく揺れた。
今までで一番大きい
「きゃっ!」
「っと!」
「エイミイさん、なのはを救出したよ。今凄く揺れたの。何かあったの?」
『ジュエルシードが発動し始めてるみたい。数が多くて全部は発動しきれてないみたいだけど、もう次元震がいつ起きてもおかしくないの。艦長がディストーションシールドで無効化している内にみんな急いでっ!』
「ヴィヴィオ、先にジュエルシードを封印する?」
「ううん、先に駆動炉を封印してから他のジュエルシードを封印する。ジュエルシードはきっとプレシア・テスタロッサが持ってると思うし、クロノがもう向かってるから・・・」
「わかった」
『負傷した局員はゲートにて避難、それ以外は転送ゲートと艦長を支援』
先行した武装局員の殆どがプレシアによって負傷させられてしまい、残った武装局員達も魔導騎兵から彼らを守りながら撤退するしか無かった。
エイミイの指示と現状が随時アースラに響き渡っている。
そんな慌ただしい中で医務室だけが別世界の様に静かだった。その中でベッドに寝かされているフェイトはただ宙を見つめていた。
(母さんは最後まで私に微笑んでくれなかった。生きていたいと思っていたのは母さんに認めて欲しかったからだ。どんなに酷いことをされても・・・だけど笑って欲しかった。あんなにはっきりと捨てられても、私まだ母さんにすがりついている・・・)
現状を伝えるモニタにはなのはを守ろうとするアルフが映っている。
(アルフ・・ずっと側に居てくれたアルフ・・言うことを聞かない私にきっとずいぶんと悲しんで)
まだふらついているなのはを支えながら回復魔法を使うユーノと2人を守ろうと群がる魔導騎兵を倒していくヴィヴィオ
(何度もぶつかった白と黒の服の女の子達。初めて私と対等にまっすぐに向き合ってくれたあの子達。何度も私の名前を呼んでくれた。生きていたいと思ったのは、母さんに認めてもらいたいからだった。それ以外に生きる意味なんて無いと思ってた。それが出来なきゃ生きていけないと思ってた。)
そして、なのはも必死になって魔導騎兵をからユーノと自分を守ろうとしている。
「捨てればいいってわけじゃない。逃げればいいって訳じゃもっとない。私の・・・私達の全てはまだ始まってもいない・・・そうなのかな? バルディッシュ・・・」
【GetSet・・・】
力強く答えるパートナー、各部に亀裂が入っていて動くのも大変な筈なのに・・・
「そうだよね・・・バルディッシュもずっと私の側に居てくれたんだよね。おまえもこのまま終わるのなんて・・やだよね・・・」
【YesSir】
そう、そうなんだ・・このまま終わるのは・・ううん、終わりたくなんかない
「上手くできるかわからないけど・・一緒にがんばろう」
あの子・・ヴィヴィオが言ってた通り、まだ何も始まってなんかない。だから・・・始めよう。今までの自分を終わらせる為に。
再び漆黒の鎧を纏った少女の顔には迷いや悲しみは微塵も無かった。
(まだなのはの魔力は戻ってない。だから私がここを開くんだ!)
アルフの案内で一路駆動炉を目指していたヴィヴィオ達だったが、目の前には無数の魔導騎兵が待ち構えていた。
RHdにはジュエルシードを封印出来るシーリングモードが無い。この場で完全封印が出来るのはなのはだけ。そこまでなのはの魔力は温存して貰わなければならない。
「なのはは近くに敵が来た時だけ攻撃して。それ以外は回復に集中」
「え、でもっ!」
「なのはが倒れちゃジュエルシードが封印出来ない。僕がなのはを守る」
なのはの前にユーノが出たのを見て、やっぱり男の子なんだと見直す。
だがそれも一瞬の事、駆動炉までの通路を開ける為にヴィヴィオと同じ位の大きさの魔法球を作り出し放出した。
だが、そのヴィヴィオもまさか通路の壁ごと攻撃されるとは思ってもみなかった。
「!?」
一回り以上大きな魔導騎兵が壁とヴィヴィオをまとめて一気に斧状の武器でなぎ払う。
「キャァアアアッ」
聖王の鎧は魔法・物理的な攻撃にもある程度は耐えられるが、正面に攻撃を集中している中で死角から攻められては相殺しきれない。そのまま吹き飛ばされ反対側の壁にぶつかってしまう。
「ヴィヴィオっ!」
「なのはっ危ないっ!!」
「え・・!」
ヴィヴィオの元へと行こうとしたなのはを魔導騎兵が複数体襲いかかる。
「なのはっ!」
立ち上がりながらなのはに迫る魔導騎兵を攻撃しようとするが、他のが邪魔をして届かない。
しかも突然ヴィヴィオの手が透け始めた。
「なのはっ 逃げてっ!!」
「・・ッツツ」
なのはが目を瞑る
「サンダァアアッ レイジィィッツツ!!」
叫び声と共に金色の雷がなのはの周りの魔導騎兵を一掃した。
全員が見上げると、そこには
「フェイトっ」
「フェイトちゃん!」
フェイト・テスタロッサがバルディッシュを構えていた。ヴィヴィオもフェイトを見上げた瞬間、透けていた手が元に戻る。
(良かった・・後は歪みを取り除くだけっ)
「なのは・・私・・・」
「ありがとう、フェイトちゃん。」
「ううん・・」
どうも、2人だけ違う世界に行ってしまっているらしい。
「なのは、フェイトっ!」
「「!?」
良かった、すぐに元に戻ってくれた。
「なのはとユーノはこのまま駆動炉の封印を、フェイトも一緒に」
「わかった。あなた・・ヴィヴィオは?」
「ジュエルシードを抑える。封印は出来ないけど抑える位なら」
魔力が回復しきっていないなのはと、同じ様に消耗していたフェイトでは2人がかりでも20個のジュエルシードを押さえられない。
ヴィヴィオが抑えている間にクロノが封印してくれれば何とかなると考えた。
(フェイトちゃんが来てくれた。助けてくれた。)
なのはにとってそれは嬉しい誤算だった。
海上でスターライトブレイカーを撃ち終え、落ちていくフェイトを助けようとした。
でも突如襲ってきた雷撃からフェイトを守ろうとして気を失った。
ぼんやりと女性の顔と暖かな温もりを感じた気がする。その後ヴィヴィオとユーノに助け出され、ここがフェイトが暮らしていた「星の庭園」という場所だと聞き、急いで駆動炉を封印しなければならないと今の状況も併せて聞いた。
でも、その間もフェイトの事を思っていた。
あの後フェイトがどうなったのか? 聞く余裕は無い。
それが、もうダメと思って目を瞑った時に助けてくれたのだ。
「ありがとう、フェイトちゃん」
「わたしこそ・・・」
魔力が、身体の中から力が湧き出てくる気がする。
「なのは、フェイトっ駆動炉の封印をっ」
「私も手伝う。一緒に」
「うん・・ウンウン♪」
一際輝いた桜色の羽は力を増し一気に駆動炉へと向かった。
同じ頃、星の庭園上部階層では魔導騎兵だった物の残骸の中、巨大な魔方陣を広げたリンディが立っていた。
背にはアースラからの魔力を受ける羽を広げている。
「プレシア・テスタロッサ。終わりですよ、次元震は私が抑えています。駆動炉はじき封印、あなたの下へは執務官が向かっています。」
リンディの目的は大きく2つある。
ジュエルシードによって起こる次元断層を止める、そして、次元航行部隊に消滅兵器を使わせぬ。
おそらく通信を開けば退避命令を告げられるだろうが、ディストーションシールドを作り出してしまえば告げられぬだろう。
ジュエルシードのエネルギーを抑えている間は手出しをしない。そう思っての盾。
「・・・・」
「忘れられし都アルハザード・・・そしてそこに眠る秘術は存在するか曖昧なただの伝説です」
「違うわ」
答えたのはプレシア・テスタロッサ
「アルハザードへの道は次元の狭間にある。時間と空間が砕かれた時、その狭間に滑落していく輝き・・・道は確かにそこにある」
伝説にのみ残る世界アルハザード。もしそんな世界があっても周りの世界を巻き込んで良い筈がない。
「随分と歩の悪い賭だわ。あなたはそこに行って一体何をするの? 失った時間と犯した過ちを取り戻すの?」
「そうよ、私は取り戻す。私とアリシアの過去と未来を・・・取り戻すの、こんな筈じゃなかった世界の全てを」
失った時を取り戻す。それが願って出来るのならどれ程魅力的だろう。
リンディも取り戻したい時、戻ってきて欲しい人がいる。だから、プレシアの気持ちは痛いほど判る。
でも・・・
「世界はいつだって、こんな筈じゃ無いことばっかりだよ! いつだって・・ずっと昔から、何時だって誰だってそうなんだ。」
扉を壊してクロノがプレシアの下に辿り着く。
「!」
「こんな筈じゃない現実から逃げるか立ち向かうかは個人の自由だ。だけど、自分の勝手な悲しみに無関係な人間まで巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしないっ!!」
リンディもクロノもそんな現実と立ち向かっているのだ。
「・・・自分の勝手な悲しみに無関係な人間まで巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしないっ!!」
プレシアの居る部屋に飛び込んだ時、ヴィヴィオの胸にクロノの言葉が突き刺さった。
(そう、私は弱かった。だからなのはママが傷つくのを見たくなくて、本当のママが居ないのを引きずってこの世界を無茶苦茶にしちゃった・・・)
この世界に来た時のヴィヴィオならそのまま逃げてしまっただろう。
だけどもう違う。逃げたりなんかしない。
「判ってるんでしょう! 間違ってるって。」
「何を・・・私は取り戻すの。アリシアとの・・」
「だったらどうしてなのはを助けたの? レイジングハートも直してなのはを巻き込まない様に結界まで作ってっ!」
「ッツ・・」
「誰かに言って欲しかった、止めて欲しかったんじゃないの? アリシアはもう戻らない、生き返らないんだって」
「言うなぁああああ!」
衝撃波がヴィヴィオとクロノを襲う。吹き飛ばされそうになるが、耐えてヴィヴィオも魔力を開放し衝撃波を打ち消した。
それと同時に大きな振動が建物を揺らした。なのは達が駆動炉を封印したらしい・・・
「プレシアさん、あなたはアリシアの母親だけどフェイトの母親なんだよ。あんなに頑張ってるのにどうして大嫌いなんて言うのっ!」
「言ってもきっとわからないわ。アリシアと同じ顔をして同じ声で仕草も全く一緒・・・でもフェイトはアリシアじゃない。私のアリシアじゃ・・いくら嫌ってもフェイトは私を慕ってくる。もううんざり」
「実の娘になんて事を・・・」
「言ったでしょう、娘なんかじゃない大嫌いだって。あの白い子を直したのだってただの気の迷いよ」
そう言い不気味な笑みを浮かべるプレシアにヴィヴィオは怒りを超え悲しくなった。
「ProjectFate・・・記憶を持ったクローンを、人造魔導師を生み出す技術。そんな技術、犯罪でも生まれてきたら新しい命、人なんだ。フェイトはフェイト、アリシアじゃないっつつ!!」
「・・・・フッ・・そうあなたも・・終わりにしましょう・・・」
正体に気付いたプレシアはそれ以上何も言わずジュエルシード全てに魔力を送る。
「封印をっ! はやくっ」
「この世界を・・・」
ヴィヴィオの願い、この時・・・この世界を守りたい。
なのはもフェイトもクロノ・リンディ、そして士郎や桃子も恭也も美由希もアリサもすずかも、みんな好きだから。
その純粋な願いは彼女の中にある結晶を動かすには十分だった。
「壊させたりなんか・・・絶対させないっ!!!」
両手から溢れ出す光の帯がジュエルシードに向かってまっすぐ伸びる。それはプレシアの魔法を打ち消し20個全てのジュエルシードに広がる。
「もう無駄よ。ジュエルシードは解き放たれたわ」
プレシアの言う通り辺りが大きく震え始め、駆動炉の封印と重なって天井や床・柱に亀裂が走り始める。
それでも諦めない。
「クロノ・・・」
「止めるんだろう。次元震を」
「うん!」
ヴィヴィオに呼応する様にクロノが横から砲撃魔法を打ち込む。ほぼ同時に天井を突き破って2色の光の柱がジュエルシードへと降り注いだ。
聞かなくても誰かわかる。
なのはとフェイトがジュエルシードの位置を捕捉して一気に撃ち抜いたのだ。
(お願いっ! 止まって!!)
その願いを受け更に魔力を強め、遂には両腕のバリアジャケットを内側から吹き飛ばす。
だが、ヴィヴィオはそれを気に留めずまっすぐジュエルシードを見つめていた。
~~コメント~~
if~もしもヴィヴィオが幼いなのはの世界にやってきたら・・・
この話はそんな話です。
プレシアの想い、なのはとフェイトの想い、リンディとクロノの想い、そしてヴィヴィオの想い。それらが全部集まった回です。
アニメ本編とどこまで話を合わせながら、SSの中の世界を守れるかが凄く難しかったです。
視点の切り替えが多いのは本当にすみません。
次回でいよいよ終了です。・・・・無事に終わらせられるのでしょうか?
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