第02話「戦いの嵐、再びなの」

「ったたた…」
「ワッ」
「キャッ」
「はい、ヴィヴィオ」
「あ、ありがとフェイトママ」

 いきなり飛ばされたのは、どこかの路地裏だった。
 ヴィヴィオは転移の影響で転びそうになったところをフェイトに支えて貰った。
 しかし、なのはとフェイトまで手が回らず、ヴィヴィオ達が気付いた時には2人は折り重なるように倒れていた。
「ゴメンね、なのは、はやて」
「ええよ、なのはちゃん立てる?」
「うん。」

 2人ともぶつけたところを擦りながら立ち上がる。

「へぇーここがそうなん? 見た感じ日本の冬と思うけど…」
「人通りの多いところに出たら判るんじゃない?」
「そうだね。ヴィヴィオもいい?」
「うん。ヴィヴィオ、風邪ひくといけないから」
「ありがとう。なのはママ」

 なのはが持ってきたジャケットをヴィヴィオに着せる。
 3人とも突然やって来た場所なのに落ち着いるし、周りから現場情報を集めようとしている。前に1人でやって来たヴィヴィオとは大違いだ。
(なのはママもフェイトママもはやてさんも…凄い)


その様子をビルの屋上から見つめている者達が居た。

「全員魔導師だな…かなり高位の」
「ああ、4人分もあれば相当稼げる」
「仕掛けるぞ」
「おぅ!!」


「日本なのは合ってるみたいや・・ね」

 ヴィヴィオ達が路地裏から出て来た所ではやてが看板の文字をみて呟いた瞬間、辺りの風景が一気に変わった。色を失った世界。

「結界?」
「ってことは…まさか」

 結界の中金属音が聞こえた。その直後なのはが小声で言った。

「ヴィヴィオ、離れてて…はやてちゃん、ヴィヴィオをお願い」
「なるべく穏便にな、2人とも」

 緊張するなのはとフェイトの視線の先に2つの影。ヴィヴィオ達4人を挟む様に道の左右に分かれている。
 影を見たヴィヴィオは驚いた。影の正体がシグナムとヴィータで2人とも騎士甲冑を纏っていたからだ。

「シグナムさんとヴィータさん! どうしてここに?」
「こっちの世界のな…ヴィヴィオ、なのはちゃんとフェイトちゃんが動いたら私の後ついてきて」
「う…うんっ!」

 はやて達はどうしてここにシグナム達が居て、何をしようとしているのか判っているらしい。
 ヴィヴィオが頷くのと同時にシグナムとヴィータが、なのはとフェイトが動いた。はやてもヴィヴィオの手を取って駆け出す。

「は、はやてさんっ、ど、どうなって…」
「ここを離れるのが先や! 説明は後っ!」
(一体何が起きているの?) 

 こっちに来て突然降りかかったアクシデントにヴィヴィオはただ従うしか無かった。

 
 ヴィヴィオの手を取って走りながら、はやては辺りの様子も気にしていた。
(シグナムとヴィータがここに居るんやったら…何処で見てるか判らへん)
 気にしているのは残り2人の守護騎士の姿、特にシャマルのデバイスは遠隔地から狙える分、結界内に閉じ込められたこの状態ははやて達には分が悪い。手が徐々に重くなってくる。

「ヴィヴィオ、もうちょい頑張って」
 ヴィヴィオは頭を縦にふって答えたがかなり苦しいみたいだ。
その時ビルを飛び移る大きな獣の姿が目に入った。
(マズイな…捕捉されてる…)

「ヴィヴィオ…ごめんな」
「ハァッハアッ…はや…」

 ここはせめて出来る事をするしかない。
 はやてはそう考え直しヴィヴィオを眠らせ結界を張り、持っていた鍵十字のペンダントをヴィヴィオに握らせてその場を急いで離れた。


「ヴィヴィオッ、ヴィヴィオ…」
「ヴィヴィオ、起きて」
「なのは…ママ、フェイトママ」

 ヴィヴィオが目を覚ました時、目の前になのはとフェイトの顔があった

(私…どうして…)
「ヴィヴィオ、はやてちゃんはどうしたの?」
(私、はやてさんと一緒に走ってて…それで)

 手の中に何か持っている感じがして手を広げてみると

「はやてのデバイス…ヴィヴィオがどうして?」
「まさか…はやて」


「グアッ…アアッ…」
「ザフィーラお疲れ様。1人分しか手に入らなかったけれど、かなりページを埋められたわ。」
「シャマル、時間が押している。」
「そうね、全員出てきちゃったからきっと心配しているわ。」
「ああ」
(…ヴィヴィオは無事…か…)
倒れたはやてを置いて、2つの影は姿を消した。


「シャマル、みんな探してくるって言ってたのに遅いな…もうご飯冷めてしもた」

 食卓に並べた料理と時計を繰り返し見ながら八神はやては呟いた。
 ヴィータを呼んでくるとシグナムが出て行ったのが2時間前、後で探しに出たシャマルとザフィーラが出て行ってからももう1時間以上経っている。

「携帯も繋がらんし、何をしてるんやろう…」

 1人で先に食べるのも寂しくて、はやては車椅子を器用に使い読みかけの本を取りに寝室へ向かった。3人と1匹が帰ってくるのはこれから小1時間経った頃である。 

『なのは、はやてを見つけた。やっぱり魔力を奪われてる』
『わかった・・・すぐ行くね。』
『フェイトママ、はやてさん大丈夫なの?』
『うん、怪我もしていないし…ちょっと疲れちゃっただけ。ヴィヴィオもなのはと一緒に来て』
『うん』

 なのはと一緒にはやてを探していたヴィヴィオにフェイトからの念話が届いた。ヴィヴィオははやてが無事で良かったと安心する反面、ある言葉が引っかかっていた。

【やっぱり魔力を奪われている】

 怪我をしている訳でもなく、彼女のデバイスはヴィヴィオの手の中にあるから無事だ。何が起きているのか?

「なのはママ、はやてさん…魔力を奪われてるってフェイトママが…」
「ヴィヴィオには何が起きているのか、この時何があったのかわからないよね。後で、フェイトちゃんの所に行ってはやてちゃんが目を覚ましてからでいいかな?」
「うん…」

 そう答えたものの、ヴィヴィオの目にはなのはが気丈に振る舞っている様に見えた。

(この世界で一体何が起きているの?)

 この世界で知っているのはこの後、危険なロストロギアがあった事だけ

「ねぇなのは、はやてを寝かせてあげたいんだけど」

 気を失ったままのはやてをどこか安全な場所で寝かせてあげたい。そう考えたフェイトはなのはに聞いた。

「う~ん…私の家やフェイトちゃんのマンションに連れて行けたら良いんだけど…」

 なのはやフェイト・はやての家は確かにこの世界にもある。しかし、その家にはそれぞれこの世界のなのはとフェイト・はやてが暮らしている。違う時間の同一人物が出会えば何が起こるかわかったものではない。

「少しだけお金は持ってきてるけど、4人だとちょっと…」
「なのはママ、フェイトママ。リンディさんにお願いしちゃだめ?」

 ヴィヴィオも一緒に考えていると咄嗟に思いついた。
 なのはとフェイトはキョトンとした目でヴィヴィオを見る。

「ヴィヴィオどうして母さんにお願いするの?」
「リンディさん? あ、そうか!」
「リンディさん、私が未来から来たの知ってるの。RHdの…」
「ヴィヴィオのデバイスで…あっ!」

 フェイトも気付いたらしい。デバイスを組み直したならいつ誰が作ったのかを知っている筈。ヴィヴィオのRHdの製作者にはリンディ・ハラオウンの名前が入っている。

「ヴィヴィオ、それじゃリンディさんにお願いして貰えるかな? なのはママもフェイトママもはやてちゃんもこの世界のリンディさんには会っちゃいけないの」

 ヴィヴィオもユーノに教えて貰っていた。
【別の時間から来たのを知られてはいけない】
 きっとなのはもそれを聞いているのだろう。

「うん、わかった♪」

 ヴィヴィオは頷いて教えて貰ったマンションへと駆け出した。

~~コメント~~
 もしヴィヴィオがなのは達がヴィヴィオと同じ歳くらいの頃の世界に来たら? というのがこの話の大元です。
 前話から少し(かなり)時間が経ってしまいゴメンナサイ。新型インフルの騒動さえなければ・・・
 AnotherSide(AfterStory)と違う所、それはヴィヴィオ1人じゃなくてなのは・フェイト・はやても一緒に来てしまった所です。
 最初のコンセプトには「なのは達に黙って再び過去へ向かう」ってあった筈なのに・・・多分なのは達が暴れ足りないのでしょう。
 どんな風に進んでいくのか、気長にお楽しみ頂けると嬉しいです。

 いつも相方の静奈がお世話になっている「時空管理局」様のラジオが100回を迎えられたそうで、おめでとうございますというお祝いと共に継続は力なりと熟々感じました。

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