ガジェット・ドローンの同時発生と機動六課への襲撃事件は大きな被害が出ずに治まりを見せた。
中にはヴィータが楽しみに取っていたアイスを冷蔵庫ごと吹き飛ばされ暴れかけた等の小さい事件や事後処理はいくつか残っていたが、六課の中も徐々に落ち着きを取り戻していた。
そんな中、キャロやフェイトやなのは・はやては隊舎の前である人物を待っていた
私は独りぼっちだった。みんなと一緒に暮らしたかったのに、みんな私の力を怖がった。
こんな力欲しくなかった。怖がらせようと思ったことも一度も無かった。それでも私は独りぼっちになった。
そんな私にお母さんみたいな暖かい人が私に声をかけてくれた。
私はその人に「何をするか」じゃなくて「何をしたいか」といわれた。私はその人を手伝いたいと思った。
一緒に居る時に同じくらいの男の子と出会った。凄く真面目で頑張り屋でとっても優しい人。私はその男の子と一緒に居ることが嬉しかった。男の子も凄く喜んでくれた。
でも、知らない私と一緒にいるその人達は凄く嬉しそうだった。男の子もそうだった。
その時はっきりとわかった。
私はやっぱり要らない子なんだって
もうどうなってもいい・・・・
もうどうなっても・・・
でも・・・・
【ヴゥーヴゥー】
エリオの暖かみで気持ち良く眠っていたキャロの耳に慌ただしいアラームが鳴り響いた。
「えっ?何?どうしたの?」
驚いて飛び起きるキャロとエリオ
【緊急出動要請。フォワード隊、その他関係局員は緊急体制シフトAが発令。繰り返します緊急・・・】
キャロとフリードが仲直り(?)してから数日の間、機動六課も平和な日々が続いていた。
特にキャロ・ヴィヴィオ・フリードの2人と1匹は隊舎の近くで遊ぶことが多くなった。
時折シャマルが検査を兼ねてキャロとヴィヴィオに簡単な勉強を教える事もあった。
その間エリオはザフィーラと一緒にキャロ達を眺めたり、エリオ自身が知らなかった事があったときは真剣に聞いて授業に参加する事もあった。
「う・・・んん・・」
「おはよう、キャロ」
「フェイト・・まま?」
ユーノが去ってから夜が明けた頃、彼が言ったようにキャロは目覚めた。
流石に昨日一日中眠っていた為かまだぼーっとしているみたいだ。目をこすりながらのそのそとベッドから下りようとしている
部屋のベッドと勘違いしたのか、落ちそうになるキャロを支えるフェイト
空に浮かぶ二つの月明かりが部屋に射し込む。
時折僅かに聞こえる機器の音が静かな部屋中を掛け巡る
『あの時私がもっとはやく気づいていれば・・』
静寂の中フェイトが繰り返し思うのはこの事だった。目の前で静かに寝息をつくキャロ。以前キャロに『どこに行くのかじゃなくて、どこに行きたいのか』と言った自らの言葉を守り、キャロは六課に来てくれた。
しかし、それがこんな事になるとは思っていなかった。
それに、あの事故のキャロが見せる笑ったり泣いたり怒ったり・・・そして周りが心配していても気にせず自分のやりたいことに進む子供っぽさ、それが余計に今までキャロに無理させていたのかと考えずに居られなかった。
「「シャマル先生っ!」」
エリオとティアナが医務室に駆け込むとそこにはシャマルがキャロの周りに色々な器具を用意していた。どうやら医療器具系みたいだ
「キャロは?」
エリオがキャロの顔を見ると、出て行った時と変わらず健やかな寝顔をしている。寝息も規則正しく聞こえた。
隣にきたティアナもキャロの顔を見て安堵した
「シャマル先生、ビックリさせないで下さいよ。ただ眠っているだけじゃないですか」
翌日までエリオは昨日の嵐で受けた怪我を治す為に医務室で一夜を過ごした。
『結局キャロの部屋で一緒に寝たのは1日か・・』
あれから、何度も直後のことを思い出そうとするのだが、肝心な所がもやがかかった様に思い出せない。
何度か考えているうちに、エリオ自身は
『キャロが無事だったんだからそれでいいや』
と思うようになっていた。
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