「まだまだっ!!」
トーレの横に薙いだキックをヴィヴィオはジャンプして避ける、直後そのまま振り下ろされる踵落としを両腕で受ける。
「クッ!」
そこへセッテが横から急接近してきた。そのまま手に持った大きなブーメランを横薙ぎに
ヴィヴィオは慌てて地面に転がるがその真上にトーレの顔が見えた。
(マズイっ!)
拳が連続で振り下ろされるところでインパクトキャノンを放って爆発させ全速力で彼女の背後へと飛ぶ。だがこの攻防でヴィヴィオのライフポイントは半分以上削られた。
「みんなそろそろ疲れてるみたいだし、休憩しよっか♪」
ブレイブデュエルの中でなのははフゥと一息ついてから言った。
目の前でシュテル、レヴィ、ディアーチェは膝をついて荒くなった息を整えている。
流石に飛ばしすぎたかなと思いながらも普段の教導と比べて時間が限られているから仕方ないかなと思い直す。
「ヴィヴィオからズルイって言われちゃうね。」
フェイトが近寄って来て囁く。彼女も完全にブレイブデュエルの世界に慣れたようだ。
「まだ出来ます。1勝も出来ずに終わるのは…」
「ダ~メ、ブレイブデュエルは多分体を動かさない分頭を凄く使うんでしょ? 集中力が切れたままで対戦しても同じ失敗を繰り返すだけ。私達に勝ちたいならさっきまでのデータを見て何処が悪かったのか理解するのも方法の1つじゃないかな。」
「「「………」」」
そう言うと3人は渋々頷いた。
ヴィヴィオ達がデュエル中の頃、こっちの世界の高町なのはは彼女達と一緒にグランツ研究所へと向かっていた。
なのはとアリシアが出かけて少しした後、高町家にフェイトとアリシアが来た。
理由は道場で美由希に剣技を見せて欲しいとお願いしていたからなのだけれど
『アルバイトの子が風邪で休んじゃってお店が大変なの。お店手伝って~』
「わかった、みんなごめんね。」
桃子から電話がかかり彼女がお店を手伝いに行ってしまった。流石に止める訳にもいかず仕方なく部屋でおしゃべりしていると今度は士郎から電話がかかってきて
「さてと…」
ポッドに入ったヴィヴィオは考える。
対戦相手のシュテルとは何度も対戦している。彼女のジャケットも私と同じセイクリッド、防御力が高くて火力が強い遊撃タイプ、遊撃タイプだからこそどう出てくるかわからない。しかも彼女の方がブレイブデュエルについて詳しいし所持カードも多い。
前と同じ戦法を取るかセイクリッドの特性を前に出すか?
それともアリシアみたいに魔法以外の場所まで持ち込むか?
「博士、酷いです。ヴィヴィオとアリシアと一緒に彼女達が来るのを黙っていましたね。」
簡単に自己紹介を済ませた後、全員でロビーの片隅へと移動した。
その後で頬を膨らませるシュテル、ディアーチェも深く頷いている
「いや~すまない、僕もはやて君からデータの解析を頼まれた際に聞いただけだったんだ。」
タハハとばかり苦笑しながら謝るグランツ。
「ビックリしました。本当になのはとフェイトにそっくりです。」
「リアルマスターモードだ♪」
ブレイブデュエルの世界にやってきた次の日、早朝からヴィヴィオは少し離れた小高い丘にある公園に来ていた。色んな世界の海鳴を見て来てきたけれどここは変わらない。それがヴィヴィオの心を落ち着かせてくれる。
瞼を閉じて心を静め集中する。
風が木々の葉を鳴らす音が次第に消えていく。そして…僅かだけれど胸の奥が暖かくなる。
弱い反応だがリンカーコアの鼓動。魔力の素みたいな物がここには無いからこんな風に魔法の基礎練習しか出来ない。でも…
「大丈夫…しっかり感じるから…」
胸の奥で微かな鼓動を感じて深呼吸をした。
「もういいの?」
「うんお待たせフェイトママ」
待っていたフェイトにヴィヴィオは目を開いて答える。
「もっと広いと思ってたんだけどな~」
夕方、なのはは高町家の縁側に腰を下ろした。
花壇や道場、廊下もそうだし家の中ももっと広いと思っていたのに…
「なのはさんが大きくなったからじゃないんですか。」
アリシアがひょこっと庭から顔を出した。
「ふぅ…」
ヴィヴィオはブレイブデュエルから出てきて息をつく。
突然出てきてみんなを驚かせるつもりはなかった。でもあのままフェイトが負けてしまうのは見ていられなかった。
(これで…いいんだよね…)
ポッドから出ると
『ワァアアアアアアッ!!』
周りから歓声と拍手に包まれた。
「!?」
思わずたじろく。隣のポッドから出てきたアリシアも驚いている。
その後、さっきのスタッフが駆け寄って来てエイミィからT&Hに来て欲しいと伝言を受けた。
舞い降りたヴィヴィオとアリシアの姿にフェイトは呆然となる。
「ウソ…」
司会をしていたアリシアもその様子に言葉が止まってしまった。
そしてグランツ研究所でも…
(ご飯を食べた後アリシアを迎えに行って)
週末の夜、ヴィヴィオはなのはとフェイトとご飯を食べながらこれからの予定を思い出していた。
朝やお昼の間に行ってしまってもし時間が過ぎてしまうと2人に知られてしまう。でも夜なら翌朝起きる迄時間があると考えた。
「ごちそうさまでした、お風呂入ってきま~す。」
「あっ、ヴィヴィオちょっと待って。」
食器をシンクへ持っていってそのまま部屋に戻ろうとした時なのはから呼び止められた。
「なぁに? なのはママ」
「ママ達に何かお話はないのかな?」
えっ?
思いっきり動揺する。
Stヒルデの学園祭まで残り2週間となったある日、
「はぁ…」
教室で高町ヴィヴィオは外を眺めながらため息をついていた。
夏の強い日差しも落ち着いて髪を梳く風も心地よい季節に変わってきている。普段なら目を閉じてその雰囲気をあじわうのだけれど、今の彼女は…
「ヴィヴィオ~休んでないで手伝ってよーっ!。」
「あっごめん。」
リオに怒られて彼女達の所に小走りで向かった。
世界は必然が積み重なってできている。
いくら偶然と思えようと何か理由があるからそこにある。
数多の必然が連なって世界は成り立っている。
例え幾つもの事象が目の前にあっても、選んだ事象だけが必然になる。
事象が些細な事であっても重大な事であっても変わらない。
それが理であり真意。
連なってしまった必然を消す事は出来ない…
でも…もし…選び直す事ができるなら、あなたはどうしますか?