「…ん? ここは?」
私が目覚めるとそこはベッドの上だった。
朝からぼんやりして熱っぽかったからベッドで本の続きを読もうとして…その後は…覚えてない。見慣れた部屋の筈なのに何処か違和感がある。
「?」
ベッドから起き上がる、体が今朝と比べて軽い。熱っぽさもなくなっていた。
熟睡して楽になったと思った時、ガチャッとドアが開く音が聞こえて
「あっ、起きたんだ。おはよヴィヴィオ。」
トレディアのラボでレリック完全体No14は見つかった。早速戻ってとヴィヴィオは席を立って入り口に向かう。しかし端末を触っていたアリシアが
「もう少し調べていい? 面白い物が見つけちゃった♪」
何を見つけたのだろうと思いつつ空間転移で再びヴァイゼンに戻るには残りの魔力じゃ心許ない。一応洞窟の周りにセンサーを仕掛けてラボに戻り手近な机の上の埃をこれも手近にあった布で拭き寝転んで瞼を閉じた。
「お待たせ。ヴィヴィオ起きて」
再び瞼を開いたのはアリシアから呼ばれた時だった。起き上がると結構身体が楽になっている。
「ごめんなさい、遅くなって。」
シャマルが転移先にしたのは高町家の庭だった。
そのまま玄関を回って家に入ると
「ありがとうございます。遠くまで…、ヴィヴィオ?」
士郎がリビングから出てきた。
「違います、ちょっと事情があって似ていますが別人です。」
そのままヴィヴィオの部屋に案内された。
海鳴市に来て数日間は色々とイベントがあってあっという間に過ぎた。
なのはとフェイトが戻って来ているのを聞いて2人の友達が遊びに来たり、ヴィヴィオはヴィヴィオで月村雫が相手しろと言って押しかけてきたり、エイミィに呼ばれてハラオウン家に行ってエイミィやリエラをお喋りしたりと普段とは違う生活に慣れようとして魔法が使えなくなっているという不便は全く感じなかった。
1週間経ったある日
「ヴィヴィオ~行くよ~」
フェイトが朝のジョギングに出かけるのに彼女を呼んだ。
ヴィヴィオとアリシアはオルセアの丘陵地帯にある洞窟に来ていた。
特務6課に行った後、アリシアははやてにティアナと一緒に軌道拘置所に行きたいと言った。
何をするつもりなのか判らず首を傾げたヴィヴィオ達に
「ルネッサ・マグナス元執務官補と面会させて貰えませんか? 聞くのは1つだけなので5分もあれば…」
と言い唐突に出てきた彼女の名前にその場に居た全員は驚いた。
その後、面会は直ぐ許可が下りないが通信で良ければと言われてティアナに通信を繋いで貰った。
そこでアリシアは本当に1つだけを聞いた。
「ルネッサさん、ルネッサさんが『思い出の地』って言われたら何処を思い出しますか?」
雫達の練習に少しつきあった後、ヴィヴィオはフェイトと一緒に家に戻ると誰も居らずダイニングに2人分の朝食が用意されていた。
「なのはママ?」
「なのは、休みの間だけ翠屋を手伝いたいんだって。桃子さんと士郎さん、なのはのお母さんとお父さんだから親孝行したいんじゃないかな。ヴィヴィオいいよね?」
(そう言えば昨日来た時から凄く嬉しそうだった。)
「うん♪ フェイトママが一緒だもん」
ヴィヴィオは笑顔で答えた。
その後、2人で少し遅めの朝食を食べた後
「少し散歩しよっか」
「さてと…どんな歓迎してくれるか楽しみだね♪」
楽しそうに言うパートナーに対して私はため息をついた。
「う~…私はまた怒られそうな気がするんだけど…」
見えてきた特務6課に行くのが今更ながらにヴィヴィオは憂鬱になっていた。
私達の目的はこの世界にあるレリック片とNo10のジュエルシード。両方とも遺失物管理部の保管庫あるのは知っている。
最初は空間転移で行って持ち帰っちゃえばいいと考えていたけれど、そうすると後で予想外の問題が起きそうな気がする。何故なら2つともここの私達に深く関係しているからだ。
だったら逆にこっちの母さん達に話をして正式に貰える手続きをしてみようと言うことになった。最悪ダメと言われたら少し前に移動して最初の考えを実行すればいい。
「ただいま~…今日1日が凄く長かった…」
研究所に着いてアリシアはロビーのソファーにバタッと倒れ込む。
「…ごめんなさい…」
「ううん、頼んだの私だから。ゴメンね色々疲れたでしょ。」
「…うん、少し…」
謝るチェントに言う。
授業内容については特に問題も起きなかったのだけれど、ヴィヴィオとチェントの違いがはっきりわかった1日だった。
リオとコロナに学院祭の後でちょっと事件に巻き込まれてと話してフォローをお願いした。
「こんにちは、高町ヴィヴィオです。」
こっちに来た日の夜、高町家のリビングに集まった皆の前でヴィヴィオはペコリと頭を下げた。
なのはとフェイトが娘を連れて帰って来たというのを聞いて、夕方から何人かやって来た。
最初に来たのは月村すずか。私を見て頭を撫でながら『また会えたねヴィヴィオちゃん♪』と囁かれた時には流石に驚き過ぎて固まってしまった。
彼女はしっかり私の事を覚えているらしい…
暫く経ってなのはが戻ってくるとフェイトやアリサ・すずかと楽しくおしゃべりしつつ夜になって士郎と桃子、美由希がエイミィとアルフ、そして…見かけない同い年位の子供を2人連れてきた。
そして…
「遅くなった、ごめん。」
「ここが…」
ゴクッと唾を飲み込んでその敷地に入る。入って直ぐに
「お待ちしていました。所長がお待ちです。」
小柄な女性が玄関から現れ会釈をした。
「久しぶり、チンク。」
「マリエル技官。ご無沙汰しています。」
そう、私マリエル・アテンザはミッドチルダにある研究施設へと来ていた。
何故私がここに来る事になったのかというのは、半日前に遡る…。
「幾らあなた達が優秀な局員だからと言って…」
「クロノ提督ではありませんが、組織には守らなくてはならない規律というものが…」
「ヴィヴィオもアリシアも局員であって聖王教会にも…」
管理局装備部の1室でヴィヴィオはただひたすら彼女の説教を受けていた。
目の前に居るのはマリエル・アテンザ。私達のデバイスの基礎設計をしてくれた1人で私や母さん達にとって頭が上がらない人の1人。
かれこれ30分…何故私が彼女の説教をひたすら受けているかと言うと、アリシアから頼まれた修理部品を貰う為だ。
(やっぱり…こうなっちゃうよね…)
「っと…着いた♪」
ゲートの出口に降りて辺りを見回す。
「ここは?…見覚えあるんだけど…どこ?」
木はいっぱいあるけど、森の中という訳ではなくて…でも何処かで見たような…
「すずかちゃん家のお庭。魔法見られちゃうと大変だからね。」
「ここが…」
言われて思い出す。初めて時空転移をしてなのはの代わりにジュエルシードを集め始めた時ここに来た。
ここでは10年以上経っているけれど懐かしい気がした。
ヴィヴィオ達が海鳴市に行った日の朝
「行ってきまーす。」
「行ってらっしゃい。アリシアデバイスは持って行きなさい。」
「ちゃんと持ったから大丈夫~♪」
アリシアは玄関を出たところで家の中に声をかけて走り出した。
練習をするのにママと約束したのは4つ
『危ない事には関わらない。もし巻き込まれそうになったらどんな小さな事でも相談する。』
『体を壊すような練習はしない。』
『デバイスとペンダントはどんな時も必ず持っていく。』
『勉強や食事の時間はきちんと守りチェントが寂しがらせない』
『アクセルシュートッ!』
虹色の球体がそれぞれ意思を持ったかの様に飛び出す。
目標は正面、少し離れた所に居る女性、しかし…
『動きが単調すぎです。放った後止まっては只の的です。パイロシューター』
『!!』
彼女が放った赤い球体に虹色の球体は全て消され、そのまま回り込まれて
『きゃぁああああっ!』
直撃して爆発した。
『まだまだですね…』
「そっか…」
その日の夕方、ヴィヴィオからの通信を受けたアリシアは頷いた。魔法の使いすぎと言われては先の戦闘を目の当たりにしていた1人として納得するしかなく、その戦闘が今までと比べられない程無茶をしていて終わった後に倒れていたのだから何かあるかもとは思っていた。
海鳴に行くと聞いて一緒についていきたいとも思ったけれど
「私も行きたかったんだけど…待ってるね。」
フェイトとなのはが行くのなら待ってた方がいい。そんな返事に
『え…一緒に来て美由希さんに教えて貰う~とか言うんじゃないかって思ってた』
「ひどーい! 遊びに行くなら私も~って言ったけど流石にね。こっちで待ってる。あっ、でも早く帰ってこないと進級出来なくて私が先輩になっちゃうかもよ。」
『う…うん、がんばる。どう頑張ればいいかわかんないけど…』
「それは…私でも難しいわね…」
「あなたならって期待していたのだけれど、残念ね。」
プレシアは冗談交じりで目の前に居る彼女に言った。
フェイトから話を聞いた昼過ぎ、チンクから通信が届いた。
『プレシアに会いたいと来客だがどうする?』
今日は誰かと会う約束はしていない。何処かの研究機関か民間企業から来たのだろうか?
聖王教会や管理局を通さずには危険過ぎると考えた。
「私達に…戦技魔法の特訓して欲しいと?」
「お願いします!」
本局教導隊にやって来た少女にシュテルは小首を傾げた。
少女と一緒に来たユーリを見るが彼女も困惑気味に苦笑いしていた。
事はユーリの元に少女-チェントが来たところから始まった。
彼女は先日までアリシアやヴィヴィオに連れられて何処かに行っていたとなのはから聞いていた。娘が局員になってからなのはは前線に出るよりもっぱら教導任務に就くことが増えており家を長期不在にすることが無くなった為、逆に娘からの連絡が途切れると連絡が頻繁に来る様になった。
子供の頃から魔力共有契約をしていて同じ教導隊に所属しているのだからわざわざ通信で連絡しなくてもいいと思うのだけれど…ディアーチェ曰く「心配性が親馬鹿っている」らしい。
「ねぇねぇヴィヴィオちゃん」
検査室に向かう最中ヴィヴィオは彼女を案内している医療スタッフの女性に声をかけられた。
「なのはさんとフェイトさんと沢山練習してるのよね?」
「ママ達と練習?」
首を傾げる。
「そうじゃなきゃヴィータさんに勝って空戦Sランクなんて取れないわよね。最近よくシャマルさんの所にも来ているし…。でも、いくら成長スピードが早い時期でも無理しちゃだめよ。」
(?…あっそうか)
「…これがそうなのですね?」
カリム・グラシアはテーブルに置かれたメモリディスクを手に取った。
「はい」
その様子を見守りながらリンディ・ハラオウンは真剣な眼差しで頷いた。
「…ィオ…ヴィオ…」
誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。その声で瞼を開くが周りが暗くて見えない。
「…だれ~? 何処にいるの?」
起きて立ち上がる。確か部屋のベッドで眠っていた筈なのに、どう見ても部屋中というかミッドチルダじゃない。ここは一体何処?
「ヴィヴィオ…ヴィヴィオ…」
今度はさっきよりはっきり呼ぶ声が聞こえた。
ここに居ても仕方がないと思って呼ぶ声を目指して足を進める。
「…ここ…何か変…」