「へぇ~そんな事あったんだ。偶然って凄いね。」
その夜、ヴィヴィオははやての電話を借りてなのはの携帯に電話していた。相手は勿論アリシアだ。
アリシアや士郎・恭也達の剣術がブレイブデュエルの中で使えたらデュエリスト同士の対戦でもモンスターハントでも通じるのは知っているけれど、スバル達の魔法やISがブレイブデュエルの中で実現したら楽しいと思う。
『小さいディエチが居るんだったら、スバルさんやティアナさんも居るんじゃない? ブレイブデュエルでマッハキャリバーセットアップしちゃってたら面白いよね。』
それは確かに面白そうだ。でも…
「いらっしゃいませ~、あっ! こんにちは」
お昼の賑わいも落ち着き、アリシアが桃子達と少し遅めのご飯を食べているとドアベルが鳴った。
お客だと思って立ち上がる。でもそこに居たのは
「こんにちは」
「おっじゃましま~す♪」
ペコリと会釈をしてシュテルと彼女の後にレヴィが元気良く入ってくる。
「こんにちは、まだ早かったかな?」
グランツ研究所でデュエルをした翌日、翌々日とヴィヴィオとアリシアの姿は八神堂にあった。
思った通りヴィヴィオとアリシアがここに居るのを知って八神堂のデュエルスペースには多くの子供達が集まってきた。
はやては勿論、八神家とチヴィットが全員フォローに回ったがそれ位で収まる筈もなく、
「はやてちゃん、お手伝いに来たよ~♪」
「私達もお手伝いします。」
「すずか!、ユーリ!」
「ありがとな~♪」
すずかとユーリが彼女達のチヴィットを連れて手伝いに来てくれた。2人は昨日のデュエルの後、こうなるのは予想していたらしい。
八神堂でははやてとシグナムが、T&Hではなのは達T&Hエレメンツの全員が、グランツ研究所ではディアーチェ達DMSの3人とアミタとキリエ、グランツがデュエルの結末を見守っている。
この攻防で勝負が決する…
緊迫した雰囲気は3ショップ全体に伝わり遊びに来ていた子供達の視線も大モニタに釘付けになっていた。その中には目を輝かせる青髪の少女と、家族へお弁当を届けに来た少女の姿もあった。
『リライズアーップ!!』
ヴィヴィオは虹色の光を発しながらも襲い来る蒼い光の奔流に呑み込まれる。
幾らカウンターが上手くても、いくら複数の魔法を使えても防御力以上の攻撃を受けてしまえばライフポイントは減る。ヴィヴィオのライフポイントが一気に減り始めた。
『……ぉぉぉぉ』
「次で最後?」
ディアーチェの魔法は気づいてなかったら本当に危なかった。
彼女が去った後もエリアは変わらない。このまま次のデュエルに進むのかと周りをキョロキョロと見回す。
「最後の相手は私です。」
そう言って現れたのは、シュテルだった。色違いのジャケットを着ている。彼女がいつも『白の~』と言っていた理由に納得する。
「私はあなたのデッキを知っていますがあなたは私のデッキを知らない筈です。これでは『ズル』ですので先にデッキを見せたいと思いますがどうですか?」
『おっと!次もニューフェイスです。モンスターハントで華麗な魔法を見せてくれた2人目の白のセイクリッド、ヴィヴィオちゃん。先日T&Hから八神堂に移籍してくれたんやけど、ブレイブデュエルより本の方が好きみたいで困ってます。って古書店の主が言っても仕方ないですね。』
はやての紹介に赤面する。フェイトが照れる気持ちが何となくわかった。
『相手をするデュエリストは注意してくださいよ~、なんせDMSメンバーに勝つ実力の持ち主です♪』
彼女の耳にはプロトタイプシミュレーターでのデュエルが届いているらしい。流石というか何というか…
「はやてさんらしい♪」
『いくよ、ブレイブデュエル、スタートっ。リライズアップ!!』
「アリシア、フォローありがとう」
デュエルが終わり、ヴィヴィオはプロトタイプシミュレーターから出てきたアリシアに声をかけた。
「ううん、私こそありがとね。」
パンっと音を立ててハイタッチをする。
アミタ&キリエとのデュエルは1:2で負けてしまった。それでもユーリ・レヴィ・キリエ・アミタとのデュエルでブレイブデュエルがどんな物なのか理解出来た。
ヴィヴィオ達が異世界でアクシデントに巻き込まれていた頃、所も世界も変わって元世界であるミッドチルダのある住宅地では
「はぁ~…」
ため息をつきながら歩くはやての姿があった。
イクスヴェリアから告げられた話を1人では飲み込めず、かといって事が重大すぎる為に家族に相談も出来ず悶々とした日々を過ごしていた。
「美味しかったね~ディアーチェのご飯」
「うん、あり合わせって言ってたけど本当に美味しかった。」
はやてが料理上手なのは知っていたけれど、ディアーチェも勝るとも劣らない腕を持っているのを知ってヴィヴィオは驚きながらも舌鼓をうった。
「食事も済みましたし早速デュエルしましょうか」
「僕1ば~ん!!」
「私2番ってフロントアタッカーが2人じゃバランス悪いですね、3番で♪」
「じゃあ私が2番、王様とシュテルは?」
「ん?」
昼も少し過ぎた頃、シグナムがバスの中から八神堂の近くを通った。玄関に大きな体を丸めて寝ているザフィーラとカウンター奥の本棚に古書を並べるはやての姿が見える。
(まだ誰も帰ってきていないのか?)
八神堂は古書店とは言ってもブレイブデュエルのショップの1つ、学校が終われば子供達がやってくる。普段はリインフォースが手伝っているのだけれど、今日は朝からはやてに頼まれてグランツ研究所に行っている。
歩道を歩く子供の姿から既に学校が終わっているらしく今から忙しくなる。
。
【PiPiPi】
電車の中で小さな音が鳴る。シュテルはスカートのポケットから端末を取り出して見る。
「ユーリからメールです。2人とも研究所に着いて今からリライズテストをするそうです。」
隣に座るレヴィとディアーチェに言うと2人は顔を見合わせ笑顔で頷いた。
「白のセイクリッドの子とアリシア…だっけ、フェイトそっくりな子も?」
「はい」
「博士がヴィヴィオは来ると言っていたがアリシアをどうやって呼んだのだ?」
「ここがグランツ研究所ですか?」
「そうだ。」
研究所の敷地に足を踏み入れたヴィヴィオは周りの光景に驚いていた。建物の大きさもさることながら、周りに幾つもの花壇があって色とりどりの花が咲いている。しかも凄く手入れが行き届いている。
その一角に動く影を見つけた。その影がこちらに気づくと立ち上がって
「こんにちはリインフォースさん、とようこそグランツ研究所にヴィヴィオさん」
「ユーリ遅くなった。彼女はユーリ・エーベルヴァイン、ここで博士を手伝っている。」
リインフォースに紹介されたユーリは頬を赤めて会釈をする。
「こんにちはユーリさん、ヴィヴィオです。」
(やっぱり、ユーリだった。でも…)
「ねぇヴィヴィオ、さっきのデュエル本気じゃなかったでしょ。」
T&Hでアリサとすずかとデュエルをして八神家への帰り道、アリシアに唐突に言われた。
「えっ? 本気じゃなかったって?」
一緒に居るなのはも聞いてくる。1人帰らせるのは心配だからと、家に帰るなのはとアリシアが送ってくれる事になった。
「何て言うか…いつもみたいな感じじゃなくて何か試してた気がして。そうじゃない?」
2人にジッと見つめられたじろぐ。
「どうしてこうなっちゃったんだろ…」
シミュレーターの中でヴィヴィオは呟く。既に日は暮れてT&Hも閉まっている。
「仕方ないっていうかみんなからお願いされちゃったらね…」
隣のシミュレーターでアリシアが苦笑している。
釣られてヴィヴィオも苦笑する。
『ヴィヴィオちゃん、アリシアちゃんもごめんね。』
「いいですよ。お話するより手っ取り早いです。」
「うん。」
アリシアの言葉に笑って頷く。確かに複雑な自己紹介するより簡単だ。
『じゃあいくよ。ブレイブデュエルセット、レディゴーッ!』
(さっきの電話って…アリサだよね?)
T&Hへ戻る最中、ヴィヴィオはなのはとフェイトの後ろを歩きながら考えていた。
アリサからの電話の後2人ともどうも様子がおかしい、時々こっちを見て笑みを返すけれどその後ため息をついている。T&Hへ戻る足取りも重い。
「もしかして、なの…」
「なぁ、ヴィヴィオの世界に私も居るよな? …その…」
ヴィヴィオが聞こうとした時さっきから黙って付いてきていたヴィータが聞いてきた。
「大人の私、シグナムとかリインフォースみたいに大っきいのか?」
「ヴィータ…さっきはやてが聞かない方がいいって言ってたよね?」
「ありがとう~。みんな出かけちゃってサポート私だけじゃ無理~どうしようって思ってたんだ。」
アリシアがうさぎ耳をつけたまま振り返って言う。彼女はデモプレイが終わった後も解説を続け観客を楽しませていた。
「ううん、みんなで遊ぶの楽しいよ。」
彼女の笑顔を見てアリシアも笑って答える。
ヴィヴィオがなのは達と一緒に外に出かけて行った時、アリシアにはここに残って欲しいと頼まれ2つ返事で引き受けた。
「やっぱり1発じゃ全部壊せないか・・・じゃあこれはどう?」
再びクロスファイアシュートの発射態勢をとる。
ティアナの得意魔法、クロスファイアシュートは複数の誘導弾によって空間制圧を目的に組まれたミッドチルダ式の魔法。ショットガンの様に小型の魔法弾殻を多数放つヴィヴィオの魔法―セイクリッドクラスターにとても似ている。しかしこの魔法にはセイクリッドクラスターに出来ないある『特性』がある。
それは多数のスフィア―誘導弾を集束させて砲撃魔法に出来る事。
スフィアの数を変える事で威力を調整出来、更に遠隔操作により離れた場所からでも発射可能、それらを応用すれば1人で相手に対し集中砲撃も出来る。
それらの特性を本能的に知ってか、ヴィヴィオはこの魔法を得意としていた。
それがブレイブデュエルの中で今火を噴く。
「初挑戦で苦も無く19体か・・・流石ショップチームのエースね。」
「次ので最後か・・・最後のって何だっけ?」
「私達が4人で挑んで1度も勝てなかった相手です。」
「多層式のシールドを落とし、新たなシールドを作らせない様にしつづけながら砲撃系を数発入れなければ勝利はありません。魔力総量から見て4人では勝てない相手です。ですが・・・5人なら・・・」
「テストで何度も戦った我らとは違う。あやつ達は初めてだ。まぁ、ここまでだろうよ・・・」
彼女はそう言いながらモニタ画面に映る5人の少女達を一瞥し手元にあったカップに口を付けた。
「え? 私達がフェイトやなのは達と一緒に?」
「いいの?」
ある日の夜、ヴィヴィオは高町家にお呼ばれになっていた。その時にブレイブデュエルの新しいゲームシステムのお披露目にゲスト参加して欲しいと頼まれた。なのはも参加するらしい。
「いいよ~そろそろ練習の成果見てみたかったし、フェイトと一緒に登場したらみんなビックリするよね♪」
楽しそうに言うアリシアとは違い、まだ上手くブレイブデュエルで遊べないヴィヴィオは迷う。
「ん~っ! 気持ちいいね~♪」
晴れ渡った青空と海から来る潮風を感じながらヴィヴィオは伸びをした。
こっちに来てから今日で5日。まだ戻る方法のきっかけすら掴めない。心の焦りが出ていたのかアリシアが「遊びに行こう」と誘ってくれてはやても
「今日はゆっくりしてたらいいよ。天気もいいし海でも行ってきたら?」
と本の整理途中に半ば無理矢理追い出されてしまった。