ブレイブデュエルの世界にやってきた次の日、早朝からヴィヴィオは少し離れた小高い丘にある公園に来ていた。色んな世界の海鳴を見て来てきたけれどここは変わらない。それがヴィヴィオの心を落ち着かせてくれる。
瞼を閉じて心を静め集中する。
風が木々の葉を鳴らす音が次第に消えていく。そして…僅かだけれど胸の奥が暖かくなる。
弱い反応だがリンカーコアの鼓動。魔力の素みたいな物がここには無いからこんな風に魔法の基礎練習しか出来ない。でも…
「大丈夫…しっかり感じるから…」
胸の奥で微かな鼓動を感じて深呼吸をした。
「もういいの?」
「うんお待たせフェイトママ」
待っていたフェイトにヴィヴィオは目を開いて答える。
「もっと広いと思ってたんだけどな~」
夕方、なのはは高町家の縁側に腰を下ろした。
花壇や道場、廊下もそうだし家の中ももっと広いと思っていたのに…
「なのはさんが大きくなったからじゃないんですか。」
アリシアがひょこっと庭から顔を出した。
「ふぅ…」
ヴィヴィオはブレイブデュエルから出てきて息をつく。
突然出てきてみんなを驚かせるつもりはなかった。でもあのままフェイトが負けてしまうのは見ていられなかった。
(これで…いいんだよね…)
ポッドから出ると
『ワァアアアアアアッ!!』
周りから歓声と拍手に包まれた。
「!?」
思わずたじろく。隣のポッドから出てきたアリシアも驚いている。
その後、さっきのスタッフが駆け寄って来てエイミィからT&Hに来て欲しいと伝言を受けた。
舞い降りたヴィヴィオとアリシアの姿にフェイトは呆然となる。
「ウソ…」
司会をしていたアリシアもその様子に言葉が止まってしまった。
そしてグランツ研究所でも…
(ご飯を食べた後アリシアを迎えに行って)
週末の夜、ヴィヴィオはなのはとフェイトとご飯を食べながらこれからの予定を思い出していた。
朝やお昼の間に行ってしまってもし時間が過ぎてしまうと2人に知られてしまう。でも夜なら翌朝起きる迄時間があると考えた。
「ごちそうさまでした、お風呂入ってきま~す。」
「あっ、ヴィヴィオちょっと待って。」
食器をシンクへ持っていってそのまま部屋に戻ろうとした時なのはから呼び止められた。
「なぁに? なのはママ」
「ママ達に何かお話はないのかな?」
えっ?
思いっきり動揺する。
Stヒルデの学園祭まで残り2週間となったある日、
「はぁ…」
教室で高町ヴィヴィオは外を眺めながらため息をついていた。
夏の強い日差しも落ち着いて髪を梳く風も心地よい季節に変わってきている。普段なら目を閉じてその雰囲気をあじわうのだけれど、今の彼女は…
「ヴィヴィオ~休んでないで手伝ってよーっ!。」
「あっごめん。」
リオに怒られて彼女達の所に小走りで向かった。
世界は必然が積み重なってできている。
いくら偶然と思えようと何か理由があるからそこにある。
数多の必然が連なって世界は成り立っている。
例え幾つもの事象が目の前にあっても、選んだ事象だけが必然になる。
事象が些細な事であっても重大な事であっても変わらない。
それが理であり真意。
連なってしまった必然を消す事は出来ない…
でも…もし…選び直す事ができるなら、あなたはどうしますか?
「うわ~…すごい~!!」
目の前に広がる断崖絶壁の大地
ヴィヴィオが八神家を訪れてから2週間後の休日、ヴィヴィオはシグナム達とミッドチルダから遠く離れた世界にやってきていた。
「こんな世界があるんだね~」
隣でアリシアも驚きの声をあげていた。
夕食を食べてお風呂に入った後
【ガチャ】
ヴィヴィオは自分の部屋に戻ると明かりも点けずそのままベッドに座り目を瞑った。
どうして私は紫電一閃を選らんだのかな…
「シャマル先生、私…シグナムさんを怒らせちゃったんでしょうか…」
ヴィヴィオは家までの間、隣で車を運転するシャマルに聞く。
「はやてちゃんが言ってたけれど私もシグナムは怒ってないと思うわ。それよりもヴィヴィオに感謝してると思う。」
「私に感謝?」
「ええ、この前の闇の書事件の撮影で…ううん、本当の闇の書事件でもヴィヴィオやなのはちゃん、フェイトちゃんに任せちゃったでしょう。私達は主を守る守護騎士なのにはやてちゃんを助けられなかった。それにね、私達はプログラムだから誰かに私達の魔法を伝えていきたいって思ってる。」
ヴィヴィオが空戦魔導師研修を受け始めて少し経った頃、ヴィヴィオはコラードと一緒にミッドチルダ地上本部近くにあるトレーニング場に来ていた。
研修の内容はヴィヴィオの年齢や試験結果を踏まえてかまだそれ程難しい内容ではなく、ヴィヴィオもなのはやフェイトに聞かずにこなしていた。
でも魔導実技の研修はいつも練習している近くの公園で行う訳にもいかず、かといってヴィヴィオ1人の為に大きな場所を借りる訳にもいかなくて色々考えた結果今のトレーニング場の1角を時々借りてすることになった。
今日はその1回目でコラードに使える魔法を見せていた
アインハルトがイクスと会っていた頃、ヴィヴィオとアリシアというと…
帰り道で警防署から出てきたスバルとティアナと出会い、カフェで少し早い昼食を食べていた。
(私とティアナさんは見慣れてるけど…やっぱりびっくりするよね。)
軽めの物を頼んだ私、アリシア、ティアナさんだったけど、スバルさんは少し…かなり多い料理を注文して私達と会話をしながら吸い込むように料理を口の中に入れていた。アリシアは途中から手を止めて驚いている。
「古きベルカのどの王よりもこの身が強くあることを…か……」
ヴィヴィオはスバルの家のベランダで外を眺めながら考えていた。
「アインハルトさんもそうだったのかな…」
なのはにはスバルの家に泊まるとメッセージで伝え、アインハルトの話を聞いた後事情も話した。アリシアと一緒にフェイトも話を聞いていたし大丈夫だろう。
…それよりも…
「あ~~~~やっぱり私のせいだよね?」
夕暮れの中2人の女性が走っていた。
「スバル、この辺なのよね?」
ティアナ・ランスターは近くに居るスバル・ナカジマに声をかける。
まさか話したその日にヴィヴィオに対して襲撃があるなんて…
「うんっ、池の畔だって…居たっ!」
凝視しながら見回していると湖畔のベンチ付近に人影が見えた。
「ヴィヴィオ~っ!!」
「スバルさん、ティアナさん」
学園祭のクラス委員の話をしてから少し時間が経った放課後
「リオ、コロナまた明日ね~」
「またね~」
「ごきげんよ~ヴィヴィオ」
「バイバイ~」
今日は無限書庫の依頼も無く研修もまだ始まってないからコロナやリオと遊びに行くつもりだった。
でもアリシアが
「ごめん、今日フェイトとヴィヴィオの家で会う予定なんだ。本当にゴメンね」
「う…うん」
空戦研修をコラードが担当することになった翌日、Stヒルデ学院でヴィヴィオはアリシアに彼女の事を話した。
「フェイトとなのはさんの先生か~、何だか凄そうな人だね。」
「私には優しそうに見えたんだけどママ達は凄く真剣に聞いてた。」
「ナニナニ~? 何の話?」
そこへ登校してきたリオとコロナが話に混ざってくる。
「昨日の話?」
「うん、決まったからみんなに話そうと思って。」
そう言って再び彼女の事を話した。
「なのはママ、フェイトママただいま~♪」
ヴィヴィオは地上本部へ寄った後、そのまま家に帰ってきた。
先になのはとフェイトにメールしたら2人とも私の研修が気になって早めに帰ってきていた。
「おかえり~ヴィヴィオ♪ !?」
「先生どんな人だった…えっ?」
出迎えたなのはとフェイトが私の横に立っている人を見て固まった。
「元気そうね、なのは、フェイト」
「「コラード先生!?」」
まだ夏の強い日差しが残っていたある日、Stヒルデで授業を受けていたヴィヴィオに1通のメールが届いた。
届いたのが授業中だった為に誰も気付かず、メールが来ているのにヴィヴィオが気付いたのはお昼のお弁当を食べようとした時だった。
「メール? 管理局から…『空戦魔導師研修の案内』?」
「研修?」
一緒に食べようとしていたアリシアやリオ、コロナも気になって聞き返す。
「うん、研修って書いてる。」
先にざっと見て特に見せられない内容は無いと思い机に広げて3人にも見えるようにした。
「うん、じゃあまたね♪ ルネッサさん、ありがとうございました。」
ヴィヴィオはそう言って虹色の光球の中に消えていった。
ルネッサはイクス達とそれを見送った。
光が消えた後ルネッサの前に1人の女性が来る。ヴィヴィオに似ているがどこかプレシアの様な雰囲気も感じる。
「ルネッサ・マグナスさん。挨拶が遅くなりました。チェント・テスタロッサです。母さん…プレシアの代理で来ました。」
紹介されて『あぁ』と納得する。
彼女はプレシアの所で見た小さなヴィヴィオっぽい少女の成長後らしい。
ヴィヴィオ達が時空転移して戻って来たのは、出発して5分ほど経った後だった。
まだアリシアもチェントも起きていない。
「戻ってこられた…あっ!」
ヴィヴィオが時間を見てホッと息をついた瞬間、体から力が抜けた。
「っと、危ない。」
テーブルにぶつかる寸前にルネッサがヴィヴィオの手を引き抱き寄せた。