「ヴィヴィオっ!!」
「なのはママっ」
小1時間後ヴィヴィオがウェンディ達と話しているとなのはが駆け込んで来た。
肩で息をしている。余程急いできたらしい。
ヴィヴィオの声を聞いて再びこっちに走ってきたけれど、あと2、3歩のところで立ち止まってしまう。
「ヴィヴィオ…」
見せたくない格好…ヴィヴィオの姿を見てなのはも痛々しそうに顔をしかめた。
「ここは…あれっ?」
クラナガンにあるショッピングモールで高町なのはは気がついた。
「私…どうしてここにいるの」
何かを買いに来たと思うのだけれど、何を何処に買いに来たのか全然思い出せない。
ど忘れにも程がある。
「レイジングハート、私ここに何しに来たか覚えてる?」
【Sorry I don't understand it, too.There's an omission in my memory partly】
ずっと一緒のレイジングハートも判らず、記録が混乱している。
「レイジングハートも?」
2人…1人とデバイスは顔を見合わせて首を傾げていた。
(本当にフェイトちゃんそっくり。)
子供の頃のフェイトにそっくりな女の子。
バルディッシュによく似たデバイスを持っていたし、何かのフィールド系魔法を使っていたみたいだった。
「奥にまだ人がいるんです。先に助けてあげて」
と言った後、呼び止める間もなく彼女はそのまま走っていってしまった。
追いかけようとも考えたけれど、彼女の言う通りまだ救助を待っている人がいる。それに彼女の向かった方にはレスキューも入ってきている。
そんな時、指揮所で情報統括・指揮をしているはやてから通信が届く。
「こんなに火の周りが速いなんて…」
さっきまでの雑踏が嘘のよう。
声の代わりに炎の燃えさかる音が四方から聞こえ、黒煙も相まって本当にここが空港だったのかと思うほど周りが見えない。
聖王の鎧のおかげでヴィヴィオは炎に包まれた空港の中でも何とか歩き回れる。
鎧越しに届く熱はヒリヒリと肌を焦がす様で今すぐにでも逃げ出したい。でもスカリエッティとチェントがこの時間に来たのなら必ずここに来るという確信があった。
歩き回りながらチェントを探す。
その時炎で壊れていく物音の中に声が聞こえる。
「ここは…空港・・・だよね?」
ヴィヴィオ達が来たのは人が行き交っているエリアだった。
大きな荷物を持って行き交う人々や職員が誘導していたりと雑踏めいている。
他管理世界行きの転送ゲートへの案内表示や近隣世界との定期運行船、奥には管理局艦船の姿も見える。
「空港…でもこんな空港あったかな?」
初めて見る空港の様子に少し戸惑う。遠くに見える山や海岸線はどこかでみた覚えがあるけれど、それがどこで見たのか思い出せない。
「ヴィヴィオっ!」
ぼう然としていたヴィヴィオは呼ぶ声が聞こえ振り向く。
そこにいたのは
「アリシアっ!? どうして」
「あっちで服見てたらいきなりこんな風に変わっちゃうし、みんな居なくなっちゃうし…何が起きているの?」
(他にも残ってた…私以外にも…)
「アリシア…アリシアぁぁあああっ!!ワァァァアアアアッ」
1人になった寂しさ、それ以上にこんな状態にした辛さに耐えきれずアリシアに抱きついて泣きじゃくった。
アリシアが高町邸に身を寄せて数日が経った。
ヴィヴィオも新たな家族に慣れてきた頃、高町家ではちょっとした問題が起きていた。
「アリシアっ!! 起きて、もう朝だよっ!!」
「…あと5分…」
普段は持ち前の明るさや誰にでも優しくて同学年や低学年に人気がある彼女
でも…
「朝ご飯食べられなくなっちゃうよ」
「…じゃあ…あと1時間…」
「1時間って、遅刻しちゃう!! アリシアってば!」
「―――」
陽が沈み辺りが夕闇に染まった公園に1人の少女が立っている。
彼女は瞼を閉じ、祈るような姿勢をとったままピクリとも動かない。それだけであれば誰も気に留めなかったであろう。
だが通りかかった人は足を止めて彼女を見つめていた。
彼女の胸元で輝く虹色の光球はそれ程美しかったのである。
「そうそう、集中してイメージをデバイスに流し込む感じで…」
少女の近くに立っている女性が言う。
「ハイッ!」
「気を散らさないで。集中しながら違う事を考えるの。一流の魔導師はみんな同時に幾つもの事を考えてるんだよ」
「はい…」
彼女の声で再び瞼を閉じ集中する少女。
「うん、じゃあそれを的に向かって行く様にイメージして」
「―――」
やがて虹色の光球は女性が言った通りの軌跡を描き、数メートル先に置いてあった空き缶に直撃した。
「上手上手♪ すごいじゃないヴィヴィオ!」
「…ふぅっ…ありがと、なのはママ♪」
そう私こと高町ヴィヴィオは魔法の練習を母、高町なのはに見て貰っていた。
「ヴィヴィオ、いっぱい勉強して魔法も覚えるよ。」
「それで、ヴィヴィオがいつか…」
「そっか、楽しみだな♪」
それはまだ私が『高町ヴィヴィオ』になったばかりの頃に交わした約束。
世界は必然が折り混ざって成り立っている。
それがどんなに偶然と思われようと、必ず何か理由があるからそこにある。
もしそんな必然を変える力があったなら…
もしそんな力を手にしたとき…
あなたならどうしますか?
『これでいいのか?』
『はい♪ お願いします。』
『こんな風に話すのは何故か変な気分なんだが、2人とも元気にしているか…いや、きっと元気にしているのだろう。』
ある日の朝、リビングを見ると包みが置いてあった。
最初に起きて見つけた女性はその包みを手に取る。
家族宛になっていたのを不思議に思いつつ中を開けると1枚のディスクが入っていた。
端末にセットする。
「ウソ…ねぇちょっと、起きてっ!」
現れた映像に女性は驚き慌てて家族を呼びに行った。
「ヴァイスさんっ!」
「よっ!」
シャマルの表情に胸騒ぎを覚えティアナは医務室に飛び込む
しかしそこにいたのは…ベッドに腰掛け元気そうに手を挙げ答えるヴァイスの姿だった。
「……」
目の前で起きたことが信じられなかった。
ほんの一瞬の間に何が起きたのか? 私が気付いた時には八神部隊長が目の前にいた。頬が熱い…
「八神部隊長…」
「ヴァイス君は医務室に運んで貰ったよ。ここで何があったん?」
何があったって、訓練中に何があったかなんて…
完全に動転していたティアナにははやての問いに答えられる物を見つけられなかった。
「あの~すみません、兄の…ヴァイス・グランセニックの病室はどこでしょうか?」
数日前、ラグナ・グランセニックは久しぶりに兄と出会えたのに避難命令のせいで話も出来なかった。
でもつい先日機動6課の八神はやてという兄の上司から連絡がありここに入院していると教えて貰いやってきた。
病室を教えて貰って向かい、部屋のドアをノックするものの応答が無い。
失礼します~とそーっと入ってみるとベッドはもぬけの空。
(検査中…なのかな?)
ふとそう思い部屋の前で待とうと部屋から出た時、ラグナに気付いた職員が近寄ってくる。
「グランセニックさんのご家族さん?」
「はい。妹です…兄になにか…」
「グランセニックさん、どこに行ったか知らない?」
「……はい?」
JS事件が終わったとは言え、機動6課が元の姿を取り戻すにはまだ暫くかかる。
機動6課の責任者、八神はやてにはしなければいけないことが山ほどあった。
レリック事件と戦闘機人についての資料と報告書のまとめ、シグナムより預かった情報から地上本部と本局との橋渡しなど。
その中でも優先したのが負傷した六課メンバーのフォローと家族への連絡だった。はやてを知る者が聞けば彼女らしいと答えるだろう。
そんな慌ただしい中、少し前に訓練施設の使用を聞いてきたティアナの事がふと気にかかる。
「その練習、手伝おうか?」
「!?」
突然背後からかけられた声にティアナは驚いて飛び上がりそうになった。慌てて振り返るとそこには
「ヴァイス陸曹! どうして、病院に行ったはずじゃ?」
その声に応えてヴァイス・グランセニックは瓦礫に腰掛けつつ『ヨッ』っと手を挙げる。
気付かないうちにあの人の影を追っていた。
最初少し気になっただけ
本当にただそれだけだった。
なのに癒えぬ傷を抱いたまま、
楽しかった時が次の瞬間悪夢へと変わる。
泣き叫ぶことも助けを請うことも出来なかった。
それでも私の瞳は零れる涙を止める事はできなかった。
AgainStoryの掲載から随分時間が空いてしまいました。
8月に終了したので実質2ヶ月近く…
そんな状況でしたが、幾つか目処がつきましたので報告です。
■その1:AgainStoryの文庫本化
先日本文が無事脱稿しました。
本編もかなりの部分に手を入れて、ホームページには掲載しなかった話も入れさせて頂きました。
年末のコミックマーケットを目標にしており、只今相方の静奈氏も気合いを入れて頑張っております。
聞くところでは2冊作る気合いでいくそうで、頼もしい限りです。
その前のイベントで何か作るそうです。
「こんにちは~♪」
「ごきげんよう、はやてさん。」
「あ、はやてちゃん。いらっしゃい」
ヴィヴィオ達が過去から戻ってきて数日が経った頃、高町家にはやてが再び遊びにやってきた。
「…捕まえたっ」
「長距離転送」
「目標、軌道上」
「「「転送っ!!」」」
なのは達の砲撃魔法によってコアを露出された防御プログラムがアースラの前に転送された。
コアの飛んでいく先をヴィヴィオは見守る。この後、アルカンシェルの直撃を受けるのだ。
『そこの方。管理局の方。そこにいる子の保護者八神はやてです』
「はやてちゃん!?」
「はやて!」
魔導書から突然聞こえた念話にヴィヴィオは驚いた。
『なのはちゃん、ヴィヴィオちゃん!?』
「そうだよ。色々あって闇の書さんと戦ってるの」
(はやてが目覚めてる…もしかして…)