(ここは? 私、さっきまで闇の書と…)
ヴィヴィオが気がついた時、そこは真っ暗な空間だった。
しかし直ぐに辺りの風景が変わった。
「フェイトっ!」
「アルフ、来ちゃダメっ!」
目の前にもう1人の私とフェイトが現れる。
(私? 違う、ここは海鳴の公園…)
目の前でフェイトが消えた…
私を助ける為に…庇って消えた…
私は間違ったの…?
フェイトママは消えちゃうの?
消した闇の書に対する怒りが心の奥底から暗い澱みを生み出した。
「うわぁぁぁぁぁあああっ!!」
ヴィヴィオから魔力の溢れ暴れ始めた。
「…なに…アレ…」
ヴィヴィオは走っていては間に合わないと思い、RHdを使い市街地まで飛んできた。
その途中、ビルの屋上で異常な魔力反応に気付いて近くのビルに隠れ様子を窺っていた。
「わぁぁぁぁあああああっ!」
叫ぶはやての声と共に魔力の反応が増大してゆく。彼女の変わりゆく姿を見て呆然とする。
「アレが…ロスト…ロギア、なの?」
「遅くなっちゃった、急いで戻らないとっ!」
図書館で本に熱中している間になのはと約束していた時間が大幅に過ぎているのに気付いてヴィヴィオは家へと走っていた。
先日、すずかとアリサと一緒に案内して貰っている間、ヴィヴィオもはやてに何かプレゼントしたいと思って小さなウサギのぬいぐるみを買ってすずかに預けた。
今頃すずかとアリサはなのはとフェイトと一緒にはやての病室へ行った頃。
「リイン、2人にお茶を入れてあげて欲しいんだけど」
「はいです。アルフさんもシグナムも座って待ってて下さい」
「あ、うん…」
「ああ…」
(さて、どこから話したらいいだろう?)
シグナムとアルフを前にしてユーノはそう考えつつも、2人がどうしてここに来た理由から話し始めた。
なのは達が行った世界は予想がつく。
きっと闇の書事件のまっただ中、ザフィーラが消えない様に助けようとしているのだろう。
「今日はフェイトちゃん学校お休みしたの、家の都合なんだって」
はやてに紹介されて数日後、ヴィヴィオは図書館で月村すずかと会っていた。
すずかに貰った服を着て彼女と一緒にいると双子の姉妹に見えるらしく、彼女が普段から図書館に良く来ていた事も相まってか、姉妹揃って読書好きなのだろうと思われどんな本を読んでいても特に気にされずに済んだ。
「八神はやてちゃん、私のお友達。こっちがヴィヴィオちゃん…親戚の子でこっちに遊びに来てるの」
「八神はやてです。よろしくな♪」
「ヴィヴィオです」
(どうして私、紹介されてるの??)
訳の判らないままヴィヴィオははやてから差し出された手を取って握手した。
「なのはっ、ヴィヴィオっ」
「ごきげんよう。ユーノ・スクライアさん」
ユーノ・スクライアが無限書庫から慌ててなのはの家にやって来て家の中に飛び込んだ時、ソファーで1人お茶を飲んでいる少女がいた。
「君は…」
さっきなのは達と話していた時後ろに居た気がするが、改めて見ると子供の頃のフェイトにソックリだ。
「アリシア・テスタロッサです。ユーノさんフェイトとはやてさんの事は気にならないんですか? 入るなり『なのはっヴィヴィオ』って」
「ここはこんなところかしら。あとは…」
海鳴市にあるマンションの一室でリンディ・ハラオウンは1人荷物の整理に追われていた。
数日前、フェイトの裁判が終わり話がしたいと言うことで管理外世界に住む高町なのはに連絡を入れようとしたところ何らかの妨害で通じなかった。慌ててアースラで向かったものの、襲撃を受けていたなのはだけでなく助けに向かったフェイトまで怪我を負わせてしまった。
更に悪いことに襲撃したを全員取り逃がす不始末。
加えてアースラを整備中に無理矢理出した影響で整備期間が暫く延びるだろうとレティより聞いた。
(せめてあと1人、もしヴィヴィオさんが居てくれたら…)
「ったたた…」
「ワッ」
「キャッ」
「はい、ヴィヴィオ」
「あ、ありがとフェイトママ」
いきなり飛ばされたのは、どこかの路地裏だった。
ヴィヴィオは転移の影響で転びそうになったところをフェイトに支えて貰った。
しかし、なのはとフェイトまで手が回らず、ヴィヴィオ達が気付いた時には2人は折り重なるように倒れていた。
「嘘、だって私…一緒だった」
呟いたヴィヴィオ言葉に周りの者は何も言えなかった。
話は2時間程遡る。
「ヴィヴィオ~アリシアちゃんがきたよ~」
ミッドチルダ郊外にある邸宅で女性の声が響き渡った。
声の主は高町なのは。この家の主で時空管理局では厳しい指導で有名な彼女、だけど…
「は~い♪」
娘のヴィヴィオにとっては優しい母親だった。
ずっと、ずっと一緒だったのに
どうしていないの?
それはきっとそれは私のせい…
だから取り戻す、本当の現在を
やっと平穏になった日々をなのはや新しく出来た友達アリシアと過ごす高町ヴィヴィオ。
しかし、彼女がきっかけになった事件はまだ終わっていなかった。
リリカルなのはAgainStoryはじまります
ご無沙汰です。
1ヶ月間、何も更新せずに本当にすみません。
Silent☆Seasonのトップページにありますように、
AnotherSideが新刊として
都産祭の中で行われます
なのはトライアングラー
で販売開始です。
私も参加したいと思いスケジュールを開けて貰っています。
オンリーイベント初体験です。(静奈が言うには少し違うそうですが、この際気にしません)
学院に戻ってから数日が経った頃、ヴィヴィオは再び無限書庫を訪れていた。
目的は2つ、ヴィヴィオの知る記録と今のこの世界の記録がどれ位違っているのかを調べるのと、
「ヴィヴィオ~♪」
「ヴィヴィオ、久しぶり」
「なのはママ!、フェイトママ!」
2人の母親、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの2人をある場所へ連れて行く事だった。
「ごきげんよう。昨日はじゃなかった。お久しぶりです」
「こんにちは・・じゃなかった。ごきげんよう、お姉ちゃん。」
クラナガンから聖王教会へ行く為列車に乗ろうとした時、私はあの親子と再会した。女の子はちょっとだけ大きくなっていて、私が会ったのはこの位だったかなと思い出す。母親もやつれていた頬が元に戻り、幸せそうだった。
この魔法を使えば喪失感を感じてしまう時がある。でも、こういう時は嬉しい。挨拶した後、立ち話をしていると列車が出そうになり、慌てて乗り込む。
「ありがとうございました。あの時は・・・お礼も言えなくて・・・」
元々優しい人だったんだろう。今が彼女の本当の姿なんだ。
「いえ、私も・・・私じゃなくて・・・えっと、とにかく私もお世話になるかも知れないので・・」
彼女の家に何度も遊びに行ったのだから彼女にも会っている。あの時にはもう知ってたんだ。
あれから数年が過ぎ、私は管理局へと入局を決めた。
母さんは「あなたが考えて決めたなら、頑張りなさい」と背中を押してくれた。
でも・・・でも・・・私は管理局に入る前にしなければならない事がある。
「行くんだね・・・もう一度」
「うん、すぐに戻るから・・・もし、私の身体に何かあっても心配しないで。絶対に戻ってくるから」
この魔法と出会った時、それを封印せず私に丁寧に使い方と危険性を調べ教えてくれた家族。
彼に打ち明け、用意してもらった物を持って私はもう一度旅立った。
(これで・・・良かったの? 本当に?)
アースラの中でヴィヴィオは1人考えていた。
ジュエルシードはなのは・フェイト・クロノ、そしてヴィヴィオの同時砲撃魔法で何とか封印出来た。
だがそれも彼女、プレシア・テスタロッサにとっては予想範囲内だったのだろう。
撃ち抜いた際に出来た穴を通ってなのは達が降りてくる。
その中にはフェイトとアルフの姿もあった。
「ちょっと待ったっ!」
「「!!」」
アルフの道案内で居住区と思われる場所にやって来たヴィヴィオ達をアルフが突然静止させた。
「アルフ?」
「結界だ。あれを壊さなきゃこの先進めないよ。」
見れば結界魔法というよりシールドに近い魔法が通路全面に張られている。
「まだですか~? レティ提督」
「まだよ。 ねぇ少し落ち着いたら? そうそう美味しいお茶があるの。あのね・・」
「緑茶にミルクと砂糖をいっぱい入れたのは遠慮します。全力で!」
「あらそう・・・美味しいのに・・・」
ヴィヴィオは無限書庫で探していた本を見つけ、急いでアースラに戻ろうとレティ提督の部屋に来ていた。
本の持ち出しとゲートの使用許可を貰う為だ。
しかし、無限書庫の管理蔵書も次元航行部隊所属艦船への転送も管轄が違うらしく、申請はしたもののすぐに許可が下りないらしい。
その間ヴィヴィオはレティの部屋で待つ羽目になった。
『ねぇはやて、来週なんだけど・・・こっちに来ない?』
「どうしたんカリム?」
『ん~ん、ただ久しぶりにお茶したいな~って』
「ええよ、それじゃ来週な」
『美味しいお茶とクッキーを用意して待ってるわね』
一週間前、突然カリムから連絡を受けた八神はやては何か事件かと一瞬だけ緊張した。しかし、はやての予想は完全に外れていて通信を切った後、先程とはうって変わって頬が緩んでいた。
(全く・・聖王協会と管理局の橋渡しとかで忙しいやろうに・・カリムはもうっ)