「っと!」
光の中から現れたヴィヴィオはトンと着地して辺りを見回す。
「ここはどこだろ?」
少し広い公園らしいけれど…
「キャアアアアアッ!」
「なのは…ヴィヴィオ…」
アリシアは上を仰ぎながら呟く。
ヴィヴィオとなのはの戦い…魔力のない世界ただ遊ぶ為の体感ゲームだった筈なのに…
「ヴィヴィオ…」
聖王ヴィヴィオの方を見る。彼女もこんな事を望んだ訳じゃ無いのに、私のせいで…。
「みんな…ごめん。」
私が、止めなくちゃいけない…。
項垂れたい気持ちを振り切りただその時を待つ。
「キャアアッ!!」
「アリシアちゃんっ!」
「何にせよこのままではブレイブデュエルに影響が出る。」
「話するにしても1度落ち着かせんと…」
ディアーチェとはやてが上空を見る。運良くかこっちに流れ弾は届いていない。
「2人ともスキルカードを使っていませんが、様子から見て結晶からの力を用いているのは変わりません。私達のスキルカードも少しは通用する筈です。ですが…」
あの速度で戦われたら目で追えないシュテル達には打つ手がない。
「何が起きているのです?」
ドームに入ったシュテルは誰ともなく聞く。
グランツから全員ここに来るように言われ、リインとアギトと一緒にここへ来る途中でアミタ達の激戦を外からルシフェリオンブレイカーを放って頭を冷やさせて、遅れながらも辿り着いた。
遠くで誰か2人が戦っている様だけれど、誰かはわからない。
凝視すると西欧風の鎧姿のヴィヴィオと先のジャケット姿に似た大きくなったヴィヴィオが戦っている。何故彼女が2人居るのか?
状況がいまいち掴めない。
「ここが…」
グランツによって別の場所に移動したヴィヴィオの目の前に広がっていたのは大きなドーム状の部屋だった。
「ここがブレイブデュエルの中枢だ」
辺りに魔力が満ちている。意識しなくてもリンカーコアの鼓動がわかる。
無機質に広がる部屋、その中心に大きなカプセルがありそこから木の根の様にケーブルが伸びている。そしてそのカプセルの中には大型の赤い結晶。大きさは違うけれど見覚えのある結晶体…
「レリック…」
「ここを右、次は左斜め上っ!」
水中、森林地帯、宇宙空間、古代遺跡の中、平原、次々と色んな世界に飛び込んではインパクトキヤノンでこじ開け突き進む。
その速度に飛行速度の遅いアリサやすずかは追いかけるのが精一杯だった。
「ちょっとは私達の事考えなさいよっ!!」
「ごめん、急がないと…アリシアが危ないの。次は左下、でそのまま急降下っ」
その凶報が届いたのはヴィヴィオがはやてやシグナム達と八神堂を閉め家に帰ろうとしている時だった。
【PiPiPi…】
店から出てきたヴィヴィオに続いてはやてが出てきた時、携帯が鳴る。
「もしもし~八神です。え? はい、今一緒に居ますよ。」
彼女がヴィヴィオの方を見ている。相手はグランツかシュテル・ユーリだろうか?
「ヴィヴィオちゃん、T&Hのリンディさんから代わってって」
「私?」
何だろう? 先に使っていたブレイブホルダーは返したし、ブレイブデュエルを手伝っていた時も何もなかった。
「これは誰にも真似出来んね」
古書店側のカウンター横に置かれたモニタでグランツ達の様子を見ながらはやては苦笑する。
ブレイブデュエルではヴィヴィオがテストモードで何度も魔法を使っていた。普通に使うだけであれば特に気にもならないのだけれど、その使い方が凄かった。
シュテルから借りたスキルカードは遠近様々だった筈なのに、彼女にかかると炎が彼女と一緒にダンスを楽しんでいる様に見えてしまう。同じカードをはやてが持っていてもこんな風に使う事は出来ないだろう。ヴィヴィオから前に聞いた魔法世界から来たという言葉を思い出す。
「本当に魔法使いなんやね~」
誰ともなく呟いた。
ヴィヴィオがグランツに頼まれテストをしていた頃、元世界ミッドチルダのある住宅街を彷徨っている女性が居た。
「この辺りだった筈ですが…」
シスター姿の彼女は既に2時間近く辺りを彷徨っている。彼女が私服姿であれば誰かが声をかけていたか不審者と間違われ管理局に連絡されて警ら員が来ていただろう。だがシスター姿だったが為に宗教活動の一環だと思われ誰も声をかけず、逆にかけられるのを避ける様に離れられていた。
「へぇ~そんな事あったんだ。偶然って凄いね。」
その夜、ヴィヴィオははやての電話を借りてなのはの携帯に電話していた。相手は勿論アリシアだ。
アリシアや士郎・恭也達の剣術がブレイブデュエルの中で使えたらデュエリスト同士の対戦でもモンスターハントでも通じるのは知っているけれど、スバル達の魔法やISがブレイブデュエルの中で実現したら楽しいと思う。
『小さいディエチが居るんだったら、スバルさんやティアナさんも居るんじゃない? ブレイブデュエルでマッハキャリバーセットアップしちゃってたら面白いよね。』
それは確かに面白そうだ。でも…
「いらっしゃいませ~、あっ! こんにちは」
お昼の賑わいも落ち着き、アリシアが桃子達と少し遅めのご飯を食べているとドアベルが鳴った。
お客だと思って立ち上がる。でもそこに居たのは
「こんにちは」
「おっじゃましま~す♪」
ペコリと会釈をしてシュテルと彼女の後にレヴィが元気良く入ってくる。
「こんにちは、まだ早かったかな?」
グランツ研究所でデュエルをした翌日、翌々日とヴィヴィオとアリシアの姿は八神堂にあった。
思った通りヴィヴィオとアリシアがここに居るのを知って八神堂のデュエルスペースには多くの子供達が集まってきた。
はやては勿論、八神家とチヴィットが全員フォローに回ったがそれ位で収まる筈もなく、
「はやてちゃん、お手伝いに来たよ~♪」
「私達もお手伝いします。」
「すずか!、ユーリ!」
「ありがとな~♪」
すずかとユーリが彼女達のチヴィットを連れて手伝いに来てくれた。2人は昨日のデュエルの後、こうなるのは予想していたらしい。
八神堂でははやてとシグナムが、T&Hではなのは達T&Hエレメンツの全員が、グランツ研究所ではディアーチェ達DMSの3人とアミタとキリエ、グランツがデュエルの結末を見守っている。
この攻防で勝負が決する…
緊迫した雰囲気は3ショップ全体に伝わり遊びに来ていた子供達の視線も大モニタに釘付けになっていた。その中には目を輝かせる青髪の少女と、家族へお弁当を届けに来た少女の姿もあった。
『リライズアーップ!!』
ヴィヴィオは虹色の光を発しながらも襲い来る蒼い光の奔流に呑み込まれる。
幾らカウンターが上手くても、いくら複数の魔法を使えても防御力以上の攻撃を受けてしまえばライフポイントは減る。ヴィヴィオのライフポイントが一気に減り始めた。
『……ぉぉぉぉ』
「次で最後?」
ディアーチェの魔法は気づいてなかったら本当に危なかった。
彼女が去った後もエリアは変わらない。このまま次のデュエルに進むのかと周りをキョロキョロと見回す。
「最後の相手は私です。」
そう言って現れたのは、シュテルだった。色違いのジャケットを着ている。彼女がいつも『白の~』と言っていた理由に納得する。
「私はあなたのデッキを知っていますがあなたは私のデッキを知らない筈です。これでは『ズル』ですので先にデッキを見せたいと思いますがどうですか?」
『おっと!次もニューフェイスです。モンスターハントで華麗な魔法を見せてくれた2人目の白のセイクリッド、ヴィヴィオちゃん。先日T&Hから八神堂に移籍してくれたんやけど、ブレイブデュエルより本の方が好きみたいで困ってます。って古書店の主が言っても仕方ないですね。』
はやての紹介に赤面する。フェイトが照れる気持ちが何となくわかった。
『相手をするデュエリストは注意してくださいよ~、なんせDMSメンバーに勝つ実力の持ち主です♪』
彼女の耳にはプロトタイプシミュレーターでのデュエルが届いているらしい。流石というか何というか…
「はやてさんらしい♪」
『いくよ、ブレイブデュエル、スタートっ。リライズアップ!!』
「アリシア、フォローありがとう」
デュエルが終わり、ヴィヴィオはプロトタイプシミュレーターから出てきたアリシアに声をかけた。
「ううん、私こそありがとね。」
パンっと音を立ててハイタッチをする。
アミタ&キリエとのデュエルは1:2で負けてしまった。それでもユーリ・レヴィ・キリエ・アミタとのデュエルでブレイブデュエルがどんな物なのか理解出来た。
ヴィヴィオ達が異世界でアクシデントに巻き込まれていた頃、所も世界も変わって元世界であるミッドチルダのある住宅地では
「はぁ~…」
ため息をつきながら歩くはやての姿があった。
イクスヴェリアから告げられた話を1人では飲み込めず、かといって事が重大すぎる為に家族に相談も出来ず悶々とした日々を過ごしていた。
「美味しかったね~ディアーチェのご飯」
「うん、あり合わせって言ってたけど本当に美味しかった。」
はやてが料理上手なのは知っていたけれど、ディアーチェも勝るとも劣らない腕を持っているのを知ってヴィヴィオは驚きながらも舌鼓をうった。
「食事も済みましたし早速デュエルしましょうか」
「僕1ば~ん!!」
「私2番ってフロントアタッカーが2人じゃバランス悪いですね、3番で♪」
「じゃあ私が2番、王様とシュテルは?」
「ん?」
昼も少し過ぎた頃、シグナムがバスの中から八神堂の近くを通った。玄関に大きな体を丸めて寝ているザフィーラとカウンター奥の本棚に古書を並べるはやての姿が見える。
(まだ誰も帰ってきていないのか?)
八神堂は古書店とは言ってもブレイブデュエルのショップの1つ、学校が終われば子供達がやってくる。普段はリインフォースが手伝っているのだけれど、今日は朝からはやてに頼まれてグランツ研究所に行っている。
歩道を歩く子供の姿から既に学校が終わっているらしく今から忙しくなる。
。
【PiPiPi】
電車の中で小さな音が鳴る。シュテルはスカートのポケットから端末を取り出して見る。
「ユーリからメールです。2人とも研究所に着いて今からリライズテストをするそうです。」
隣に座るレヴィとディアーチェに言うと2人は顔を見合わせ笑顔で頷いた。
「白のセイクリッドの子とアリシア…だっけ、フェイトそっくりな子も?」
「はい」
「博士がヴィヴィオは来ると言っていたがアリシアをどうやって呼んだのだ?」